声が資産になる時代:あなたの声は“勝手に複製”されても守られるのか?』

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

その電話の「声」、本当に本人だと“証明”できますか?

スマホで数秒しゃべっただけで、あなたそっくりの声ができる――。音声生成AIの進化で、ナレーション制作や多言語吹き替えが一気に身近になりました。けれど同じ技術が、フェイク音声によるなりすましや送金詐欺、推し声優の“無断ボイス”拡散といった現実的な被害も呼び込んでいます。世界的にディープフェイク詐欺が増えている、という報告も出ています。

ここで厄介なのが、日本には「声そのもの」をストレートに守る“声の権利”が、法律としてはっきり置かれていない点です。声を守ろうとしても、著作隣接権(実演としての音声)、パブリシティ権、名誉毀損や不正競争防止法などを「状況に応じて組み合わせる」しかなく、保護が断片的になりがち。

だからこそ今、“声を公式に管理して正規に使える”仕組みづくりが動き始めています。たとえば日俳連と伊藤忠などが、俳優・声優の公式音声データベース構想(J-VOX-PRO〈仮称〉)を発表し、声を知的財産として扱い、利用管理と正当な対価につなげる流れを作ろうとしています。

この記事では、①「声はなぜ“著作物みたいに”扱われ始めたのか」②「法律が追いつかないと何が起きるのか」③「声がIPとして“資産化”する入口はどこか」を、初心者向けに噛み砕いて整理します。さらに投資・会計の視点で、“声”をブランド(無形資産)として育てると何が変わるのか、逆にフェイク被害が企業価値をどう毀損するのかまで、リアルに考えていきます。

そして実務目線で、今日からできる防衛策も触れます。たとえば「声だけの指示でお金を動かさない」社内ルール、本人確認の“合言葉”、公式に許諾した音声だけを使う調達フロー――このへんを整えるだけで、被害確率はグッと下がります。声の扱い方ひとつで、収益も信用も変わります。知らないと、ある日いきなり“あなたの声”が炎上の火種になります。

読み終わる頃には、あなた自身の声や、会社の「代表者の声」をどう守り、どう活かし、どこにリスクが潜むのかが見えるはず。声が「ただの音」から「管理すべき資産」へ変わる瞬間を、一緒に覗いてみましょう。

なぜ今、「声」が著作物みたいに扱われ始めたのか

音声生成AIの本質は、「声=その人らしさ」をデータとして再現できるようになったことです。昔は“プロのスタジオ+本人の収録”が必要だった領域が、短い音声サンプルからでもかなり近い声質を作れるようになり、制作コストも時間も一気に下がりました。ナレーション、社内研修動画、ゲームの仮ボイス、コールセンターの案内など、使い道が増えるほど「便利だから使いたい人」も増えます。便利になった分、「声を勝手に使う」ハードルまで下がってしまった――ここが転換点です。

声は“本人確認の鍵”になっていた

私たちは普段、相手の声で「本人だ」と判断しています。電話の「もしもし」だけで家族かどうか分かる、上司の声なら指示を信じてしまう。つまり声は、顔写真や印鑑みたいに“信用のスイッチ”として働いてきました。
ところがAIがそのスイッチを複製できるようになると、詐欺の入口が増えます。たとえば「急いで振り込んで」「今は会議中だから電話は短く」と言われると、人は確認を省きがち。声が似ているだけで判断が一段ゆるむからです。ここに「声は単なる音じゃない」という感覚が一気に広がりました。

声は“作品”というより“ブランド”に近い

声優や俳優の声は、演技そのもの(実演)で価値がつきますが、一般の人でも声は“キャラ”になります。配信者の落ち着いたトーン、営業担当の信頼感ある話し方、会社の社長のメッセージ動画——声は「この人(この会社)らしさ」を運ぶ看板です。
だから無断でコピーされると、売上より先に「信用」が壊れます。会計の言葉で言うと、目に見えない“ブランド価値”が傷つくイメージ。しかも自社で積み上げた信用は、会計帳簿にそのまま「資産」として載りにくい(数字にしづらい)ので、失ったときに初めて痛さが可視化されます。投資家や取引先は「再発防止できる会社か?」を見ますから、フェイク音声対策は“コスト”というより“信用を守る投資”になりつつあります。

