語彙が少ない人のCFは詰まる──表現力と行動力の相関分析

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

あなたの一言、相手の“前払い”を生んでますか?

「伝わらない」は、ビジネスで最もコストが高いミスです。タスクは進まず、意思決定は遅れ、会議は増え、関係者の集中力は分散する。つまりキャッシュ・フロー(CF)の循環が目に見えないところで詰まっていきます。本記事は、“国語力(語彙・論理・比喩の運用力)=人を動かすための管理会計”という前提で、言葉がどのように行動を生み、行動がどのようにCFを押し流すのかを、教育・知性・ビジネスに刺さる「納得系」の切り口で解剖します。

読み終える頃には、

  1. 語彙が少ないと何が具体的に滞るのか(承認リードタイム、業務の手戻り率、外注単価の“リスク・プレミアム”など)、
  2. 表現力がなぜ周囲の行動力の引き金になるのか(定義→構造化→合意形成のプロセス)、
  3. 今日から改善できるトレーニング設計(語彙の投資配分、メッセージ設計の型、会議とメールの運用KPI)

を、自分の仕事に当てはめて“数で”語れるようになります。

メインの主張はシンプルです。表現できない人は人に動いてもらえない。動いてもらえなければ、あなたの時間は“自分でやる”に吸い込まれ、事業のスループットは落ちます。言語は信用創造のツールであり、良い言葉は相手の不確実性を下げ、意思決定コストを下げ、先に時間を貸してもらう(=協力・前払い・優先対応)という形で信用を生みます。逆に曖昧な言葉は手戻りの引当金を積ませ、あなたの案件に高めの金利(余剰バッファ、余計な報告、追加の確認)を上乗せさせます。

この記事では、まず「国語力=思考の在庫回転率」という視点で、語彙と構造が認知負荷をどう下げるかを説明します。次に、現場での説得・依頼・合意形成の3シーンに分けて、言葉がどのように“他人の行動”へ転写されるかを分解。最後に、語彙投資のポートフォリオ管理や、メール・議事・資料の“収益性”を高める実務フレーム(PREP/SCQA、定義リストの作り方、メタファ設計、テンプレ運用、KPIの置き方)を提示します。狙いは「国語=センス」を卒業し、「国語=再現可能なスキル×会計」で管理できるようにすること。読みながら自分のチームやクライアントに置き換え、今日の一通・一本・一言をアップデートしてください。

国語力=思考の在庫回転率――語彙・構造・比喩が“詰まり”をほどく

まず前提を合わせましょう。仕事で詰まる原因の多くは「能力不足」より「認知の渋滞」です。つまり、頭の中の在庫(情報・意見・事実・感情)が整理されず、必要なタイミングで必要な部品が取り出せない。国語力はこの在庫を賞味期限内に送り出す“回転”の技術です。語彙は在庫の棚、構造は工場の動線、比喩は圧縮と展開を担う物流パレット。ここを整えると、会議のリードタイム、資料の手戻り率、社内外の信用コスト(確認・保留・追記といった見えない金利)が目に見えて下がります。以下では「語彙」「構造」「比喩」の3点を、投資と会計の視点で一つずつ深掘りします。

語彙は“在庫の棚”――定義がないと在庫は腐る

語彙を増やすことは、単に難しい言葉を並べることではありません。正確に言えば「共有された定義で、取り出し頻度の高い概念を素早く指定できる状態をつくる」投資です。棚がなければ部品は床に散らばり、探すたびに時間が溶ける。会議中の「つまり何が問題?」は、定義棚の欠如によるピッキング遅延に近い。たとえば“品質”という言葉を「不具合率」「期待値からの乖離」「再現性」のどれで使っているかが曖昧だと、議論の在庫は混載状態になり、手戻り引当金(余分な確認・再レビュー)が積み上がります。

語彙投資の基本は、

  1. 自分の業務で頻出する“抽象名詞”の棚を作る(例:価値、リスク、優先度、適合、解像度)、
  2. それぞれ1行で“使い分ける定義”を決める(「優先度=影響×緊急度」「解像度=決定に足る情報の粒度」など)、
  3. チームで「この語はこの棚から取る」という運用を回す、

