最低賃金1031円ショック:「地方ブラック or 超ホワイト」時代に、救われる人と詰む人。

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

最低賃金1031円の世界で、本当に変えられるのは“自分のどこ”だろう?

岩手県の最低賃金が、ついに「時給1031円」に到達します。
これまで952円だった岩手の最低賃金が、2025年12月1日から一気に79円アップ。
全国平均も1,121円となり、「全都道府県で1000円超え」が現実になりつつある今、最低賃金はもはやニュースではなく、人生設計そのものに直結する数字になりました。

ただ、この「時給1031円」。
ニュースで聞くと「お、ちょっと上がったじゃん」と感じる一方で、

  • フリーター:「フルで入ったら、手取りいくらになるの…?」
  • ワンオペ育児中のママ:「パートに出たら、保育料とトントンにならない?」
  • 地方の中小社長:「うち、人件費でマジで赤字になるんだけど…」
  • 店長クラスの正社員:「パートさんの時給上げたら、自分の給料も上げないと現場が持たない…」

と、全員がそれぞれ違う不安と計算を始める数字でもあります。

実際、最低賃金の引き上げは「労働者にとってはいいこと」と単純に片付けられません。
最低賃金が1,031円になるということは、「その時給で人を雇う側のコスト」も同時に跳ね上がるからです。しかも、最低賃金だけが上がるのではなく、その下からグッと押し上げられるようにして、全体の賃金テーブルを組み替えざるをえない会社も少なくありません。

このブログでは、

  • 労働者目線
    時給1031円で
    • 月80時間(学生バイト・Wワーカー系)
    • 月120時間(パート・時短ワーカー系)
    • 月160時間(フルタイム相当)
      それぞれの手取りイメージや生活感をざっくりシミュレーションします。
  • 経営者・店長目線
    同じく時給1031円で人を雇うとき、
    • 人件費率はどのくらい上がるのか
    • 粗利が同じなら、いくら値上げしないと利益が飛ぶのか
      といったポイントを、「難しい会計用語抜き」でざっくりPL(損益)イメージとして可視化します。
  • そして最後に:
    「労働者も経営者も、どっちもキツい構造」を見える化したうえで、
    • 生き延びる個人の戦略
    • 潰れないための小さな会社の戦い方
      を、20〜30代の社会人目線で一緒に考えていきます。

この記事を読み終わるころには、ニュースで「最低賃金1031円」と聞いたときに、
ただの数字ではなく、

「あ、あのPLだとこうなるやつね」
「自分の生活だと、月◯◯万円くらいのラインか」

リアルなお金の感覚で捉えられるようになるはずです。

最低賃金が上がるたびに「なんか大変になりそう」とモヤモヤしていた人も、
経営者のグチを聞いて「でも時給上がらないと生活できないし…」と板挟みになっていた人も、
いったんここで、感情ではなく数字と構造で整理し直してみませんか?

時給1031円で、ぶっちゃけ生活どんな感じ?

その「+数十円」は、人生レベルで見るとどう変わる?

ニュースで「最低賃金1031円」と聞くと、
正直なところ、

「まあ、ちょっと上がったのかな?」
「言うほど生活変わる?」

くらいの温度感になりがちです。

でも、時給の数十円アップは「1時間」だけで見ると小さいけど、「1か月」「1年」で見ると意外とデカいです。
逆にいうと、「1031円って数字だけ見てなんとなく安心する」と、
手取りや生活レベルをイメージしないまま、気づいたらお金が全然残ってない…ということにもなります。

ここでは、

  • 月80時間(ゆるめバイト・副業)
  • 月120時間(パート・時短ワーク)
  • 月160時間(フルタイム相当)

