みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
その“それっぽい資料”、誰が最後に責任を持てますか?
「あなたの隣の席にAIがいる。でも人事は把握してない」——これ、ホラーっぽいけど、わりと現実です。最近の調査では企業の生成AI導入率は約4割まで来ている一方で、導入状況が社内で共有されていない/従業員が導入自体を把握していないケースも示唆されています。つまり、会社としては“導入したつもり”でも、現場では“知らないまま使ってる”が起きうる。これが今じわじわ増えている 「シャドーAI」(シャドーITのAI版)です。
怖いのは情報漏えいだけじゃありません。もっとジワるのは、意思決定がAI前提で静かに歪むこと。たとえば営業資料の数字の根拠がAIの要約で曖昧になったり、採用・評価の文章が“それっぽい正しさ”で整えられて誰も疑わなくなったり。気づいたときには、会議の前提が「AIがそう言ってたから」になって、責任の所在も判断の質もふわっと溶けていく。これ、内部統制が一番きついタイプの怪談です。
この記事で得られるのは、「生成AIを使う・使わない」の話ではなく、“幽霊社員化”を防いで、会社の意思決定を健全にする方法です。ポイントは3つ。
- なぜ「導入してるのに誰も知らない」が起きるのか(仕組みのせい)
- シャドーAIが招く“意思決定のねじれ”を、会計・投資の視点でどう見抜くか(コストだけじゃなく判断の品質)
- 今日からできる現実的な対策(ルール作りより先にやるべき“見える化”)
国も、AI活用には経営層によるガバナンス構築やモニタリングが重要だと整理しています。要するに「便利に使うほど、ちゃんと管理してね」という話。
ここから先は、怖がるためじゃなく、ちゃんと武装するために。あなたの職場のAIを“幽霊”から“最強の同僚”に変えていきましょう。
なぜ“導入してるのに誰も知らない”が起きるのか

生成AIが「社内の幽霊社員」になる瞬間って、だいたい“悪意”じゃなくて“仕組み”から始まります。実際、企業の生成AI導入は約4割まで進んでいるのに、導入状況が社内で共有されていない/従業員が把握していないケースも示唆されています。
ここでは、初心者でもイメージできるように「なぜそうなるのか」を3つに分けて解剖します。
入口が多すぎる:公式導入と“勝手導入”が混ざる
生成AIの厄介なところは、導入の入口が1つじゃないこと。会社が正式に契約して入れたAIもあれば、現場が「ちょっと試すか」で使い始めたAIもある。しかも、業務で使われるツールはChatGPTが45.5%で首位、CopilotやGeminiも3割超と、選択肢が一気に増えています。
選択肢が増えるほど、現場の“自分に合うAI”探しも加速します。すると、IT部門や人事が把握する前に「部署の常識としてAIがいる」状態が生まれやすい。これが“シャドーAI”の温床です。
伝えない文化:成果物だけ提出される
さらに怖いのが「使ったことを言わない」問題。20〜30代の調査では、生成AIで作った成果物を提出するとき「AIを使ったと伝えていない」人が約6割(59%)という結果も出ています。
理由はシンプルで、言いづらいから。
- 「ズルだと思われそう」
- 「評価が下がりそう」
- 「ルールが曖昧で、聞くのも面倒」
こうして“成果物だけ”が一人歩きし、上司は「この文章、なんか整ってるな」で終わる。結果、会社はどの業務がAI前提になったかを掴めません。
内部統制の穴:お金と責任の線が消える
ここからが、シャドーAIが“内部統制に一番きつい”と言われる理由です。
会計っぽく言うと、コストと効果が測れない投資になります。
たとえば本来、ツールを導入するなら「費用(サブスク代)」「使う部署」「目的」「期待効果」を押さえますよね。でもシャドーAIは、個人の無料アカウントや部署の立替で始まったりして、会社の帳簿や稟議の外に出やすい。すると、
- いくら払っているか分からない(費用の見える化ができない)
- 何に使っているか分からない(目的がぶれる)
- ミスが起きたとき責任の線が引けない(誰が判断した?が曖昧)
が同時に起きます。
国のガイドラインでも、AIは「作って終わり」ではなく、運用後もリスクを継続的にモニタリングして改善することが重要だと整理されています。
でもシャドーAI状態だと、そもそも“運用しているAIが何か”を一覧にできない。だから監視も改善もできず、意思決定だけが静かにAI前提へ寄っていくんです。
——ここまでが「幽霊社員が生まれる構造」。
次のセクションでは、情報漏えいよりじわじわ怖い “意思決定がAI前提で歪む” を、具体例つきで解説します。
情報漏えいより怖い「意思決定がAI前提で歪む」瞬間

シャドーAIの本当の怖さは、「外に漏れる」より先に、社内の判断がじわっとズレるところにあります。生成AIの導入率が約4割まで来て、しかもツールはChatGPTだけじゃなくCopilotやGeminiなど複数が並走している。便利さが当たり前になるほど、会議や稟議の“前提”がAI寄りに傾きやすいんです。
数字が“それっぽく”整う:根拠の薄いROIが通る
会計・投資の視点で一番まずいのは、投資判断の数字がAIでキレイに整ってしまうこと。
たとえば「新ツール導入で工数30%削減、年間○円の効果」みたいな試算。AIは文章も表現も上手いので、資料が“ちゃんとして見える”。でも、
- 削減率の根拠が誰の経験なのか(実測?推測?)