の3ステップです。これは知識の資本化であり、翌日の意思決定スピードに複利で効きます。

さらに、語彙にはキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を短縮する効果もあります。外注先に依頼する際、「ざっくり良くして」より「KPIはCVR、制約は負荷時間、判断基準はユーザーストーリーのA→B変化」と言えた方が、見積りのリスク・プレミアムが下がる。相手は不確実性を価格に載せるからです。語彙で不確実性を剥がせば、前払い(優先対応・工数確保)を引き出せる確率が上がる。これは信用創造そのもので、言葉が運転資金のように働く瞬間です。

一方で、難語の乱用は逆効果です。棚に鍵をかけてしまうのと同じで、チームの平均取り出し速度を遅らせる。“誰でも引ける辞書”で運用するのが鉄則。おすすめは「用語リストを議事録の冒頭固定パートにする」「MTGの最初の5分は用語定義を合わせる」「Slackで#glossaryチャンネルを運用して定義変更は必ず告知する」。これだけで在庫の滞留は目に見えて減ります。語彙はコストではなく、最小のCAPEXで最大のスループットを出す“棚投資”だと捉え直しましょう。

小さな始め方はシンプルです。今週の会議3本から、頻出の抽象語を5つ拾い、各1行定義をつけて共有する。反応を見ながら2週間で10語に拡張する。これだけで、発注・承認・報告のラリー回数が減り、あなたのCF(時間・信頼・お金)の回りは確実に良くなります。

構造化は“動線設計”――プロセス設計がリードタイムを縮める

構造化の目的は「情報を“作業順”に並べ、次の行動が自明になるようにする」ことです。よくある誤解は、ロジカルシンキング=難しい図を描くこと。しかし現場で効くのは、誰が見ても同じ順で動ける“動線”を引くこと。工場で言えば、部材→加工→検査→出荷までの無駄な折返しをなくす設計です。資料や依頼文で折返しが増えるのは、入口(背景・目的)と出口(判断・アクション)を一直線に結ぶ動線が欠けているから。

使い勝手の良い型は「SCQA→課題定義→評価軸→案→決定→役割→締切」の一本線です。SCQAで状況を圧縮し、課題を“1つの文”に固定。評価軸(コスト・効果・リスクなど)を先に合意してから案を並べる。ここで初めて意見が比較可能になり、会議は“好き嫌い”から“トレードオフ”に変わります。決定を言語化し、担当と締切を明示すれば、後工程のWIP(仕掛中)を増やさずに流せる。会議後に「で、何をいつまで?」というDMが来るのは、動線を最後まで引いていない証拠です。

構造化は、実は会計そのものでもあります。費目(論点)を切り出し、配賦(責任と工数)を決め、期間(締切)で区切って損益を確定する。良い構造は、意思決定の“締日”を前倒しにします。例として、新規施策の提案を上げるとき、「背景:直近3ヶ月でLTVが10%低下」「課題:初回継続率の減少が主因」「評価軸:即効性・費用・ブランド毀損リスク」「案:オンボーディング改善/価格施策/訴求見直し」「決定:まずオンボード改善に2週間」「役割:PM=あなた、分析=私」「締切:来週金曜に中間レビュー」。この並びなら、誰が読んでも次の一歩がズレません。

動線設計のKPIは「ラリー回数」「決定までのリードタイム」「決定後の手戻り率」。メールや議事録の末尾に“決定・依頼・確認”の3ブロックを作り、毎週このKPIをモニタリングすると、構造化の投資対効果が見える化されます。型は“コピペで増える資産”。一度作れば、別案件に横展開して複利で効いてきます。結局、構造化は相手の行動コストを肩代わりすること。相手の時間を節約できる人は、最終的に最も高い信用残高を持つようになります。

比喩は“高速圧縮”――暗黙知を可搬化してチームの帯域を増やす

比喩は、複雑な概念を共通のイメージに“圧縮”し、一瞬で共有するための装置です。良い比喩は説明を短くするだけでなく、行動の優先順位まで揃えます。たとえば「このプロジェクトは冷蔵庫、今日中に入れないと痛むタスクがある」という比喩を使えば、期限の性質(可逆/不可逆)と温度管理の重要性が一撃で伝わる。抽象的な「優先度高いです」より、行動が具体化し、手が先に動く。

