みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
その“売上”、本当に利益として残っていますか?
「売上をくれるお客さま」って、ビジネスではだいたい“資産”扱いです。レビューを書いてくれる。リピートしてくれる。紹介までしてくれる。—でも、ある日を境にその前提が揺れます。
2025年4月、東京都では全国初の「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行され、事業者にはガイドラインに沿った体制整備などが“努力義務”として求められるようになりました。さらに国も、いわゆるカスハラを含むハラスメントのない職場づくりのために法律を改正し、施行に向けた準備が進んでいます(施行日は政令で定める形)。つまり「やるか・やらないか」ではなく、「やっていないこと自体が経営リスク」になりつつある、ということです。
ここが今日の肝。カスハラ対策が“義務(または義務に近い期待)”になった瞬間、顧客は“売上を運んでくる存在”から、“人的資本(社員の心身・離職・生産性)を壊す可能性がある存在”へと、会計的に見れば「負債っぽい影」を帯びます。もちろん全顧客がそうなるわけじゃない。でも「極端なお客さまが一人いるだけで、現場のコストが雪だるま式に膨らむ」構造は無視できません。
しかも東京都は、対策に取り組む都内中小企業等に“最大40万円”の奨励金を用意しています。要件には、録音・録画環境の整備やAIを活用したシステム等の導入も含まれていて、ちょっとSF味すらある(でも現場には超リアル)。
大事なのは、「正当なクレーム」を黙らせることじゃありません。線引きを明確にして、社員が安心して働ける土台を作りつつ、良い顧客体験も落とさない。その両立の設計図が、これからの“稼げる会社”の共通言語になります。
この記事では、難しい専門用語はなるべく避けつつ、次の3点をスッキリ整理します。
- いま何が「義務」になりつつあるのか(東京都の条例/国の法改正の流れ)
- カスハラを“会計”で見ると何が起きるのか(損失・引当・人的資本の毀損)
- 明日からできる現実的な対策(コストをかける順番と、奨励金の使いどころ)
読み終わる頃には、「対策=守り」ではなく、「現場を守って利益を残すための投資」という見方に切り替わるはずです。あなたの会社の“利益”と“チーム”を同時に守るために、一緒にほどいていきましょう。
目次
「義務化」の正体——東京都の条例と、国が進める“次の当たり前”

カスハラ対策って、昔は「余裕がある会社がやるもの」みたいに見られがちでした。ところが今は、やらないこと自体がリスクになりつつあります。ここではまず、「何がどう変わったのか」を初心者向けに、なるべく噛み砕いて整理します。
東京都は“全国初”で、2025年4月から条例がスタート
東京都は「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を制定し、2025年4月1日に施行しました。
ここで大事なのは、いきなり罰金で取り締まるというより、社会の空気を「会社は対策して当然」に変える役割を持っている点です。実際、条例に基づく指針(ガイドライン)も東京都が策定しています。
会社目線で言い換えると、
- 「うちは接客業だから仕方ない」では済みにくくなる
- 対策が薄いと、採用・定着・評判でじわじわ負ける
こういう“見えないコスト”が増えやすい局面に入った、ということです。
国も“措置義務”へ——カスハラを職場の安全問題として扱う流れ
国(厚生労働省)も、いわゆるカスハラを含むハラスメントのない職場づくりのため、労働施策総合推進法などを改正しています。ポイントはここが「お願い」ではなく、企業に必要な措置を求める方向だという点。施行は「公布から1年6か月以内で政令で定める日」とされ、準備が進められています。
さらに審議会資料では、施行日を2026年10月1日とする案が示されています(あくまで案ですが、現場の準備はこのスケジュール感で動きやすい)。
ここで会計っぽく言うなら、カスハラは「嫌な出来事」ではなく、放置すると損失が発生しうる経営リスクとして、制度の側が位置づけ始めた…ということです。
東京都の奨励金40万円は“SF味”じゃなくて「現場の装備」への投資
東京都は、都内の中小企業等が実践的な対策をした場合、奨励金40万円(定額)を用意しています。
要件の骨格はシンプルで、ざっくり言うと、
- マニュアルを整備して(作って終わりではなく、周知まで)
- 追加で「実践的な取組」をどれか1つやる(例:録音・録画環境、AIを活用したシステム等、外部人材の活用 など)
ここが面白いのは、補助している対象が“研修の気合い”じゃなくて、証拠・記録・切り分けの仕組みみたいな「装備」寄りなところです。
なぜかというと、現場で本当に効くのは根性論じゃなくて、
- どこからがカスハラか(線引き)
- 起きたときに何をするか(手順)
- 会社が守ると約束するか(安心)
この3点をブレなく運用できる仕組みだから。
