金利上昇で地銀は本当に破綻するのか?〜投資と会計の視点から解き明かす真実〜

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

「金利上昇で地銀破綻」は本当か? 投資と会計の視点で見抜く金融の真実!

あなたは「金利が上昇すると、地銀(地方銀行)が持っている国債が値下がりして、含み損が増える。
だから地銀が破綻するかもしれない」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
もしこれが本当なら、預金を預けている私たちは不安になるでしょう。
しかし一方で、現実には地銀はそれぞれリスク管理を行っており、容易に破綻へと直結するわけではありません。
では、いったいどんな仕組みになっているのでしょうか?
そして、破綻の可能性に結びつくシナリオとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

本記事を読むメリットは大きく三つあります。

  1. 地銀のビジネスモデルと会計上の仕組みが理解できる
  2. 含み損」や「金利リスク」といったキーワードの本当の意味を把握できる
  3. 投資と会計の視点から、地銀破綻にまつわる噂の真偽や、私たちにとっての影響を深く考察できる

これらを踏まえることで、メディアやSNSの断片的な情報に流されることなく、自分自身で情勢を見極める力が身に付きます。
さらに、
「実際に破綻リスクが生じる可能性はあるのか」
「金融機関がどんな方法でリスクを管理しているのか」
「私たち個人投資家としてどんな行動をとればよいのか」
など、幅広い視点を得ることができます。
結果として、金融リテラシーが向上し、投資や資産形成においても冷静に判断するための基盤が身に付くでしょう。
ぜひ最後までお読みいただき、気になる点や不明な点をクリアにしていってください。

地銀が抱える国債の含み損とは何か?

国債における“含み損”の正体

多くの地銀が保有している資産として、国債があります。国債は政府が発行する債券であり、通常は「安全資産」と見なされることが多いものです。
しかし、マーケットで取引される以上、金利の変動に応じて価格が変動する性質があります。

  • 金利上昇 → 債券価格は下落
  • 金利低下 → 債券価格は上昇

たとえば、金利が1%のタイミングで買った10年国債と、金利が2%になったときに新たに発行される10年国債を比べると、当然後者の方がクーポン(利払い)が高いので人気が集まり、前者は相対的に魅力が下がります。
そのため前者の価格は下落し、債券を買った価格よりも時価が低くなるため“含み損”が生じるわけです。

実際の銀行経営では、こうした国債を「満期保有目的債券」または「その他有価証券」としてバランスシートに計上しており、会計上の取り扱いが異なります。
満期保有目的債券であれば時価の変動はPL(損益計算書)に反映されないケースが多いものの、時価情報の注記は要求され、資本増減や自己資本比率の計算に影響する場合があります。
また、売買目的債券や「その他有価証券」に分類している場合は、時価評価の影響が会計上の利益や損失に反映されることがあります。
このため、含み損があるからといって、即座に営業利益が大幅赤字になるわけではないという点は押さえておきましょう。

含み損があると何が問題なのか?

時価で見れば損失を抱えている状態になりますが、あくまでも“含み”であって、これが“実現”するかどうかは別問題です。
満期まで保有するのであれば、国債は額面通りに返済されるため、たとえ時価が一時的に下落していても、期限まで持ちきれば損失は発生しません(発行体である国がデフォルトしない限り)。

一方、問題になるのは銀行が流動性(現金化)が必要になった場合です。
例えば、急激に預金が流出してしまい、資金を確保するために保有していた国債を売却しなければならない状況に追い込まれると、時価の下落による損失が“実現損”として確定してしまいます。
ここで損失額が大きくなると、自己資本を圧迫し、最悪の場合は自己資本比率が基準を下回って破綻のリスクが高まる、というシナリオになり得るのです。

つまり、含み損はただちに破綻要因になるわけではないものの、マクロ経済環境の変化や預金流出などの要因が重なると、含み損が“実損”に転化して地銀の経営体力を脅かす可能性があるということになります。

金利上昇で地銀が破綻するシナリオはどう生まれるのか?