公式DBの登場は「声をIPとして管理する」宣言

最近出てきた“公式音声データベース”の動きは、「声をグレーなまま放置しない」ための実務的な答えです。
ポイントは3つあります。

  • 誰の声か:本人確認が取れている
  • どんな用途で使えるか:広告、吹き替え、案内音声など条件が明確
  • いくら支払うか:利用量や期間に応じて対価が決まる

これを揃えると、音楽で言う“原盤”や、写真で言う“素材ライセンス”に近い形で、声を「管理できる無形資産」に変えられます。企業側も、許諾済みの音声を使えば炎上リスクや差し止めリスクを減らせるので、結果的に市場が健全になります。

さらに言うと、声を「IP」として扱うと、収益の形も変わります。たとえば本人が許諾した“公式ボイス”を、広告やアプリの案内に提供し、使用回数や期間に応じてロイヤリティ(利用料)を受け取る。これが回り始めると、声は“労働の対価”だけでなく“資産の運用益”に近づきます。個人でも、発信活動の延長で「声の取り扱い」を意識する時代です。声は“あなたの分身”として流通しはじめています。

声が資産になる入口は、「技術ができた」だけではなく、「信用の鍵だから守りたい」「正規ルートが欲しい」という需要が揃ったこと。次のセクションでは、日本の法律がどこまでカバーできていて、どこが穴なのかを、できるだけ分かりやすく整理します。

法律が追いつかないと、何が“穴”になるのか

「勝手に声を真似された。止めたいし、賠償もしてほしい」――気持ちは当然。でも日本では、声をピンポイントで守る“声の権利”が法律にズバッと書かれているわけではありません。結果として、被害が起きてもどの法律で戦うかがケース依存になり、スピード感も読みやすさも落ちます。

著作権だけでは守れない理由(「声=著作物」ではない)

まず誤解されやすいのがここ。著作権は「作品(表現)」を守る仕組みなので、声そのものは原則として“著作物”扱いになりにくい、と言われます。
俳優・声優の場合は「実演家の権利(著作隣接権)」があり、録音・録画された実演を守れます。ただし、生成AIが作った“それっぽい声”が、どこまで実演家の権利で止められるかは、裁判例が十分に積み上がっていない、という指摘もあります。
つまり現状は、「録音物を無断で使った」なら比較的戦いやすいが、「似た声をAIが出した」だと争点が増える、という状態です。

パブリシティ権・人格権は“使えるけど、万能ではない”

次に出てくるのが、いわゆるパブリシティ権(有名人の顧客吸引力=人気を勝手に商売に使わせない考え方)や、人格権・プライバシー権です。日本のパブリシティ権は、法律の条文で明確に定義されているというより、裁判で要件が整理されてきた性質が強い、とされます。
ここがややこしいポイントで、

  • 「広告で“本人の声”っぽさを利用した」→パブリシティ寄り
  • 「勝手に録音・公開された/言ってない発言を捏造された」→人格権・名誉・プライバシー寄り
    みたいに、目的や使われ方で主張が変わります。
    言い換えると、“声なら全部アウト”とは言い切れず、判断が割れやすいんです。

いちばん怖いのは「被害の広がりが早い」のに「止める手続きが重い」こと

フェイク音声は、拡散が速い。詐欺にも転用される。でも止める側は、証拠を集め、権利構成を組み、プラットフォーム対応もしながら進める必要がある。ここに時間差が生まれます。
だから最近は、法律一本勝負だけでなく、業界の“正規ルート”を作って先回りする動きが強くなっています。日俳連×伊藤忠などが発表した「J-VOX-PRO(仮称)」は、本人の正式な意思表示にもとづく音声DB、許諾の透明化、悪用対応までを含む構想で、まさに“穴”を運用で埋める発想です。
一方で国側も、生成AIをめぐる著作権の考え方の整理や、AIに関するガイドライン整備などを進めていますが、声の問題は著作権だけでは片付かないので、当面は「法+運用+契約」の三点セットで守る時代が続きそうです。
ここに企業の内部統制(確認フロー、承認、ログ保存)が乗ると、被害を“起きにくく”できます。

