時給換算で見えた真実―投資家と会計士が暴く、日本人の給料が上がらない本当の理由

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

あなたの時給、本当にその価値ありますか?

あなたの月給を時給に直してみた瞬間、胸の奥で“カチッ”と何かが外れた――そんな経験はありませんか?
私はまさに今日、同じショックを味わいました。しかも業務委託契約の交渉席で「その単価では安すぎます」とまで言われたのです。
日本では“それなり”に高給とされる職種なのに、時給換算すれば海外の同業者よりはるかに低い。
なぜ日本人の給料は、努力に見合うほど上がらないのか?
本稿は、その疑問を「投資家」と「会計士」の2つのレンズで徹底解剖し、
“低賃金社会”を生き抜く武器としてあなたに手渡すためのロードマップです。

このブログで押さえる“3つのポイント”

  1. データで暴く──賃金停滞の正体
    OECD 統計や上場企業の有価証券報告書を縦横に読み解き、
    「生産性は伸びているのに給料だけが置き去り」という謎を数値で証明します。
  2. 投資・会計で読む──給料が上がらない“企業側の論理”
    内部留保 551 兆円の行き先、ROE 至上主義の副作用、
    そして貸借対照表に載らない“人的資本コスト”のトリックを解説。
  3. 行動に落とす──キャリア&ポートフォリオの再設計
    フリーランス単価を時給ベースで逆算する交渉術から、
    「賃上げ余地が株価ドライバーになる銘柄選び」まで、
    明日から使える実践策を具体的に提示します。

この3本柱を読めば、
「給料が低い」という漠然とした不満が、行動可能な戦略に変わるはずです。

日本人の給料はなぜ上がらないのか──生産性・物価・構造の罠

「労働生産性は上がっているのに、給料が上がらない」という逆説

まず押さえておきたいのは、「日本人の給料が上がらない=日本人の働きが悪い」という単純な話ではない、ということです。むしろ、日本の労働生産性は着実に上昇しています。
日本生産性本部のデータによると、1995年以降の労働生産性(就業者1人あたりの付加価値)は年平均でおよそ1.3%の伸び。ところが、同じ期間の実質賃金の伸び率はたったの0.3%。つまり、生産性が上がっても、その成果が賃金に還元されていないのです。

この“差分1%”はどこへ消えたのか? 答えは企業の内部留保や営業利益に蓄積されてきました。
企業側の論理としては、「利益を出しにくい時代に備える」「株主への還元を優先する」「不安定な経済環境で人件費は固定費にしたくない」という背景があるのですが、その影響で働き手の取り分がジリジリ削られた構図です。

労働分配率(=人件費 ÷ 付加価値)で見ると、日本はバブル崩壊後から一貫して低下傾向にあり、特に輸出産業においてはこの傾向が顕著です。企業は競争力維持のために価格を据え置き、結果として人件費を「変動費」として最も削りやすいコストと見なしてきたのです。

「物価が上がらない国」で給料だけが上がることはない

もう一つの根本的な問題は、「長期デフレによって給料を上げる必然性が失われた」ことです。
欧米先進国が 2%以上のインフレを前提とした賃金上昇を実現してきたのに対し、日本では長らく「物価が上がらないこと=生活が守られている」という幻想がありました。

しかし、2022年以降の急激な円安・輸入インフレによってその前提が崩れた今、企業はコスト上昇分を価格転嫁せざるを得ず、ようやく「賃金も上げざるを得ない」局面に入りました。
とはいえ、価格転嫁力のない企業は賃上げ余力も乏しいため、結果として業種・企業規模で賃上げ格差が顕在化しています。2024年春闘では大企業が平均5%近い賃上げを表明した一方、中小企業では「人手不足でも上げられない」現実が浮き彫りになりました。

これは逆に言えば、「賃金を上げられる企業は、それだけで“強い”」という投資指標にもなります。賃上げができる=価格転嫁力がある=付加価値を高く売れるビジネスモデルである、という証明にもなるのです。

「働き手の量」は増えても、「質(単価)」が改善しない構造的な問題

日本の就業率は G7 の中でも高水準です。特に女性や高齢者の労働参加率が上がったことで「雇用数」だけを見れば“好調”です。しかし、それが平均賃金の上昇にはつながっていません。なぜなら、増えているのはパートタイムや非正規の低単価労働だからです。

これは政策的な構造にも起因しています。たとえば配偶者控除や社会保険の「106万円の壁」は、パートタイム労働者に“あえてフルタイム化しない”というインセンティブを与えており、低賃金状態の温存装置になっています。

また、働き手が増えても「生産性×報酬」が比例しない背景には、企業の人事制度の硬直さや、評価軸の不透明性もあります。「年功序列が崩れた」と言われながら、実態としてはスキルや成果に応じた“可変報酬制度”が整っておらず、頑張っても報われにくい構造が続いています。

