みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
AIが作るダンジョン、あなたはどこで利益のスイッチを入れますか?
イーロン・マスク率いるxAIが「来年末までに“AIが作るゲーム”を出す」とXでぶち上げました。人手で作るのが当たり前だった3Dモデル、エフェクト、台詞、クエスト設計まで、生成AIが一気通貫でこなす未来。もしそれが本当に動くなら、ゲームの“原価”はどう見えるのか――ここが会計の見せ場です。事実、マスク本人は「xAIゲームスタジオが来年末までに素晴らしいAI生成ゲームをリリースする」と投稿し、メディアも相次いで報じています。
この記事の主張はシンプルです。生成AIで作れば、追加コンテンツの限界原価(1本売るごとに増えるコスト)はほぼゼロに近づく。 だからこそ「売上が増えても原価はあまり増えない」構造が生まれ、営業レバレッジ(固定費を超えた瞬間に利益が跳ねる仕組み)の話が一気にリアルになる。ここを、初心者にもわかる言葉で噛み砕きます。
まず全体像。ゲームのコストは大きく固定費と変動費に分かれます。従来はアーティストやエンジニアの人件費が固定費の“塊”。一方で、1本売るたびに増えるサーバ費や決済手数料などが変動費。生成AIが本気で機能すると、人手で作っていた追加コンテンツ(新エリアや新クエスト、NPCの会話など)を短時間・低コストで量産できるので、「売るたびにかかる分」が薄くなる。つまり、一定の固定費(モデルの学習・推論基盤、少人数の監督・検証チーム)を超えて売れた分は、そのまま利益に寄与しやすい構図です。
もう一歩踏み込みます。AI開発には前払いの重たい投資(モデル学習、推論インフラ準備)が要る一方、発売後の追加ダンジョンや会話スクリプトの生成コストは小さい。この「最初ドカン、後はサクサク」という費用カーブが、営業レバレッジを強くする燃料になります。極端に言えば、“AIが作ったダンジョンの減価償却を、人間が会計上でゆっくり割っていく”みたいな、ちょっと不思議な世界観。ここに面白さと怖さが同居します。売れれば一気に黒字、外せば固定費の重さが牙をむく。xAIの発言が本当に実現するなら、ゲーム産業の原価構造そのものを見直すタイミングが来ています。
――この先の本文では、
- 生成AI時代の「固定費」と「変動費」をゲーム開発の現場感で分解
- “限界原価ほぼゼロ”が引き起こす営業レバレッジの実像と落とし穴
- 「AIが作ったダンジョンの減価償却」問題を、会計の基本ルールで軽やかに整理
といった順で、数字が苦手な人でも腹落ちするように解説していきます。
目次
固定費と変動費――ゲーム作りの「お金の地図」を描く

まずは地図づくり。ゲーム開発のお金は大きく固定費(最初にドンと払う)と変動費(売れるたび・遊ばれるたびにジワッと増える)に分かれます。xAIが「来年末までにAI生成ゲームを出す」と言っている背景には、この地図の塗り替えがありそうです。AIで作ると“作る手間”の多くがソフトとGPU時間に寄っていき、人手の重たい積み上げが減る。結果、追加コンテンツの限界原価が薄くなる=売れても原価があまり増えない方向に向かうわけです。もちろんタダにはなりません。モデル学習や推論用サーバ、ヒトによるチェック体制など、先に構えるコストはむしろ目立ちます。だからこそ「固定費の壁を越えた瞬間から利益が跳ねる」営業レバレッジが効いてくる、という話になるのです。なお、xAIの“来年末までに”発言はXでの本人投稿と複数メディアが確認しています。
固定費――“最初にドン”の中身
ここは土台づくりの費用。ざっくりイメージはこうです。
- モデル学習とチューニング:高性能GPUを長時間回すお代。ここが重い。社内モデルでも外部APIでも、基盤の“育成費”は先払い寄り。
- ツールチェーン構築:プロシージャル生成、レベル設計、アセット自動生成のワークフロー。パイプラインを作り切るまでが投資ゾーン。
- 監督・検証チーム:AIが吐いたダンジョンやセリフを、人が基準に沿って合否判定。安全性・著作権・表現のラインもここで担保。
- サーバ・配信基盤:推論をどこで回すか。端末内かクラウドか、混在か。選び方で後のランニングも変わる。
このあたりは売上に関係なく毎月・毎年かかるか、リリース前に先に重く乗るコスト。AI化で“人月の山”は減っても、設備・モデル側の山が立ちます。