- どの業務が対象なのか(範囲が広すぎない?)
- 代わりに増える手間(確認・修正・教育コスト)は入ってる?
が曖昧なまま通ってしまうことがあります。
結果として、「儲かるはずの投資」だったのに、半年後に振り返ると効果が測れない、もしくは現場の手戻りで逆にコスト増——このパターンが起きやすい。導入して終わりではなく“運用の監視と改善”が必要だ、と国のガイドラインが強調するのは、まさにここです。
「AIが言ったから」症候群:責任の線が溶ける
もう一段ホラーなのが、意思決定の場で増えるこの一言。
「AIがこう言ってます」
これ自体は悪くないけど、シャドーAI環境だと、次の問題が出ます。
- どのAIを使った?(社内版?個人アカウント?)
- どんな指示(プロンプト)で出した?
- 元データは何?(社内資料?ネット?記憶違い?)
これが分からないと、結局「誰がその結論に責任を持つの?」が曖昧になります。内部統制って、ざっくり言うと“お金と判断の通り道を見える化して、後で説明できる状態にする”こと。AIが混ざるなら、なおさら「人が最終判断者」という線を消しちゃダメなんです。
評価・採用・合意形成が“平均化”する:違和感が消える
若手社会人の調査では、生成AIで作った成果物を提出するとき「AIを使ったことを伝えていない」人が約6割(59%)という結果も出ています。
これが積み上がると、社内で何が起きるか。
- 評価コメントがAIで整い、本音の指摘や具体例が薄くなる
- 提案書が似た言い回しになり、尖った論点が消える
- 「なんか変だな」という違和感が文章の上手さで塗りつぶされ、議論が浅くなる
つまり、情報漏えいみたいな“派手な事故”がなくても、会社の判断がじわじわ鈍っていく。これが「意思決定がAI前提で歪む」怖さです。
——次のセクションでは、この怪談を現実の対策に変えます。ルールを増やす前にやるべき、シャドーAIを“見える化”して、判断の質を守る手順を、誰でもできる形に落とします。
“シャドーAI”を成仏させる現実策(ルールより先に「見える化」)

生成AIは、もう現場に入り込んでいます。企業の導入率が約4割という時点で、「うちはまだだから大丈夫」とは言いにくい。しかも、現場で使われるツールもChatGPTだけでなくCopilotやGeminiなど複数に広がっています。
だから対策のコツは、いきなり禁止や細かい規程に走らず、“幽霊社員”を可視化して、会社の判断を守る仕組みを作ることです。
まず棚卸し:社内にいるAIを「名簿化」する
最初にやるべきは、技術の議論より「名簿」です。難しいことは不要で、次の3つだけ集めます。
- 誰が(部署・職種でOK)
- 何を(ChatGPT / Copilot / Gemini / 他)
- どんな用途で(要約、議事録、コード、提案書、評価文など)
ポイントは、犯人探しにしないこと。若手では「AIを使ったと伝えていない」人が約6割という調査もあり、黙ってしまう心理は現実にあります。
だから「申告したら得する」設計が大事。たとえば、申告した部署には社内プロンプト例・テンプレ・安全な使い方を優先提供する。すると“隠す理由”が減って、名簿が一気に埋まります。
ルールは一枚で:禁止より「ここだけ守って」を先に置く
次に作るのは分厚い規程じゃなく、A4一枚の利用ルールです。初心者が迷うのはだいたいここ。
- 入れていい情報/ダメな情報(顧客名、未公開数字、人事評価の元データ等は基本NG)
- 生成物はそのまま出さず、人がチェックして責任を持つ
- “迷ったら相談する窓口”を一本化(情シスでも総務でもOK)
国のガイドラインでも、AIは経営層がガバナンスを作り、運用をモニタリングしていく考え方が整理されています。
だからルールの目的は「縛る」じゃなく、安心して使うためのガードレール。これがあるだけで、シャドーAIが“公式ルート”に戻りやすくなります。
意思決定を守る:AI前提の歪みを防ぐ「証拠の残し方」
内部統制って、かんたんに言うと後で説明できるように記録を残すことです。生成AIが混ざるなら、最低限この4点を残すだけで、判断の質がグッと上がります。
- AIを使ったか(使った/参考にした/使ってない)
- 何を入力したかの要点(機密は書かず、内容の種類だけ)
- 根拠の出どころ(社内資料か、公開情報か)
- 最後に判断した人(承認者)
おすすめは、稟議書・提案書・議事録テンプレに「AI利用欄」を1行だけ追加すること。これで「AIが言ったから」が減り、会議がちゃんと“人間の判断”に戻ります。
さらに会計の目線で言うと、AI関連のサブスクや利用料は費用をひとまとめに見える化して、使い道と効果(工数削減、受注率、ミス削減など)をセットで追う。そうすると、AIが“幽霊のコスト”にならず、ちゃんと投資として育ちます。