この3パターンで、
「総支給いくら? 手取りどれくらい? どんな生活感?」を、
初心者向けにかなりざっくりで数字を見ていきます。

「税金とか社会保険とか、よくわからん!」という人向けに、
あくまでイメージ重視で話すので、細かいところは「だいたいこのくらい」と思ってもらえればOKです。

月80時間バイト勢 ― お小遣いか、生活費か

月80時間ってどれくらいかというと、

  • 1日4時間 × 週5日
  • もしくは、土日だけ長めに入る学生バイト
  • Wワークの「サブ」の方の仕事

みたいなイメージです。

時給1031円 × 80時間 = 約8万2,000円

ざっくりですが、このくらいの収入だと、

  • 親の扶養の中で働く学生
  • 本業は別にあって、副業でちょっと足しにしたい社会人

には、けっこうありがたい金額です。

ここから、
・所得税:ごく少し
・住民税:条件次第
・社会保険:多くの場合は本業か扶養側で加入

というパターンが多いので、
手取りはほぼ8万円前後と考えていいラインです。

8万円あれば、

  • 一人暮らしの家賃の足し
  • 奨学金返済+スマホ代+サブスク
  • 推し活・趣味・服・外食

など、「生活をちょっと豊かにするお金」としてはかなり強い。
ただし、「これだけで生活する」のはさすがに厳しくて、
家賃・光熱費・食費全部をまかなうには足りません。

月120時間 ― パート・時短ワーカーのリアル

次に、月120時間。

これは、

  • 1日6時間 × 週5日(ほぼフルタイムに近いパート)
  • 子育てや介護でフルタイムは無理だけど、ガッツリめに働きたい人

のあたりのボリュームゾーンです。

時給1031円 × 120時間 = 約12万3,000円

ここまでくると、多くの人が

  • 社会保険に入るかどうか(会社の条件次第)
  • 扶養を出るかどうか
  • 住民税がかかるラインに乗るか

という「制度の壁」に当たり始めます。

ざっくりですが、社会保険に入る場合をイメージすると、

  • 健康保険・年金などで 2万円前後〜
  • 所得税+住民税で 数千円〜1万円ちょい

みたいな世界になり、手取りは10万〜11万円台くらいに落ち着くイメージです。

10万円台の手取りがあると、

  • 実家暮らしなら、かなり余裕ある生活も可能
  • 一人暮らしなら、「家賃+最低限の生活費」でギリギリライン
  • 子どもがいて世帯収入の一部なら、家計の柱にもなる

という感じですが、
ここでややこしいのが「扶養を出ると、世帯として損したように感じることがある」点です。

  • 自分の収入は増えたのに
  • 社会保険料や税金、保育料がアップ
    →「なんか思ったよりお金残らないんだけど…?」

というモヤモヤがここで爆発しやすい。

時給1031円はありがたいけど、
制度とのセットで見ないと「こんなはずじゃなかった」になりがちなゾーンです。

月160時間 ― 「フルタイム級」の安心と不安

最後に、月160時間。
これは、1日8時間 × 週5日で、いわゆるフルタイムです。

時給1031円 × 160時間 = 約16万5,000円

ここまでくると、多くの人が確実に

  • 社会保険に加入
  • 所得税・住民税もそれなりに発生

というパターンになります。

ざっくりですが、

  • 社会保険料で 3万円前後〜
  • 税金で 1万円前後〜

と仮定すると、手取りは12万〜13万円台くらいのイメージです。

一人暮らしで考えると、

  • 家賃:5〜6万円
  • 光熱費・通信費:1.5〜2万円
  • 食費:3〜4万円
  • 残り:1〜2万円(服、交際費、急な出費)

という感じで、「なんとか暮らせるけど、貯金はかなりキツい」ラインです。
車を持つ地方だと、ここにガソリン代・維持費も乗ってきます。

つまり、フルタイム級で働いても、
時給1031円ベースだと、

「生活はギリギリ回るけど、将来の貯金や投資まで手が回らない」

という感覚になりやすい。
ニュースで見ると「最低賃金1000円超え=だいぶマシになったように見える」のに、
実際の生活感は、安心というより「まだちょっと怖い」に近いのが正直なところです。