変動費――“売れるほどジワッ”の中身
こちらは1本売れる/1人遊ぶごとにふえるコスト。
- 決済手数料・プラットフォーム料:ストアの取り分や決済の手数料。ここはAIでも消えません。
- サーバ運用(推論込み):ゲーム中にAIが会話・クエスト・地形をリアルタイム生成するなら、プレイヤー数に比例して推論回数が増える=電気代とクラウド代が乗る。逆に事前生成して配布なら、推論は開発側で済ませられるので、プレイ時コストは小さくなる。
- カスタマーサポート:問い合わせやコンテンツ規制対応。AIで一次対応を自動化しても、最終責任は人。
要は、プレイ時にAIをどれだけ回すかで変動費の性格が変わります。常時生成型は“体験は豊か・原価はやや乗る”、事前生成型は“体験は固定寄り・原価は薄い”という塩梅。
限界原価“ほぼゼロ”の正体
「生成AIで作ると追加コンテンツの限界原価がほぼゼロ」というフレーズ、ここを分解します。
- 人手の追加作業が激減:新ダンジョンを作るたびに3Dアーティストやレベルデザイナーの人件費を積み増す…という構図が薄まり、“プロンプト+検品”の固定チームで回しやすくなる。
- 再利用の効率:一度作った生成パイプラインは、設定や種(シード)を変えるだけで別バリエーションを量産可能。設計費の再利用効率が高い。
- 推論コストのスケール:1ダンジョンあたりの生成コストは数円〜数十円単位まで落とせる場合がある(設計次第)。売価が数千円〜数万円の世界では誤差化しやすい。
つまり「売るたびに増える分が薄い」ので、一定ラインを越えた後の利益の伸びが急になる。反面、その一定ライン(固定費の山)がかさむと赤字幅も深くなる。レバレッジは“味方なら強い、敵なら怖い”タイプです。
AI時代のゲーム会計は、「先に重く投資→売れたら一気に回収」のカーブがよりハッキリ出ます。だから大事なのは、どこまでを事前生成に寄せるか/どこからをプレイ中生成にするかの設計と、固定費の上限(燃費)を見える化しておくこと。ここが見えれば、「何本売れたら黒字に跳ねるか」を腹でつかめます。xAIの挑戦は、この地図の“AI版レイアウト”を世に見せる実験でもあるわけです。
営業レバレッジはどこで効く?――数字の見方と落とし穴

営業レバレッジは、固定費を払い切った後の“伸びしろ”のこと。生成AIで追加コンテンツの限界原価が薄くなるほど、ここが強く出ます。xAIは「来年末までにAI生成ゲームを出す」と公言していて(Xの投稿を各紙が報道)、もし本当に“事前生成多め+少人数で検品”という設計なら、売上が増えても原価はあまり増えない図が描ける。だからこそ、売れ始めた瞬間に利益が跳ねる可能性があるわけです。
ワンシート試算――どこで黒字に切り替わる?
小難しい式は抜きで、指で数える設計を持ちましょう。
- 売価(P):1本あたりの価格。
- 変動費(V):決済・ストア手数料、サーバ/推論、サポートなど“売れるほど増える分”。
- 粗利(G)= P − V:1本売れたときに残る“取り分”。
- 固定費(F):モデル学習・推論基盤、ツール整備、検品チームなど“毎月/毎年の土台”。
- 損益分岐点本数(BEP)= F ÷ G:ここを超えたら黒字。
例:
- P(売価)= 5,000円
- V(変動費)= 1,500円(決済+ストア料+サーバ等のざっくり合計)
- G = 3,500円
- F = 3億円(初期投資+運用の年額)
→ BEP ≒ 85,715本(3億 ÷ 3,500)。
AI化でVが薄くでき、Fは重い傾向。つまり「最初は遠いが、超えたら速い」。ここがレバレッジの正体です。
レバレッジを強くする設計――“事前生成”と“リアルタイム生成”の線引き
- 事前生成寄せ:ダンジョンや台詞をあらかじめ生成し、パッチとして配布。プレイ中の推論回数が減るのでVが下がりやすい。ただし多様性や即興性は控えめ。
- リアルタイム生成寄せ:プレイヤーの行動に合わせて毎回新しい地形や会話を作る。体験はリッチだが推論が回るほどVが増える。
- 折衷:基盤は事前生成、ボスAIの思考やNPCの会話だけリアルタイムなど。“Vが効く箇所を絞る”と、レバレッジを殺さず体験も守れる。
設計ポイントは、「Vがプレイヤー数に比例してどこまで伸びるか」を見取り図にすること。ここを曖昧にすると、売れるほどサーバ費が雪だるまになります。
