宣言はポエムじゃない:取引の世界で“言ったこと”が資産にも負債にもなる

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

その“宣言”、守れなかったとき——会社の信用は誰が払う?

近年、「パートナーシップ構築宣言」という言葉を耳にする機会が増えていませんか?これは大企業と中小企業の共存共栄を目指した取り組みですが、昔は「どうせお題目でしょ」「社長のポエムみたいなもの」と軽く見られがちでした。しかし2026年の法改正を機に状況は一変しています。実はこの宣言、企業にとっては投資家へのアピール材料(IR)になる一方、約束を守れなければ負債にもなり得る重大な要素なのです。この記事では、形式的な「お作法」と思われていたパートナーシップ構築宣言が、どうして今や企業価値に直結する存在へと進化しているのかを紐解きます。読み終えれば、「言ったこと」がビジネスの世界で本当に資産にも負債にもなるんだ、と実感してもらえるはずです。

背景 – パートナーシップ構築宣言の誕生と形骸化の懸念

まず、この宣言が生まれた背景から見てみましょう。パートナーシップ構築宣言は、2020年に政府が打ち出した「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」で導入が決定された制度です。コロナ禍や円安などで原材料費が高騰し、中小企業が価格転嫁できず苦しむ中、「大企業と中小企業の成長と分配の好循環」を実現する旗印として誕生しました。発注者(親事業者)が自社代表名で、サプライチェーン全体の価値向上や望ましい取引慣行の遵守をコミットメントするものです。最初は任意の宣言でしたが、ロゴマークの使用や補助金加点などインセンティブも用意され、多くの企業が参加を表明していきました。

制度の目的と広がり

発足当初、政府は「まず2,000社」と目標を掲げ、2021年にはそれを達成。その後も宣言企業は増え続け、2022年8月時点で12,225社に上りました。さらに2023年末には約37,867社(うち大企業1,844社)に達しています。今や業種・規模を問わず、あらゆる企業が参加できるオープンなプラットフォームとなり「取引先との共存共栄」を掲げる企業が全国に広がりました。宣言企業は公式ポータルサイトで一覧公開され、名刺にロゴを入れるなど対外的PRにも活用できます。国の後押しもあり、宣言は企業のスタンダードになりつつあります。

「ポエム」扱いされた過去――形骸化への批判

ところが、こうした盛り上がりの裏で「実際には有言不実行では?」という批判も起きました。例えば大手流通企業の多くが宣言している一方で、下請け企業からは「宣言しているのに価格交渉に応じてくれない」という悲鳴が上がっていたのです。原価高騰でも価格転嫁できず板挟みになった中小企業からは、「パートナーシップ構築宣言なんて絵に描いた餅(形骸化)だ!」と怒りの声も出ました。実際、東京商工リサーチのアンケートでも「ポーズとして宣言しただけの企業」がいる実態が指摘されています。要は、宣言内容を守らず「綺麗事」を掲げただけのケースが散見されたのです。これでは本来の“共存共栄”も聞いて呆れますよね。

実効性を高める動き:摘発と促進策

こうした形骸化の懸念を受け、政府と関係機関は実効性向上に動き出しました。まず、公正取引委員会や中小企業庁は宣言企業への監視を強化しています。実際に不適切な取引が発覚した企業は、宣言のポータル掲載を取りやめ(削除)られる措置も既に始まっています。2020年度に1社、2023年度に3社、2024年度には7社が宣言リストから抹消されました(つまり「有言不実行」の烙印です)。中小企業庁の担当者も「ポーズだけの企業への対処は急務だ」と明言し、宣言企業や下請企業への調査を進める方針です。さらに経済団体も黙っていません。経団連・商工会議所・同友会の三団体は連名で「実効性を高めよ」「未宣言企業は参加を」と繰り返し要請し、大企業には率先垂範を促しています。こうした圧力もあり、宣言はもはや“やるだけやって放置”では済まされなくなってきました。


このようにパートナーシップ構築宣言は、中小企業支援策として産声を上げた当初こそお題目扱いされがちでした。しかし企業数の拡大とともに「口先だけでは許されない」という機運が高まり、宣言の真剣度が問われるフェーズに入ったのです。次の章では、この流れを決定的にした2026年の法改正と宣言ひな形(テンプレート)の変更点について見ていきましょう。