銀行が破綻に至る基本構造

銀行破綻の典型的なシナリオは、大まかに以下のステップで進みます。

  1. 含み損の拡大
    金利が上昇する、あるいは投資先の信用力が低下するなどして、保有資産の時価が下落する。
  2. 資金繰り悪化
    預金流出や、マーケットでの信用力低下により、銀行が資金調達をしにくくなる。
  3. 損失の顕在化(実現損)
    資金繰りを補うために、含み損のある国債や債券を売却せざるを得なくなり、損失が実際に計上される。
  4. 自己資本比率の大幅低下
    大きな損失により自己資本が減り、当局が定める基準を下回るか、あるいは金融市場の信認を失う。
  5. 破綻・経営統合・公的資金注入など
    自力での資本増強や経営改善が困難となり、破綻に至るか、別の金融機関に救済される。

この連鎖のなかで、最も大きな“トリガー”となるのは「預金流出」です。
銀行は日頃から一定の準備金や流動性資産を確保しているとはいえ、一気に預金者が資金を引き出す“取り付け騒ぎ”が起きると、手元資金が枯渇しかねません。
その結果、保有資産を慌てて売却しなければならなくなり、含み損が実現損に変わって、銀行の自己資本を大きく毀損する可能性があります。

地銀特有のリスク

地方銀行は、大手銀行に比べると事業規模や資本規模が小さい傾向にあります。
そのため、以下のようなリスクを抱えやすいといわれています。

  1. 地域経済への依存度が高い
    担保不動産の価値が下がる、地域企業の業績が悪化するなどすると、貸し倒れリスクが顕在化しやすい。
  2. 貸し出し先の分散が難しい
    中小企業や個人向け貸付が多く、リスク分散が限られる。
  3. 運用余力の限界と国債保有
    地域の貸出需要が伸び悩むと、資金運用先として国債をはじめとした債券に頼ることが多い。
    金利が上昇すれば、その分の価格下落リスクを抱えやすい。

もちろん地方銀行は、こうしたリスクが高まる状況に対応するため、あらかじめ金利スワップや先物取引などの金融派生商品を使ったヘッジを行ったり、満期の異なる債券を組み合わせて保有するなど、さまざまなリスク管理策を講じています。
一方で、すべての銀行が同程度にリスクヘッジできているわけではなく、行によっては十分な体制が整っていないところもあるかもしれません。

金利上昇→取り付け騒ぎへの短絡的な見方の危険性

SNSなどで「金利が上昇したら地銀が破綻する!」という主張を目にすることがありますが、これは条件をすっ飛ばした極論といえます。
前述のように、金利上昇による含み損の拡大は事実としてあっても、

  • そもそも含み損がどれくらい資本の厚みに対して大きいのか
  • 預金流出や資金繰り悪化の具体的なリスクがどの程度あるのか
  • リスクに備えるためのヘッジ取引や経営改善策がどの程度機能しているのか

などを総合的に見なければ、破綻リスクを論じることはできません。
単に「含み損が大きい=危ない」という図式で煽るのは、金融機関への不当な不安を生み出す可能性があり、結果的に取り付け騒ぎを助長する危険さえあります。

投資と会計の視点から見る地銀の現状と私たちができること

投資家目線:債券と株式の評価の違い

投資家として地銀に関心を持つ方、あるいは個人投資家として債券を組み入れている方も多いでしょう。
その際に押さえておきたいのは、株式の評価と債券の評価は大きく異なるという点です。
株式は将来の配当や企業価値の成長を期待して投資する性質が強いのに対し、債券は利息(クーポン収入)と元本返済があらかじめ決まっている(もしくはある程度予想しやすい)性質があります。
金利が上昇すれば既発債券の価格は下落しますが、満期まで保有すれば本来は額面が返ってくるのが基本です。

銀行が国債を保有する目的の一つは、安全かつ流動性の高い資産として、預金に対する支払いに備えることにあります。
大きなリスク資産ばかりに投資していると、いざ資金が必要になった際に現金化が難しくなるからです。
そのため、「含み損」が発生していても、帳簿上はあまり大きな影響を受けない枠組みを活用していることが多い。
金融庁や日銀も、その仕組みやリスク管理の状況を定期的にモニタリングしており、金融システム全体の安定を図っています。

