なぜ体育会系が採用されやすいのか?──部活という“人的資産投資”の会計構造

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

あなたの青春、いまも“資産”として利息を生んでいますか?

学生時代の部活経験は、社会人になった今どんな意味があるのでしょうか?

本記事では、「部活」という青春の汗と涙を“人的資産への投資”と捉え直し、その会計的構造を解き明かします。 部活での厳しい練習や上下関係が、実は資本主義社会で戦うための予行演習だったとしたら?体育会系出身者が就職で有利と言われる背景には、一体どんな“貸借対照表(Balance Sheet)”上の秘密が隠されているのか。そして文化系の部活で培った柔軟な発想や自主性は、“損益計算書(Profit & Loss)”のどんな強みとして発揮されるのか?さらに、部活で得た小さな成功体験の積み重ねが、自分という企業の中にどんな「内部留保」を生み出しているのかも探っていきます。

読むことで「自分の青春時代の努力が今の自分という資産を形作っている」ことに気づき、思わず笑って納得し、そして最後には自分の過去がいっそう愛おしく感じられるはずです。社会人になった今だからこそ分かる部活の価値──あなたの学生時代の謎が、経済のモノサシで測り直すとどんな意味を持つのか。一緒にひも解いていきましょう。

無償労働+上下関係+時間制約=資本主義の予行演習

学生時代、部活に打ち込んだ人なら「なんでこんなに厳しいんだ…」と感じた記憶があるでしょう。毎日続く無償の練習、先輩・後輩の厳格な上下関係、休みのない時間拘束──実はこの三拍子こそ、資本主義社会の労働環境そのものです。言わば部活は資本主義の予行演習だったのかもしれません。部活では、新入生の1年生はまるで企業の新人のように雑用係。大学体育会の世界では「4年神様、3年貴族、2年平民、1年奴隷」なんてブラックジョークがあります。1年生は例え高校までエースだったとしても振り出しに戻り、上級生には絶対服従。練習用具の準備・片付け、グラウンド整備、先輩のユニフォーム洗濯や買い出し……命じられた雑務を“奴隷”のようにこなす日々です。もちろん給料など出ませんから完全な無償労働。しかし、この「タダ働きでも歯を食いしばって頑張る」経験こそが、社会に出てから役立つストレス耐性を育てているのです。

また体育会系の縦社会では、理不尽とも思える上下関係に鍛えられます。先輩には敬語と絶対の服従、後輩の面倒はしっかり見る──こうしたヒエラルキーへの適応は、会社組織で上司や先輩とうまくやる基礎力になります。企業側も「礼儀正しく上下関係をわきまえている」体育会学生を高く評価しています。さらに、毎日朝から晩まで練習や試合に明け暮れ、自分の時間などほとんど無い生活…これも実は社会人の忙しさの予行演習でした。限られた時間の中で勉強との両立やスケジュール管理を叩き込まれることで、時間管理能力が自然と身についたという人も多いでしょう。企業は納期や残業のプレッシャーに耐え、効率よく働ける人材を求めます。部活漬けの生活は、その下地を作っていたのです。

興味深いのは、日本特有の「部活文化」はとりわけ資本主義的な構造を持つという点です。例えばアメリカの学校スポーツでは、下級生だからと練習させないようなことはありません。入部は実力主義でトライアウト制、一度入ってしまえば新人でも全員が試合に出場機会を得ます。日本のように「1年生はひたすら声出しと球拾いだけ」なんて光景はほとんど見られないのです。この違いを見れば、日本の部活の徒弟制度的な縦社会ぶりが際立ちます。部活の先輩はまるで上司か監督者、生徒である後輩たちは部下・労働者さながら。こうした “ミニ社会” での人間関係は、社会に出てからの組織適応力を鍛える絶好の機会でした。実際、スポーツ経済学の専門家は「スポーツは実社会を疑似的にトレーニングできる機会」であり、学生のうちに負ける経験を積んでおくことで、社会人として必要なレジリエンス(逆境耐性)が養われると指摘しています。部活の厳しさに耐えてきた人は、社会に出て契約が取れない・プロジェクトが失敗する…といった挫折にも踏ん張りがきくというわけです。