そしてこれ、会計的には「コスト」ではあるんですが、発想を少し変えると、人的資本(社員の心身・離職・生産性)を守るための投資でもあります。売上をくれる顧客が“資産”であるのと同じくらい、働く人も“資産”。どっちかが壊れると、利益は残りません。
――次のセクションでは、この話をもう一歩進めて、「顧客が資産から負債っぽく見える瞬間」を、損益(P/L)と引当の考え方で分かりやすく解剖します。
会計で見るカスハラ——「売上」だけじゃない“隠れ損失”が利益を削る

カスハラが怖いのは、「嫌な思いをする」だけじゃありません。会社の数字で見ると、売上の裏で“利益が漏れる穴”が開きます。そして国の法改正で、カスハラ対策は「やったら偉い」から「やらないとマズい(義務)」へ寄ってきました。
ここから先は、会計っぽい言葉を使うとしても、できるだけ生活語に翻訳しながらいきます。
顧客は本来「資産」だけど、カスハラが混ざると“負債の匂い”がする
優良顧客は、将来も売上を運んでくれるので、感覚としては「資産」です。
でもカスハラが起きると、その顧客はこういう“負債っぽさ”を帯びます。
- 将来の支出を呼び込む(対応工数、弁護士相談、警備、システム導入)
- 人が辞める・病むリスクを上げる(採用費、教育コスト、引き継ぎのロス)
- 現場の生産性を落とす(他の対応が遅れる、クレーム連鎖が起きる)
会計用語でいえば、まだ確定していなくても「起きそうな損」を見積もって備える発想があり、これが“損失引当”の考え方に近いです。
あなたの刺し方どおり、売上をくれる顧客が、同時に人的資本を壊すリスクにもなる。ここが「資産→負債へ転落」の瞬間です。
利益を削るのは“返金”より「時間」と「離職」—見えないコストの正体
初心者ほど見落としがちなのが、返金や値引きよりも先に発生するこの2つです。
① 時間の損失
10分のクレームが、実際は「報告・相談・記録・引き継ぎ」で1時間になる。これが積み上がると、残業が増え、ミスも増え、さらにクレームが増える…と悪循環。
② 離職の損失
人が辞めると、求人広告・面接・教育・戦力化までにお金と時間がかかります。しかも辞めた人が抱えていた“現場の勘”は、だいたい数字に載らないまま消えます。
だからカスハラ対策は、感情論というより 「利益を守るための漏れ止め」 なんです。国の資料でも、事業主が毅然と対応して労働者を保護する方針を明確にする、といった方向が示されています。
義務化の本質は「トラブル対応」じゃなく「内部統制」になること
義務化(または義務に近い期待)が進むと、カスハラ対策は“現場の頑張り”ではなく、会社の仕組み=内部統制になっていきます。
- どこからがカスハラか(線引き)
- 相談窓口とエスカレーション(誰が判断するか)
- 記録の残し方(録音・録画・ログ)
- 会社としての姿勢(労働者保護を明確にする)
東京都も条例に基づくガイドラインを整備しており、事業者の取組などを示しています。
つまり、これからは「揉めたらその場で考える」ではなく、揉めてもブレない“会社の型”を持っているかが問われます。
――次のセクションでは、その「会社の型」を、明日から現場で動くレベルに落とし込みます。奨励金40万円の使いどころ(録音・録画やAI含む)も、ムダ撃ちしない順番で整理します。
明日からできる現場設計——「守り」を“利益を残す仕組み”に変える手順

ここまで読んで「対策が必要なのは分かった。でも何から?」となった人へ。結論、カスハラ対策は “気合い”じゃなくて設計です。しかも東京都の奨励金(定額40万円)は、その設計を“現場で動く形”にするための後押しになっています。
最初にやるのは「線引き」—マニュアルは“盾”であり“地図”
いきなり録音機材を買う前に、先にやるべきは 線引きの言語化です。東京都の奨励金でも「マニュアルの作成・改定+周知」が土台になっています。
初心者向けに超シンプルに言うと、マニュアルはこの3点が書けていれば強いです。
- OK(正当な要望):事実確認して改善する
- グレー(強い口調など):上長にエスカレーション、記録する
- NG(脅し・長時間拘束・人格否定など):対応打ち切りの条件、警察・弁護士相談の基準
これがあるだけで、現場が「個人の判断」で抱え込まなくなります。結果、メンタル負荷も残業も減りやすい。
「記録」と「判断」を仕組みにする—録音・録画・AIは“現場の安全装置”
次に効くのが、記録を残せる環境です。東京都の事業でも、実践的取組として「録音・録画環境」や「AIを活用したシステム等」が例示されています。
ここでのポイントは「相手を監視する」ではなく、
- 言った/言わないの泥沼を防ぐ
- 判断者(店長・本部)が状況を正確に把握できる
- 現場が“会社に守られている感覚”を持てる
この3つ。だからSF味はあっても、目的はめちゃくちゃ現実的です。
国もカスハラを含むハラスメントのない職場づくりとして、事業主に雇用管理上の対応を求める方向で制度を整えています(施行日は政令で定める形、2026年10月1日予定とする資料もあります)。
つまり「記録して適切に守る」は、今後ますます“当たり前の会社力”になります。