数字で見ると、「上がったけど足りない」が本音…

ここまで、時給1031円で

  • 月80時間
  • 月120時間
  • 月160時間

の3パターンをざっくり見てきました。

結論としては、

  • 収入としては、確かに上がってありがたい
  • でも、「生活レベルが一段上がる」というほどではない
  • 特にフルタイム級では、手取りの感覚はまだまだシビア

という、ちょっと切ない現実が見えてきます。

そしてこの「まだ足りない感」と同時に、
裏側では、同じ1031円が経営者側にはどんな負担になっているのかが存在します。

次では、
同じ「時給1031円」を、
今度はお店や会社のPL(損益)の視点から眺め直してみます。

経営者から見た「時給1031円」の重さ

ニュースの「+79円」は、店長にはどう見えているか。

テレビでは「最低賃金アップ!」「時給1031円に!」と明るいトーンで流れますが、
地方の小さなカフェや居酒屋、美容室、コンビニのオーナーからすると、
この数字はかなり重たい意味を持ちます。

なぜかというと、
お店から見る「1031円」は、単なる1031円じゃないからです。

  • 時給そのもの(1031円)
  • 社会保険料の会社負担
  • 有給休暇・賞与・交通費などの見えにくいコスト
  • シフトが急に空いたときの穴埋め残業

こういうものを全部ならして考えると、
「1時間あたりの人件費コスト」は、ざっくり時給の1.2〜1.3倍くらいになりがちです。

つまり、時給1031円の人を1時間雇うと、
お店側からすると1時間あたり1300円前後かかっているイメージです。

この「1300円」が、売上とどうバランスするのか。
ここをざっくりPL(損益イメージ)で見ていくと、
「どっちもキツい構造」がかなりはっきりしてきます。

「時給1031円の人を1時間雇う」と、お店はいくら払っている?

まずは、1時間あたりのコストを超ざっくり分解してみます。

たとえば、パートさん1人、時給1031円。
この人を1時間働かせるとき、会社・お店が払っているのはイメージとして:

  • 時給:1031円
  • 社会保険の会社負担分:+200〜250円前後(ざっくり)
  • 有給や賞与、交通費などを「1時間あたり」に慣らした分:+数十円

トータルすると、1時間あたり1250〜1300円くらいになってきます。

もちろん業種や会社の制度でかなりブレますが、
ここで言いたいのは、

「時給1031円」=「お店のコスト1031円」ではない

ということです。

そして何よりキツいのは、
最低賃金が上がると、

  • 一番下の人だけでなく
  • その上の時給の人
  • 正社員の給料テーブル

まで「連動して上げざるを得ない」ケースが多いことです。

「1031円に合わせて新人を雇う」だけでなく、
社内全体の人件費がじわっと一段上がる
それが、「最低賃金アップって、数字以上に重いよね…」という経営側の本音です。

小さなカフェのざっくりPLをのぞいてみる

ここからは、イメージしやすいように、
地方の小さなカフェを例にして、ざっくり数字を置いてみます。

  • 客単価(1人あたりの売上):700円
  • 1日の来店人数:80人
    → 1日の売上:約5万6,000円

これが月に22営業日あるとすると、

  • 月間売上:5万6,000円 × 22日 ≒ 123万円

ここから引いていくお金は、

  • 食材・飲み物の仕入れ(原価):売上の30%くらい → 約37万円
  • 家賃:15万円
  • 光熱費(水道光熱・通信):8万円
  • 雑費(消耗品・広告・決済手数料など):7万円

