『資源大国の夢?違う。“技術がROIを作る国”だ』――日本の山に眠るレアアースは「採れる」より「採算が出る」が100倍大事

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

資源は“埋まってる”だけで、ほんとに儲かると思う?

「日本でレアアースが見つかった」って聞くと、ついテンションが上がる。南鳥島沖のレアアース泥に続いて、今度は山。しかも新鉱物まで出てきた。ロマン、ある。

でも投資目線で一回だけ冷静になろう。資源は“ある”だけでは価値にならない。

資源ニュースを“投資の材料”に変えるには、だいたい4枚の壁を見ればいい。

  1. 物理の壁:掘れる?運べる?壊れない?
  2. 化学の壁:分けられる?純度は出る?廃液は処理できる?
  3. 社会の壁:規制・環境・地域合意で止まらない?
  4. お金の壁:CAPEXを回収できる?価格が下がっても耐える?

この4枚のどこで詰まるかを先に想像できると、ニュースが急に立体的になる。

価値になるのは、採掘・搬出・精製・分離・廃棄物処理・規制対応まで含めて、キャッシュフロー(CF)が回る形に落ちたときだけ。

このブログで持ち帰ってほしいのは、ふわっとした夢じゃなくて、手触りのある「見立て」だ。

  • 資源=在庫じゃない。地下にあるのは“未確定の候補”で、CFに変えるには条件が要る
  • 勝負は鉱山より工場。分離・精製のCAPEXとOPEXがROIを決める
  • 規制は“壁”というより“コスト構造”そのもの。ここで事業性が変わる

SNSでは「埋蔵量◯◯」「日本が覇権」みたいな言葉が伸びやすい。
でも資源ビジネスは、バズりより工数で決まる。そこが逆に面白い。

読み終わるころには、レアアースのニュースを見た瞬間に
「で、どこで儲かる?どこで死ぬ?」が自然に浮かぶようになるはず。ここ、かなり強い。

山のレアアースは“宝”ではなく「地質のメモ」だ

ここで一つだけ整理。
レアアースは「レア=希少だから高い」より、「サプライチェーンが偏っていて詰まりやすい」ことが問題になりやすい。
たとえば磁石でよく話題になるネオジムやプラセオジム、重希土類のジスプロシウムやテルビウムなどは、分離・精製まで含めると特定国への依存が大きいと言われる。
だから“国産”という言葉に敏感になる。

ただし、敏感になっていいのは「供給が詰まるとどの産業のCFが揺れるか」まで考えたときだけ。ここ、思考の分岐点。

発見=商売、ではない(ここでズレる人が多い)

TBSの報道が取り上げたのは、愛媛の高縄山で見つかった新鉱物「タカナワアイト(高縄石)」。
レアアースに加えてタンタルなどの希少金属が凝縮している、という話だった。

ただ、現場のコメントがリアルで刺さる。
「2~3日で掘って終わりだと思う。量的には」
これ、資源開発の核心に近い。つまり、“存在”と“事業”は別物。

新鉱物の価値は「鉱床のサイン」にある

新鉱物が見つかる意義は、金額の話より地質の話に寄る。
ざっくり言うと「この場所は、希少金属が濃縮される条件が揃っていた」という手がかりになる。

会計にたとえるなら、これは売上じゃなく研究開発のヒント。
棚卸資産にもならないし、ましてや現金でもない。
でも、将来の探索コストを下げる“ショートカット”にはなり得る。そこが価値だ。

ここでやりがちな誤解が一つある。
「この鉱物があるなら、周辺に大きな鉱床もあるはず」
…うん、気持ちは分かる。でもこれは推測の領域。地質は平気で裏切る。

鉱床になる条件は、品位だけじゃない

鉱床=「いっぱい入ってる場所」ではない。
実務的には、少なくとも次の条件が揃って、ようやく“鉱山候補”になる。

  • :掘ってもすぐ枯れない規模か
  • 品位:回収しても採算が出る濃度か
  • 連続性:点ではなく面・層として続いているか
  • 採掘性:崩落、湧水、搬出路、作業ヤード…現場が回るか

