みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
その赤字、もしかして“天気”のせいかも?
「今日は雨だから売上は伸びないな…」そんな呟き、職場で聞いたことありませんか?でもそれ、本当に正しいのでしょうか?
たしかに、天気と売上の関係は直感的に理解しやすいテーマです。晴れれば観光客が増え、雨が降れば外出を控える人が増える——一見、単純明快なロジック。しかし、実はそこにはもっと奥深い“数字の物語”が隠れています。たとえば、雨の日のコンビニは来客数が増える? 天気が変わると利益構造まで変わる? そんな予想外の事実も、統計やPL(損益計算書)を丁寧に読み解くことで見えてきます。
この記事では、「気象データをどう財務に活かすか」という視点から、ビジネスにおける天気と利益の意外なつながりを掘り下げていきます。会計、マーケティング、統計の知識が交差するこのテーマは、データで経営を考えるすべての社会人にとって、新しい発見になるはずです。
ポイントは次の3つ:
- 天気が売上に与える影響は業種ごとに真逆であること
- 雨の日が実は「稼ぎどき」になる業界があること
- 気象データをPL予想に活かす「気象会計」という新潮流
「天気予報が、経営予報になる」。そんな未来を想像しながら、読み進めてみてください。
目次
天気が売上に与える“表と裏”

「天気が商売に影響する」──これは誰しもなんとなく感じていることですが、その影響は単純なプラス・マイナスの話ではありません。実際には、天気の変化が業種ごとにまったく違う形でPL(損益計算書)に反映されるのです。
雨で喜ぶコンビニ、泣く観光地
たとえば、雨の日。観光地ではキャンセルが相次ぎ、入場者数は激減。飲食・交通・宿泊すべてに影響が及びます。これにより、その日1日の売上は大幅減。季節の稼ぎ時だった場合、月次や四半期決算にも影響が出ることもあります。
一方で、駅近や住宅地のコンビニでは、雨の日こそ来店数が増加する傾向があります。これは「遠くまで買い物に行きたくない」心理が働き、近場で済ませる人が増えるため。傘を片手にお弁当やスナックを買う人々が、雨の日のPLを押し上げているのです。
興味深いのは、同じ“雨”でも、「立地」と「業種」によって全く逆の影響が出ること。つまり、天気の変化は“商機”にも“リスク”にもなるのです。
曇りの日は“グレーゾーン”
曇りの日はどうでしょうか? 実はこの「曖昧な天気」が、売上分析では最も解釈が難しいとされます。晴れと雨に比べて人の行動が読みにくく、業種によって「どっちつかず」の結果になるからです。
たとえばアウトドアショップでは、曇りの日に来店が減ることがあります。「雨が降るかも」と思うだけで、外出自体を避ける心理が働くためです。一方、インドア系の施設(映画館、ショッピングモール)では、曇りの日が「ちょうどよい外出日和」とされ、逆に集客が増えるケースもあります。
このように、曇りは「データの解釈」が問われる天候であり、PL分析においても一筋縄ではいきません。
天気による“変動費と固定費”の見え方
天気が悪化した日に売上が下がった場合、当然ながらPL上では「売上高」が落ち込みます。問題はそのときの“費用構造”。つまり「変動費」と「固定費」のバランスです。
飲食店などでは、天気による来店数の変動が大きいため、売上と連動して材料費(変動費)も上下します。しかし、家賃や人件費(固定費)は変わりません。雨の日に極端に来客が減ると、PL上では「赤字」に見えるリスクがあるのです。
逆に、ECサイトやデジタルサービスでは、天気に左右されにくい収益構造を持つ企業もあります。物理的な移動を必要としないため、天気と売上の相関が低く、固定費比率が高くてもブレにくいという強みがあります。
こうした天気とPL構造の関係を理解することは、「なぜこの月は利益が少なかったのか?」という疑問に対して、より本質的な答えを導くヒントになります。
実は「稼ぎどき」? 雨の日に売上が伸びる業界たち

「雨=売上減」と決めつけるのは早計です。実は、雨の日こそ売上が伸びる業界や業態も多数存在します。気象条件を“チャンス”に変える視点を持つことで、PLの見え方もガラリと変わってきます。
自販機・宅配サービスは天候に強い?
まず注目したいのは、自動販売機や宅配サービスといった「非対面・非店舗型」のビジネスです。雨の日、人々は外出を控える一方で、「手軽に済ませたい」「濡れずに済ませたい」というニーズが高まります。
この心理は、自販機での飲料購入や、ウーバーイーツなどの宅配利用に直結します。ある大手飲料メーカーの統計によると、雨の日は自販機の売上が平均で5〜10%増加するとの報告もあります。また、宅配プラットフォームでは、降雨予報と連動してオーダー数が急増する傾向があり、注文数のピークは昼食時より夕方に集中することが多いのが特徴です。
このような業種では、「雨の日が繁忙期」という認識がPL管理の前提となっているケースも多く、まさに気象とビジネスの融合が進んでいます。
ドラッグストアは「雨の日特需」が狙い目
意外に思われるかもしれませんが、ドラッグストアもまた「雨の日に売上が上がる業態」のひとつです。特に、傘・レインコート・風邪薬・ティッシュなど、天気や体調に直結する商品群は天候との連動性が高く、店舗側もあらかじめ陳列位置やPOPで工夫を凝らします。
たとえば、天気予報で「今週はずっと雨」のようなコメントが出ると、店内ではすぐに「雨グッズ特設コーナー」が立ち上がる。風邪薬やマスクも目立つ位置に再配置され、需要を逃さないような設計が施されます。
このように、短期的な気象変化に対応できる柔軟なマーケティング戦略は、PLに直接インパクトを与える即効性の高い手法といえます。
「雨割」「傘ポイント」など販促施策で逆転狙い
さらに近年では、雨をネガティブ要因ではなく、販促チャンスとして活用する施策も注目されています。たとえば「雨の日割引」や「傘を持って来店でポイント付与」など、天気連動型キャンペーンがそれにあたります。
あるアパレルショップでは、降水確率が50%を超えると自動的に割引が適用される仕組みを導入しており、「雨だから行きたくない」が「雨だから行ってみよう」に変わる仕掛けとなっています。実際に、これにより雨天時の来店数が約15%増加したという実績もあります。
このように、天気を“販促のフック”として活かせる企業は、PL上で悪天候をマイナスからプラスに転換することが可能です。つまり、「雨が降るかどうか」は単なる気象情報ではなく、経営戦略の引き金にもなりうるのです。
天気予報が経営予測に?「気象会計」の可能性

