なぜ“炎上商法”は黒字になるのか?──フォロワー≠信用、でも売上は作れる時代

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

その“バズ”、本当にあなたの信用を削ってない?

スマホを開くたび流れてくる“燃えている”タイムライン。──「なんでこんなに叩かれてるのに、あのインフルエンサーは逆に儲かってるんだ?」そうモヤモヤしたこと、ありませんか? もしその疑問を会計という“数字のレンズ”でスパッと切り分けられたら――炎上劇の裏側が、驚くほどクリアに見えてきます。

本記事は、炎上=バズ(短期売上)と信用(長期資産)を“財務三表”で読み解くためのガイド。読後には次の3つが手に入ります。

  1. PLとBSでバズを数式化 ─ 「数字で語れる人」になれる
  2. ゾンビ経営の功罪を診断 ─ 炎上で黒字を装うカラクリを見抜ける
  3. “燃やさず稼ぐ”SNS戦略の型 ─ 将来キャッシュとブランド価値を同時に伸ばす方法

炎上がもたらす瞬間風速のキャッシュ、そしてその陰で目減りする“無形資産”──この二つを同じシートに並べてみたら、SNSマーケの景色はまるで違って見えるはず。さぁ、数字を味方に「フォロワー≠信用」というパラドクスを解き明かし、情報過多の時代を“知的に泳ぐ”武器を手に入れましょう。

バズ=PL:瞬間風速でつくられる“黒字”の正体

なぜ炎上すると売上が立つのか

SNSでの「炎上」は、単なるネガティブイベントではありません。アルゴリズムの観点から見ると、炎上とは“異常値”であり、異常値は拡散のトリガーです。Twitter(現X)やInstagram、TikTokは、短時間に急激なリアクションが集まった投稿を“関心が高い”と判断し、通常よりも広範囲に表示します。結果的に、炎上投稿は広告費をかけなくても爆発的なリーチを獲得します。人々の感情、特に「怒り」や「嫌悪感」は共有されやすく、引用リポストやコメントで連鎖的に広がる。これが“バズ”の正体です。

バズの恩恵を最も受けるのが、炎上直後に貼られた商品リンクやサブスク導線です。興味本位でクリックした人が、そのまま「おもしろ半分」でコンテンツを買ってしまう現象が起きます。たとえば、有料noteやD2C商品のリンクが貼られていれば、単価1,500円でも100万表示×1.2%クリック率×2%購入率で、売上360万円が一晩で立つ。PL上は「黒字」。これが“炎上してるのに儲かってる”ように見える構造です。

本当に儲かっているのか?数字で見抜くカラクリ

しかしこの黒字、実は“見せかけ”である場合が多いのです。なぜなら、PLには「返金」「訴訟対応」「ブランド毀損」といった後から来る負債が反映されていないからです。有料コンテンツが「中身が薄い」と炎上すれば、プラットフォーム経由で返金リクエストが増加します。noteやBASEでは、返金申請が売上の3〜10%に達するケースもあります。

さらに、バズに便乗して広告単価を上げようとすると、費用(広告宣伝費や外注費)も一時的に跳ね上がり、粗利を圧迫します。また、短期的な利益を過信して、人材やオフィス、在庫に“先行投資”してしまえば、翌月のキャッシュフローは赤字転落。これはまさに「バズの帳簿バブル」です。

一見、黒字。でも実際には「利益のタイミングとキャッシュの動きがズレている」という、会計初心者が最も見落としがちな罠にはまっているだけ。これを見抜くには、PLだけでなく、資金繰り表(キャッシュフロー計算書)を一緒に見る必要があります。

バズを“数字で操る”ための3つの視点

本質的に、バズ=突発的なアクセス集中=瞬間風速。ここに売上をつなげるには、バズの入り口(集客)から出口(購入)までの「数字の漏れ」を限りなく減らす導線設計が不可欠です。CTR(クリック率)、CVR(購入率)、LTV(顧客生涯価値)という“数字のレンズ”を持てば、炎上すらもマーケティング戦略の一環として冷静に評価できます。

ただし、会計視点で冷静に見ると、「売上」と「信用」は相反する場合があります。炎上を利用するということは、信用を削って売上を得るというトレードオフ。つまり、それはPL(利益)を最大化するために、BS(信用=無形資産)を切り崩す戦略だということ。この見えない資産をどこまで削るか?という線引きが、バズを“武器”にするか“毒”にするかを分けます。

炎上を冷静に数式で捉えることで、衝動ではなく設計された“短期収益モデル”に変える。バズに翻弄されず、自らコントロールする側に回るためには、まずはこのPLの仕組みを見抜く力が必要です。

信用=BS:見えない資産がすべてを決める

フォロワー数は資産なのか?

