みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
“やさしさ”って、本当にビジネスにならないの?
「赤字って悪いこと?」をひっくり返す5分間の知的冒険へ!
「医療も教育も福祉も大切なのに、決算はいつも真っ赤――。やっぱり“やさしい世界”はビジネスにならないの?」
そんな疑問を抱えたままニュースを閉じるのは今日で終わりにしませんか?
本記事は、“やさしさ=赤字”という思い込みを、会計と投資の視点で裏返すスリリングなツアーです。PL(損益計算書)の数字を分解し、感情資本という新しい物差しで組み立て直すことで、赤字の裏に潜む“見えない黒字”を浮かび上がらせます。読み終えたあなたは、善意と利益を同じテーブルで語れる稀少なカードを手に入れているはず。忙しい社会人が5分で消化できるよう、ポイントをサクッと抽出しました。
目次
このブログで得られる3つのポイント
- 赤字のカラクリを解剖
医療・教育・福祉がなぜコスト先行型なのかをPLで分かりやすく。 - 感情資本会計という逆転の発想
“信頼・共感・安心”をKPI化し、バランスシートに載せる最新フレームワークを紹介。 - 投資家が動く実装シナリオ
アウトカム連動型ファイナンスやブレンデッド・ファイナンスで“やさしさ”をキャッシュに変える具体策を提示。
- 社会課題を“数字”で語れるようになる
- キャリアと投資判断にインパクト会計を応用できる
- 「赤字でもやるべき」という曖昧な議論から卒業し、自信を持って次の一手を提案できる
それでは、あなたの固定観念を更新する知的アドベンチャーを始めましょう。
なぜ“やさしさ”は赤字になるのか?──構造的な“善意の損益計算書”

人件費という“やさしさの重み”──医療が赤字になる本当の理由
医療現場の赤字構造は、多くの場合“無駄遣い”や“経営ミス”ではありません。問題の本質は、やさしさそのものがコスト構造に埋め込まれている点にあります。
たとえば地域医療を担う中小病院の多くでは、人件費が全体のコストの6〜7割を占めています。患者一人ひとりに寄り添う看護体制を維持しようとすれば、当然人手が必要です。そしてその人件費は、機械のように一括償却できるものではなく、月々のキャッシュフローを圧迫し続けます。
さらに、夜間対応、在宅医療、慢性疾患ケアなど“儲からないけど必要な医療”ほどコストがかさむのが現実です。日本病院会による調査では、全国の病院の約7割が医業赤字。その背景には、医療が「命を守る」という公共性を優先し、収益性とのバランスを後回しにせざるを得ないという構造的ジレンマがあります。
加えて、COVID-19以降の感染対策コストや物価高も病院経営に重くのしかかっています。薬剤や医療資材の価格が上昇する一方、診療報酬の改定は鈍く、結果としてPL(損益計算書)の最終利益は年々圧縮されています。
“リターンが遅すぎる投資”──教育にキャッシュが戻らない構造
教育分野もまた、“収支が合わない”と言われがちです。とくに公教育では、国や自治体が学校施設や教員に多額の予算を投入しますが、その回収手段は明確ではありません。
仮に、ある小学校が10億円をかけて改築されたとして、そのROI(投資収益率)はどこに現れるのでしょうか?答えは、30年後に子どもたちが納税者になったとき、もしくは社会課題を回避したとき――という超長期スパンにあります。つまり、教育とは“超長期債券”であり、PLの観点ではほとんど償却不可能な支出なのです。
とはいえ、教育の経済的リターンが低いかといえば、決してそんなことはありません。経済学者ジェームズ・ヘックマンの研究によれば、幼児教育への1ドル投資は、将来的に7〜10ドルのリターンをもたらすとされています。これはハイリスク株よりも高い利回りですが、問題はそのリターンが“キャッシュ”ではなく、“社会全体の生産性向上”として現れることです。
この構造ゆえに、教育は市場のロジックでは“採算が合わない”と判断されがちです。そして、キャッシュフローの観点では“赤字”と見なされ、人的リソースや設備投資が先送りされていくという負のループに陥っています。
測定不能な価値が主役──福祉サービスのジレンマ
福祉の世界では、「どれだけ助けたか」よりも、「どれだけ心に寄り添えたか」が成果の指標になります。しかしこの“寄り添い”には数値化が困難という課題があります。たとえば介護施設では、認知症の高齢者一人に対して複数名のスタッフが対応することもあり、その配置は法律で厳しく決められています。
しかし、ケアの質が上がっても、利用者の“幸福度”が経済的に評価されるわけではありません。ましてや、家族の安心感や地域との信頼関係など、“感情に支えられた成果”はPLに一切反映されないのが現実です。
その結果、福祉はスケールが難しい産業になっています。多店舗展開や効率化が難しく、利用者一人あたりの人件費が一定以上下がらないため、事業としての伸びしろは限定的と見なされがちです。PER(株価収益率)などの市場評価も低く、投資家からの資金流入が進みにくい分野となっています。
“赤字”はむしろ、やさしさの証明かもしれない。
医療も教育も福祉も、PLだけ見れば確かに“赤字”に映ります。でもその中身を解剖していくと、それぞれが 未来のリターンを先に支払っている状態だとわかります。目に見える収益は出ないけれど、社会全体への“複利効果”が水面下で育っている。そのことを会計上でどう扱うか、これこそが次章のテーマ「感情資本会計」の登場理由です。
感情を資産にする──“感情資本会計”という逆転の発想

