みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
“人件費が見える”だけで、建設株の見え方まで変わるって知ってましたか?
公共工事の見積って、「いくらで請けたか」は見えても、「その中の人件費がどれだけ確保されたか」は意外とブラックボックスでした。ところが国土交通省は、官庁営繕の“公共建築工事積算基準類”を改定し、鉄筋・型枠について労務費や材料費などの内訳が把握できる「単位施工単価」を導入。さらに内訳書・見積書の標準書式にも、労務費等を書き込める欄を追加しました。適用は令和8年(2026年)1月以降に入札手続きを開始する工事から。つまり、公共工事が「人件費の中身」をちゃんと書かせる時代に入ります。
背景にあるのは、慢性的な人手不足と賃上げ圧力です。人件費を“見える化”しないと、現場で必要な賃金・法定福利が薄まり、結果的に工期遅れや品質リスクとして跳ね返ってくる。だから発注者側も、適正な労務費が確保された予定価格を組める仕組みに寄せてきた、という流れ。FAQでは「単位施工単価」を“労務費等の内訳を把握できるようにした単価”と整理し、労務費の基準値(標準労務費)という言葉も出てきます。
この変更、現場の事務手間が増える…で終わりません。会計×投資の視点で見ると、“原価の闇”にライトが当たり、利益の置き場所が変わる可能性があるからです。これまで「材工一式」でぼやけていた領域が分解されれば、下請けは賃上げや法定福利を理由にした値上げ交渉をしやすくなる。一方、元請けは採算管理を「どんぶり」では回せなくなり、原価差異(予定と実績のズレ)がPLに直撃しやすくなります。公共単価の上振れが起きれば、関連する労務・資材・建設DXまで、セクター連鎖で“勝ち組/負け組”が出る。
この記事では、①何がどう変わるのか(単位施工単価と書式改定のポイント)、②建設会社の粗利とキャッシュフローにどんな再配分が起きるのか、③投資家としてどこを見れば“勝ち筋”と“落とし穴”を見分けられるのか——を、専門用語はできるだけ避けて解きほぐします。鉄筋・型枠は工事原価のコア領域。ここが透明になると、現場も決算も、意外と派手に動きます。読み終える頃には、ニュースの一行が「決算の数字」と「株価の連鎖」に変換できるはずです。
制度変更の要点――「単位施工単価」って結局なに?

公共工事の積算って、ざっくり言うと「発注者が予定価格を作るための“公式レシピ”」です。今回、国交省(官庁営繕)がそのレシピをアップデートして、鉄筋・型枠の単価を“材工一式のどんぶり”から、労務費・材料費などの内訳が追える形に変えました。さらに内訳書・見積書の標準書式にも労務費等の記載欄を追加。適用は2026年1月以降に入札手続き開始の工事からです。つまり、これからの公共建築は「人件費がいくら入っているか」を前提に話が進みます。
何が変わった?――“市場単価”から“単位施工単価”へ
これまで鉄筋・型枠は、元請と下請の取引調査などを元にした市場単価(材工一式)が軸で、労務費・材料費・下請経費が混ざった状態でした。そこで新登場したのが単位施工単価。FAQでも「労務費等の内訳を把握できるようにした単価」と定義されています。要は、単価の中身を“分解”して見えるようにする仕組みです。
たとえば同じ「型枠」でも、単価の中に“何人がどれだけ動く想定か”“材料はどれだけ使う想定か”が織り込まれ、説明しやすくなる。発注側は「労務費が極端に薄い見積」を見抜きやすくなり、受注側も“説明できる原価”が求められます。
どうやって作る単価?――ベース単価と地域の「労務費の基準値」
建設の単価は「感覚」ではなく、積み上げのルールが重要。報道・解説では、代表的な仕様を想定したベース単価を設定し、労務費は地域ごとの公共工事設計労務単価などを使って算定、材料費も材料単価×歩掛で積み上げ、機械器具経費や下請経費も足していく——という流れが示されています。
ここで効いてくるのが、FAQにある労務費の基準値(標準労務費)という考え方。単価の土台に「適正な労務費の水準」を埋め込むので、“人件費だけ削って帳尻合わせ”がしにくくなります。
会計で言えば、原価のうち「変動しやすい人件費」を、制度側が“最低限の説明ライン”として固定化しにきたイメージです。
書類も変わる――内訳書・見積書に「労務費欄」ができる意味
地味だけどインパクトが大きいのが書式改定。国交省は、内訳書標準書式・見積標準書式に労務費、材料費等の記載欄を追加し、内訳の把握をしやすくするとしています。
さらに「積算基準等資料」側でも、改定後の運用や、鉄筋・型枠に関する単価調整(補正単位施工単価の算定方法など)を追記したと整理されています。
