辞めるのは自分じゃない:退職代行が“日本の労働市場UI”になった

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

「辞める」を外注する時代、あなたの会社は“離職コスト”を見えてますか?

最近、身近な人の約20人に1人が利用する「退職代行サービス」が話題になっています。驚くべきことに、パーソル総研の調査では、正社員離職者の5.1%(約20人に1人)が退職代行を利用していると報告されました。しかも、その利用者は「無責任」どころかむしろ協調性や責任感の強い若手社員が目立ちます。さらに、利用料は3万円前後と手頃で、弁護士監修の対応により退職成立率が高いことから手軽さが人気です。本ブログでは、この退職代行現象を多角的に深掘りします。退職代行にまつわる最新データから「意外な事実」、企業にとっての「投資と損失」、個人のキャリア形成のヒントまでを網羅。読者の皆さんには、退職代行事情を知ることで「自分のキャリアと会社経営のしくみ」の新たな視点が得られるはずです。さらに投資や会計の視点も交え、人材への投資損失という観点から退職問題を考えることで、社会人としての視野が広がるでしょう。

本記事で得られる内容(要点):

  • 退職代行を利用する意外な人々の実態
  • 企業にとっての離職コスト(採用・引き継ぎ・組織への波及)
  • キャリアを投資と捉える新しい視点
  • 転職やキャリア設計に役立つヒント

退職代行ブームの実態

近年、退職代行市場は急速に拡大し、2025年には60億円規模に達すると予測されています。まるで「辞めるボタンが押せるUI」のように、労働者が仕事を終えるプロセスが簡便化されています。パーソル総研の調査によれば、退職代行利用者の約半数は20~30代の若手社員で、前職在籍1年未満が4割を占める早期離職が目立ちます。また、退職代行を知っている20代は8割超、実際に使ったことがある20代は5%に達しています。これほど若年層で利用が進む背景には、職場で直接辞められない事情があるのです。

若手中心の利用実態

退職代行の認知度や利用率には大きな年齢格差があります。20代社員の認知率は83%、利用経験者は5%に上るのに対し、40代以上では認知64%、利用1%に留まります。同時に、帝国データバンクや東京商工リサーチの調査では大企業の15.7~18.4%が退職代行経験を持つと報告されており、若手と企業の双方に波及する問題になっています。つまり、若手と大企業という「両極」から退職代行が浸透しており、それは一過性のブームではなく、新常識へのシフトと言えます。実際、TwitterなどSNSには「退職代行を使ったらスムーズに辞められた!」という声が溢れており、話題はさらに広がっています。

協調的な利用者像

退職代行を使う人は、意外にも「まじめで協調性の高い働き手」でした。調査データでは、利用者は「周りと協力して働きたい」という協調志向が強い一方、実際には職場で孤立しがちだと示されています。中には「辞めたら仲間に迷惑がかかる」と考える責任感の強い人も多く、通俗的な“自己中心的”イメージとは正反対の姿です。彼らが退職代行を選ぶのは、本心では周囲を気遣うがゆえの結果とも言えます。言い換えれば、退職代行利用者はむしろ「真面目で周囲を大切にしたい人」が多いとも受け取れます。

退職を言い出しにくい理由

では、なぜ協調的な人たちが退職を代理に頼るのでしょうか。調査によれば、利用者の約50%が「退職を言い出しにくかったから」と回答しており、人間関係やパワハラが背景にあります。実際に退職代行を使った人の7割以上が直属上司への不満を抱え、4割は上司からのハラスメントを経験していました。これらは本人が直接対峙するのを避けたくなる問題であり、退職代行はその「言いにくさ」を解消するインターフェイスと言えます。つまり、退職代行の増加は職場のコミュニケーション不足や組織構造への警鐘とも捉えられるのです。さらに、調査では約23%が「精神的に限界を感じた」と理由を挙げ、心身の健康問題も背景にあることがわかります。


退職代行利用者の多くは若年層で協調性の高い社員でした。彼らは責任感が強く、仲間を思いやる気持ちから退職を伝えられないケースが多いのです。逆に言えば、退職代行の利用増加は会社への警告サインとも言えます。次章では、このような“言い出せない退職”が企業にもたらすコストを見ていきましょう。