つまり、部活での日々は資本主義社会の縮図でした。タダでもコミットし、組織の歯車として動き、長時間働き抜く。そんな経験を積んだからこそ、体育会出身者は「多少の無理も効く即戦力」として企業から一目置かれる存在になっているのです。学生時代は夢中で過ごしたかもしれない部活漬けの毎日も、振り返ればあなた自身という“人的資本”に対する先行投資だったと言えるでしょう。

体育会系=強固なBS(貸借対照表)/文化系=柔軟なPL(損益計算書)

企業の財務にたとえるなら、体育会系出身者は「強固なバランスシート(貸借対照表)を持つ人材」です。一方で文化系出身者は「柔軟なプロフィット&ロス(損益計算書)を操る人材」とも言えます。どういうことでしょうか?ここでは人を一つの“会社”に見立てて、体育会系と文化系それぞれが持つ強みを会計風に読み解いてみましょう。

まず体育会系=強いBS(貸借対照表)とは、蓄積された資産が豊富だという意味です。体育会系の資産とは何でしょうか?それはズバリ、「耐久力・組織適応力・リーダーシップ」といった無形資産です。貸借対照表に計上される“資産”には現金や設備の他に「のれん」などの無形資産があります。同様に、体育会系の人は学生時代の厳しい経験を通じて、目に見えない人間的資産をどっしりと貯めこんでいるのです。例えば、過酷な練習やプレッシャーのかかる試合を乗り越えた経験から得たメンタルの強さは、どんな職場のストレスにも負けない精神的な貯金と言えます。また、チームスポーツで培ったコミュニケーション能力や協調性、時にはキャプテンとして発揮したリーダーシップも大きな資産です。大学の体育会でキャプテン経験のある学生は、すでに社会人になる時点でリーダーシップの技能を備えているので企業が欲しがる、とも指摘されています。これらの能力は帳簿には載りませんが、まさに「貸借対照表に計上されない無形資産」として人材の価値を高めています。

さらに体育会系の強みは、その人脈という名の資本にも現れます。部活の縦のつながりは非常に強く、就活の際にはOB・OG訪問などで大いに活用できます。例えば「○○大学ラグビー部出身」の先輩社員が面接官だった…なんてケースでは、それだけで親近感と信頼を持ってもらえることもしばしばです。企業によっては体育会学生向けの採用枠を用意しているところもあり、スポーツで結ばれたネットワークが“のれん”のようなプラス評価を生むのです。これは会社で言えば強力な信用力やブランド資産を持つのに等しく、結果として内定獲得の確率を上げ、入社後も可愛がられやすいという利点につながっています。

一方、文化系=柔軟なPL(損益計算書)というのは、状況に応じたアウトプットを上手に出せるという意味です。文化系の部活(たとえば吹奏楽、美術、演劇、科学部など)は、比較的自由度の高い活動環境であることが多いですよね。運動部のように毎日へとへとになるまで練習…というより、自分のペースで取り組みやすく、学校外の習い事や勉強との両立も効きやすい。その結果、文化部出身者は限られたリソースや時間の中で柔軟に成果を出すスキルを身につけています。まるで企業の損益計算書を見ながら、「今期は売上(成果)をどう上げよう?コスト(時間や労力)をどう配分しよう?」と機動的に考える経営者のように、状況に応じて最適解を出せるのです。例えば文化祭前の追い込みで効率よく作品や発表を仕上げたり、兼部・兼好でマルチタスクを器用にこなしたりする経験は、クリエイティブな問題解決力として社会で発揮されるでしょう。企業が求める「変化に対応する能力」という点で、実は体育会学生も組織の入れ替わりに適応する力を持っていますが、文化系出身者も負けてはいません。むしろ固定観念にとらわれず多角的な視点でアイデアを出す柔軟性は、文化部的な経験から養われる強みです。これは経営で言えば、時代の変化に合わせてビジネスモデルを転換し黒字を維持する柔軟なPL経営に似ています。