ここまでで、すでに約67万円くらい出ていきます。

残りは、
123万円 − 67万円 = 約56万円

この56万円から、人件費を払います。

たとえば、

  • パートさん3人
  • 1日合計で24時間分(3人で8時間ずつでも、2人フル+1人短時間でも)
  • 時給1031円
  • 月22日営業

とすると、

  • 1日の人件費:1031円 × 24時間 ≒ 2万4,700円
  • 月の人件費:2万4,700円 × 22日 ≒ 54万円

つまり、

  • 人件費:54万円
  • さっき残ったお金:56万円

お店に残るのは月2万円くらい。

この2万円の中から、

  • オーナーの自分の取り分(給料)
  • 不測の出費(機械が壊れた、修繕したなど)

も出さないといけません。

ここで最低賃金が上がり、

  • 時給が950円 → 1031円にアップしたとすると、
  • 月の人件費は「数万円」増えます。

たとえば、1時間あたり81円アップ × 24時間 × 22日 = 約4万3,000円増。

さっきの「月2万円残るPL」は、
一気にほぼトントンか、むしろ赤字に近い状態になります。

「最低賃金が上がった瞬間、
オーナーの取り分がほぼ消えた」

というのが、現場で起きていることです。

じゃあ値上げすればいい?の難しさ

ここでよく出る話が、

「人件費が上がるなら、値上げすればいいじゃん」

というやつです。

たしかに理屈だけなら正しいのですが、
現場で実行するのはかなり難しい。

先ほどのカフェでいうと、

  • 人件費が月4万〜5万円増える
  • それを客単価に乗せるには?

簡単に言えば、
「1人あたりの単価を数十円上げる」必要があります。

700円 → 750円に値上げしたとすると、

  • 差額50円 × 1日80人 = 4,000円
  • 月22日で 4,000円 × 22日 = 8万8,000円

一応、人件費アップ分は吸収できそうに見えます。

でも、ここで問題なのは、

  • 値上げしたことで客足が減るかもしれない
  • 「あそこの店、高くなったよね」と言われる心理ハードル
  • 競合店との価格差

です。

もし値上げでお客さんが1日80人 → 60人に減ったら、

  • 60人 × 750円 = 4万5,000円(1日の売上)
  • 前は 5万6,000円 だったので、1日1万1,000円ダウン
  • 月22日なら、約24万円の売上減

→ 人件費をカバーするどころか、むしろ全体としてさらに苦しくなる可能性もあります。

結果として多くの小さなお店は、

  • 値上げしたいけど、ガッツリは上げにくい
  • シフト数を減らす
  • オーナー夫婦が現場に出まくる
  • サービスの一部をカットする

という方向に追い込まれていきます。

そうすると何が起きるか。

  • 働く人:シフト削減で収入ダウン、もしくは人が足りず現場がブラック化
  • オーナー:自分の労働時間だけ増え、時給にすると悲しくなるレベル

という、「どっちも疲弊する構造」が出来上がります。


対立じゃなく、「同じ船に乗っている」感覚へ…。

ここまで、ざっくりした数字で

  • 時給1031円の人を雇うと、お店にはどれくらいコストがかかるのか
  • 小さなカフェのPLイメージ
  • 値上げしても一筋縄ではいかない現実

を見てきました。

見えてきたのは、

  • 労働者には「まだ足りない1031円」
  • 経営者には「これ以上はキツい1031円」

という、両方ともギリギリのラインだということです。

「労働者 vs 経営者」の対立構図で切り取ると、
どうしても感情的なぶつかり合いになってしまいますが、
数字で眺めると、

わりと全員、同じ沈みかけのボートに乗っている

という現実が見えてきます。

では、その中で個人はどう生き残るのか。
会社やお店は、どうやって「ブラック化」せずに耐えるのか。

次のセクションでは、

  • 働く側の生存戦略
  • 雇う側の生存戦略

を、投資と会計の目線も混ぜつつ、「手の打ち方」として考えていきます。

「1031円時代」を生き抜く、働く側と雇う側のリアル戦略

「つらい」で終わらせずに、どこに“打ち手”があるか?