日本の山は、地形が急で、工事もしづらい。安全対策も重い。
ここでCAPEX(設備投資)が盛大に膨らむ。
資源って、地中の元素より「場所の顔」に殴られることが多い。

規制と社会コストが“割引率”を上げる

日本で山を掘るなら、環境影響評価や水処理、廃さい(ズリ・尾鉱)管理、景観、地域合意が避けて通れない。
ここを雑に扱うと、プロジェクトは止まる。止まった瞬間、CFはゼロだ。

特に水は逃げない。
鉱山は、掘っている最中より「掘った後」に水が問題になることがある。
酸性の坑廃水や重金属の溶出は、対策が長期戦になりやすいと指摘されてきた。
この長期戦は、PLで言えば“毎年かかる固定的な支出”になり、BSで言えば“将来の義務”として意識される。

ここを舐めると、地域からの信頼も、資金調達の条件も一気に悪化する。
資源開発が「技術」と同時に「信用」のビジネスと言われる理由がこれ。

投資の言葉で言い換えると、規制対応の不確実性は割引率を上げる。
同じ将来CFでも、割り引かれて企業価値が下がる。
資源開発は、地質と同じくらい「合意形成の技術」でもある。地味だけど、ここで詰む。

山のニュースは“資源大国”ではなく「問い」をくれる

山の新鉱物は、明日から国産レアアースで儲かる話じゃない。
むしろ問いが立つ。

  • 日本の条件(地形・規制・社会)で、採算が合うモデルを設計できるか?
  • 掘るより後工程(分離・精製・廃液/残渣処理)で勝てるか?

ここから先は「技術がROIを作る」話になる。

レアアースの本体は“分離”だ。掘ってからが本番

レアアースは“混ざってる”から厄介で面白い

ここで世界観を一回だけ外に広げる。
IEAの報告では、エネルギー転換向けの鉱物需要が伸びていて、レアアースも2024年に増加したとされる。
需要が伸びると何が起きるか。単純に「足りない」だけじゃない。
“足りなくなるかもしれない”という気配だけで、価格も投資も政策も動く。市場は未来を先食いする生き物だから。

さらに、供給網の偏りがあると、価格決定が「コスト」ではなく「交渉力」で決まる瞬間が増える。
この偏りを減らすために、EUは域内の加工・リサイクル能力を増やす目標(加工40%、リサイクル25%など)を掲げている。
世界中が“掘る”より“加工する”に焦点を移している。日本の議論も、その流れの中にある。

レアアースは、地球上に全く無いわけじゃない。
難しいのは、似た性質の元素がセットで出てきて、分けるのが大変なところ。

つまり主戦場は採掘ではなく、分離・精製の工場。
ニュースの「採れた!」は序章。収益の可否は、その後ろで決まる。

溶媒抽出は“段数のゲーム”。段が増えると投資が重くなる

レアアース分離で王道の一つが溶媒抽出。
水相と有機相を混ぜて分けて…を繰り返し、特定元素を少しずつ濃くしていく。

で、現実が冷たい。
高純度にしようとすると段数(ステージ)が増える。装置が増える。占床面積も増える。
するとCAPEXが増える。薬品・溶媒・エネルギー・廃液処理でOPEXも増える。

ここで“資源=在庫”の発想が死ぬ。
レアアースは、掘り当てた瞬間に儲かる鉱物じゃない。
「分ける工程を、採算ラインに落とせる人」が儲かる。

装置の設計だけでROIが動く(地味に効くやつ)

JOGMECやNEDOの資料を読むと、分離精製の話は“神技の新素材”より「プロセスの改善」が多い。
占床面積を減らす、連続運転の安定性を上げる、前処理で不純物を減らす、廃液を回す…そういう積み重ね。

投資の観点だと、ここが熱い。
鉱山を一つ増やすより、既存工程のスループットを上げるほうが投下資本効率が跳ねやすい。

  • 回収率が少し上がる → 同じ原料で売上が増える
  • 段数が減る → 設備が減る、保全が軽くなる
  • 廃液が減る → 処理コストが落ちる、規制リスクも下がる

派手じゃない。でも、CFってこういう差分で増える。

日本の勝ち筋は「鉱山」より“後工程と循環”