次のセクションでは、「じゃあ声がIPとして資産化すると、誰が得して、どこにお金が生まれるの?」を、会計・投資の視点でさらに具体化します。

声がIPとして“資産化”すると、どこにお金が生まれるのか

ここまでの話を一言でまとめると、「声はコピーされやすくなった」からこそ、“正規に使う道”を整えた人(組織)が強くなる時代に入った、ということです。
声がIP(知的財産)として回り始めると、単に守るだけじゃなく、ちゃんと“稼げる形”が見えてきます。しかもその稼ぎ方は、YouTubeみたいな広告収入だけじゃありません。ポイントは「許諾(OKの証拠)」「利用条件」「対価」がセットになることです。

いちばん分かりやすい収益化:ライセンス(利用料)モデル

声が資産になるときの王道は、使った分だけお金が入る仕組みです。
たとえば「CMに使う」「アプリの案内音声に使う」「企業研修動画のナレーションに使う」など、用途ごとに条件を決めて利用料をもらう。音楽でいう“使用料”に近いイメージですね。

この方向性を象徴するのが、日俳連と伊藤忠などが発表した「J-VOX-PRO(仮称)」構想です。実演家本人の意思表示に基づく公式音声DB、許諾の透明化、契約管理との連動、商用利用のマッチングまでを含めて「声の正規流通」を作ろうとしています。
要するに、“勝手に使う人”を減らし、“正しく使う人”が増える環境を作る動きです。

会計っぽく言うと:声は「稼ぐ力」=ブランドの一部になる

ここが投資・会計の面白いところ。声そのものは目に見えませんが、声が生む信頼や指名は、ビジネスの売上に直結します。

  • その声だから商品が売れる
  • その声だからアプリが使われる
  • その声だから企業メッセージが刺さる

これって実態としては、ブランド価値(無形の強み)です。会計では「無形資産」として計上できるかは条件が厳しいですが、投資家や取引先は“数字に出る前の強み”として見ます。だから、声の管理が上手い会社は「リスクが低い」「継続的に稼げそう」と評価されやすい。

逆に、フェイク音声で炎上や詐欺が起きると、売上以上に“信用コスト”が膨らみます。生成AIは詐欺や攻撃にも悪用されうる、という指摘や調査報告も出ています。
声の資産化は、「収益の入口」でもあり「企業価値を守る守り」でもある、という二面性がポイントです。

“資産化”を成立させる裏側:ガバナンス(ルール)と証拠づくり

声を資産として回すには、「うちの声です」と言うだけじゃ弱い。必要なのは管理の証拠です。具体的には、

  • 許諾の証拠:誰が、どの用途にOKしたか
  • 利用の証拠:いつ、どこで、どれだけ使ったか
  • 悪用対策:不正利用の検知、対応フロー

こういう“運用の仕組み”があると、声は一気にビジネスで扱いやすくなります。J-VOX-PRO構想でも、許諾の透明性やトレーサビリティ(追跡できる仕組み)を重視しているのが特徴です。
国としても、AIの開発・提供・利用におけるガバナンスの考え方を示す「AI事業者ガイドライン」を整備していて、企業が“ルールを作って回す”方向性は強まっています。

つまり、声が資産になる条件は「技術」よりも「管理」。
声を“勝手に増殖するリスク”から、“正規に流通する収益”へ変えるのは、地味だけど強い運用設計なんです。

このセクションの結論はシンプルで、声はIPとして、いよいよ“売れる形”に整備され始めたということ。次の結論では、個人・企業それぞれが「今日から何を意識すればいいか」を、希望のある形でまとめます。