感情がキャッシュを生む?──“Emotional Capital”という新しい通貨
「信頼」や「共感」はお金にならないと思われがちですが、それは過去の話です。いま世界中の投資家が注目しているのが、“Emotional Capital(感情資本)”という考え方です。これは、従業員や顧客、地域社会との間に築かれる感情的なつながりこそが、継続的な価値創出の源泉になるという視点です。
たとえば従業員のエンゲージメントが高い企業は、離職率が下がり、採用コストも減少します。顧客との信頼関係が厚い企業は、広告費をかけなくても口コミで売上が伸びます。つまり、感情は“見えない収益ドライバー”なのです。
実際、グローバル投資ファンドでは、ブランド忠誠度・従業員満足度・コミュニティとの関係性といった指標を定量評価し、投資判断に組み込む事例が急増中。ロシュマーティン社の研究では、EQ(感情知能)が高い経営層を擁する企業は、そうでない企業に比べて株価リターンが平均13%高いという結果も出ています。
このように、“やさしさ”や“思いやり”は、いまや資産の一部として再評価されつつあります。それを企業の会計にどう組み込むか――それが次に紹介する“感情資本会計”です。
感情を会計に載せる方法──インパクト加重会計という試み
では、どうやって“感情”のようなあいまいなものを数値化し、会計に反映できるのか?その鍵となるのが、Impact-Weighted Accounts(インパクト加重会計)という考え方です。これは、企業が生み出す経済的利益に加えて、環境・社会・人的資本への影響を数値で示すフレームワークです。
たとえばある病院が、看護師の離職率を下げるために人材ケア制度を導入した結果、利用者満足度が向上し、口コミ紹介が増えたとします。その結果として患者数が増加し、寄付金も増えたならば、それはまさに“感情資本の投資効果”です。
こうしたインパクトを、KPI(重要業績指標)として定義し、数値で追いかけることが感情資本会計の第一歩です。たとえば、「利用者の主観的幸福度」「スタッフの職場満足度」「地域イベント参加者数」など、信頼や共感を“見える化”する指標がすでに国内外で導入されています。
さらに、ハーバード・ビジネス・スクールの研究チームは、インパクト加重会計を用いた試算によって「社会に与えたプラス効果が、利益の約1.5倍に相当する企業」すら存在することを示しました。利益は黒字でも、その裏で環境破壊や労働搾取をしていれば、最終的な“純利益”はマイナスになるという逆転の発想も可能なのです。
数字になった瞬間、議論は変わる──企業も自治体も動き出す
数字があると、議論の土俵が変わります。たとえば「感情」はこれまで、会議で「なんとなく大事」とされるだけでした。しかし、数値で出せば、KPIとして追う対象=経営戦略の一部になります。
日本でもすでにいくつかの企業が人的資本や感情資本に関するKPIを導入し始めています。日清食品は従業員の“学習時間”を毎月記録し、人的資産への投資効果を取締役会で議論しています。トヨタ紡織はエンゲージメントスコアを毎年IR資料に掲載し、投資家とのコミュニケーションに活用しています。
自治体でも、福岡市や奈良県が“ウェルビーイング指標”を活用し、住民満足度や地域貢献活動を行政評価に組み込もうとしています。これにより、ただの“赤字”とされてきた福祉・教育の施策が、「住民幸福度の向上」というリターンとして再定義されつつあります。
こうした潮流は、まさに“やさしさ”をPLやBSの言語で語る試みです。しかもこれは単なる理想論ではなく、実際に企業価値を引き上げ、投資先としての魅力を高める効果もある。感情を数えることが、企業や社会の“持続可能な黒字”につながる未来は、すぐそこまで来ているのです。
やさしさをキャッシュに変える──感情資本を活かす実装戦略