このようにして、「労働市場は動いているのに、賃金市場は眠ったまま」――。
それが今の日本社会における、最大の経済的ミスマッチなのです。

会計と投資の視点で見る──なぜ企業は給料を上げたがらないのか

人件費は“コスト”であって“資産”ではないという思考の壁

日本の会計基準では、人件費はあくまで費用処理される“当期のコスト”であり、将来への投資として資産計上されることはありません。たとえば、従業員教育やスキルアップにかけた費用も、帳簿上は「販管費」や「研修費」として処理され、バランスシートには一切残らない。そのため、企業の経営判断において「人材育成=コスト」という認識が根強く残り、長期的なリターンを見越した“人的資本投資”が軽視されやすいのです。

一方、IFRS(国際財務報告基準)を採用している一部のグローバル企業では、R&Dやブランド価値を「無形資産」として資産計上する動きが広がっており、人的資本も“長期価値の源泉”として評価する傾向があります。投資家もまた、人的資本の開示を重要視しつつありますが、日本企業ではこの考え方が定着しておらず、短期利益を優先する経営スタイルが人件費の圧縮に直結しているという構図です。

株主還元と賃金引き上げはトレードオフなのか?

2024年度、日本企業のROE(自己資本利益率)は10%を超える高水準で推移すると見込まれています。その背景には、円安による輸出企業の好業績、そしてコスト管理の徹底があります。なかでも人件費は、比較的柔軟に削減できる“調整弁”として活用されてきました。

ここで見逃せないのは、コーポレート・ガバナンス改革の副作用です。2021年以降、東証の市場再編により「資本効率を重視せよ」「ROEを高めよ」という圧力が強まったことで、配当・自社株買いを通じた株主還元が優先されるようになったのです。

しかし、ここで投資家に問いたいのは、「短期のROE」と「長期の企業価値」は本当にイコールなのか?」ということです。中長期的には、従業員の士気や能力、組織の再現性が企業の競争力を決定づけます。人材流出や低モチベーションによって機会損失が続けば、いずれは利益にも跳ね返る。つまり、人件費を抑えることは、将来の利益の前借りでしかないという視点が必要なのです。

投資家が「人的資本の質」に着目するようになれば、企業もまた「賃上げ=株主価値向上」というパラダイムシフトに迫られるでしょう。現に、ESG投資の一環として、従業員の待遇改善やダイバーシティ施策を評価対象にするファンドも増えており、企業にとって「給料を上げること」は資本市場からの評価を得るための一手段になりつつあるのです。

「人件費を削って貯めたお金」の行き先

もうひとつ見落とされがちなのが、企業が賃金を抑えて積み上げてきた巨額の内部留保の“使い道”です。2023年時点で、企業の現預金・利益剰余金などを合わせた内部留保は過去最高の551兆円。これはバブル崩壊後の不況期に「将来の不確実性に備える」ために積み上げられた結果ですが、近年はその多くが海外M&Aや自社株買い、さらには海外への設備投資に使われています。

なぜ国内の人件費に回らないのか? 理由は明快で、「リターンが低い」と経営陣が判断しているからです。人材に投資しても、それが利益に直結するか不透明である以上、経営陣は確実性のある株主還元や海外投資に傾きます。とりわけ、短期の株価を意識する上場企業では、この傾向が顕著です。

しかし、その結果として何が起きたか? 国内市場の停滞、若手人材の海外流出、そして消費の低迷です。“貯め込み経営”が長期的に自国経済のエンジンを冷やしてしまったという皮肉な結果になっているのです。

本来ならば、人的資本への投資が企業の競争力を高め、国内需要を喚起し、さらなる成長を呼ぶ――そうした“好循環”があるはずでした。今、その循環を取り戻すには、企業経営に「人件費=資産である」という新たな会計的発想を取り入れることが必要なのです。

「給料が低い時代」を逆手に取る──キャリアと投資の再設計術

単価は自分で決める時代──“時給換算”が武器になる

多くの人が「給料が安い」と感じる最大の理由は、自分の労働の“市場価値”を知らないことにあります。月給制の会社員であっても、自分の労働時間と報酬を時給ベースで可視化してみると、「こんなに安かったのか…」という実感が湧きます。そしてその瞬間こそが、キャリア戦略を組み立て直す出発点です。

時給換算によるセルフ評価は、フリーランスや副業においては“単価交渉”の核心にもなります。たとえば、自分の仕事を「1件あたり○時間で処理できる」ことが分かれば、そこから合理的に日単価・月単価を導き出すことができます。さらに、リスクプレミアム(業務負荷や責任の大きさ)、拘束時間、納期リスクなどを加味すれば、単価は“根拠をもった価格”になるのです。