ただし体育会系・文化系それぞれ一長一短もあります。体育会系は強靭な基礎体力が持ち味ですが、時に「根性論に頼りすぎ」「柔軟性に欠ける」といった弱みも指摘されます。一方文化系は自由闊達な発想力が武器ですが、逆に「競争意識が低い」「組織での粘り強さに欠ける」と見られることもあります。しかし、だからこそ両者の資質は補完関係にあります。企業経営でも安定したBSと攻めのPLの両方が重要なように、組織には体育会系的な人材と文化系的な人材のバランスが必要です。あなた自身も、自分はどちら寄りかな?と振り返りつつ、反対の長所を取り入れることで“人的資産ポートフォリオ”を豊かにできるでしょう。

“自己効力感”という内部留保の作り方

最後に注目したいのが、部活経験がもたらす「自己効力感」という内なる財産です。自己効力感とは、ひと言で言えば「自分はできる」という感覚や信念のこと。これは心理学者バンデューラが提唱した概念ですが、簡単に言えば自分の能力に対する信頼感であり、企業でいえば内部に積み上げられた留保資産のようなものです。企業の内部留保とは「当期純利益のうち配当せず社内に蓄えた利益」のことで、平たく言えば会社に貯金された稼ぎです。これが厚い会社ほど不況にも強く、新たなチャレンジにも積極的になれます。人に置き換えてみましょう。学生時代の成功体験を通じて高まった自己効力感は、あなたという存在の中に蓄えられた心理的な貯金=内部留保なのです。自己効力感が高い人は多少の困難にも「自分なら乗り越えられる」と信じてポジティブに行動できますが、低い人はチャレンジ前から「どうせ無理だ」と尻込みしがちです。部活はこの自己効力感を育む格好の場でした。

部活で自己効力感が培われるメカニズムを考えてみます。心理学では自己効力感を高める要因として「達成体験」「社会的説得(称賛)」などが挙げられます。まさに部活は、小さな目標達成の連続でした。「初めてレギュラーを勝ち取った」「大会でベスト8に入った」「文化祭で満員の観客に演奏を披露した」──こうした成功体験の一つ一つがあなたの中に蓄積され、「自分にはやればできる」という自信を少しずつ増やしていきます。それは企業で言えば年度ごとの利益剰余金が積み重なって内部留保が厚くなるイメージです。仮に大きな成功が無かったとしても大丈夫。部活では先輩や仲間からの励ましや称賛も得られます。「お前のサーブのおかげで勝てたよ」「いい作品じゃないか!」といった一言は、自己効力感という内部留保を増強する外部からの資本注入のような効果があります。実際の調査でも、「部活で達成感を得る場面の多さが自己効力感に影響する」「達成体験が少なく自信を持てない生徒でも、先輩・顧問との人間関係が自己効力感を補完してくれる」という結果が示されています。部活での悔しい敗北や挫折も、見方を変えれば次に向けた経験値です。仲間と一緒に涙を流しながら乗り越えた悔しさは、「今度こそやり抜くぞ」という反発力に転化し、自己効力感の土台をより強固にしました。

こうして育まれた自己効力感という心の中の内部留保は、社会人になった今もあなたを支えています。仕事で壁にぶつかったとき、あの頃の自分ならどうしただろう?と振り返ることはありませんか。部活で培った「粘り強さ」と「やり抜いた記憶」が、ここぞという勝負どころで「自分はできる」という確信を与えてくれるのです。企業が内部留保を元手に新規事業へ投資できるように、あなたも心に蓄えた自己効力感をエネルギー源に、新しいチャレンジに踏み出せるでしょう。仮に学生時代うまくいかなかった経験があっても大丈夫。それすらもあなたの内部留保に含まれています。失敗から学んだ知恵や「次は負けたくない」という闘志は、簿外資産ながら確実にあなたの糧となっているのです。スポーツ科学の教授も「人生には負けることへの耐久性が必要」だと言いますし、スポーツで負けを経験することはそれを養う良い機会だと述べています。つまり、挫折も含めたすべての経験があなたの中で自己効力感という名の内部留保に姿を変え、困難に立ち向かう原資になっているのです。

