みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
その“開封のワクワク”、実は在庫コストを飲み込んでない?
2026のヒット予測ワードに「ブラインドボックス(中身ランダム)」が入ってきた。 “またガチャっぽいやつ?”で片づけると、たぶん一番おいしい部分を見落とす。
小売って、売上より先に在庫が立つ。仕入れて、並べて、売れ残ったら値引き。最悪、棚卸資産の評価を下げて損になる。会計の言葉でいうと、在庫は資産だけど「売れなかった瞬間に爆弾へ変わる」やつ。実際、国際基準でも在庫は“原価と正味売却価額の低い方”で測るので、売れ筋を外すと評価損が出る構造になってる。 日本基準でも棚卸資産の評価について基準が整備されていて、売れ残りや収益性低下はちゃんと会計に刺さる。
ここでブラインドボックスが発明っぽく見えてくる。
普通の商売は「人気Aが足りない/不人気Bが余る」という偏りで、店側が胃を痛める。でもブラインドは“選べない”。つまり偏り(当たり外れ)を、購買体験のルールとして客側へ移せる。在庫の偏りを、値引きじゃなくて“開封のドキドキ”に変換するわけ。ここ、尖ってる。
しかも「不確実性」は、人を動かす。ランダム報酬が行動を強化しやすい、という話はガチャ文脈でも語られてきたし、ブラインドボックス自体を“不確実性マーケティング”として扱う研究も出ている。
だからこそ、在庫リスクの転嫁がスムーズに起きる。客は“欲しいものを選んで買う”代わりに、“開ける快感”を買う。その快感が、在庫という現実の痛みを相殺してしまう。
ただし万能ではない。偏りを移した分だけ、「被り」や「当たらない」不満も生まれる。高単価になるほど反発が強まる、という指摘もある。
この記事では、ブラインドボックスを感情の話で終わらせず、小売の敵=在庫をどう“運ゲー化”して利益構造にしているのかを、会計と投資の視点でほどいていく。読後には、
- なぜ同じ商品でも「ランダム化」すると粗利が守られやすいのか
- 在庫評価・値引き・キャッシュの見え方がどう変わるのか
- どこからが“炎上コスト”になり得るのか
が、一本の線でつながるはず。
目次
在庫の“偏り”を、箱のルールで消す

ブラインドボックスが面白いのは、「売れる理由」がセンスとか流行だけじゃなくて、小売の構造バグ(在庫の偏り)に刺さってるところ。
Yahoo!のトレンド予測でも、ブラインドボックスは“中身が見えない同一外観の箱で売る方式”として整理されていて、まさにこの“選べない設計”が主役になってる。
人気の偏りを、最初から起こさせない(SKU地獄の回避)
通常のグッズ売りは、Aだけ飛ぶ/Bだけ残る、が起きる。これ、仕入れが同じでも「棚の見え方」で差が出るからやっかい。
でもブラインド形式だと、購入者は外から選べない。結果として特定デザインだけが先に消える現象が起きにくい。企画側もそれをメリットとして明言している。
ここでのポイントは「在庫が減る」よりも、在庫が偏らないこと。
偏らない=値引きで救済する在庫が減る。地味だけど利益に直結するやつ。
在庫リスクを“顧客体験”へ移す(店の胃痛を軽くする)
ブラインドって、言い方を変えると「当たり外れの不確実性」を買わせる仕組み。
だから、店が本来抱えるはずの“売れ残りの不安”が、購買側の“開けるワクワク”に置き換わる。
しかも玩具領域では、ホリデー商戦で大手小売(TargetやWalmartなど)がブラインド系を増やしている、という報道も出てる。複数買いを誘発しやすいのが理由のひとつとして語られていた。
複数買いが起きると、店側のメリットは単純で、回転が上がる。回転が上がると、在庫の滞留が減る。滞留が減ると、値引きも減る。
この流れ、きれいに繋がる。
会計で見ると「評価損の芽」を摘みやすい
在庫は会計上“資産”だけど、売れない気配が出た瞬間に厳しくなる。
IFRS(IAS2)では、棚卸資産は回収できないと見込まれる場合に正味実現可能価額まで評価減する考え方が整理されている。
日本でも、棚卸資産の評価に関する会計基準があり、評価方法や開示の枠組みが定められている。
ブラインドの強みはここで、
「どれが不人気か」が表面化しにくい=値下げ圧が出にくい。
もちろん、現実には市場価格や需要が落ちれば評価減は逃げられない。だけど、少なくとも「店頭でBだけ余ってるのが見える」みたいな、いちばん早くダメージが出る形を避けやすい。これが“在庫リスクを快感で相殺する”の会計的な顔。
そして次の論点に行く。
偏りを消すだけじゃない。ブラインドボックスは、粗利の守り方そのものを変えてくる。
粗利が“削られにくい”仕組みが、最初から埋め込まれてる

ブラインドボックスを会計っぽく見ると、いちばん刺さるのはここ。