“成果に連動する報酬”でやさしさを見える化──SIBという仕組み
赤字を赤字のままにしない。その鍵となるのが、アウトカム連動型ファイナンス(SIB:ソーシャル・インパクト・ボンド)です。これは行政が「成果に応じて支払う」ことを約束し、民間投資家が先に資金を出すというモデル。従来の“やっても報われない”構造をひっくり返す仕組みです。
たとえば山形県西川町では、町内への移住促進を目的にSIBを導入しました。KPI(成果指標)は「移住者数」であり、成果が出れば投資家にプレミアムが支払われます。実際にこのスキームは成功し、投資家には年率5%を超えるリターンが戻っただけでなく、町の人口減少スピードも緩やかになりました。
このモデルを福祉や医療に応用すれば、たとえば「要介護度の改善」「再入院率の低下」「保育士の離職率改善」といった社会的成果を、投資リターンに変えることができます。今までは“費用”として処理されていたケアや寄り添いの行動が、“成果”としてマネタイズされるのです。
英国では、ホームレスの就労支援プログラムにSIBを適用し、3年間で再就職率を35%向上させ、行政コストを1人あたり4000ポンド削減しました。このように、「やさしさ」が具体的なアウトカムに変われば、投資家・行政・現場の三者すべてがWINになる構造が可能です。
複数の資金源を組み合わせる──ブレンデッド・ファイナンスの力
とはいえ、社会課題解決型の事業は“収益性が見えにくい”という理由で、投資家が躊躇する場面も多い。そこで注目されるのがブレンデッド・ファイナンスです。これは、公的資金・財団・民間投資をリスク分担で組み合わせ、民間の資金流入を呼び込む手法です。
たとえば台湾の地方創生ファンドでは、リスクの最初の10%を政府系ファンドが引き受け、次の20%を地方銀行が保障することで、民間VCが安心して参入できる仕組みを作りました。結果として、1円の公的資金が6円以上の民間資金をレバレッジするという成果につながりました。
教育領域では、MOOC(大規模公開オンライン講座)企業と自治体がタッグを組み、職業訓練とローンの組み合わせを設計。受講修了が一定以上であれば利息が減額されるなど、学びそのものに金融的インセンティブを乗せることで、意欲と回収率の両立を実現しました。
つまり、“やさしさを支えるための資金調達”も、工夫次第で収益性を生み出すのです。社会に必要だが資金が集まりにくい分野こそ、ブレンデッドな資金設計で多様なステークホルダーを巻き込むことが必要なのです。
感情をKPIに変える──データが動かす次の会計
最後に重要なのが、データによる感情価値の可視化です。数値化されれば、それはKPIになり、投資や予算の意思決定を動かします。たとえば厚労省の調査によると、患者満足度が高い病院ほど、紹介件数や寄付金額が明らかに増加するというデータがあります。
また、看護師の離職を1人防ぐだけで、病院は約500万円のコスト削減になります。これは採用・育成・研修・離職後の引き継ぎロスなどを加味した数字。これをIR資料で「感情資本の投資効果」として提示すれば、ESG投資家の注目も集まるでしょう。
さらに、「職場の信頼度スコア」「保育園の保護者満足度」「福祉施設の地域連携イベント数」などをKPI化し、PLやBSに“非財務セクション”として組み込むことで、“やさしさの成果”を定期的に評価・報告する仕組みが整います。これはすでに、一部のグローバル企業で導入が始まっており、日本でも公的機関やNPOが実装を試みています。
このように、感情を“ふわっとした印象”で終わらせるのではなく、数値と文脈を組み合わせて記述することで、“見えない価値”が“意思決定の材料”に変わるのです。
これこそが、“やさしさをキャッシュに変える”ための最後のピースなのです。


結論──やさしさは、未来からの配当である
“やさしい世界”が赤字になるのは、それが利益を生まないからではなく、未来に向けてすでに投資を始めているからです。医療も教育も福祉も、その場で見えるキャッシュは少ないけれど、私たちの健康や希望、尊厳という形で、未来にわたって複利で回収されていきます。
本来、会計とは「過去の数字」ではなく、「これからの意志」を映す鏡であるはずです。もしもその会計に、あなたが誰かのために払った時間や、あたたかいまなざしが“資本”として記録されていたとしたら――そのバランスシートは、きっと黒字の未来を約束してくれる。
赤字を見て心を曇らせるのではなく、「これは社会の自己投資だ」と信じられる視点を持てたとき、世界はほんの少しだけ優しく、そして力強く見えてくるはずです。
数字で測れないものを、私たちはずっと軽んじてきた。でもこれからは違う。やさしさこそ、もっとも確実で、もっとも回収率の高い“配当”なのだから。
あなたの今日の一歩が、誰かの明日の光になる。その連鎖を、数字の力で証明していけたら――きっとこの世界は、“やさしさが採算に合う社会”へと変わっていけるのです。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
働く人のための感情資本論
パワハラやメンタルヘルス問題を背景に、「職場の感情」がどのように資本化されうるかを社会学の視点で分析。感情資本会計の考え方を深く理解するうえで最適。
インパクト投資:社会を良くする資本主義を目指して
インパクト投資の創始者による代表作。入門から応用まで、実践と理論を網羅し、経済と社会を両立する資本主義の可能性を示す一冊。
インパクト投資入門
インパクト投資を事例豊富に紹介した日経文庫の入門書。ESGやCSRとの違いや市場動向が整理されており、会計視点と社会性の接点を学ぶ基礎資料に。
社会を変えるインパクト投資
国内外の動向とともに実践的ケーススタディを多数収録。事業設計や資金調達の具体的アプローチを知りたい方に。
会計・ファイナンスの基礎・基本
感情資本会計やSIB、ブレンデッド・ファイナンスを“会計の言葉”で理解するための基礎と応用が整理された一冊。数字の構造を俯瞰的に把握できます。
それでは、またっ!!

コメントを残す