実際、労務SEARCHの調査では、退職代行利用経験者が約10人に1人(約10%)、今後利用したいと回答した人は約8割に上ることが報告されています。この数字は、この波が一過性ではなく今後ますます増えることを示しています。

企業が考える「退職のコスト」

企業にとって社員が辞めることは、これまで「突発的なリスク」とみなされてきました。しかし今や、離職は毎年繰り返される「構造的コスト」として意識されるようになっています。帝国データバンクや東京商工リサーチの調査では、大企業の15~18%もの会社が退職代行での離職経験を持つと報告されており、管理職や経営層でも無視できない課題になっています。

目に見えるコスト:採用と引き継ぎ

まず明らかなのは「採用コスト」の損失です。新しい社員を採用するための求人広告費や人材紹介料、面接官の人件費だけでも1人あたり100万~200万円以上かかります。抜けたポジションを補充するために再度採用活動をするコストも同様です。実際に、ある企業でマーケティング担当者1人の退職に伴う損失を試算すると、求人広告・面接に約95万円、引き継ぎ時間に約15万円など合計140~160万円にのぼりました。さらに、新人研修やOJTに投入した時間と費用が早期退職で回収できなくなる点も無視できません。

  • 採用・教育コスト: 求人広告費や人材紹介料、面接にかかる工数は一人あたり100万円超にのぼり、これらの投資は早期退職で水の泡になります。
  • 引き継ぎコスト: 前任者と後任者の引き継ぎに要する時間コストも大きいです。複数人で調整・資料作成するため、時間単価ベースで数十万円相当の負担になります。
  • 機会損失: 欠員の間、プロジェクトや営業機会が停滞し、顧客対応の質が低下するリスクが高まります。これにより長期的な機会損失が発生します。

目に見えないコスト:波及効果

採用費を超えて怖いのは「見えない損失」です。社員が抜けることでプロジェクトが遅延したり、ノウハウが失われたりする機会損失が発生します。さらに、残されたメンバーには残業増加や負担増が生じ、チームワークの乱れや士気低下につながります。場合によっては、退職率の高さが社外に伝わり、会社の採用力やブランド価値が低下するリスクもあります。つまり、離職1件が会社全体に連鎖して影響する損失は甚大です。

  • 組織機能の低下: 残業増加や精神的負担により、残留社員の士気が低下します。すると連鎖的にさらに退職者が増える悪循環が起こりえます。
  • ブランド・信用低下: 高い離職率は対外的な企業評価を損ない、将来の採用競争力や顧客信頼を低下させる可能性があります。
  • 機会喪失: 長期化した欠員は新規プロジェクトの遂行を困難にし、市場機会を逃す恐れがあります。

会計・投資の視点:人材は「投資」か「費用」か

企業は給与や研修に多額の「投資」をしていますが、早期離職が起こればそれがすべて浪費になります。分析によれば、新人が1年以内に辞めた場合の損失は約530万~580万円、中途社員では約640万~850万円に達します。会計上も、支払った給与や社会保険料は即時コスト化され、人材育成の投資は無価値になります。言い換えれば、社員の離職は企業の経営資源への投資が水泡に帰す大損失なのです。


企業側から見ると、退職代行による離職は極めて高額な経営コストです。採用・育成に費やした投資がゼロになるだけでなく、組織全体にマイナスの影響が広がります。この損失を減らすため、多くの企業が従業員のメンタルケアやエンゲージメント向上に力を入れ始めています。

個人にとっての「退職UI」

退職代行が登場した今、個人のキャリア選択肢は増えました。自分を「人材資本」と考えるなら、仕事の選択も株式売買のように投資判断で考えることができます。ここでは退職代行という「UI」が個人に与える意味を見てみましょう。

退職代行は逃げ道か、それとも選択肢か

退職代行を「逃げ」と見る向きもありますが、むしろ合理的な「選択肢」です。例えば、厳しい職場環境やパワハラから素早く離脱することで、心身の健康とキャリアを守れます。実際に利用者の多くは、自分の決断に責任を感じつつも、人生を前進させるための手段として退職代行を選んでいました。対面で辞めることに抵抗を感じるなら、専門家を介して手続きを進めて精神的負担を減らすのも有効です。言い換えれば、退職代行は自己防衛のツールであり、自分自身への投資とも言えるわけです。