投資の世界でも比喩は強力です。プロダクトの“解像度”を「レンズの焦点距離」で語れば、いま必要なのは“望遠で深掘り”か“広角で探索”かが直感で通じる。マーケの議論を「蛇口と配管」で話せば、流量(トラフィック)と漏れ(CVR)のどちらを先に締めるかが揃う。会計でも「売上は表彰台、粗利は土台、営業利益は登った人の体力」と言えば、成長の持続性の議論に自然と入れる。比喩は、専門知を“可搬化”してチームの帯域を増やす言語インフラです。

もちろん乱暴な比喩は誤解を生みます。良い比喩には3条件がある。

  1. 現象の“支配的要因”を外さない(例:サブスクの離脱は“蓄積疲労”型、瞬間風速で測らない)
  2. “行動の導き”が含まれる(例:「砂時計のくびれを広げる」=ボトルネック除去)
  3. 境界条件を明示する(例:「この比喩は初期顧客には有効だが、マス拡大期は別モデル」)

この3つを満たせば、比喩は単なるうまい言い回しではなく、意思決定のショートカットになります。

実装のコツは、チーム内で“共通メタファ集”を育てること。議事録の最後にその日生まれた比喩を1行で残し、次の会議で再利用する。定着した比喩は、設計図の記号のように最短距離で会話を運びます。さらに、社外のステークホルダーにも比喩は効きます。CFOに提案するとき「今は“在庫が積み上がる倉庫”です。先に動線と棚を直します」と言えば、投資配分の順序に納得を得やすい。言葉一つで費用が前倒し承認されるなら、それは立派なキャッシュ創出です。

比喩を鍛える最短ルートは、“うまい比喩をコレクションして口に出す”こと。読書やポッドキャストで光った表現をNotionに貯め、週1でチームに配る。使い回しの中で、自分の現場に合う言い換えが磨かれていきます。結果、説明時間が短くなり、会議は深い論点に早く到達する。比喩は最小の言葉で最大の行動を引き出す、費用対効果の高い言語装置です。


以上が、語彙・構造・比喩という三種の“言語インフラ”の効きどころです。どれも難しいテクニックではなく、小さな運用からでも確実に回収できる投資。まずは来週の会議と依頼文で試してみてください。ファクトは同じでも、言葉を整えた瞬間にスループットが上がる感覚が出てくるはずです。

言葉は人を動かす――説得・依頼・合意形成の実装

ここからは現場の“3大シーン”に落とし込みます。説得=意思決定を前に進める、依頼=他人の手を動かす、合意形成=関係者の“再議コスト”をゼロに近づける。いずれも狙いは同じで、「相手の不確実性と作業コストを減らし、あなたの案件の優先度を自然に上げる」こと。各シーンで使える言語フレームとKPI、使い回し可能なテンプレを提示します。

説得:意思決定コストを下げる“証拠設計”

説得は“相手の前提を更新してもらう作業”です。上手い人は抽象的に話しません。①前提(いまの世界観)→②証拠(変化の手がかり)→③帰結(だから次に何をする)を一直線に並べ、相手のベイズ更新を手伝います。コツは、比較可能性を作ること。代替案が並んでいない提案は“良さ”が測れず、保留に落ちやすい。

実務では次のマップを使うと強いです。

  • 前提:直近3ヶ月でLTVが10%低下。初回継続率が主因。
  • 仮説:オンボーディングの摩擦。
  • 証拠:ファネルの第2歩目で離脱が+8pt(n=5,000)、定性で“最初の成功体験が弱い”。
  • 選択肢:①価格施策 ②訴求見直し ③オンボード改善。
  • 評価軸:即効性/費用/ブランド毀損リスク。
  • 帰結:③を2週間で実験、①②は保留。

さらに「反論ハンドリング」は先回りして記述します。例:「短期で効くのは①では?」→“CVRの弾性が低い期間のため費用対効果が落ちる”。相手の“心配ごと”に領収書を添える感覚です。

1分ピッチの型はこれで十分:

目的→現状→課題の一文→評価軸→比較→決定→期日・担当。
最後にKPIを置きます。「承認リードタイム」「反対論点の未解決数」「次アクション着手率」。説得の目的は“勝つ”ことではなく“動く”こと。相手の判断に要するエネルギーをできる限り肩代わりすれば、承認はキャッシュのように前に流れます。