これが何を意味するかというと、現場だけでなく“決算の作り方”も変わる可能性があるということ。実行予算で鉄筋・型枠の労務を見える形で押さえないと、差異(予算と実績のズレ)が出たとき原因が追えない。逆に言えば、ここを早く仕組み化できる会社ほど、粗利を守りやすい。次のセクションでは、この“見える化”が粗利の再配分(元請⇄下請、企業内の部門間)をどう動かすのか、もう一段だけ踏み込みます。
粗利の再配分――“値上げ交渉”が正面から通る世界になる

人件費の内訳が見えるようになると、建設の利益配分は「強い人が取る」から「説明できる人が取る」に寄っていきます。今回の改定は、鉄筋・型枠で労務費等の内訳を把握できる単価(単位施工単価)を入れ、内訳書・見積書の標準書式にも労務費等の記載欄を追加する、というもの。ここが整うと、値上げの根拠と、採算悪化の原因が“数字で言える”ようになります。
下請けは「賃上げ」を武器にできる――交渉の土俵が変わる
鉄筋・型枠は人手依存が大きい領域。これまで「材工一式」だと、賃金アップ分がどこに埋もれたかが曖昧で、下請けの言い分が“お願いベース”になりがちでした。
でも単位施工単価は、FAQでも「労務費等の内訳を把握できるようにした単価」とされ、労務費の基準値(標準労務費)という考え方も出てきます。
つまり「人件費がこの水準を割ってる見積は、そもそも無理があるよね」という前提ができる。下請けからすると、値上げ=悪ではなく、値上げ=適正化として話が通りやすくなります。
元請けは“どんぶり採算”が通用しない――実行予算と差異管理が命
一番刺さるのは元請け側です。公共工事は基本的に契約金額が決まると、途中で自由に上げにくい。なのに労務費の確保が前提になると、現場での“人の取り合い”や賃上げで原価が膨らんだ瞬間、粗利が溶けます。
ここで重要なのが会計的に言う「差異管理」。
- 見積段階の労務想定(歩掛)と実績のズレ
- 協力会社単価の改定(どの工種が跳ねたか)
- 工期遅れによる間接費の増加
これを週次で追える会社は守れるけど、「終わってみたら赤字でした」型は一気に苦しくなる。書式に労務費欄が入るのは、採算の説明責任が“現場→会社全体”に広がる合図です。
投資の見どころ――“単価上振れ”の恩恵は誰が取る?
投資目線だと、「公共単価が上がる=建設株が全部上がる」みたいな単純な話にはなりにくいです。利益の移り方はこうなりがち。
- 取りやすい:鉄筋・型枠など専門下請け(単価交渉が通りやすい)/省人化やプレハブ・加工で生産性を上げる会社
- しんどい:固定価格・長工期案件が多く、原価上振れをかぶりやすい元請け(採算管理が弱いほど痛い)
- 面白い周辺:原価管理・出来高管理を“仕組みで回す”建設DX(見える化が進むほど導入理由が強くなる)
ポイントは、「内訳が見える化するほど、コストを説明できる側に利益が寄る」こと。公共が先に動くと民間も追随しやすいので、連鎖の起点として見ておくと強いです。
勝ち組の条件――“見える原価”時代に伸びる会社の見分け方

人件費の内訳が見える化すると、建設業は「受注が多い会社」より「原価を設計できる会社」が強くなります。単位施工単価の導入や、内訳書・見積書に労務費等の欄が追加されることで、予定価格〜見積〜実行予算〜請求までが“つながる”方向に進むからです。
ここから先、勝ち組・負け組を分けるのは、気合いや営業力ではなく、数字の扱い方。投資家がチェックすべき「伸びる会社の匂い」を、会計×現場で整理します。
粗利を守れる会社は「原価が説明できる」――見積→実績の一致度
一番シンプルな見分け方はこれです。
“見積の粗利”が“実績の粗利”として残りやすい会社が強い。
見える化が進むほど、「なぜこの単価なのか」「なぜズレたのか」を言語化できない会社は、値上げ局面で置いていかれます。具体的には、次の仕組みがあるか。
- 工種別(鉄筋・型枠など)で実行予算を持っている
- 出来高・進捗とセットで週次で原価差異を見ている
- 赤字兆候が出たら、追加人員や段取り替えを“数字で判断”できる
これができる会社は、同じ単価環境でも粗利が安定し、決算のブレが小さくなります。逆に、案件が増えるほど粗利が不安定な会社は、見える化時代に「赤字案件が可視化されるだけ」になりがちです。
キャッシュに強い会社が勝つ――“黒字倒産リスク”が上がるから
賃上げや協力会社単価が上がると、PL(損益計算書)より先にBS(貸借対照表)とCF(資金繰り)が苦しくなることがあります。理由は単純で、支払いが先に増えるから。
見える化で労務費を厚めに確保する流れになれば、前払い・中間払いの負担や、未成工事支出金(仕掛)の膨らみ方が会社ごとに差が出ます。ここで強いのは、