実際、交渉時に「今の業務では1時間あたり○○円の価値を出しています」とデータで示せる人と、ただ「もう少し上げてほしい」と情に訴える人とでは、信頼のされ方がまったく違います。自分の“時給”を、単なる嘆きではなくキャリアの価格表に変えることが、報酬を高める第一歩です。

賃上げ余地が“投資の種”になるという発想

投資の世界では、「まだ評価されていないが、将来価値が上がるもの」にお金を投じるのが基本です。この原則をそのまま労働市場に適用すれば、「現在の人件費が低いが、今後の賃上げ圧力がかかる産業や企業」は割安成長株に見えてきます。

たとえば、介護・保育・飲食業界などは、歴史的に人件費が抑えられてきた反面、人手不足と政府の支援強化により、今後は“政策ドリブン”で賃金上昇が起きる可能性が高い分野です。ここで注目すべきは、単なる賃上げではなく、それを吸収できる収益構造を持つ企業かどうかです。

高価格帯サービスを展開する介護企業、IT導入による業務効率化に成功している飲食チェーン、定額モデルを取り入れた保育園経営――こうした事例では、賃金上昇がコストではなく“競争優位”に直結します。個人投資家としては、「賃上げできる企業=人的資本への還元ができる企業」として見ることで、ESG投資や中長期的な成長株選定に役立ちます。

また、人的資本の開示が義務化されつつある今、企業が「従業員のエンゲージメントスコア」や「離職率」「研修投資額」などを開示し始めています。これらは今後、賃金水準を超えた“人的資本リターン”を測る指標になっていくでしょう。投資対象としても、もはや「PLの利益」だけで企業を測る時代ではなくなっているのです。

あなたの人的資本を“バランスシート”で捉える

ここまで「企業の会計的視点」から賃金の問題を見てきましたが、同じことを個人にも応用することができます。つまり、自分のスキルや経験を“人的資本”として資産的に捉え、長期投資として管理・運用するという考え方です。

たとえば、語学スキル・資格・専門知識といった「収益を生む能力」は、企業の“無形固定資産”に相当します。これらは帳簿には載りませんが、実質的には将来の収入や選択肢の広がりに直結する極めて重要な資産です。

さらに、これらのスキルには“減価償却”もあります。5年前に取った資格が今も市場価値を持つとは限りません。逆に言えば、毎年のアップデートが「再投資」にあたる。学習時間、情報収集、実務経験の積み上げは、すべて“キャッシュフロー”を生み出す源泉なのです。

このように考えることで、「給料が低いから何もできない」のではなく、「低い今こそ、自分の人的資本を見直し、再投資する好機」と捉えることができます。可視化・管理・再投資。この3つを通じて、自分自身の“財務体質”を強くしていくことが、次の時代の生存戦略なのです。

結論──「安い給料」に慣れてはいけない。未来を変えるのは、あなたの視点だ

私たちは長い間、「給料とは我慢料だ」「安定の代償だ」と教えられてきました。けれど、冷静に時給換算してみれば、自分の時間がいかに安く扱われているかがはっきり見えてしまう。
そのときに感じる悔しさや虚しさは、決して間違いではありません。むしろそれは、「このままではいけない」という健全な危機感です。

今、日本の賃金構造には、マクロの停滞・会計思考の限界・個人の無自覚という“三重の壁”があります。
けれど、この壁は壊せないものではない。自分の価値を可視化し、根拠ある単価で交渉し、スキルという“無形資産”に再投資していくこと。
企業を見る目を変え、賃上げの兆しに投資という形で参加すること。そうした積み重ねが、個人と社会を少しずつ前進させていく。

給料が低いことを「仕方ない」で終わらせない。
自分の時給を、過去の延長ではなく未来の設計図に変えていく。

それはとても地味で、派手な逆転劇ではないかもしれません。
でも、その一歩が、確かに世界を動かす力になる。

安さに慣れないこと――それが、あなたの人生を守る最大の投資なのです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』
30年以上にわたる日本の低所得・低物価・低金利・低成長という「4低」状態を「日本病」と位置づけ、その原因と克服策を気鋭のエコノミストが分析しています。


『「経済成長」とは何か – 日本人の給料が25年上がらない理由 -』
日本人の給料が長年上がらない背景にある経済成長の停滞について、詳細に解説しています。


『日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす』
日本経済に潜む「収奪的システム」の正体を明らかにし、その回避策を提示する一冊です。


『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』
日本経済の低迷の原因を「日本人の性格」に求め、その影響を分析しています。


『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』
人口減少が進む日本において、どのように経済的活路を見出すかを考察しています。


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です