ちいかわハッピーセット転売騒動を株式投資と会計の視点で読み解く

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

“おもちゃのために捨てたハンバーガー”、その投資は本当に割に合うのか?

5月16日、日本マクドナルドで発売された「ちいかわ」「マインクラフト」のハッピーセットが空前の人気となりました。開店前から行列ができ、一部店舗では購入個数を「おひとり4セットまで」に制限する対策も空しく、発売初日からフリマアプリに大量の出品が確認されます。しかも転売業者たちは付属のおもちゃだけ抜き取り、肝心のハンバーガーなど食品を大量に廃棄していたのです。この出来事、いったい経済合理性の観点からどれほど「儲かる話」なのでしょうか? 株式投資の目線と会計知識を交え、転売行為の持続不可能な実態をひもといてみましょう。

正規ビジネス vs. 転売ビジネス:利益率と在庫リスクの違い

正規の流通(メーカーや販売店)は、適正価格で商品を提供し安定した利益率を確保する一方、在庫管理や販促コストなども含めた計画的な経営を行います。例えばマクドナルドの場合、ハッピーセット1つあたり550~580円程度の価格設定で、食材原価や販促費を差し引いたうえで一定の利益を得るモデルです。これに対し転売ビジネスの利益構造は不安定です。今回のハッピーセットのおもちゃはフリマサイトで1個あたり500〜900円程度で売られており、定価とほぼ同じか僅かな上乗せに過ぎません。ここから送料やプラットフォーム手数料(例えばメルカリなら10%)を差し引けば、実質利益はほとんどゼロでしょう。実際、ネット上の指摘では「手数料や発送の手間を考えれば完全に割に合わない。今後さらに値崩れも進みそう」と分析する声もありました。

さらに見逃せないのが在庫リスクの違いです。企業側は需要予測にもとづき生産・在庫を調整しますが、転売ヤーは人気に飛びついて商品を買い占めるため、自ら在庫を抱えるリスクを負います。もし思惑が外れて需要が落ち着いたり供給が潤沢になったりすれば、仕入れた在庫は売れ残り赤字になりかねません。株式投資に例えれば、これは「流動性の低い銘柄を高値掴みして塩漬けにする」ようなものです。短期的な熱狂に乗じて買い集めても、それが持続可能な需要に支えられていなければ、最終的に在庫という名の“塩漬け株”を抱えてしまうリスクが高いのです。

転売が生む需要の歪みと機会損失

転売目的の買い占めは、市場に需要の歪みをもたらします。本来であれば行き渡るはずの商品の多くが一部の転売ヤーに集中し、消費者が適正な価格で商品を入手できなくなるため、社会的には迷惑行為以外の何物でもありません。今回も、ハッピーセット目当ての家族連れは長蛇の列に直面し、中には「80人待ちで子どもが泣き出した」という報告や、待ちきれず大量キャンセルが発生して食品が廃棄される事態もあったと伝えられます。本来なら需要に応じて継続提供されるはずの商品が早期枯渇し、多くの顧客が機会を奪われました。

実際、マクドナルドは「予想を上回るご注文」によって第1弾景品が発売当日に各店で終了したと発表し、店舗には販売終了を知らせる貼り紙まで登場しました(上写真)。週末に子どもと来店予定だった多くの顧客は落胆し、マクドナルドにとっても販売機会の損失となりました。株式市場で言えば、企業が本来得られたはずの利益を取り逃がし、さらに顧客の信頼という無形資産を損なったようなものです。

また、転売による価格高騰とその崩壊も需給バランスを乱します。初日はレア感から高額で取引されても、短期間で類似出品があふれ価格が下落する傾向があり、バブルがはじけるように市場が冷え込むのが常です。これは投資におけるミニバブルと同様で、一部の短期利ざや狙いが市場価格を釣り上げる→適正価格から乖離した反動で調整が起きるという不安定な動きを生みます。結局、振り回されるのは一般の消費者であり、企業も本来得られたであろう安定した販売と顧客満足を失ってしまうのです。このように転売行為は、市場全体で見れば機会損失と非効率を招き、経済合理性に欠けると言えるでしょう。

フードロスという「損失」とブランドへの波及

今回の騒動で最も衝撃的だったのは、大量のフードロス(食品廃棄)が発生したことです。SNS上には「おまけだけ持ち帰って、ハンバーガーを捨てている転売ヤーたち」の写真が出回り、大きな怒りと悲しみの声が上がりました。食べられるものを捨てるフードロスは倫理的問題であるだけでなく、会計的にも社会全体にも損失です。農林水産省によれば日本の食品ロス量は年間約472万トン(令和4年度推計)にも上り、国民一人あたり毎日おにぎり1個分を捨てている計算になります。こうした食品ロスは食料自給率の低下や環境汚染を招くだけでなく、企業の損益にも大きな影響を及ぼします。