2026年法改正 – アップデートされた宣言テンプレートのポイント

2026年、新年早々にパートナーシップ構築宣言に大きな動きがありました。そう、関連法律の改正施行に伴い、経済産業省が宣言のテンプレート(ひな形)を刷新したのです。これは単なる書式変更にとどまらず、宣言内容のより具体的で実践的な方向へのシフトを意味します。ここでは改正の背景にある法律や、新ひな形の重要ポイント3つを押さえておきましょう。形式的な文言の修正と思うなかれ、その裏には「宣言はポエムじゃない」という明確なメッセージが込められています。

法改正の背景:脱「下請」時代へ

まず押さえたいのは関連法の名称変更です。2026年1月1日付で、「下請中小企業振興法」は「受託中小企業振興法」に、「下請代金支払遅延等防止法(いわゆる下請法)」は「中小受託取引適正化法」へと改められました。そう、長年使われてきた「下請」の文字を無くしたのです。この背景には、「下請」という言葉に上下関係の固定的イメージがあるため改めたいという意図があります。今後は対等なビジネスパートナーとして、発注側・受注側が協働していく――そんな時代に向けた用語刷新と言えるでしょう。宣言の文面中でも「下請」→「受託」へ用語統一され、新時代のパートナーシップにふさわしい表現に整えられました。法律名が変わるなんて滅多にないことですが、それだけ取引関係のあり方を根本から見直すという強いメッセージが込められているのです。

ひな形改訂ポイント(1):サプライチェーン「深い層」への配慮

新しい宣言ひな形でまず目を引くのは、「サプライチェーンの深い層」という言葉の明記です。従来もサプライチェーン全体との連携を謳っていましたが、今回は敢えて「深い層」まで含めると強調しました。これは一体どういう意味でしょう?簡単に言えば、一次・二次・三次下請けといった間接的な取引先も含め、みんなで共存共栄しましょうという宣言です。部品メーカーのさらに下の素材メーカー、そのまた先の加工業者…といった具合に、川下から川上まで意識を巡らせる必要性を示しています。実際、昨今のサプライチェーン混乱では遠い取引先のトラブルが全体に波及するケースも多く、企業も無視できなくなっています。「一社でも不調があれば全体に遅延やコスト増が広がり、企業のイメージや財務安定性にも回復不能な損害が及ぶ可能性がある」――そう指摘する声もあります。だからこそ末端まで含めた連携強化が求められ、新テンプレートにもその覚悟が刻まれたのです。

ひな形改訂ポイント(2):振興基準の全面遵守と理解の明確化

二つ目の変更点は、「振興基準」遵守の書きぶりです。振興基準とは前述の受託中小企業振興法に基づく望ましい取引慣行の指針ですが、以前のテンプレートではその一部を抜粋・要約して記載していました。しかしこれが曲者で、「書いてある部分だけ守ればいい」と誤解する企業が出てしまったのです。中には基準に反する内容に書き換えて申請してくる企業まであったとか…本末転倒ですね。そこで新ひな形では、「振興基準全体を遵守します」とシンプルかつ明確に表記変更されました。さらに署名欄付近に「振興基準の内容を理解した上で宣言します」との一文も追加されています。要するに「基準全部ちゃんと読んだよね?理解して守るんだよね?」と念押ししているわけです。これは宣言企業により深い制度理解と責任ある行動を求めるもので、今まで以上に「言ったからには守れよ?」というプレッシャーがかかるようになりました。曖昧なコミットメントは許さない、逃げ道を塞ぐ改訂と言えるでしょう。