お金の使い方の順番—奨励金40万円は「装備」より先に“運用”を買う
コストの順番を間違えると、録音機材だけ立派で誰も使わない…みたいな事故が起きます。おすすめの順番はこれです。
- マニュアル作成・周知(まず会社の型を決める)
- 判断の流れを固定(誰が止める/誰が引き取る/どこに相談する)
- 記録の導入(録音・録画、ログ、AIなど)
- 外部の力(弁護士・社労士・警備・カスハラ対応研修など)
ちなみに申請は電子申請(jGrants)で、gBizIDの準備が必要と案内されています。先にここで詰まりがちなので、早めが吉です。
そして超重要な注意点。東京都のサイトでは「事前に○万円払えば奨励金が受けられる」みたいな営業があるので注意、と明確に警告しています。うまい話には乗らないのが正解です。
——ここまで整えると、カスハラ対策は「現場を守るための守り」から、離職とムダ時間を減らして利益を残す“攻めの土台”に変わります。
結論:「守ること」は、利益を増やす最短ルートになる
カスハラ対策が“義務(または義務に近い期待)”になった瞬間、会社の景色は変わります。
これまで「売上をくれるから…」で飲み込んでいた対応が、ある日ふと、人を壊して利益を削る“穴”として見えてくる。あなたが言った「顧客が資産から負債へ転落する」って、煽りじゃなくて、現場と会計の両方から見た“現実”なんですよね。
でも、ここで大事なのは「お客さまと戦う」ことじゃありません。
会社がやるべきは、たったひとつ。線引きを決めて、記録して、判断の流れを固定する。それだけで、現場は驚くほど軽くなります。
- どこまでが正当な要望で、どこからがカスハラか
- 誰が止めて、誰が引き取って、どこに繋ぐのか
- 何を記録として残すのか(録音・録画・ログ・AIなど)
この「型」がある会社は強いです。なぜなら、社員が安心して働けるから。安心は、接客の質を上げます。接客の質は、良い顧客体験を生みます。良い顧客体験は、売上に戻ります。
つまりカスハラ対策は、“守り”に見えて、実は利益を残すための投資なんです。
そしてもうひとつ。対策を整えることは、会社から社員へのメッセージでもあります。
「あなたを一人で戦わせない」
「守るのはあなたの心身で、守った先にお客さまも守られる」
この言葉が仕組みとして伝わったとき、チームの空気は変わります。離職が減り、ムダな残業が減り、現場に余白が戻る。余白が戻れば、サービスは良くなる。数字は、あとからついてきます。
“お客様は神様”の時代が終わったわけじゃない。
ただ、神様にもルールが必要になった。
そのルールを先に用意できた会社だけが、これからの時代に「売上」と「人」を両方守って走り続けられます。今日が、その最初の一歩です。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『「度が過ぎたクレーム」から従業員を守る カスハラ対策の基本と実践』能勢 章
「結局、現場は何を言えばいいの?」に真正面から答えてくれる一冊。カスハラ対応は、正論よりも“段取り”が命ですが、この本はその段取りを基本→実践で積み上げてくれます。店長・リーダー層が読んでおくと、いざという時に“判断が遅れて炎上”を避けやすくなるタイプ。
『実践 カスタマーハラスメント対応ケーススタディ』日本能率協会コンサルティング
「マニュアルは作った。でも現場で回らない…」となる会社に刺さるのがケーススタディ型。読みながら、社内で起きがちなシーンを疑似体験できるので、研修・ロールプレイの素材にもなります。“判断を標準化”したい人(本部・総務・人事)に特に相性がいいです。
『Q&Aカスタマーハラスメント対策ハンドブック 平時の備えと有事の対応』日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会
“現場の正解”って、最後は法律・ルールに着地します。この本はQ&A形式なので、難しい条文の暗記ではなく、「この状況どうする?」→「こう考える」の流れで理解しやすい。社内ルール整備や、トラブル時の線引きを固めたいときに、机の引き出しにあると強い一冊です。
『飲食店・小売店・コールセンター・行政窓口必携! クレーム対応・カスハラ対策マニュアル作成のコツ』鈴木 タカノリ
「会社としての“型”を作る」担当になった人の味方。現場に押し付ける理想論じゃなく、マニュアルを“実装”するためのコツに寄っているのがポイントです。飲食・小売・コールセンターなど、“対人の摩擦が起きやすい業種”ほど、読んだ直後にやることが見えてきます。
『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』津田 卓也
「悪意が混ざった時」に必要なのは、丁寧さよりも“守るための線引き”です。ハードクレームを想定した切り口なので、現場のメンタルを削る“しつこい系”への備えに向いています。お客さまを敵にするためではなく、従業員と組織を守るための現実解を持っておきたい人に。
それでは、またっ!!
コメントを残す