キャリアを投資として捉える

キャリアを長期的な「投資」と考えるなら、辞めるべきかどうかも投資判断の一部です。今の職場で得られるリターンが小さいと感じたら、その時間やエネルギーを他に振り向ける判断も合理的です。実際、調査では退職時に会社に伝えられる表向きの理由より、実際は「人間関係が悪い」「給与が低い」などの本音が多いことがわかっています。つまり、表面的な事情に囚われず、本音でキャリアを選ぶことが重要です。退職代行は、その選択をサポートするツールと言えるでしょう。

企業文化への新たな問い

退職代行の普及は、企業に対する改善のチャンスでもあります。「なぜ社員が辞めにくいのか」を見つめ直せば、働きやすい環境づくりにつながります。例えば、面談制度の充実や評価基準の透明化、ハラスメント対策の徹底など、組織的な改革が求められます。実際、退職代行を使う人の退職理由と会社に伝えられる理由には大きなギャップがあり、これを放置すれば退職代行の利用は増え続けるでしょう。企業は「退職UI」が使われる現実を受け入れ、退職プロセスを負担ではなくキャリア移行の一プロセスと捉え直す必要があります。


退職代行は個人が自分のキャリアを守るためのツールです。キャリアを資産と考え、必要に応じて環境を変えることは決して怠慢ではありません。これからは企業も個人も、よりオープンで柔軟な働き方を設計していく時代です。

結論:新しい常識の幕開け

退職代行というサービスが普及した背景には、「働くとは何か」を再定義しようとする動きがあります。辞めるときに専門家の助けを借りるのは一見奇妙かもしれませんが、そこには一人ひとりの責任感と誠実さが表れています。どれだけ労働市場のUIが進化しても、それを操作するのは生身の人間です。そして、どのような選択をしても、自分らしい働き方を追求する気持ちは変わりません。

技術が進歩しても、最後に頼りになるのは人と人との絆です。退職代行が象徴するのは他人任せの選択ではなく、自分の人生を主体的にデザインする姿勢です。どんなUIでも、使いこなせるのは最終的に自分自身です。今日辞めるとしても、それは「人生の次の章への投資」。皆さん自身がこの新しい労働市場UIをどう使いこなし、自分と組織の未来を築いていくかを考えるきっかけになれば幸いです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社』退職代行モームリ
退職代行の話って、ネットだと“盛られた体験談”になりがち。でもこれは違う。現場の相談が集まる側だからこそ見える、「辞めたい会社の共通パターン」が具体例で刺さります。読んだ後に「うちの職場、やばい側かも…」と判断できる“診断本”。


『離職防止の教科書』藤田耕司
「辞めます」と言われた瞬間に焦るのは、もう遅い。離職って“突然のイベント”ではなく、だいたい予兆がある。この本は、上司・人事・現場の視点で、離職が起きる前に何を整えるべきかを手順に落としてくれます。チームを持つ人、これ読むと胃が痛くなるけど効きます。


『EXジャーニー ~良い人材を惹きつける従業員体験のつくりかた~』沢渡あまね 他
退職代行が“労働市場UI”なら、会社側に必要なのは「従業員体験(EX)」の設計です。採用〜オンボーディング〜日常〜退職までを一本の体験として設計する発想は、離職コストを“構造”として減らすのに直結します。会社のOSをアップデートしたい人向け。


『入門図解 職場のハラスメントの法律と対策(改訂新版)』林智之 監修
「辞めるのを言い出せない」原因の大半は、結局ここに帰ってくる。パワハラ・セクハラは感情論で戦うと泥沼ですが、法律の枠を知ると整理できます。会社側が何をするとアウトか/どう対応すべきかが把握できるので、管理職も当事者も“防御力”が上がる一冊。


『図解わかる 会社をやめるときの手続きのすべて(2025-2026年版)』中尾幸村 他
退職は「辞めた後」が本番。失業保険、健康保険、年金、税金…ここを知らないと、メンタルは軽くなっても財布が死にます。この本は、退職後の手続きを “損しない順番”で把握できるのが強み。退職代行を使う/使わない以前に、手元に置いておくと安心です。


それでは、またっ!!

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