ひな形改訂ポイント(3):社会情勢に合わせた具体項目の見直し

三つ目のポイントは、宣言項目のアップデートです。前回のテンプレート作成時(コロナ禍真っ只中)に盛り込まれていた「取引先のテレワーク導入支援」や「BCP策定助言」といった事項が、今回定型文から削除されました。状況変化に伴い、一律必須ではなく各社の任意項目に移された形です。代わりに、新テンプレートでは企業ごとの創意工夫を生かせる「選択式の個別項目」が充実しています。例えばオープンイノベーションによる事業承継支援、共通EDI導入やサイバーセキュリティ助言、脱炭素技術の共同開発支援、健康経営ノウハウ提供、災害時のBCP策定協力…等々。自社の強みや取引先支援策に合わせ、自由にチョイスして記載できるのです。さらには「その他」欄もあり、企業独自の取り組みを書き込めます。実際の宣言例では、「コストダウンの成果は取引先と50/50で分配する」とか「手形払いをやめ現金や電子決済に切り替える」等、踏み込んだルールを掲げる企業もあります。例えば経団連の記載要領例でも「事業で得られた利益やコスト削減成果は取引先とフィフティ・フィフティで分かち合う」と明示されています。また、振興基準でも手形払いの廃止や支払サイト短縮が推奨されており、それを宣言に盛り込む動きも出ています。このように、新テンプレートは単なるスローガンではなく具体的なアクションプランを書く場へと進化しました。企業は自社の本気度を示すチャンスでもあり、逆に言えば下手なことは書けません。「言うは易し行うは難し」ですが、だからこそ現実に即した内容にアップデートされたのです。


2026年の宣言ひな形改訂は、言葉遣いや項目を現状に合わせてスッキリさせただけではありません。むしろ「深い層まで目配りし、全基準を理解・遵守し、実効性ある内容を書け」という強いメッセージが読み取れます。背景にある法改正も相まって、宣言はお題目から本気のコミットメントへと生まれ変わりつつあります。では、こうした変化は企業にとってどんな意味を持つのでしょうか?最終章では投資家目線・会計目線で宣言を捉え、資産にも負債にもなり得るとはどういうことか掘り下げます。

「言葉」が企業価値を左右する – IR・会計・投資の視点から

ここまで見てきたように、パートナーシップ構築宣言は単なるCSR的な綺麗事ではなく、法制度や業界の要請を背景に企業活動の一部となりつつあります。ではそれは具体的に企業価値にどう影響するのでしょう?この章では、IR(投資家関係)の場面や会計・投資判断の視点で、宣言が資産にも負債にもなり得ることを考えてみます。言ってしまえば企業の「宣言」は信用を生む資産になりうる一方、裏切れば信頼毀損という負債を背負う――まさに諸刃の剣です。読み進めるうちに、皆さんも「なるほど、だからポエムじゃ済まないのか!」と膝を打つことでしょう。

IRツールとしての宣言:ステークホルダーへのメッセージ

まず注目すべきは、多くの企業がIRやサステナビリティ報告の中でパートナーシップ構築宣言への取り組みを謳い始めていることです。例えば上場企業では「マルチステークホルダー方針」と称して、株主だけでなく従業員・取引先・地域社会など全方位への配慮を示す文書を公表する動きがあります。その中で「当社はパートナーシップ構築宣言の内容遵守に引き続き取り組んでまいります」と明記し、仮に違反で宣言掲載を取り消されたら自社の方針公表も自主的に取り下げるとまで約束している企業もあります。これは「うちは取引先を大事にし共存共栄を目指すホワイト企業です」と対外的に宣言するようなものです。実際、SDGsの目標達成にも繋がる取り組みとして宣言が位置づけられ、投資家や金融機関へのアピール材料にもなっています。ESG投資が盛んな昨今、サプライチェーンに配慮する企業姿勢は重要な評価ポイントです。宣言をきちんと公表・実践していることは、ステークホルダーとの対話において信頼を獲得する武器になるのです。