SNS時代において「フォロワーが多い=影響力がある=価値が高い」と信じられている空気があります。しかし、これは会計的に見ると非常に危うい思い込みです。フォロワー数はあくまで“リーチのポテンシャル”であり、資産ではありません。実際、数十万人のフォロワーがいても「誰も買わない」「誰も信じていない」というインフルエンサーは山ほどいます。それは、フォロワーが“数字”であって“信頼”ではないからです。

会計の世界で“資産”とは、「将来キャッシュフローを生む可能性が高いもの」と定義されます。つまり、フォロワーではなく、フォロワーとの関係性=信頼こそが、BS(貸借対照表)に載るべき“無形資産”なのです。この信頼にはいくつかの目に見えない構成要素があります。たとえば「リピート率」「紹介数」「ポジティブなコメント」「クレーム率の低さ」などです。これらはすべて、将来の収益を安定させ、予測可能にする“資本のような存在”です。

つまり、フォロワー数を増やすことではなく、信頼スコアを上げることが、BSを強くするということ。そして、BSが強ければ、バズに頼らなくても持続的な売上(ストック型のPL)を生み出すことができる。これが“信頼が資産になる”メカニズムです。

信用を数字で捉える視点

信用=BSの無形資産は、実務上は“のれん”や“ブランド価値”として扱われますが、未上場の個人インフルエンサーや中小企業の場合、これらの資産は財務諸表に現れません。だからこそ見落とされ、消耗されがちです。しかし、現代ではこの信用の価値を“定量化”する試みが始まっています。たとえば、SNS分析ツールで「ポジティブ率」「エンゲージメント純度」「過去1年の炎上回数」などを指標として管理する企業が増えています。

また、会計的に見れば、信用が下がるということは「将来のキャッシュフローが不確実になる」ことを意味します。これをDCF(ディスカウントキャッシュフロー)で見ると、割引率(WACC)が上昇する=企業価値が下がる、ということになります。つまり、信用の毀損はBSだけでなく、企業全体の“評価額”にも影響を及ぼすのです。炎上が続いた企業の株価がジリジリ下がるのは、まさにこの「見えない資産の目減り」に市場が反応しているからです。

信用は“燃やす”と戻らない

バズの陰で見過ごされがちなのが、信用の「不可逆性」です。たとえば、炎上によって一度失った顧客の信頼は、広告費では取り戻せません。むしろ、取り戻そうとすると逆効果になり、「ごまかしてる」「必死すぎる」とさらに反感を買うケースが多い。つまり、信用は現金のように“補填可能な資産”ではなく、“燃やせば消える”一方通行の資産なのです。

これは個人ブランドでも同じです。一度「胡散臭い」「信用できない」とラベリングされた人は、どんなに役立つ情報を発信しても評価されず、アルゴリズムにも“影響力のない投稿”として処理されてしまいます。アルゴリズムによる信用スコアの低下は、表示回数やCTRの減少というかたちで表面化し、PLにも直撃します。

逆に言えば、信用を失わず、じっくりとBSの無形資産を育てている人ほど、広告費をかけなくても自然と売上が立ち、紹介や再購入に支えられて“長生きするPL”が築けるということ。目先の数字に目を奪われず、信頼を“築く経営”をしているかどうかが、1年後の勝負を分けます。

ゾンビ経営:信用を削って生き延びるビジネスの実態

“信用切り売り型”ビジネスモデルの正体

一時的な炎上で売上が急増し、その数字をもとにスポンサー契約やメディア露出が増える──これがいわゆる“ゾンビ経営”のスタートです。ゾンビ経営とは、すでにブランドとしての信頼が失われつつあるにもかかわらず、PL(損益計算書)上の売上や利益だけを武器に延命する経営スタイルのこと。これは短期的には「数字が良いから大丈夫そう」と誤認されがちですが、実態は“信用という体力を削りながら生きている状態”です。

たとえば、過去の炎上で信頼を損なったインフルエンサーが、再び注目を集めるために意図的に刺激的な発言や倫理ギリギリの企画を仕掛けてバズを狙う。このとき、BS(貸借対照表)上にある“無形資産”はまた削られますが、同時にPL上には売上や利益が立ち、見た目は黒字になるのです。これは、火事場で家具を燃やしながら暖を取っているようなもの。やがて燃やすものが尽きれば、寒さに耐えられなくなる日は必ずやってきます。

投資家・企業・フォロワーが“騙される”理由

ゾンビ経営がやっかいなのは、その“仕組み”が外から見えにくいことです。炎上によってフォロワー数や再生数が急増すれば、企業のスポンサー担当者は「いま注目されている」と勘違いしやすくなります。数値的には売上が伸びており、広告費あたりのリーチ単価も下がっているように見えるため、ROIが良好に見えるのです。