- 手元資金に余裕がある(短期借入に頼りすぎない)
- 回収条件が良い/出来高請求をきれいに回せる
- 下請けへの支払い設計(サイト)が現実的で、関係が切れにくい
「粗利があるのにお金がない」会社は、単価上振れ局面で一気に危うくなる。投資では、営業CFや運転資本の増減もセットで見ると、実力差がはっきり出ます。
伸びるテーマは“省人化”と“内訳対応”――DX・工法・人材の三点セット
単位施工単価や労務費欄の追加は、極端に言えば「人に依存する工程」をそのままにすると、利益が取りにくくなる合図でもあります。そこで伸び筋になりやすいのが、次の3つを同時に回せる会社です。
- 省人化できる工法・加工:プレハブ化、工場加工、段取りの標準化などで“人時”を削る
- 内訳対応できる管理:工種別に労務・材料・外注を分けて管理し、説明できる原価にする
- 人材の確保:結局、現場は人。教育・定着・協力会社ネットワークを維持できる
ここが揃うと、「単価が上がったら儲かる」ではなく、「単価が上がっても“さらに残せる”」状態になります。公共が先に見える化を進めると、民間発注にも波及しやすいので、早く体制を作った会社ほど先行者利益が出やすいです。
結論
今回の改定は、「書類が増える」みたいな話に見えて、実はもっと深いところを揺らします。公共工事が“人件費の内訳”を前提に動き出すということは、建設の価値を「安く早く」だけで測りにくくなる、ということだからです。適用は2026年1月以降に入札手続き開始の工事。ここから先、鉄筋・型枠のような現場のコア工程で「人をいくらで使うか」がぼやけたままだと、予定価格の思想とも、現場の実態ともズレが出ます。ズレが出れば、遅れ・手戻り・離職という形でコストが爆発する。だから“見える化”は、現場を守るための現実的な一手でもあります。
そして会計×投資の視点では、この見える化は「利益の移動」を起こします。説明できる原価を持つ下請けは、賃上げや法定福利を“根拠あるコスト”として提示できる。元請けは、どんぶり採算が通用しなくなり、実行予算と差異管理の精度がそのまま粗利の強さになる。さらに、単価が上がる局面で勝つのは、単に受注が多い会社じゃない。粗利が残り、キャッシュが回り、生産性で人時を削れる会社です。
結局、この制度変更が突きつけているのは「人に払うべきものを払ったうえで、どうやって利益を出すか」という問い。答えを出せる会社は、現場の信頼も、決算の安定も、投資家の評価もまとめて取りにいける。見える化は怖い。でも、見えるからこそ変えられる。2026年を境に、建設の“強さ”の定義は、静かに更新されていきます。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『令和7年版 公共建築工事積算基準』
「公共工事の予定価格って、結局どのルールで作られてるの?」を一発で腹落ちさせる“本丸”。今回の記事テーマ(積算基準改定/内訳の見える化)を、条文っぽさではなく実務の地図として掴みたい人に刺さります。目次を追うだけでも、ニュースが“制度の構造”に変わります。
『建築工事積算実務マニュアル2025(令和7年度版)』
「単価の中身(労務・材料・複合単価)」を、現場で使う形に落とし込むならこれ。公共工事設計労務単価や材料単価を使った積算の感覚が身につくので、見積・内訳の読み解きが一気に現実味を帯びます。“見える化された人件費”を数字として扱えるようになりたい人向け。
『2024年改訂 建設業会計提要』
建設業の会計は、製造業のノリで読むとズレます。この本は、工事原価・出来高・未成工事支出金など、建設業特有の決算の骨格を「標準の型」として押さえられるのが強み。元請の採算管理や決算の読み解きで迷子になりたくない人は、ここを土台にするとブレません。
『建設業者と行政書士のための 建設業財務諸表の最強ガイド』
“数字の見せ方”が資金繰りや信用に直結するのが建設業。これは、建設業財務諸表(建設業ならではの様式)をどう作り、どう読まれるかにフォーカスした実務本です。会計×投資の観点でも、決算書のクセを理解するのに役立ちます。
『第3版 建設業の会計・税務ハンドブック』
「会計は分かった。でも税務まで絡むと結局どっちが正解?」となりがちな人に効く一冊。建設業で論点になりやすい処理を、会計と税務の“現実的な落としどころ”で整理してくれるタイプなので、経理・管理部門だけでなく、経営側が読んでも判断が速くなります。
それでは、またっ!!
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