宣言が生む無形資産:共創関係と信用力

では、宣言によって企業にもたらされる「資産」とは何でしょうか。それはずばり目に見えない信用力や共創関係という無形資産です。例えば、取引先と公正・公平な関係を築き利益や負担を適切にシェアする企業は、サプライチェーン全体で信頼が厚くなります。信頼関係が強まれば、協力して新製品を開発したり情報共有したりとオープンイノベーションが進み、結果的に自社の競争力向上にも繋がります。さらに、サプライヤーとの関係強化はリスク分散と安定供給というメリットももたらします。逆風時にも協力し合えるパートナーがいれば、突発的な混乱からの復旧も早くなるでしょう。投資家から見ても、サプライチェーンの強靭性が高い企業は業績の安定度が評価されます。ある調査では「サプライチェーンの不安定化が常態化すると投資家の信頼が低下し、株価下落に繋がる可能性がある」と指摘されています。裏を返せば、安定した調達網と公正な取引関係を持つ企業は市場からの信頼も厚く、株価や企業価値の向上に寄与するわけです。こうした信用・安定性という無形資産は貸借対照表には載りませんが、現代の企業価値の大きな部分を占めています。パートナーシップ構築宣言は、その無形資産を育む土壌と言えるでしょう。

宣言が背負うリスク:約束を違えた時の代償

一方で、宣言にはリスク(負債)側面もあります。それは「約束違反の代償」です。声高にコミットしたにもかかわらず守らなかった場合、企業は信用という名の負債を抱えることになります。まず直接的に起こり得るのが、前述の宣言ポータルからの削除です。実名で「共存共栄します!」と公表しておきながら不公平取引で指導を受ければ、晒し者状態で掲載取りやめになるわけです。これは企業イメージに大きな傷がつきますし、「口だけだったのか」と取引先からの信頼も地に落ちかねません。実際、ある大手企業では下請法違反が発表されるや「宣言削除→関連税制の優遇も受けられなくなる」という事態に陥りました。そう、賃上げ促進税制など一部の優遇策は宣言の公表が前提条件ですから、不適切行為で宣言を失うと税のメリットも失うのです。つまり違反企業にとって宣言は潜在的な負債になり得ます。また、投資家目線でも、公表したESG的コミットメントを反故にすれば経営陣への信用失墜に繋がります。株主総会で糾弾されたり、株価が下がったりするリスクもあるでしょう。さらに中長期的には、優秀な人材や消費者から敬遠される恐れもあります。「言ったことは守る」という当たり前のことですが、それを怠ると企業は現金を失う以上に信用という負債を背負うのです。逆に言えば、宣言する以上は守る覚悟を決めなければ、かえってしない方がマシかもしれませんね。


このように、パートナーシップ構築宣言は企業にとって両刃の剣です。誠実に履行すればステークホルダーからの信頼という資産を生み、企業価値を高めます。しかし一度裏切れば評判失墜という負債を抱え、痛手を被る可能性があります。「言葉には責任が伴う」という当たり前のことですが、宣言という公式な形でそれを示す以上、企業はよりシビアに評価されるのです。では最後に、これらを踏まえて読者である皆さんへのメッセージをお届けしましょう。

おわりに

「宣言はポエムじゃない」――この記事のタイトルに込めた意味、お分かりいただけたでしょうか。ビジネスの世界では、たとえ最初は形式的に思えた約束事でも、それをどう扱うかで会社の未来が変わります。上辺だけ取り繕った「ポエム」で終わらせるのか、本気で実践して信頼という資産に育て上げるのか。それは企業次第、そして働く私たち一人ひとりの意識次第です。20代・30代の若いビジネスパーソンである皆さんも、自社や取引先がこの宣言にどう向き合っているか、ぜひ注目してみてください。きっと社内の会議や何気ない商談の中にも、「共に成長しよう」「言ったことは守ろう」とする空気を感じ取れるはずです。逆にもし形骸化しているなら、あなたの行動でそれを変えるチャンスかもしれません。

最後にもう一度強調します。会社の言葉は会社の運命を形作ります。「言ったこと」が本当に資産にも負債にもなる――そんな時代がもう始まっているのです。この記事が、皆さんが働く現場での気づきや行動のヒントになれば幸いです。どうぞこの記事を胸に、明日からの仕事で周囲にポジティブな変化の種を撒いてみてください。きっとそれは巡り巡って、あなた自身の誇りと成長に繋がっていくことでしょう。

深掘り:本紹介

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2026年施行の改正を、いちばんコンパクトに「何が変わる?何を直す?」へ落とし込む入門書。宣言の“約束”を、社内ルール・契約条項・運用に翻訳する地図になります。


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それでは、またっ!!

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