落とし穴――“限界原価ほぼゼロ”にも影があります
1. 返金・価格改定の波
初期評価が荒れると返金で粗利が目減り。AI生成の品質のブレは初動のレビューに直結します。価格を下げて販売本数で稼ぐ戦略は、G(粗利)を削ってBEPを遠ざける点に注意。
2. 品質保証と安全弁
AIは時々“変なもの”を作る。審査・規制・レーティング対応が増えれば、F(固定費)とV(検品の都度分)がじわっと膨らむ。少人数の“最後の人間”のスループットがボトルネックになりがち。
3. 著作権・学習データのリスク
生成物が既存IPに似過ぎる、地域ごとの規制に触れる――法務コストや差し止めが入ると、一気に予定が崩れる。レバレッジ以前に販売できないのは致命傷。
4. プラットフォーム依存
ストア手数料や掲載ルールが変わればGが圧縮される。専用ストアや直販は夢があるけど、集客コストが別のVとして戻ってくる。
5. サーバ費の読み違い
「思ったよりユーザーが長時間遊ぶ」「AIの会話が人気で推論が回り続ける」――嬉しい悲鳴はVの増加。キャッシュ化(生成結果を使い回す)や上限設定で“燃費”を制御する設計が要る。
営業レバレッジは“味方なら無双、敵なら地獄”。G(粗利)を厚く、F(固定費)を燃費良く、V(変動費)の暴走を抑える――この3点を数字で見える化できれば、AI時代のゲーム会計は怖くない。xAIの動きは、まさにこの設計勝負の見本市になりそうです。
「AIが作ったダンジョンの減価償却」を人間がどう処理するか――会計ルールでやさしく整理

ネタっぽいけど核心です。AIが自動で量産したダンジョンや台詞は、会計上どう扱うの? 人が手で作業したわけじゃないのに、「資産にして少しずつ費用化(=減価償却/償却)していいの?」という疑問。結論だけ先に言うと、“何にお金を使ったか”と“いつ売る前提が固まったか”で分かれる、がシンプルな答えです。国際会計(IFRSのIAS 38)や米国会計(US GAAPのASC 985-20など)は、研究っぽいフェーズの支出はすぐ費用、商品として使えるメドが立ってからの作り込みは資産、売り出し後は償却しながら費用化――という考え方をとります。
「どれが資産で、どれがその場で費用?」の線引き
AIゲームに置き換えて、ざっくり三つに仕分けます。
- 研究・実験の段階(すぐ費用)
- 例:モデルの基礎研究、試作で遊ぶ、方向性探し。
- 理由:まだ“使える製品”になっていないので資産にできない扱い。AIの学習データ集めや基礎学習はここに載りやすい。
- 商品化の見通しが立った後の作り込み(資産にできる可能性)
- 例:発売するゲームの中身(ダンジョン群、会話、UI、プログラム)を、売る準備として作る。
- IFRSならIAS 38の“開発段階”の要件(技術的に作れる、売る意図がある、資金も人も確保、コストが測れる…)を満たせば、無形資産として計上OK。US GAAP(ソフトを売る前提のASC 985-20)でも、“技術的実現可能性”を越えてからはコストを資産化し、販売開始後に償却という流れ。
- 発売後のアップデートやDLC(ケースバイケース)
- 例:AIで量産した新ダンジョンをDLCとして販売。売上に結びつく拡張で、要件を満たせば資産化→償却の対象になりうる。一方で、小修正や運用保守などは当期費用扱いが多い。US GAAPでも、特定の要件を満たす製品強化は資産化の余地あり。
ポイント:“AIが作ったか人が作ったか”ではなく、お金を使った目的と段階が判断材料。AI生成物も売るゲームの中身なら、ちゃんと資産・償却の世界に乗ります。
「AIが作ったダンジョンの償却」って実務的にどう落ちる?
呼び方は国によりけりですが、ここでは「償却」とひとまとめにします。
- いつから償却?
販売できる状態になったらスタート。US GAAP(ASC 985-20)だと一般販売可能になった時点から、収益パターンに合わせて按分。多くは売上ベースか見積耐用年数の直線で費用化。IFRSでも有限の寿命がある無形資産は耐用年数で均して費用化します。 - どこに出る費用?
ソフト売上に対応する売上原価(COGS)に入れるのが通例。ゲームの“中身”を形作るコストなので、販売のたびに利益と一緒に流れるイメージ。 - AIで量産した大量のステージはどう割る?