結論:青春の投資が未来の糧に変わる感動

部活に明け暮れた日々も、文化系で好きなことに打ち込んだ時間も、そして時に部活をやらずに別の道を選んだ青春も、決して無駄ではなかった──そう思えてきませんか?私たちは学生時代、自分でも気づかないうちに「自分株式会社」への投資を続けていました。体育会系で流した汗と涙は強固な基盤(BS)となり、社会の荒波にも耐えうる芯の強さを育みました。文化系で磨いた創意工夫や自主性は柔軟な収益力(PL)となり、変化の激しい時代を生き抜く創造力を与えてくれました。そして、成功も失敗も全部ひっくるめて積み上げた経験値は、かけがえのない内部留保として今もあなたの背中を押しています。

思い返せば、あの頃はがむしゃらに頑張ったけれど報われないこともあった…。でも、その努力はちゃんと“人的資産”という形であなたの中に残りました。一緒に走り抜いた仲間との絆、先輩にもまれて覚えた礼節、悔し涙を乗り越えたあの日の自分──それらすべてがあなたという企業の純資産を増やしてきたのです。社会人になった今、壁に直面してもどこかで踏ん張れるのは、青春の日々に培った内部留保があなたを守ってくれているからかもしれません。企業が「人への投資こそ未来の成長につながる」と人的資本経営に舵を切り始めた現在、まさにあなた自身も過去の自分への投資で成長を遂げてきたと言えるでしょう。

もし今この記事を読んでいるあなたが20代〜30代の社会人であれば、これからの人生はまだ長い長い道のりです。10年後、20年後の自分を思い描くとき、ぜひ学生時代の自分に感謝してあげてください。当時のあなたが必死に積み上げた“人的資産”は、これから先もずっとあなたを助け、道を照らす財産です。部活で得たものも、失ったと思っていたものも、ぜんぶ含めて今のあなたという存在を形作る糧になっています。まるで決算書の隅にひっそりと書かれた内部留保が会社を支えるように、青春の蓄積がこれからのあなたの糧となるのです。

最後に一つ、心に留めておきましょう。学生時代の熱量や情熱は、社会に出てからも色褪せることなくあなたの中に生き続けます。 それは経済的な価値に換算できないかもしれませんが、あなたという人間の価値を底上げする大切なエネルギーです。どうか胸を張ってください。部活だろうと趣味だろうと、あなたが若き日に注いだ努力と情熱はすべて未来の自分への投資でした。そして今、その投資のリターンを手にしている自分に気づいたなら、きっと明日からの仕事や人生が今まで以上に誇らしく、輝いて見えることでしょう。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『人的資本経営ストーリーのつくりかた』
人的資本の「測定」だけでなく、ステークホルダーがワクワクする“物語”としてどう開示するかを解説。開示様式のひな型やケーススタディも収録しており、企業の人的資本経営を初動から軌道に乗せたい人にうってつけ。


『人的資本の会計 ―認識・測定・開示―』
無形資産としての「人」をどう会計数値化するか──理論・制度・実証を横断的にまとめた専門書。人的資産をBS/PLに落とし込む方法論は、ブログ内の“体育会=強いBS”という比喩をさらに深掘りする際の土台になる。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

人的資本の会計 認識・測定・開示 [ 島永和幸 ]
価格:4,290円(税込、送料無料) (2025/7/16時点)


『レジリエンスが身につく自己効力感の教科書』
バンデューラ理論をベースに「達成体験」「社会的称賛」など自己効力感を高める4要素を実践的に解説。部活で形成される“内部留保”=自己効力感を科学的に理解したい読者に最適。


『スポーツ社会学』
スポーツを組織・文化・キャリアの観点から読み解く最新テキスト。縦社会・無償労働・時間拘束といった日本部活文化の特殊性を社会学的に整理するヒントが豊富。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

スポーツ社会学 (放送大学教材) [ 渡 正 ]
価格:3,080円(税込、送料無料) (2025/7/16時点)


『スポーツの仕事大全 ―45人のスポーツプロフェッショナルたち―』
アスリート、トレーナー、アナリスト、スポンサー担当…45人の多彩なキャリアをインタビュー形式で紹介。体育会で育まれた人的資本が実務のどこで花開くのかを具体的にイメージできる。


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です