また、投資家やメディアが「SNSの影響力=成長ポテンシャル」と捉える場合、PLの数字だけを見て資金提供するケースもあります。その結果、ゾンビ経営でも資金調達や提携ができてしまい、本人も「このままでいいのかも」と錯覚してしまうのです。しかし、実際にはBSの無形資産は毎回減っており、次第に“次のバズ”が生まれにくくなる構造になっていきます。つまり、このモデルは信用という燃料の“枯渇”とともに、急速に成長余地を失っていくという宿命を抱えているのです。

信用残高が尽きた瞬間に訪れる崩壊

一度や二度の炎上では崩れない場合もあります。なぜなら、一定の信用残高がまだあるからです。ファンが「今回はちょっと言い過ぎただけ」と庇ってくれる余地がある限りは、ブランドとして生き延びられます。しかし、その“信用の限界ライン”を超えた瞬間──フォロワーの信頼が完全に失われ、投稿が無反応になり、ブランドからのタイアップも打ち切られた瞬間、ゾンビ経営は突如として崩壊します。

このときPLは急激に収縮し、BSには何も残らない。企業であれば株価が急落し、個人であれば収益導線が一気に途絶えます。しかも、かつて炎上を利用してきた分だけ「過去の発言が掘り返されやすく」「再起に対して厳しい目が向けられる」傾向もある。これは、いわば信用を“借金”として積み上げてきたツケなのです。

信用を削ってPLを回すことは、短期的な数字をつくるうえでは強力な手法です。しかし、それは“1回きりの必殺技”に過ぎません。連発すればするほど、見えない資産を失い、組織も個人も再起不能なダメージを受けます。長期的な事業価値を見据えるなら、PLの派手さよりも、BSの健全性を守り続ける地味な努力こそが、本当の差を生み出すのです。

結論:数字の奥にある“信頼”という資産を見よ

炎上商法がもたらす黒字は、たしかに“速く”“目立ち”“儲かって”見えます。でもその実態は、目に見えない資産——信用——を少しずつ、確実にすり減らしていく取引に過ぎません。そして信用とは、一度失えば元に戻すのが極めて難しい、いわば“再生不能の資産”です。

数字の世界には、売上も利益も、フォロワー数もあります。しかし、会計が本当に映し出すのは「人が、どれだけ他者から信じられているか」という無形の力です。PLの先にあるBS、そしてそのさらに奥にある“関係性の厚み”に気づいたとき、私たちは数字を使って人の温度を読み取れるようになります。

バズに翻弄されるのではなく、信頼に根ざした発信を積み重ねること。時間はかかるかもしれない。でも、それができた人や企業こそが、10年後も「価値ある存在」として生き残るのです。

あなたの今日の投稿が、5年後の資産になるか、それとも一夜の売上で燃え尽きるか。判断を分けるのは、目の前の数字ではなく、未来に対してどれだけ誠実でいられるかです。

バズより深く、数字より温かく。
信頼という見えない資産こそ、あなたのいちばん大きな武器なのです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『新・現代会計入門 第6版』
会計の基礎から応用まで最新の視点で整理された定番テキスト。PL/BS/CFといった三表の構造を丁寧に解説しており、本ブログで語った「売上の幻影」と「隠れた負債」を会計的に読み解く力を養うのに最適です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

新・現代会計入門 第6版 [ 伊藤邦雄 ]
価格:4,400円(税込、送料無料) (2025/7/3時点)


『企業価値経営 第2版』
無形資産(ブランド・信頼)を含む企業価値の測定と経営への活用法を体系化。DCFやWACCの仕組みを実務視点で学べ、「信用=資産」の概念が深く理解できます。炎上による信用低下が企業価値にどう影響するかを考察するうえで大いに役立ちます。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

企業価値経営 第2版 [ 伊藤邦雄 ]
価格:4,840円(税込、送料無料) (2025/7/3時点)


『会計の再生 21世紀の投資家・経営者のための対話革命』
ローバル視点で「財務情報とブランドリスクの対話」の重要性を説いた一冊。SNS時代の透明性や無形資産のリスクを考える上で示唆に富んでいます。現代のデジタル炎上にも通じる内容です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【中古】 会計の再生
価格:16,330円(税込、送料無料) (2025/7/3時点)


『コーポレートブランド経営 個性が生み出す競争優位』
やや古い出版ながら、企業・個人問わず「ブランドの価値を経営資源として使う方法」を説いた原典的教科書。信頼を焼かずに価値を築くという本ブログのテーマとも親和性が高く、理論的背景としておすすめです。


『無形資産の会計』
 無形資産の定義、評価方法、減損テストの最新基準をコンパクトにまとめた実務書。払うべき「見えないコスト」を具体的に把握でき、炎上商法における潜在的BSリスクを捉えるうえで有用です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【中古】 無形資産の会計/伊藤邦雄【編著】
価格:3,448円(税込、送料別) (2025/7/3時点)


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です