値引きで粗利が溶ける展開を、構造で遠ざけてる。
「売れ残りそうだから最初から安くする」じゃない。
「買う理由(ワクワク・レア・収集)を価格に乗せて、定価で回す」って発想に寄ってる。
値引きに頼らない=粗利の“守備範囲”が広い
ブラインドって、同シリーズは基本的に“同一価格”で売れる。
中身ごとに価格を変えないから、店頭で「この子だけ不人気でワゴン行き」みたいな空気が起きにくい。
実際、ブラインドボックスの“レア設計・品揃え設計・価格設計”が、単品売りより利益が出やすい条件を整理した研究もある。
要は「レアのプレミア(期待値)」があると、同じ値段でも買う動機が残る。
値引きって一回やるとクセになる。
ブラインドはそのクセをつけにくい。ここが強い。
「高く感じない高単価」を作れる(体験課金)
同じフィギュアでも、透明パッケージで“選べる”と比較が始まる。
「このサイズでこの値段?」って冷静になりやすい。
でもブラインドは、買ってるのが物だけじゃない。
開封の瞬間と、当たりを引けるかもしれない運。これが乗る。
不確実性マーケティングとしてブラインドボックス消費を扱う研究や、米国の消費者を対象にした研究でも、この「不確実性×収集」が行動を動かす前提で議論されてる。
だから「高いのに売れる」が起きる。腑に落ちる。
投資目線だと“粗利率の高さ”が目立つ(しかも公式資料で確認できる)
ブラインドボックスを主力にする企業の数字を見ると、粗利率がかなり高い例がある。たとえばPOP MARTは、年次報告書で2024年の粗利率66.8%を示している。
さらに2025年上期の決算発表資料では、**上期の粗利率が70.3%**に上がった、という説明もある(海外売上比率の上昇、デザイン最適化、コスト管理などが理由として挙げられている)。
ここで言いたいのは「この会社すごい」じゃなくて、ブラインド×IP×直販寄りのモデルが、粗利を厚くしやすいってこと。
粗利が厚いと何が起きるかというと、
- 値引き耐性が上がる(多少のブレで死ににくい)
- 新作開発やコラボに再投資できる(次の弾が出る)
- 在庫が多少読めなくても、利益が残りやすい
このループが回ると、“流行ったら終わり”になりにくい。
……ただ、粗利が厚いぶん、逆にこわいのは熱が冷めた瞬間。
次のセクションでは、その「熱」をどう維持しているのか、そして一歩間違うと炎上コストになるポイントを掘る。
熱狂を“設計”できる。でも一歩ズレるとコストが爆発する

ブラインドボックスは、在庫と粗利を守るだけじゃなくて、需要そのものを増幅させやすい。
ただし、その増幅スイッチは便利なぶん、押し方を間違えると炎上・規制・信用コストに変わる。ここ、落とし穴。
熱狂は「希少性×共有×二次市場」で勝手に育つ
ブラインドが強いのは、“買って終わり”じゃないところ。
開封結果をSNSで見せる、交換する、ダブりを放流する――この流れが自然に起きる。すると商品がコミュニケーションのネタになる。
最近だと、Labubu(POP MART)みたいに世界的な人気が報じられて、需要過熱や模倣品までセットで話題になるケースも出てきた。
熱狂が続くと、店側のメリットはシンプルで「置けば回る」。回れば在庫が軽くなる。軽いと新作を出しやすい。で、また回る。気持ちいいループ。
でも“ギャンブルっぽさ”が見えた瞬間、規制が飛んでくる
ブラインドは不確実性が魅力だけど、同時に「それ、賭けに近くない?」って疑いも常に背負う。
実際、中国ではミステリーボックス(ブラインド)に関して、ギャンブルの偽装を禁じる、価格は合理的に設定、などのルールが報道されている。
未成年保護も強くて、8歳未満への販売禁止はガイドラインとして繰り返し言及されている。
投資目線で怖いのは、規制そのものよりも「規制の匂いが出た時の市場の反応」。
中国の国営系メディアの論調が“中毒性”を問題視した流れで、株価が反応した、といった報道もある。
つまりブラインドは、売上の伸び方が派手なぶん、逆風も派手に来る。
熱が冷めた瞬間、在庫リスクは“店に戻る”(会計的な復讐)
忘れちゃいけないのがここ。
ブラインドが在庫を軽く見せるのは、需要がある間だけ。
熱が落ちると何が起きるか。
・開封の快感が弱くなる(飽きる)
・ダブりがストレスになる
・二次市場の値崩れで「買う理由」が薄くなる
このあたりが重なると、店頭では結局「売れ残り」が復活する。そうなると会計は容赦なくて、IFRSでも在庫は原価とNRV(正味実現可能価額)の低い方で測る考え方が基本。売れない在庫は評価減の対象になりやすい。
ブラインドは在庫問題を“運ゲー化”できるけど、運ゲーって、盛り上がってる時は最強で、醒めた時は一気に現実が来る。
だから結局、勝ち筋はここに寄る。