使われ方が偏るなら売上やプレイ実績に比例。均等に消費される想定なら直線。要は“お金を稼ぐスピードに合わせて減らす”のがルール。 - 価値が落ちたら?(減損)
レビュー炎上や仕様変更で将来の稼ぎが下がったなら、帳簿の金額を一気に切り下げ(減損)もありえます。US GAAPはネット実現可能価額と比較、IFRSも回収可能価額を下回れば減損。
「AI時代ならでは」の注意どころ(超やさしく)
- モデル学習は“研究寄り”になりがち
データ収集や基礎学習は資産化しにくい。商品(ゲーム)に直接ひもづく作り込みに入ったら資産の土俵、が基本線。 - リアルタイム生成は“売るたびに増えるコスト”も混ざる
プレイ中に推論を回すタイプは、サーバ・推論費が変動費としてその都度費用。一方、事前生成で配布した分は発売前に資産化→発売後に償却の世界に乗せやすい。ここ、設計で原価の顔つきが変わる。 - 法務の地雷
学習データや生成物が他社IPに似すぎると、法務コストや販売停止で減損の可能性。ASAPで検品・ライツチェックの仕組みを持つのが防波堤。 - 「使用期間」を現実的に
AIで次々と新ダンジョンが出せるなら、古い資産の寿命は短くなるかも。結果、償却は速めに。逆に長く遊ばれる設計なら長め。運営データで毎年見直しが健全。
AIが作ったダンジョンも、商品として使うために作った“中身”なら資産にのる。発売したら稼ぎ方に合わせて少しずつ費用化、価値が落ちたら減損でドンと切る。AIか人手かは本質じゃない――目的と成熟度で仕分ける、が会計の姿勢です。
(注)xAIは「来年末までにAI生成ゲームを出す」とXで発言。報道でも同趣旨が出ています。つまり2025年10月時点の文脈では“2026年末までに”の読み。期待値は上がるけど、資産と費用の分け方は上の基本にそのまま当てはまります。
結論
「全部AIで作るゲーム」の原価は“消える”わけじゃない。場所が移るだけ。人の手間の山から、モデル・インフラ・検品という固定費の山へ。そして発売後は、追加コンテンツの限界原価が薄いぶん、売れた瞬間に利益が伸びやすい体質になる。これが営業レバレッジの中身でした。
じゃあ、現場で何を握ればいい? 難しい式はいらない。
- どこまで事前生成に寄せるか(V=変動費を軽くできる)
- プレイ中生成はどの機能だけ回すか(Vの暴走を防ぐ)
- 固定費の上限を決め、損益分岐点を最初に見える化(“何本で黒字?”を全員が共有)
- 検品とライツの“最後の人間”を太くする(品質と法務で足をすくわれない)
- 償却と減損のルールを運営データで毎期見直す(“使われ方”に合わせて費用化)
ここまで来ると、あのネタっぽい問いも腑に落ちます。「AIが作ったダンジョンの減価償却を、人間がする」――そう、会計は“誰が作ったか”より“何のために作り、どう稼いだか”を見ます。発売に向けて資産化し、売上に合わせて費用化し、価値が落ちたら減損で切る。ただそれだけ。AI時代でもルールは変わらない。変わるのはスピードと量、そしてレバレッジの効き方です。
怖さもある。固定費の山は、外したときに重い。でも、地図を持って臨めば味方にできる。“Gを厚く、Fを燃費よく、Vを制御する”というシンプルな設計で、黒字化の坂は一気に下れる。xAIが投げた球は、業界全体に同じ宿題を配りました。作り方をAIに任せるほど、数字は人間が見る。そこに面白さがある。
さあ、あなたのゲームでどこまで事前に作り、どこから即興で生ませるか――その線を引くところから、レバレッジのスイッチは入ります。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
ゲーム産業白書 2025
最新の国内外市場規模、ヒット要因、AIが変える開発体制まで“業界の今”を俯瞰。営業レバレッジが効くタイトルの条件を、数字で追えるのが強い。企画・投資判断の土台に。
スクウェア・エニックスのAI(スクエニの事例と生成AIの要点を整理)
大手の現場がどこにAIを差し込んでいるかを具体で学べる。事前生成とリアルタイム生成の線引き、運用の詰めどころまで想像が回る一冊。「自社なら何をAI化する?」のヒントに。
生成AI活用の最前線――世界の企業はどう成果を出しているか
海外企業の収益化パターンが粒度高くまとまる。AI導入で固定費→変動費の設計をどう変えるか、KPI設計の“型”まで掴みやすい。意思決定の速度を上げたい人向け。
生成AIがもたらす開発プロセス革命(日経BPムック)
開発現場のワークフローを実務目線で刷新する特集。プロンプト+検品の体制や、推論コストの抑え方(キャッシュ/事前生成)の考え方がつかめる。明日からの運用に直結。
2025年度版 みんなが欲しかった!税理士 財務諸表論(資産・負債・純資産会計編)
試験本だけど侮れない。無形資産・研究開発費・ソフトウェアの扱いを最新基準で整理。「AIが作ったダンジョン」の資産計上/償却/減損の思考の型が手に入る。実務の“辞書”として一本。
それでは、またっ!!
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