ここまで見てきたように、

  • 働く側から見ると「上がったけど、正直まだ足りない1031円」
  • 雇う側から見ると「これ以上上がると、ほんとにキツい1031円」

という、全員ギリギリで踏ん張っている世界が広がっています。

ここで大事なのは、

「誰が悪いか」を探すことではなく、
「このルールの中で、どう動いたらマシになるか?」

を考えることです。

このセクションでは、

  1. 働く個人としてできる「単価を上げる」戦略
  2. 小さな会社やお店が生き残るための「赤字にならない」工夫
  3. それでも1社・1人では限界があるからこその、「ゆるい連携」や「地域との付き合い方」

を、会計と投資の考え方をベースにしつつ、初心者向けに言い換えて整理してみます。

働く側の戦略 ― 「時給で戦う」から「自分の価値で戦う」へ

最低賃金が1031円になった世界では、
正直に言うと、「時給での殴り合い」ではいつまでたってもキツいです。

なぜかというと、

  • 最低賃金は、あくまで「下限のライン」にすぎない
  • そのラインに張り付いている限り、生活はギリギリのまま
  • 物価が上がれば、またすぐ「足りない」感じに戻る

からです。

じゃあ何をするかというと、
キーワードはシンプルで、

「自分の“時給(単価)”を上げる準備をする」

ことです。

ここでいう「時給を上げる」は、

  • ただ転職して時給1100円を目指す
    という話だけではありません。

① 同じ職場の中で単価を上げる

  • レジだけ → レジ+発注、SNS更新までできるようになる
  • ホールだけ → シフト作成や新人教育もできるようになる

こうやって、お店や会社から見た「その人にお願いできること」を増やしていくと、
昇給や役職手当の対象になりやすくなります。

会計っぽく言うと、

  • 「1時間あたりのコスト(給料)」は上がるけど
  • 「1時間で生み出せる売上や利益」も上げる

ことができれば、雇う側も時給アップを決断しやすくなるわけです。

② 職場の外に、自分の“第二の収入源”を作る

  • 土日の数時間だけ、得意なことをスキルシェアで売る
  • 文章を書く、人の相談に乗る、動画を編集するなど、小さく受ける
  • いきなりフリーランスになる必要はなく、「月+1〜2万円」レベルから始める