企業会計の視点では、廃棄された商品は本来原価として計上した分が回収不能となる損失です。飲食業では期限切れや売れ残りによる廃棄ロスは「商品廃棄損」として処理され、利益を圧迫します。今回マクドナルドは商品の販売自体は成立していますが、もし店舗で大量キャンセルが出て調理済み商品が廃棄されれば、それはその店舗の原価率を悪化させます。また、せっかく販売した商品もお腹を満たすことなくゴミになってしまえば、社会全体で見れば資源の無駄遣いであり経済的付加価値の棄損です。言わば「価値を生まない支出」をしているようなもので、投資でいえばリターンのない損失出費と同義です。

さらに無視できないのがブランドへのダメージです。ハッピーセットは本来「食べて楽しい、集めて嬉しい」商品ですが、今回のように食品が粗末に扱われたことで企業イメージにも傷がつきました。SNSには「食べ物を粗末にするなんて許せない」「誰もハッピーになっていない」といった声が相次ぎ、マクドナルドも「ご期待に添えず申し訳ない」と異例の謝意を公式発表しています。消費者の信頼を損なえば将来の来客数減少やブランド力低下につながりかねず、これは貸借対照表に表れない“のれん(Goodwill)”の毀損とも言えるでしょう。

ハッピーセットのおまけ欲しさに始まった転売騒動ですが、蓋を開けてみれば利益は雀の涙、リスクと悪評だけが山盛りという結果になりました。1998年に香港で起きたスヌーピー人形目当ての大混乱では、マクドナルドが暴動寸前の騒ぎと闇市場の発生に直面し、「行列や転売が店内の安全と快適さに影響を及ぼしている」とまで批判されました。同じ轍を踏むように、日本でも今回の件は企業と顧客の双方にとって不幸な出来事となったのです。短期的な投機のような転売行為は、持続可能性も経済合理性も欠如しています。株式投資でいえばファンダメンタルズ無視のバブル買いに等しく、最後には市場(消費者)のしっぺ返しを食らうでしょう。手にしたおもちゃは虚しく、捨てられたハンバーガーの山とともに、転売ヤーの倫理観と計算高さが厳しい目で問われていると言えます。

結論:その一つの行動が、未来を変える

ハッピーセットのおもちゃを転売して得た数百円。それは果たして「賢いお金の使い方」だったのでしょうか。目の前の小さな利益を追いかけて、食べられるものを捨て、子どもの笑顔を奪い、企業の信頼を損なう…。それが「経済的に合理的な行動」とは、どうしても思えません。

私たちは今、単なるモノの価値を超えて、「行動の意味」を問われる時代に生きています。会計や投資の知識を学べば学ぶほど、数字の奥にある「想い」や「信頼」こそが真の価値だと気づかされます。株価も企業価値も、人の心が生み出すものであり、数字だけで測れる世界ではありません。

一つのハンバーガーが救えたお腹があり、一つの笑顔が救えた家族の時間があったはずです。もしそれを「もったいない」と思える心があるなら、きっとその人は、未来にとっても大切な価値を守れる人だと思います。

投資とは、未来に希望を託す行為。だからこそ、短期的な打算ではなく、長期的な視点で社会に貢献する選択をしていきたい。あなたの行動一つが、もっと豊かで、もっと優しい経済をつくっていく力になる。そう、信じています。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』
食品ロス問題の第一人者である井出留美氏が、なぜ食べられる食品が廃棄されるのか、その背景や社会的影響をわかりやすく解説しています。今回のハッピーセット騒動における食品廃棄の倫理的・経済的問題を考える上で、必読の一冊です。


『金融と投資のための 確率・統計の基本』
投資判断に不可欠な確率・統計の基礎を、金融や投資の実例を交えて解説しています。転売ビジネスのリスク評価や収益性分析を、投資の視点から論理的に考察する際に役立つ内容です。

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『もったいない主義』
放送作家・脚本家として知られる小山薫堂氏が、日本人の「もったいない」精神を現代の生活にどう活かすかを提案するエッセイ集です。日常の中で忘れがちな価値観を見直すきっかけとなります。


『もったいないばあさん』
子ども向けの絵本ですが、「もったいない」の概念をわかりやすく伝える作品です。家庭や教育現場での倫理観の育成に役立ちます。


『日本人の心がわかる日本語』
「もったいない」を含む、日本人特有の表現や価値観を解説した書籍です。言葉を通じて日本人の思考や文化を深く理解できます。

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『もったいない 新装版』
「もったいない」の精神を環境問題や持続可能な社会づくりと結びつけて解説した書籍です。日常生活での実践方法も紹介されています。

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それでは、またっ!!

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