売上と天候の関係を見てきましたが、さらに一歩進んで、「気象データをPL予測に組み込む」という考え方が注目されています。それが、“気象会計”と呼ばれるアプローチです。これは、天気の変化を会計的に捉え、戦略に落とし込むという、まさにマーケ・会計・統計の交差点にある新しい経営視点です。
気象データと売上の相関分析
気象会計の出発点は、「自社の売上と気象との関係を知ること」です。過去の売上データと気象情報(気温・降水量・湿度など)を突き合わせて、どのような気象条件のときに売上が上下するかを分析します。
たとえば、あるベーカリーでは「気温が20度を下回り、かつ曇りの朝は、菓子パンの売上が1.3倍になる」という法則を発見しました。これをもとに、対象日には生産量を増やし、チラシやSNS広告を強化。結果として廃棄率が下がり、利益率が向上したのです。
このように、「気象条件をトリガーとした売上変動モデル」を構築することで、PLの予測精度が大きく向上します。
「週次PL予測」に天気を組み込む時代
多くの企業では、月次や四半期単位でのPL予測を行っていますが、気象会計ではさらに細かい「週次」や「日次」単位の予測が重要になります。なぜなら、天気の影響は非常に短期的に現れるからです。
具体的には、「来週は雨が続く予報→店舗売上減が見込まれる→仕入れを抑制→人員配置を調整」というように、予報をトリガーにPDCAを回す体制を整えることで、無駄な支出を減らし、利益率を守ることができます。
実際、ある外食チェーンでは、気象庁の週間予報をもとに毎週PLを修正・管理する体制を導入。結果として、材料廃棄コストが月間20%減少したという実績もあります。
会計士・アナリストも注目する「気象リスク」
会計の世界でも、気象データの活用は今後のトレンドになりつつあります。特に、業績に与える短期的インパクトや、予測モデルの妥当性を説明する材料として、気象リスクの“数値化”が求められています。
証券アナリストによる企業分析でも、「今期の業績未達は悪天候の影響か?」といった視点が重要視されており、IR資料における気象リスクの説明責任も高まりつつあります。
これに対応するためには、社内での「気象×会計」データ統合と、経営層への報告スキームの整備が不可欠。天気という一見不確かな要素を、会計的な視点で“見える化”し、戦略へ落とし込む力が問われる時代が来ているのです。


結論:気象という“未来の数字”を味方にする
「たかが天気、されど天気。」
一見、ただの環境変数に見える“天気”は、実は企業のPLを大きく揺さぶるファクターであり、場合によっては収益構造を変える力すら持っています。この記事で見てきたように、同じ雨でもある企業にとっては追い風になり、別の企業には逆風となる。重要なのは、その風向きを見極め、どう舵を切るかです。
これからの時代、経営に必要なのは「数字」と「直感」だけではありません。「環境」と「予測」という、動的な視点も不可欠です。気象データを単なる天気予報ではなく、経営予報として捉える。つまり、天気を「読む」のではなく「使う」力が求められているのです。
PLは過去の数字でありながら、その背後には無数の要因が絡んでいます。気象という自然のリズムを把握することで、数字に“意味”が宿り、戦略に“意図”が宿る。そんな未来志向の会計が、「気象会計」の本質です。
最後に──あなたのビジネスの利益が、もしかしたら“空模様”に影響されているとしたら?
その問いに「Yes」と答えられる人ほど、これからの経営に強くなれる。そう、空を見上げることは、経営を見直す第一歩なのです。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩』
会計士が著す「気候・天候の変動が企業経営に与えるリスクと財務的影響」をわかりやすく解説。自然災害のみならず、日々の天候による売上やコスト変動までを扱い、気象会計の導入を検討する企業にとっての初学書として最適です。
『天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた』
山岳気象予報士による、天気予報の精度やことわざ(「朝焼けは雨」等)の科学的検証をスマートに届ける一冊。企業が「どの天気予報を信じ、どう戦略に活かすか」を考える際に参考になる、科学的な視点が散りばめられています。
『山の観天望気』
雲の動き・空模様から気象の変化を読み取る技法が、イラストや図解とともに解説されています。ビジネス視点で「短期予報をどうPLに活かすか」を考えるうえで、直感的な気象判断力を養う助けとなるでしょう。
『山岳気象大全』
500点以上の図表を駆使し、天気図からデジタル気象データ活用まで幅広く解説。高度な気象分析が可能な一冊で、PL予測の高度化、モデル精度向上を目指す経理・アナリスト層にも有用です。
『総予測2025』
「トップ経営者に問う24業種の天気予報」を特集。三菱UFJやみずほ銀行など金融業界トップが、気象と業績の関係についてコメントしており、「業界・企業単位で実務者がどう天気を意識しているか」をリアルに知ることができます。
それでは、またっ!!

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