ここで視点を変える。
日本が得意なのは、たぶん上流の鉱山そのものより、加工・精製・材料・製造の連鎖だ。

NEDOの最近の資料でも、レアアースリサイクルの分離精製工程がコスト面でボトルネックで、国内でコスト優位なプロセスを作る必要が語られている。
つまり、課題は分かっている。あとは工場の設計図。

さらに、供給は鉱山だけでは決まらない。都市鉱山(使用済み製品)からの回収・再資源化もある。
ただしここも甘くない。原料のばらつき、不純物管理、トレーサビリティ、回収網の設計。
でも逆に言えば、ここは“工業の国”の出番になりやすい。

レアアースは「採掘業」ではなく「プロセス業」

レアアースの価値は、採掘で半分決まらない。分離・精製・回収で決まる。
会計で言えば、設備投資と固定費の世界に入る。
減価償却が走り、操業率が命になり、事故や停止が一番怖い。

次は、そのCAPEXがどうCFになるか。深海(南鳥島)も、山も、同じ論理で見えるようになる。

資源は在庫じゃない。CAPEX+規制+技術で“CFの機械”になる

「埋蔵量=価値」病を治す

もう少しだけ会計っぽく噛み砕く。
資源開発のCFは、だいたい「滝」みたいに落ちていく。

  • 最初にドン:調査費・試験・許認可・設備(CAPEX)
  • その後もジワ:保全費・薬品費・電力・廃水処理(OPEX)
  • ある日ズン:増設や更新投資(追加CAPEX)
  • 最後にドスン:閉山・撤去・原状回復(片付け代)

初心者が見落としやすいのが、最後のドスン。
掘って儲けた顔をしていても、片付け代が重いと、トータルのROIが沈む。
だから資源プロジェクトは「入口のCAPEX」と同じくらい「出口の義務」を見る。

資源ニュースは埋蔵量の話になりがち。でも投資で効くのは別の質問だ。
「何年で回収できる?」「価格が下がっても耐える?」「止まったら誰が損する?」

資源は地下にある限り、会計的には“売上ゼロ”。
価値は、設備・運用・規制対応を含めた“事業の設計”で生まれる。

南鳥島の深海は、CAPEXのスケールが別物

南鳥島周辺のレアアース泥は、水深約6,000mという大水深が前提になる。
内閣府SIPの資料では、揚泥技術を用いた6,000m海域での試験や、揚泥管・浮力体の製作などが示され、予算規模も大きい。
JAMSTECの発表でも、「ちきゅう」を用いて揚泥管や機器を接続し降下させ、採鉱機を海底に貫入させる一連の作動を検証する、といった“工学の塊”が並ぶ。

ここでのポイントは、ロマンより固定費。
深海は一回の試験が重い。遅れると利息も人件費も積み上がる。
成功すれば参入障壁が厚い一方、失敗すると損失も厚い。超ハイリスク・ハイCAPEX型だ。

山は“小さく試す”余地がある(実験ラインとしての価値)

一方、山の新鉱物は量が小さい可能性が高い。国家の供給を支える主役にはなりにくい。
でも意味はある。ここが面白い。

小規模なら、プロセス開発の「実験材料」になれる。
採掘→粉砕→浸出→分離→残渣処理まで、現実の原料で一通り回して、どこが詰まるかを確認できる。
そこで得たノウハウは、将来の別原料(海外鉱石やリサイクル原料)にも転用できる可能性がある。

要するに、山は“日本のROIを作る練習場”になり得る。これは推測ではあるが、筋は通る。

投資家が見るべきは「プロジェクトのBSと最後の請求書」

資源プロジェクトの怖さは、設備が動き始めた瞬間に出る。

  • 固定費:操業率が落ちると利益が一気に痩せる
  • 減損:価格下落や遅延で将来CF見積が縮むと、帳簿価額が重くなる
  • 原状回復:最後に来る“撤去と環境対応”の請求書が地味に効く

環境対策の資料を読むと、坑廃水(鉱山排水)処理や廃さい管理は、運転後も長く続くテーマとして扱われている。
つまり、プロジェクトは「掘って終わり」じゃない。閉山後まで含めてCF設計が要る。