依頼:相手の帯域に合わせた“API設計”

依頼は“人の時間を借りる”行為です。金利(心理的コスト)を下げるには、仕様が明確で、成功条件が短いこと。私は「APIテンプレ」で書くことを勧めます。

  • Endpoint(誰に):@鈴木さん(デザイン)
  • Method(何を):LPのABテスト用の差し替え1案
  • Payload(材料):Figmaリンク/既存LP/禁止事項3つ
  • Success(完成定義):ファーストビューの要素3点だけ変更、CTA文言は触らない
  • SLA(期日):木曜18時、途中レビュー水曜12時
  • Constraints(制約):稼働上限2h、再現性重視、仮説は添付
  • Fallback(代替):時間が難しければ要素1点のみでOK

この粒度で書くと、相手は“考えるより作る”にすぐ入れます。加えて、二段階承認(「まず可否だけ」「次に内容」)に分けると着手率が上がる。件名や冒頭を「要:30秒で可否、詳細は下」にするだけで一次レスが早くなります。

依頼の質を測るKPIは「一次レスまでの時間」「完成物の手戻り率」「Noの理由の再発率」。Noの理由が再発するなら、あなたのテンプレに欠落があるサイン。最後に逆段取り(先に使い方を見せる)も効きます。「このバナーは広告A/Bの仮説検証用。差はここだけ、勝ち負けの判定指標はCVRで0.5pt以上」を先に見せる。使い方が分かる依頼は“返品”されにくい。依頼が上手い人は、結局“相手のWIP管理を手伝っている人”です。

合意形成:契約を書くように会議を締める

合意形成は“後から揉めない言語化”がすべてです。良い合意は3つの文で立ちます。

  • 決定文:何を、どの案で、いつまでにやるか(例:「オンボード改善を2週間で実施」)。
  • 条件文:どの指標がどうなったら見直すか(例:「中間でCVR+0.3未満なら施策Aに転換」)。
  • 責任文:RACI or DACIで“誰が決め、誰が相談、誰が実行”か。

会議の議事はDecision Logに積み上げ、URLを固定。議事の最後を「承認・保留・宿題」の3箱で閉じると、翌日の“解釈違い”が消えます。異論は留保付き合意に収容します(例:「B案はブランド毀損懸念が残るため、指標XがY未満のとき自動中止」)。これは将来の“再議費用”を先払いで削る技。
合意形成のKPIは「決定文の欠落率」「条件文の未定義率」「責任の重複率」。数字で運用すると“会議の質”が再現可能になります。最後に、会議クローズ時の読み上げ儀式を習慣化してください。

決定:〇〇を□□で実施/期限:△△/責任:AA。条件:指標XがY未満でAへ転換。確認:異論留保はBBさんの1点、ログに記載。
この30秒だけで、1週間後の手戻りを丸ごと消せます。合意は言ったかどうかではなく、“誰でも読める”状態にしたかどうか。ここまでやって、はじめて信用は残高になります。


以上、説得・依頼・合意形成の3シーンを“コスト削減装置”として設計しました。共通点は、相手の不確実性を削り、次に何をすれば良いかを一文で示すこと。言葉は感情を動かすだけでなく、プロセスを短縮し、CFを前へ押し流します。

言語を“運用資産”にする――トレーニング設計・テンプレ工場・KPIダッシュボード

理屈と現場の橋渡しをします。ここでは、語彙・構造・比喩を「日次で回る仕組み」に落とし込みます。ポイントは、

  1. 語彙を資本化し減価償却を管理する、
  2. メッセージを“型工場”で量産し品質を一定に保つ、
  3. 会議とメールをKPIで見える化して投資対効果を測る、

の3本柱。トレーニングを“根性論”で終わらせず、会計の視点で運用していきましょう。

語彙投資のポートフォリオ管理――「仕入れ・検品・棚入れ・廃棄」を回す

語彙は仕入れて終わりではありません。会社の資産と同じで、取得→稼働→劣化→入替のサイクルがあります。まずはポートフォリオを3区分しましょう。

  1. コア語彙(50%):意思決定の“共通通貨”になる語(例:価値、優先度、解像度、リスク、仮説、検証、ボトルネック)
  2. 現場語彙(30%):チームや業界固有の語(例:LTV、チャーン、WIP、ユースケース、アロケーション)
  3. 比喩資産(20%):行動を揃えるメタファ(例:“冷蔵庫案件”“蛇口と配管”“砂時計のくびれ”)