会計処理の視点:HTM、AFS、売買目的などの区分

ここで押さえておきたいのが、銀行が保有する債券の会計上の区分です。主に以下のように分かれます。

  1. 売買目的債券(Trading)
    市場での売買益を狙う。四半期ごとに時価評価して損益がPLに反映される。
  2. 満期保有目的債券(HTM: Held-to-Maturity)
    満期まで保有する意図で取得した債券。
    原則として時価評価による損益変動はPLに計上されない。
  3. その他有価証券(AFS: Available-for-Sale)
    上記どちらにも当てはまらない証券。
    時価評価差額は包括利益(OCI)として計上されるのが一般的だが、売却などで実現した場合には損益がPLに反映される。

多くの地銀は、金利リスクをなるべく会計上で大きく計上しなくて済むように、満期保有目的債券の割合を一定以上確保していたり、その他有価証券として扱い、実際に売却しない限りは含み損を表面化させない工夫をしています。
これは「リスクを隠している」というよりは、銀行の“長期安定運用”という特性を踏まえた会計処理の選択肢ともいえます。

私たち個人ができること:冷静な情報収集と資産分散

情報が錯綜するなかで、私たち個人ができる最も重要なことは、冷静に情報を収集し、複数のソースを比較することです。
「〇〇銀行は含み損がすごいらしい」「金利上昇で国債が暴落している」というような断片的情報だけで預金を引き出してしまうと、それ自体が銀行の流動性を悪化させる要因にもなりかねません。

また、投資家としては“分散投資”が改めて重要になります。
銀行の株や債券を保有するにしても、1つの金融機関や1つの資産クラスに集中投資するのはリスクが高い。
地銀の破綻リスクがゼロとは言い切れない以上、自分のリスク許容度を把握し、複数の金融商品や銀行口座を活用することが望ましいでしょう。

  • 定期預金や普通預金の複数銀行への分散
  • 債券・株式・投資信託などをバランスよく保有
  • ネットバンクや証券会社も含めて、情報を日常的に比較検討

こうした基本的なリスク管理を行うだけでも、万が一のシナリオに備えることができます。

結論

金利上昇によって地銀が保有する国債に含み損が生じているのは事実です。
しかし、含み損が即座に銀行の破綻につながるわけではありません。
銀行は長期保有を前提にした会計処理の枠組みやリスクヘッジを活用しており、基本的には少々の金利上昇では経営が揺らがないように構造を作っています。
むしろ、地銀の破綻リスクが具体化するのは、預金者の不安心理による取り付け騒ぎや地域経済の不振など、別の要因が重なって資金繰りが一気に悪化したケースです。

私たち個人にできることは、こうした金融システムの仕組みを正しく理解し、噂や煽り文句に惑わされずに“自分なりのリスク管理”を行うことです。
たとえば、複数の金融機関を利用して資産を分散する、地銀の決算情報を確認する、メディア報道を鵜呑みにせず複数の視点から冷静に情報を整理するといった行動が、結果として大きな不安に振り回されないための防御策となります。

金利が上昇していく局面では、どの金融機関も含み損を抱えやすい局面に突入しますが、だからといって全ての銀行が危ないわけでもなければ、何も対策をしていないわけでもありません。
むしろ、普段から行われているリスク管理や規制当局のモニタリング体制などを知ることで、冷静な判断ができるようになるでしょう。
最終的には「金融リテラシーを高めること」こそが、個人にとっても、社会全体にとっても強力な武器になるのです。

本記事を通じて、金利上昇と地銀の破綻リスク、さらには地銀のリスク管理の仕組みについて深く理解していただけたなら幸いです。
金融業界のニュースは複雑に見えがちですが、少しずつ知識を得れば得るほど、社会や経済の成り立ちがよりクリアに見えてくるはずです。
そしてそれが、自分の資産を守り、増やすための指針にもなるでしょう。
ぜひ今後も継続的に金融知識をアップデートしながら、賢い情報収集と判断を行っていってください。

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