ここまで見て初めて、レアアースが“事業”になるかが分かる。

「技術がROIを作る国」になるかは、設計の勝負

山にも海にもレアアースの話題が出てきた。
でも“資源がある国”には、自動ではならない。

なるとしたら、「分離・精製・回収を採算ラインに落とす国」だ。
そしてそれは、地中より地上で決まる。工場と設計図で決まる。

結論:ロマンは地中、ROIは地上。だから面白い

レアアースの話は、どうしても夢っぽく語りたくなる。
でも投資で勝負するなら、夢は一回だけ棚に置く。代わりに、工場の図面を覗きにいく。

高縄山のタカナワアイトは、たぶん金塊じゃない。
南鳥島の深海泥も、すぐに財布を潤すとは限らない。
それでも、このニュースが価値を持つのは、ここから先の選択肢を増やすからだ。

世界のサプライチェーンは、レアアースの分離・精製や磁石製造で偏りが大きい。IEAは精製や磁石製造での集中度の高さを示している。
だから「どこで分けるか」「どこで作るか」は、値段だけでなく安全保障にも繋がる。

資源は、掘った瞬間に価値にならない。
採算が立つ形に“設計された瞬間”に価値になる。

日本の強みは、地下の広さじゃない。
工程を積み上げて、無理を理屈に変えて、コストを削って、品質を揃えて、世界の当たり前にしてしまう――その手癖だ。

最後に、明日ニュースを見た自分が迷子にならないための“3つの質問”だけ置いておく。

  • その資源は「どの工程」で値段が決まる?(掘る?分ける?磁石?)
  • 一番重いお金はどこ?(CAPEX?廃液処理?許認可の時間?)
  • 失敗すると何が起きる?(操業停止?減損?地域反発?)

この3つが浮かべば、あなたはもう“見出しに踊らされる側”じゃない。

資源大国の夢を語るより、
“技術でROIを作る国”として現実を作るほうが、ずっと熱い。

ロマンは地中。
でもROIは、地上で作れる。

そして、作ったROIは、次の世代の「当たり前」になる。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『ブラッド・コバルト コンゴ人の血がスマートフォンに変わるまで』シッダルタ・カラ
レアアース“周辺”の話に見えるけど、読み終わると「重要鉱物のサプライチェーンって結局こういうことか…」と腹落ちします。児童労働や搾取、そして“ロンダリングされる流通”まで踏み込むので、資源を「価格」だけで追ってた人ほど視界が変わる。あなたのブログの“採算(ROI)”の話に、倫理・規制・レピュテーションという現実のコストを足してくれる一冊。


『サーキュラーエコノミー(日経文庫)』野田由美子
「掘る」だけが正義じゃない時代の、いちばん実務寄りの入口。リニア(作って捨てる)から循環へ――という言葉を、なぜ今必要なのか/何が違うのかに落としてくれる。レアアースの話を“山 or 海”で終わらせず、回収・再資源化(都市鉱山)まで含めてCFを組み立てる発想が欲しい読者に刺さります。

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「経済安保って、結局なにをやればいいの?」問題に、見通しと“手の打ち方”をくれるタイプの本。輸出規制・制裁・関税などが企業にもたらすリスクを整理しつつ、コンプライアンスで終わらず“事業チャンスに変える=攻めの経済安保”まで踏み込むのが強い。レアアースを「国の話」から「企業の意思決定(投資・調達・在庫・契約)」へ降ろしたい読者向け。

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『再生可能エネルギーの地政学』十市勉
脱炭素が進むほど、資源は“平和な素材”じゃなくなる。ウクライナ戦争を起点に、クリーンエネルギー移行が加速する中での各国の戦略を俯瞰し、日本の国家戦略までつなげてくれます。あなたのブログテーマ(資源は採れるより採算)に、「政策・地政学が割引率を動かす」視点を足すのにちょうどいい。

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初心者が「資源ニュースで迷子」にならないための、いちばん気持ちいい地ならし本。電気代高騰、異常気象、ウクライナ侵攻、半導体不足、レアメタル争奪…を“資源”の一本線でつなぎ直してくれるので、読者の理解速度が上がります。あなたの記事を読んだあとに「もう一段、背景を押さえたい」層におすすめしやすい。

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それでは、またっ!!

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