固定電話は“化石燃料”になった——メタル回線の維持費、最後に払うのは誰?

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

あなたの固定電話、その番号は“資産”ですか?それとも、静かに増える“負債”ですか?

「固定電話の基本料が上がるらしい」――この一言、正直“また値上げか…”で終わらせると損します。なぜなら今回の話は、単なる通信料金の改定というより、古いインフラ(メタル回線=銅線)を畳むための“撤退戦の後始末”に近いからです。

NTT東西は、メタル設備を使う「加入電話」「加入電話・ライトプラン」の回線使用料(基本料)を2026年4月1日利用分から値上げすると発表しました。上げ幅は住宅用で月+220円、事務用で月+330円。理由はシンプルで、使う人は減る一方なのに、設備は古くなり、維持・修理のコストが上がっていくから。

ここで大事なのは、“残る人ほど負担が増える”構造です。利用者が減ると、インフラの固定費(電柱・管路・交換機・保守人員など)を割る母数が小さくなる。すると最後まで残ったユーザーにコストが寄ってくる。これが、あなたの言う「ラストユーザー課金」です。しかもNTTはメタル回線を段階的に光・モバイル系へ移行していく方針も示していて、将来的にはメタル設備の維持が限界に近づく見立ても出ています。

投資や会計っぽく言い換えるなら、メタル回線は今、“維持費だけ出ていく老朽資産(ストランデッド化しやすい資産)”になりつつある状態。もう伸びない事業の固定費を、誰がどう負担するか――それが料金表に現れてきた、という話です。

この記事では、

  • そもそも何が値上がりして、どこが対象なのか
  • なぜ「通信料金」ではなく「撤退戦の後始末」に見えるのか
  • これから私たちが取れる現実的な選択肢(移行・注意点)

を、噛み砕きます。

何が値上げされるの?「固定電話=全部」じゃない

「固定電話が値上げ」と聞くと、つい“家の電話は全部高くなる”と思いがち。でも今回の中心は、昔ながらの銅線(メタル回線)を使う 「加入電話」「加入電話・ライトプラン」 の“回線使用料(基本料)”です。適用は 2026年4月1日利用分から。ここを押さえるだけで、ニュースの見え方がかなり変わります。

対象は「メタル回線の加入電話」:あなたの回線はどっち?

今回の値上げ対象は、いわゆる“昔ながらの固定電話”。電話線(銅線)で局とつながっているタイプです。逆に、光回線やモバイル回線を使う代替の電話サービス(光・ワイヤレス固定電話など)は、今回の「加入電話の基本料値上げ」とは別枠で語られています。まずは「自分がどの方式か」を切り分けるのが先。

見分け方はシンプルで、毎月の明細(Web明細や紙の請求書)の“基本料/回線使用料”の欄に 「加入電話」や「加入電話・ライトプラン」 と書かれていたら、今回の話のド真ん中です。NTT西日本の案内ページでも、2026年4月1日から改定になることが明記されています。

値上げ幅は一律:住宅+220円、事務+330円(目安が掴める)

上がる額は分かりやすく、住宅用が月+220円、事務用が月+330円。この“上げ幅”が一律で乗るイメージです。実際の月額は地域区分や回線の種類(ダイヤル/プッシュなど)で元の金額が違うのですが、「上がる分」は同じなので、家計・経費への影響がすぐ計算できます。

具体例として、NTT西日本の発表では(取扱所の区分によって差はあるものの)住宅用 1,760円→1,980円、事務用 2,640円→2,970円 といった改定例が示されています。「なるほど、このくらい上がるのか」と肌感が持てるはず。

手続きは不要。でも“詐欺の入口”になりやすいので注意

今回の料金改定は、基本的に 利用者が何か申し込む必要はありません。2026年4月1日利用分から自動で反映される、とNTT東日本も案内しています。つまり「手続きが必要です」と電話や訪問で言われたら、まず疑ってOK。

しかも、メタル回線は今後「光・モバイルへ段階的に移行」していく流れが公式に語られています。移行期は、どうしても“それっぽい勧誘”が増えます。基本は 公式の案内(書面・公式サイト)を起点に動く。これだけで、ムダな契約やトラブルをかなり避けられます。


ここまでで「値上げの対象」と「自分ごと化する方法」は整理できました。次のセクションでは、あなたの尖りテーマど真ん中、なぜこれは通信料金というより“インフラ撤退戦の後始末”に見えるのかを、会計・コスト構造の目線で噛み砕いていきます。

これは「通信料金」じゃない。“インフラ撤退戦の後始末”が見えてきた

値上げのニュースを「また固定電話が高くなるのか」で終わらせると、核心を見落とします。今回の本質は、メタル回線(銅線)という“古いインフラ”を維持し続けること自体が限界に近づいていて、そのコスト配分が料金ににじみ出てきた点にあります。

利用者が減るほど高くなる:固定費の「割り勘」が崩れる

メタル回線の維持費って、ざっくり言うと「使った分だけ増える電気代」みたいな変動費ではなく、ある程度“持っているだけで発生する固定費”が大きいです。たとえば、設備点検、故障対応の体制、部材の確保、現場に出る人員、交換機や局舎など。