「運」の設計だけでなく、運が切れた後も残る“好き”を作れるか。
IPの育成、世界観の継続、コラボの出し方、販売量のコントロール。ここが雑になると、ブラインドは「儲かる仕組み」から「燃える仕組み」へ早変わりする。
結論:在庫を“運”に変えると、店は軽くなる。でも最後に残るのは「信頼」
ブラインドボックスって、見た目はただのランダム販売なのに、やってることはかなり現実的だ。
売れる/売れないの偏りを、棚の上で爆発させない。
値引きで粗利を削って延命するより、定価で回る理由を先に作る。
この2つが揃うだけで、在庫は「資産」から「足かせ」になりにくくなる。店の呼吸がラクになる感じ、イメージできると思う。
ただ、ここで勘違いしやすいのが「運ゲー化=万能」ってところ。
運の気持ちよさは、熱狂がある時だけ最大化する。熱が下がると、運はただの不満に変わる。被りは笑えなくなるし、「次こそ当たる」は疲れる。
そうなると、移していた在庫リスクが、じわっと店側に戻ってくる。会計もキャッシュも、ちゃんと現実を突きつけてくるんだよね。
だからブラインドで勝ち続ける条件は、案外シンプル。
“箱の中身”じゃなくて、“箱の外側”を強くすること。
世界観の更新、シリーズの連続性、交換しやすい設計、売り過ぎない生産量、そして説明の誠実さ。ここが揃うと、運ゲーが「遊び」に留まって、ファンの生活を壊しにくい。
逆に、当たりを盛りすぎたり、供給を絞って煽りすぎたりすると、短期の売上は伸びても次に残るのは「疑い」になる。疑いは、あとから回収できない。評判って、在庫より腐りやすいから。
結局、ブラインドボックスは在庫問題を“快感”で相殺する発明で、同時に「信頼を預ける商売」でもある。
開ける瞬間のワクワクを、明日も気持ちよく続けてもらえるか。
この問いにちゃんと答えられるブランドだけが、在庫にも粗利にも、長く効く強さを持つ。
もしあなたが買う側なら、チェックは3つだけでいい。
- 「当たらなくても好き」と言える世界観か
- 被りの逃げ道(交換・二次流通・友だち)があるか
- 煽りが強すぎて、買い方が苦しくなってないか
もしあなたが作る側・売る側・投資で見る側なら、逆に「熱が落ちた時の設計」を見たい。
新作が止まっても回る仕掛けがあるか、売り過ぎてないか、返品やクレームが増えてないか。数字の前に、空気が崩れる。
ブラインドは“在庫の発明”だけど、最後に効くのはいつも「ちゃんとしてるか」だったりする。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『令和7年度版 最新企業会計と法人税申告調整の実務 公認会計士による徹底解説』
ブラインドボックスの話って、結局「在庫が資産から地雷に変わる瞬間」をどう遅らせるか、に戻ってくる。そこで強いのがこの年次版。棚卸資産(在庫)まわりを含む主要論点を“実務の言葉”で追えるので、記事に「会計的にどう見えるか」を一本芯として通しやすい。
読みどころ:棚卸資産・税務申告調整の論点を“逃げずに”確認したい人向け。
『リテール革命(日経ムック)』
ブラインドボックスを「流行」で終わらせず、小売の構造として語りたいならこのムックがハマる。内容紹介でも“データドリブン経営”や“リテールサイエンス”に触れていて、現場の変化を俯瞰しやすい。
読みどころ:在庫・値引き・顧客体験が、今どんな思想で再設計されてるかを掴む。
『日本企業の物流軽視が招く“モノが運べない”危機』
「在庫は悪」と言い切れない理由が、物流を読むと見えてくる。内容紹介でも“物流危機はなぜ起きるのか/社会構造そのものに根本がある”とされていて、在庫問題を“店の努力不足”で片づけない視点が手に入る。
読みどころ:在庫=会計の数字だけじゃなく、運べる・運べないの現実で理解できる。
『60分でわかる!最新IPビジネス超入門』
ブラインドボックスの“運”を成立させてるのは、突き詰めるとIPの強度。出版社紹介でも「IPビジネスの最新の潮流」を押さえる入門として整理されていて、コラボやキャラクター展開の全体像を短時間で掴みやすい。
読みどころ:「なぜ箱を開けたくなるのか」を、世界観と権利ビジネスの側から説明できるようになる。
『ビジネスパーソンのための使える行動経済学 ナッジ理論で人と組織が変わる』
“選べないのに買う”を言語化するなら行動経済学が一番速い。ナッジ理論を軸に、行動が動くスイッチをビジネス寄りで扱うタイプなので、記事に「不確実性が快感に化けるメカニズム」を足したい時に効く。
読みどころ:ブラインドのワクワクを、感想じゃなく「人が動く理由」として書ける。
それでは、またっ!!
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