これは、自分に「小さな投資」をするイメージに近いです。

  • スマホやPC、ネット回線 → インフラへの投資
  • 本やオンライン講座 → 知識への投資
  • 副業での実践 → 経験への投資

こういうものを少しずつ積み上げておくと、
「最低賃金が上がった / 下がった」で振り回される度合いを少しずつ減らせます。

③ お金の出口(固定費)を軽くして、自由度を上げる

時給アップと同じくらい大事なのが、毎月の固定費を見直すことです。

  • スマホ代やサブスクの整理
  • なんとなく続けている保険
  • 車が本当に必要か、カーシェアや軽自動車で代用できないか

固定費を月1万円減らせたら、
それは「時給が100円上がる」のと同じくらいのインパクトになることもあります。

収入を増やす+支出を軽くするをセットで考えると、
時給1031円の世界でも、「自分の選択肢」を増やすことができます。

雇う側の戦略 ― 「安くこき使う」から卒業しないと詰む

一方で、経営者・店長側にも、
1031円時代を生き残るための「会計的な視点」が必要になります。

ざっくり言うと、
「安い人を長時間使うほど得」という発想は、もう限界です。

① 「人件費=コスト」ではなく、「人件費=投資」として考える

たとえば、同じ時給1031円でも、

  • 何を任せてもミスが多い
  • 指示しないと動けない

人より、

  • お客さんにファンが多い
  • SNSで店をバズらせられる
  • 現場のアイデアを出せる

人のほうが、1時間あたりの「売上」「利益」への貢献は圧倒的に高いですよね。

会計の言葉でいうと、

  • ただの「費用(コスト)」ではなく
  • 「売上を増やすための投資」

として人件費を見ると、
単純に「人件費を削る」だけでは、むしろ店が弱ることがわかります。

② 「時給」ではなく「生産性」で考える

たとえばカフェなら、

  • 1時間にコーヒーを20杯出せる人
  • 1時間に12杯しか出せない人

がいたとします。

両方とも時給1031円でも、
前者のほうが「1時間あたりに生み出す売上」が大きいので、
長期的にはこちらに投資したほうが店のPLは改善します。

具体的な打ち手としては、

  • オペレーションを見直して、ムダな動線を減らす
  • レジや注文をタブレット化して、ミスと対応時間を減らす
  • 「誰でもできる仕事」は機械や仕組みに任せ、人には接客や提案を任せる

など、「1人あたりの生産性」を上げる工夫がポイントになります。

③ 「辞められたら終わる」状況を作らない

人件費が重いからといって、

  • ギリギリの人数で回す
  • 教育に時間をかけない
  • 「辞めるなら代わりはいくらでもいる」と思う

というスタイルを続けると、
辞めた瞬間にブラック化が加速し、採用コストも上がるという悪循環に入ります。

採用・教育にかけるお金は、
短期的にはコストですが、長期的には「離職率を下げるための投資」です。

  • 1人辞めるたびにかかる募集費・教育時間
  • クレーム・ミスの増加

を考えると、「ちゃんと人に向き合うほうが、トータルでは安い」ことも多いです。

それでも限界があるからこそ、「ゆるくつながる」

とはいえ、個人もお店も、
1人・1社だけでできることには限界があります。

そこで重要になってくるのが、
「ゆるくつながって、お互いの弱さを埋め合う」発想です。

① 地域のプレイヤー同士で「コラボPL」を作る

  • カフェ × 雑貨屋でイベントをする
  • パン屋 × コーヒー屋でセット販売をする
  • 美容室 × フォトグラファーで撮影プランを作る

こうすると、

  • お客さんを「シェア」できる
  • 広告宣伝費を分け合える
  • 売上の山を作りやすくなる

というメリットが出ます。

会計的に見れば、

  • 1店舗で広告費を3万円使うより
  • 3店舗で1万円ずつ出して、一緒にイベントを打つ

ほうが、1店舗あたりのリスクは下がり、集客パワーは上がる可能性が高いです。

② オンラインを味方にして、商圏を「広げる」

地方ビジネスでも、

  • EC(ネット通販)で商品を売る
  • SNSで県外から人を呼ぶ
  • 体験・イベントをパッケージ化して観光客向けに売る

など、「リアル店の売上+α」を作る手段が増えています。

最低賃金が上がる世界では、
「近所だけ」で戦うと勝ち目が薄いことも多く、
オンラインで少しでも売上の柱を増やしておくことは、
立派な「生存戦略のひとつ」と言えます。

③ 「しんどさ」を言語化して、味方を増やす

経営者も、働く人も、

  • なんとなくしんどい
  • でも、どこがどうしんどいか説明できない

状態だと、ただ不満がたまっていきます。

逆に、

  • 「うちのPLだと、時給◯円上げると、こういう数字になる」
  • 「手取り◯万円だと、家賃・生活費・貯金はこういうバランスになる」

数字で言語化できると、議論の質が上がり、味方も増えます。

X(旧Twitter)でバズりやすいのも、
感情的な怒りだけのポストより、

  • 簡単な図解
  • イメージしやすいシミュレーション

がセットになっている投稿ですよね。

最低賃金の話は、まさに「数字とストーリーをセットで語るべきテーマ」です。


「1031円」はゴールの数字じゃなく、“スタート地点のラベル”。

ここまで、

  • 働く側の「単価を上げる・出口を軽くする」戦略
  • 雇う側の「人件費を投資として見る」「生産性を上げる」戦略
  • 個人・お店・地域が「ゆるくつながる」必要性