ここで厄介なのが、利用者が減ると固定費の割り勘が効かなくなること。

  • 100人で割っていたコストを
  • 50人で割ることになる

つまり、残る人が増分を背負う。これが「ラストユーザー課金」の構造です。今回の値上げ理由としても、メタル設備の老朽化に伴う維持コストが背景にあると報じられています。

会計で見ると「伸びない資産」:維持費だけが重くなる“老朽インフラ”

投資・会計っぽく言うと、メタル回線は今、**成長投資の対象ではなく“延命コストの対象”**になりやすい局面です。設備は古くなるほど壊れやすいし、部品も手に入りにくくなる。すると「修理の単価」や「保守の手間」が上がっていく。

しかも市場としては、固定電話を新規で引く人は増えにくい。ここがポイントで、売上が伸びないのに、コストは上がる形になりがちです。企業会計の感覚で言えば、こういう資産は「将来の利益を生みにくい」ので、いずれ“たたむ判断”が出てきます。

実際、NTT東西はメタル回線の仕組みから、光・IPなど新しい仕組みへ段階的に移行していく方向性を示しています。
この流れの中で起きるのが、撤退コスト(維持しながら縮めるコスト)の問題。撤退って「やめます」で終わりではなく、“やめるまでに発生するお金”が一番痛いんです。今回の値上げは、その痛みが料金表に出てきたもの、と見ると腑に落ちます。

残る人ほど不利になる理由:選択肢が少ない人が最後に残る

もうひとつ、モヤっとする現実があります。最後まで残りがちなのは、

  • 高齢でスマホ・IP電話が不安
  • 施設・店舗で固定番号が必要
  • 住環境的に光が入りにくい
    みたいに、“移行しづらい人”であることが多い点。

だからこの値上げは、消費者心理として「使い続けたい人が払う」以上に、“移れない人が払う”に近く見える。ここが尖りポイントで、単なる料金改定ではなく、インフラ縮小の“後始末”の色が濃くなります。

ただし悲観だけではなく、ここから先の論点は「じゃあ私たちはどう動く?」です。次のセクションでは、今すぐできる現実的な選択肢(移行の考え方/注意点/コストの見方)を、初心者向けに具体例で整理します。

じゃあどうする?“ラストユーザー課金”に飲まれない現実的な選択肢

ここまでで見えたのは、「固定電話が高い」ではなく、メタル回線を畳む途中で“残る人にコストが寄る”という構造でした。
じゃあ私たちは、どう動けばいいのか。ポイントは“解約か継続か”ではなく、自分の用途を棚卸しして、損しない出口を選ぶことです。

まず棚卸し:「固定電話が必要な理由」を3つに分ける

初心者ほど、ここを飛ばして勧誘トークに乗せられがちです。固定電話が必要な理由は、だいたい次の3つに分解できます。

  • 番号が必要(名刺・取引先・家族の連絡先として定着している)
  • 機器が必要(FAX、ドアホン、警備・見守り、店舗の機器など)
  • 安心が必要(“何かあったときの連絡手段”として残している)

このうち「安心が必要」だけで残しているなら、選択肢は一気に広がります。逆に「機器が必要」だと、移行前に対応可否の確認が必須です(FAXや周辺機器は方式によって相性が出ることがある)。

そしてここが会計っぽい視点。固定電話は、月々の基本料だけじゃなく、移行の初期費用・機器代・工事・手間まで含めた“総コスト”で判断すると失敗しません。

選択肢は大きく3つ:払って残す/乗り換える/番号だけ守る

現実的には、次の3ルートです。

  • A:メタル回線を継続(値上げを受け入れる)
    “今のままが一番ラク”が最大のメリット。特に高齢の家族が使う、手続きが面倒、移行が怖い場合は、値上げ分を**「安心の固定費」**として割り切るのもアリです。ただし、利用者が減るほど割り勘が崩れる構造なので、長期では負担増リスクが残ります。
  • B:光・IP系の電話に移行(ネット回線とセットで見直し)
    メタル回線を段階的に移行していく流れ自体は公式にも語られています。
    ただ、ここは“安くなるはず”と決めつけないで、①ネット代+②電話オプション+③機器(ルーター等)+④工事を合計して比較するのがコツ。月額が少し下がっても、初期費用で逆転することがあります。
  • C:番号の価値だけ残す(周知・転送・名刺の更新を計画する)
    ビジネスだと固定番号は“信用の資産”になりがちです。ここをゼロにすると、見えない損(機会損失)が出ることも。
    だから「いきなり解約」ではなく、周知期間を作る/名刺やWebを更新する/一定期間は転送など、“出口戦略”を組むのが正解です。投資でいう「撤退ルール」を先に決めるイメージですね。

最後に落とし穴:勧誘・詐欺と「手続き不要」問題

今回の改定は、基本的に利用者側で特別な申込みが必要な話ではありません。だからこそ、

  • 「今すぐ手続きしないと止まる」
  • 「値上げ前に切替が必須」
    みたいな圧の強い勧誘には注意。公式の書面・公式サイトを起点に動くだけで、トラブル確率はグッと下がります。