運用は“在庫管理”です。毎週15分の仕入れ会で、各メンバーが1つずつ語彙(定義付き)を持ち寄る。Notionやスプレッドシートに「語/1行定義/使用例/禁止用法/更新日」を記録し、Slackの#glossaryに自動通知。翌週の会議で検品(意味の重複や現場適合性のチェック)を行い、採用されたものを棚入れ(議事録テンプレの冒頭に固定掲載)。3ヶ月に1回棚卸しを実施し、使われない語は廃棄(アーカイブへ)。

会計視点では、語彙は無形資産です。活用実績のない語は資本化せず経費処理(アイデアの墓場へ)、週2回以上の使用が確認できた語だけ資産計上して“償却期間(6〜12ヶ月)”を設定。更新が入ったら残存価値を見直す。KPIは「語彙の稼働率(週の登場回数/会議数)」「定着率(3ヶ月連続で使用された割合)」「誤用率(禁止用法の検出回数)」の3つ。これを週次のダッシュボードで可視化すると、“言葉の投資”が数で語れます。

最後に“語彙のキャッシュ創出”を計算式で見える化。例:用語定義の統一で1会議あたりラリー-2回、参加4名、平均時給3000円、週5会議なら「2×4×3000×5=12万円/週」の時間コスト削減。数字で示せれば、語彙活動が“良いこと”から“儲かること”に変わります。

メッセージ設計の“型工場”――テンプレで品質を均一化し、速度を最大化

文才に頼らず、工場化しましょう。まずは共通テンプレを3種整備。

(A)1分提案テンプレ:件名「目的|判断希望|期日」。本文は「SCQA→課題1文→評価軸→案比較→決定案→期日・責任」。添付があるときは「読む順番」を明記。

(B)依頼APIテンプレ:Endpoint/Method/Payload/Success(完成定義)/SLA/Constraints/Fallback。Slackでもメールでもそのまま貼れる形に。

(C)議事テンプレ:冒頭に“用語リスト”、末尾に“決定・依頼・確認”の3箱とDecision Logへのリンク。

テンプレは一度作って終わりではありません。ABテストを回しましょう。たとえば件名の書き方(「要:30秒可否判断」vs「レビューお願いします」)で一次レスがどれだけ変わるか、2週間でデータを取る。本文も「評価軸の先出し」が承認リードタイムを縮めるかを比較。勝った型だけをテンプレに昇格させ、バージョン管理します。

もう一つの生産性ブースターは”Decision First”の強制です。ドキュメントの1行目に「本日の決定候補」を置く。意見が割れたら、その場で評価軸を言語化して合意、資料は後から追記。会議を“情報共有→議論→決定”の順でやると遅い。最初に決める構造へ“型”で矯正します。

訓練は毎日短く。10分シャドーライティング(優れた資料・メールを1本写経→自分の案件にリライト)を朝一にやる。加えてメタファ練(実案件を30秒比喩に変換→Slackに投下→翌会議で再利用)を週2本。人によってばらつく“表現の質”は、テンプレ×小さな反復で驚くほど揃います。KPIは「一次レス時間」「承認までの往復回数」「テンプレ使用率」「ABテストの勝率」。型工場は、結局“再現性のあるスピード”を作る装置です。

会議とメールのKPIダッシュボード――“言葉の損益”を月次で締める

最後は計測。測れない改善は続きません。ダッシュボードに置くべきは次の7指標。

1)承認リードタイム(提案送付→決裁の時間)
2)ラリー回数(件名単位の往復数/会議内の論点あたりの折返し)
3)手戻り率(納品物の再修正割合)
4)定義逸脱率(用語リストからの外れ使用の検出回数)
5)一次レス時間(Slack/メール)
6)決定ログ充足率(決定・条件・責任の3文が揃っている割合)
7)会議あたり純創出時間(決定×想定削減時間−会議コスト)

集計は難しくありません。カレンダーとスレッドURL、Decision Logを紐づければOK。週次で「悪化トップ3」をピックし、原因を言語的に特定(例:“評価軸未定義が手戻り率を押し上げ”)。翌週のテンプレに対策文を追加(例:「評価軸は会議冒頭に明示」)。つまり、KPI→原因→テンプレ改修→再測定の改善ループを回します。