を見てきました。

最低賃金1031円は、
決して「みんなが幸せになる魔法の数字」ではありません。

どちらかというと、

「ここから先、自分たちで工夫してね」

という、スタート地点に貼られたラベルに近い存在です。

このラベルを見て、

  • 「国が悪い」「経営者がケチだ」「若者がワガママだ」

と責め合っていても、
自分のPL(家計・お店の損益)は一ミリも改善しません。

大事なのは、

  • 自分の時間とスキルに、どう投資していくか
  • お店や会社として、どこにお金と人を集中させるか
  • 1人では無理な部分を、誰と組んで埋めていくか

を、「感情」ではなく「数字」と「ストーリー」で組み立てていくことです。

次の「結論パート」では、

  • この記事全体で見えてきた「最低賃金1031円時代のリアル」
  • その中で20〜30代のぼくたちが、今からできる小さな一歩

を、もう一度まとめながら、
ちょっとだけ前向きになれるラストを目指して締めていきます。

結論:1031円の向こう側に、「自分のPL」を持てるかどうか

最低賃金1031円。
ニュースで流れるときは、たった4桁の数字です。

でも、ここまで一緒に見てきたように、

  • 働く人にとっては「手取りいくらで、どんな暮らしになるのか」
  • お店や会社にとっては「売上から引いたあと、何円残るのか」

という、人生と経営の“成績表”に直結する数字でした。

そしてその成績表は、
家計なら「自分のPL(損益表)」、
お店なら「会社のPL」として、確実に毎月積み上がっていきます。

ここで一番伝えたいのは、

「最低賃金が上がるから安心」でもないし、
「上がるから終わり」でもない。
じゃあ“自分のPL”をどう良くしていくか、一緒に考えよう。

ということです。


働く側にできることは、
すごくシンプルにまとめると、次の3つでした。

  • 時給だけを見るのではなく、「月いくら入って、月いくら出ていくか」をざっくりでいいから把握する
  • 同じ1時間でも「できること」を少しずつ増やし、自分の“単価”を上げていく
  • 固定費を軽くして、「お金が残りやすい体質」にしておく

これは派手なことではないし、
いきなり人生が変わる魔法でもありません。

でも、「なんとなく働いて、なんとなくお金が消えていく」状態から、

「この時給なら、月◯◯万円くらい。
ここから家賃と生活費を引くと、残りは◯◯円。」

数字でつぶやけるようになるだけでも、
もう一段ステージが上がっています。


雇う側も同じです。

  • 「とにかく人件費が高い」で思考停止するのではなく
  • 自分の店のPLを紙に書き出し、
    「原価・家賃・光熱費・人件費・自分の取り分」を一度ハッキリさせてみる