ここまでやれば、生成AIは「勝手にいる幽霊社員」ではなく、把握され、育てられる戦力になります。怖いのはAIそのものじゃなく、“知らないまま前提が変わる”こと。前提を見える化できた会社から、強くなります。
結論
生成AIは、便利な道具というより「仕事の進め方そのもの」を変える存在です。だからこそ怖いのは、誰かが悪さをすることより、みんなが善意で使っているのに、会社の判断が知らないうちにAI前提へ寄っていくことでした。気づいたら提案書はAIの言い回しで揃い、議事録は要約だけが残り、稟議は“それっぽいROI”で通る。しかも「AIを使った」と言い出しにくい空気があると、見えないまま前提だけが変わります。
でも逆に言えば、やることは意外とシンプルです。社内にいるAIを名簿にして、最低限のルールをA4一枚にまとめて、意思決定に必要な「証拠(根拠・入力の要点・最終判断者)」を残す。これだけで、幽霊社員は“正社員”になります。使っていい場所と、絶対に踏み込まない場所がはっきりし、会議では「AIが言ったから」ではなく「私たちはこう判断する」に戻れるからです。
さらに、会計・投資の目線では、AIは“費用”ではなく“判断の品質を上げる投資”に変わります。ツール代だけ見て「高い/安い」で終わらせず、工数が減ったか、手戻りが増えていないか、意思決定のスピードと精度が上がったかを追う。数字にできれば改善できます。改善できれば、成果は積み上がります。社内のどこで勝てていて、どこで詰まっているのかが見える会社は、強いです。
あなたの隣の席にいるAIは、怖い幽霊にも、頼れる相棒にもなります。違いを生むのは、技術の強さじゃなく「会社が把握しているかどうか」。今日、まず一つだけでいいので始めてみてください。“社内にいるAIの名前を、ちゃんと呼ぶ”。その瞬間から、あなたの職場の未来は静かに、でも確実に変わっていきます。
もし動き出すなら、1週間でできる最短ルートはこの3つです。
・部署ごとに「どのAIを、何に使っているか」を5分で書き出す
・迷ったときのNG例(顧客名、未公開数字、人事評価の元データ)だけ先に共有する
・稟議や議事録に「AI利用:あり/なし」のチェック欄を1つ足す
大げさな改革じゃなくていい。小さく始めて、見える化して、直していく。生成AI時代の内部統制は“止める力”より“扱える力”です。あなたの会社のAIが、幽霊社員ではなく、胸を張って紹介できる同僚になりますように。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『ISO/IEC 42001:2023(JIS Q 42001:2025) 情報技術―人工知能―マネジメントシステム 要求事項の解説』
「シャドーAIを成仏させる」話を、気合いではなく仕組みに落とし込むならこれ。AIを組織で扱うための“管理の型”が欲しい人向けで、社内ルール・体制・運用の論点を整理できます。読み終わると、社内で起きがちな「誰が責任者?」「どこまでOK?」が言語化しやすくなります。
『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』
生成AIを“便利ツール”としてではなく、仕事・組織・競争の前提を変える存在として俯瞰したい人に刺さる一冊。シャドーAIの怖さ(意思決定がAI前提でズレる)を、もう一段上の視点=「これから会社が何に備えるべきか」で考えられるようになります。
『AI白書 2025 生成AIエディション』
「社内の肌感」だけでAIを語ると、だいたい議論がブレます。この本は、生成AIの技術・活用・法的論点・ガバナンス動向までを体系的に押さえられるので、社内説明の“根拠の土台”として強い。提案書や稟議で“それっぽい話”に負けたくない人ほど、手元にあると効きます。
『DX時代のIT監査・ITガバナンスの実務』
シャドーAIが一番きついのは「内部統制」。つまり、後で説明できない意思決定が増えることです。この本は、DXや生成AIの登場で変わるIT環境を踏まえつつ、監査・ガバナンスの実務目線で整理できるタイプ。現場任せから“会社として管理できる形”に寄せたい人におすすめ。
『ITナビゲーター 2026年版』
「生成AI、結局どこまで広がるの?」「何が変わるの?」を、毎年アップデートされる視点でつかむための定番。社内導入の議論でありがちな“局所最適”を避け、市場や潮流の全体像を見ながら判断したい人向けです。
それでは、またっ!!
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