結論:声を守ることは、信用と未来を守ること

音声生成AIは、うまく使えば「伝える力」を増幅してくれます。動画のナレーションが早く作れたり、手が回らなかった案内音声を整えられたり、発信のハードルも下げてくれる。けれど同時に、声は“本人確認の鍵”でもあるから、複製されると被害の質が変わります。顔写真が盗まれるより、もっと直感的に「信じてしまう」からです。実際に海外の捜査機関も、AIを使った音声・映像のなりすましが詐欺に使われているとして注意喚起を続けています。

そして日本では、いまの法律だけで「声そのもの」をスパッと守れる仕組みが十分とは言いにくい、という指摘があります。
だからこそ、“法で守られるのを待つ”だけではなく、業界や企業が先に「正規の使い方」を作っていく流れが出てきました。日俳連と伊藤忠などが発表した公式音声データベース構想「J-VOX-PRO(仮称)」は、その象徴です。本人の意思にもとづく登録、許諾の透明化、不正利用への対応まで含めて“声を安心して流通させる土台”を作ろうとしています。

では、私たちは何をすればいいのか。答えは意外とシンプルです。

個人の防衛策(今日からできる)

  • 「声だけでお金や個人情報を動かさない」:必ず別ルートで確認(折り返し、チャット、対面など)
  • 家族やチームで“合言葉”を決める:急かされたときほど効きます
  • 自分の音声を公開するときは、どこに上げたか把握する:出どころ管理だけでも違います

企業の防衛策(仕組みで守る)

  • 送金・契約・重要指示は「二重確認」を標準にする(声は本人確認にならない前提へ)
  • 公式に許諾された音声だけを使う調達ルールを作る(素材の出どころをチェック)
  • AIを使うなら、社内のルールと責任者を置く:総務省・経産省の「AI事業者ガイドライン」も運用の仕組みを重視しています。

ここまで読むと、「怖い話だな」と感じたかもしれません。でも、見方を変えるとチャンスでもあります。声を大切に扱い、正しい手順で貸し出し、対価を受け取る――この流れが整えば、声は“消耗品”ではなく“育てる資産”になります。あなたの声は、あなたの信用そのもの。だから守る価値があるし、守り方を知っている人ほど、これからのAI時代を軽やかに渡っていけます。

今日から一つだけ決めましょう。「声だけで決めない」。それだけで、あなたの声は“勝手に複製されるリスク”から、未来を作る“資産”へ近づきます。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『生成AI開発・運用のための法務の教科書 ーそのAI、訴えられませんか?ー』前田拓郎
「生成AIを使いたい」側が一番つまずく、“どこが危ないのか/どこを押さえれば安全なのか”を、実務の言葉で整理してくれる一冊。音声生成も含め、社内導入や外注利用で揉めやすいポイントを先回りして理解したい人に刺さります。


『企業法務の対応がわかる! 生成AIをめぐる法律相談』齊藤友紀
フェイク音声・無断利用みたいな“事件”が起きたとき、担当者が知りたいのは「結局、どう動く?」です。この本は相談事例ベースで、社内の説明・対応の筋道が見えやすい。炎上・詐欺対策を“現場の手順”に落としたい人向け。


『生成AIと著作権の論点』福岡真之介
「声って著作物?」「AIが作ったものは誰のもの?」というモヤモヤを、論点ごとに整理して理解を深めるタイプの本。法律を“丸暗記”ではなく、判断の軸を持ちたい読者に向きます。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

生成AIと著作権の論点 [ 福岡 真之介 ]
価格:3,520円(税込、送料無料) (2025/12/24時点)


『実務の落とし穴がわかる! IT・AI法務のゴールデンルール30』松尾剛行
生成AIだけでなく、IT・AI全般で「うっかり踏む地雷」を30本に凝縮。初心者でも読みやすく、社内ルール作り・契約チェック・取引先との会話にすぐ使えるのが強み。声の扱いも“運用で守る”視点が身につきます。


『AIの作品は誰のもの? 弁理士と考えるAI×著作権』竹居信利・橘祐史
専門書っぽさを抑えつつ、「AI生成物の権利って結局どう考える?」を利用者目線で腹落ちさせてくれる一冊。声を“IPとして資産化”する話とも相性がよく、読み物として入りやすいのが魅力。


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です