そして経営視点に繋げるため、金額換算を徹底します。式はシンプル:

削減時間(h)×参加人数×時間単価=月次創出キャッシュ
さらに機会損失も推定。承認リードタイム短縮がプロジェクトの稼働開始を前倒しし、月次売上やリテンションにどれだけ寄与したかを概算でいいので積み上げる。ここまで可視化できると、言語改善は“文化活動”ではなく事業の収益ドライバーになります。
ダッシュボード運用の最後のコツは、賞与や評価にひも付けること。たとえば「承認LT-30%達成で評価+1」「Decision Log充足率95%以上でチーム賞」。評価に入れた瞬間、言葉の運用は“やって当然”に変わる。会議の質が上がれば、反射的にCFは前へ流れます。


ここまでで、語彙の資本化、メッセージ工場化、KPIでの締めという“運用の三位一体”を作りました。うまい話し方を目指すのではなく、誰がやっても一定以上に伝わる仕組みを先に設計する。これが、表現力と行動力の相関を“日次でキャッシュ化”する最短ルートです。明日からは、テンプレを1つ導入し、語彙を1つ資本化し、KPIを1つ測る――この「1・1・1ルール」から始めましょう。小さな回転が、驚くほど早くボトルネックを押し広げます。

結論:言葉は“前払いの信用”を生む——今日の一言が明日のCFを押し流す

私たちは毎日、目に見えない為替で取引しています。相手の時間、注意、優先度。通貨は言葉です。語彙の棚が整い、動線としての構造が引かれ、行動を揃える比喩が走るとき、あなたの一言は相手の不確実性をほどき、判断のための“前払いの信用”になります。逆に曖昧な一言は、相手の頭の中に引当金を積ませ、余分な確認や保険的なバッファという金利を上乗せさせる。結果、プロジェクトのキャッシュ・フローは静かに詰まっていく。——この記事で繰り返し伝えたかったのは、この単純で強力な相関です。表現できない人は、人に動いてもらえない。動いてもらえない人は、いつまでも“自分でやる”に縛られる。だからこそ、言語は才能ではなく、運用資産として設計して回すべきだ、と。

難しいことは要りません。明日の朝、会議の冒頭に用語の1行定義を3つ読み上げてみてください。依頼文はAPIテンプレで送ってみてください。議事の最後は“決定・条件・責任”の3文で締めてください。その小さな運用が、チームの帯域を増やし、手戻りを減らし、意思決定の締日を前倒しにします。数字は誠実です。承認リードタイムは縮み、ラリー回数は減り、Decision Logはたまっていく。やがて、あなたの名前は「話が早い人」「任せて安心な人」として組織の中で評価され、最も希少な資源——他人の時間——が自然と集まるようになる。これは昇進や売上だけの話ではありません。自分の時間が“未来の価値”へ投資される比率が上がるという、人生の配分そのものの話です。

最後に、合図をひとつ。「1・1・1ルール」を今週から。語彙を1つ資本化、テンプレを1つ導入、KPIを1つ測定。これだけで、言葉は“いい感じ”から“再現可能な収益装置”に変わります。あなたの一言が他人の行動を変え、その行動がプロジェクトのスループットを押し広げ、そこから生まれた時間と信頼が次の挑戦の原資になる。言語は信用創造のツールです。今日の一言を、明日のキャッシュに変えていきましょう。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

一度読んだら絶対に忘れない文章術の教科書
“読まれる順番”と“要点の絞り方”を見取り図で解説。PREPやSCQAの実装を迷わず回せるので、資料の動線設計を鍛えたい人に向きます。


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一生使える ビジネスメールの「型」〜悩まず、早く、“伝わる”メールを書く基本
件名・本文・締めの“型”を豊富なテンプレで提示。依頼をAPI化する運用(Endpoint/Success/SLA)と相性がよく、一次レス時間の短縮に直結。


もの・こと・ことばのイメージから引ける 比喩の辞典
状況に応じたメタファを“逆引き”できる実用辞典。チームで共通メタファ集を整備したいときの種本として最適です。


それでは、またっ!!

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