固定電話の値上げは、“通信の値上げ”というより、インフラの世代交代に伴うコストの再配分です。残る・移る・畳む、どれを選んでもOK。ただ、選ぶ前に「自分の用途」と「総コスト」を見える化すれば、ラストユーザー課金に振り回されません。

結論

結局のところ、今回の固定電話の基本料値上げは「電話が贅沢になった」という話ではありません。もっと静かで、もっと現実的な話――つまり、社会全体が長年使ってきたメタル回線というインフラを、少しずつ畳んでいく過程で起きる“後始末”です。

インフラって、平和に使えているときほど存在を忘れます。でも老朽化すると、突然「維持にはお金がかかります」と顔を出す。しかも利用者が減れば減るほど、割り勘の人数が減って、残った人の負担が増える。これが“ラストユーザー課金”のつらいところです。

だから、ここから先に必要なのは「怒る」よりも「設計する」こと。
あなたの固定電話は、

  • “番号が資産”なのか(仕事・取引先・家族に浸透している)
  • “機器が必要”なのか(FAXや設備がぶら下がっている)
  • “安心を残したい”だけなのか(連絡手段の保険)
    このどれが中心なのかを、いったん言葉にしてみてください。ここが決まるだけで、選択肢は驚くほど整理されます。

そして、初心者でも失敗しないコツは「毎月いくら」だけで決めないこと。移行するときは、月額だけでなく、工事・機器・手間まで含めて比べる。畳むときは、いきなり解約せず“周知期間”を置いて、名刺やWeb、家族の連絡先を更新して、信用と安心を取りこぼさない。

ここで、今日できる“3分チェック”を置いておきます。
1)請求書(Web明細でもOK)で「加入電話」「ライトプラン」の表記があるか確認
2)固定電話の役割を上の3分類で丸をつける(番号/機器/安心)
3)「この番号がなくなると困る人」を3人だけ思い浮かべる(家族、取引先、顧客など)
これだけやると、次の一手が“勧誘の都合”じゃなく“自分の都合”で決められるようになります。

会計っぽく言うなら、いま問われているのは“毎月の基本料”ではなく、固定電話という資産をいつまで保有するかです。保有し続けるなら、値上げ分は維持費として受け止める。移るなら、総コストで比べる。畳むなら、撤退ルール(周知→転送→解約など)を先に決める。どれも正解。大事なのは、何も決めないまま、最後の最後まで“割り勘の人数が減る側”に残らないこと。

固定電話は、いまや“化石燃料”みたいな存在になりました。昔は当たり前で、便利で、社会の標準だった。でも時代が進むほど、維持が難しくなり、使い方も変わっていく。そんなときに大切なのは、懐かしさで握りしめることじゃなく、必要な価値だけを持ち出して、次の形に引っ越すことです。

値上げのニュースは、ちょっと冷たい。けれど裏返せば、私たちに「選び直す自由」が残っているサインでもあります。あなたの電話、あなたの家計(あるいは経費)、そしてあなたの安心――その全部を守るために、今日だけは明細を開いてみてください。そこから先は、意外とシンプルです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『インフラメンテナンス大変革 老朽化の危機を救う建設DX』

「老朽化でお金がかかる」の“お金の正体”を、現場のリアルで理解できる一冊。固定電話のメタル回線も、結局は点検・修理・部材・人で回っています。ニュースを読んだときに「維持コストって具体的に何?」が腹落ちして、インフラの値上げが“他人事”じゃなくなります。


『インフラ・レジリエンス 暮らしと環境を守るために』

電気・水道・ガス・通信などの公益インフラが、人口減・財政・老朽化とどう向き合うかを、難しすぎない言葉で整理してくれる本です。「残る人ほど負担が増える」みたいな話が、通信だけの特殊事情ではなく、社会の構造として見えてきます。


『電気通信事業法逐条解説 再訂増補版』

固定電話・通信サービスは、完全な自由市場ではなくルール(法律)で設計されています。この本は「条文ごとに、何を狙っているルールなのか」を追えるので、料金改定や制度変更のニュースに触れたとき、感情論ではなく「制度としてそうなる理由」を説明できるようになります。

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『究極のコスト構造改革(コストトランスフォーメーション) ケースで学ぶ 調達・投資・企業体質の強化』

この記事のキーワード「固定費」「撤退戦」「後始末」を、ビジネスの現場で使える“考え方”に変換してくれる本。コスト削減が「気合い」になりがちな人ほど、読み終わる頃にはどこにメスを入れるべきかの優先順位が見えるようになります。インフラでも会社でも、最後は“体質”の問題だと気づかされます。


『価格のマネジメント 戦略・分析・意思決定・実践』

「値上げ=悪」と決めつける前に、価格って本来どう決めるのかを学べる一冊。固定電話の値上げも、突き詰めると“誰がどのコストを負担するか”の設計です。価格の仕組みが分かると、ニュースの見出しに振り回されず、家計・経費の意思決定が速くなります。


それでは、またっ!!

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