そうすると、

  • 値上げすべきか
  • メニューを絞るべきか
  • 生産性を上げる仕組みに投資すべきか

が、感覚ではなく、数字から逆算できるようになります。

最低賃金が上がるたびに、
「またか…」とため息をつきたくなるかもしれません。

それでも、「じゃあうちは、どうやってこの波を乗りこなすか?」と考えられるお店は、
長い目で見ると、生き残る確率がぐっと上がります。


そして、20〜30代のぼくたち世代にとって大事なのは、
「被害者」で終わらないことだと思っています。

「給料が安いのは会社のせい」
「経営が苦しいのは景気のせい」

それも事実の一部ですが、
そこで止まってしまうと、いつまでたってもゲームのプレイヤーになれません。

  • 自分の時間の使い方を、自分で決める
  • 自分のお金の出入りを、自分で把握する
  • 自分のキャリアの方向性を、自分でえらぶ

こうやって、少しずつでも「自分でコントロールできる範囲」を増やしていくことが、
1031円時代を生き抜く、いちばん地味で、いちばん強い戦略です。


「最低賃金1031円」は、
国やニュースが決めた“スタートラインのラベル”にすぎません。

その先で、どんな働き方・どんな商売・どんな暮らし方を選ぶか。
それを決めるのは、ラベルではなく、ぼくら自身です。

今日この記事を読み終えたあなたには、
ニュースで「最低賃金1031円」という言葉を聞いたとき、
ぜひこう問いかけてみてほしいんです。

「このルールの中で、
自分のPLをちょっとだけ良くするには、
今日から何を変えられそうだろう?」

その「ちょっとだけ」を積み重ねる人から、
1031円の向こう側にある、次の景色を見ていけるはずです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『賃金・労使関係データ 2024/2025』日本生産性本部 生産性労働情報センター(編)

最低賃金や都道府県別の賃金水準、生涯賃金までまとまっている“ガチ統計集”です。
ブログで書いた「地方で時給1031円ってどんなポジション?」を、ちゃんとデータで裏付けたい人におすすめ。

  • 地域別の最低賃金や賃金コストの推移が一覧で見られる
  • 労働生産性やモデル賃金など、経営者視点の数字も充実
  • 1冊持っておくと、どんな賃金ネタでも「根拠はこれです」とドヤれる

「Xで議論するときに“ソースどこ?”と言われたくない」人ほど、持っておいて損なしです。


『2024-2025年版 図解わかる労働基準法』荘司 芳樹

残業代・有給・最低賃金・シフト管理など、現場でモメがちなポイントを図解付きで解説してくれる1冊。

  • 人事・労務担当者の“現場用マニュアル”として定評あり
  • 令和の法改正や割増賃金率、最低賃金改定にも対応
  • 書式例や注意点も載っているので、実務にもそのまま使える

「ブラックかホワイトか」感覚で語るだけじゃなく、
“法律上どこまでOKか”をサクッと調べたい店長・フリーランス・副業勢に刺さります。

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2024-2025年版 図解わかる労働基準法 [ 荘司 芳樹 ]
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『「働き手不足1100万人」の衝撃 2040年の日本が直面する危機と“希望”』古屋 星斗

2040年の日本では、働き手が1100万人足りなくなるというショッキングな前提からスタートする未来予測本。

  • 詳細なシミュレーションで「労働供給制約社会」がどう来るかを解説
  • 機械化・自動化、シニアや副業・兼業の活用など、打ち手も具体的
  • 「賃金が上がる/上がらない」の裏にある“人口の現実”が見えてくる

「最低賃金1031円の次に来る社会」を見通したい人、
地方での働き方やキャリアを長期で考えたい人は、この本を読むと視野が一気に広がります。


『【新NISA・iDeCo対応版】20代のいま、やっておくべきお金のこと』中村 芳子

ブログの「時給1031円×月◯時間」の話を、そのまま“資産形成モード”に変換してくれる一冊

  • 20代向けに、新NISA・iDeCoをどう使えば“ラクに増やせるか”を解説
  • 「貯金ゼロだけど間に合う?」という不安からスタートできる構成
  • 難しい金融用語を極力削ってあるので、投資初心者でも読みやすい

「最低賃金がちょっと上がったところで、将来不安は消えない…」と思っている人こそ、
“時給アップ+投資”で人生のPLを変えるヒントをもらえます。


『中小企業の財務分析 企業の健康診断・成長戦略の分析』宇田川 荘二

ブログでやった「ざっくりカフェPL」を、もっとリアルな決算書レベルで読み解けるようになりたい人向け

  • 中小企業の決算書を“健康診断票”として読むための入門書
  • 損益計算書だけでなく、成長戦略までつなげる視点が学べる
  • 「どこを改善したら黒字体質になるのか」を、具体的な指標で確認できる

小さな飲食店・サロン・ネットショップのオーナーはもちろん、
「数字がわかる店長」「PLが読める副業フリーランス」になりたい人にもかなり使えます。


それでは、またっ!!

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