恋愛しない若者たちのBS──“心の含み損”が広がっていく社会

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

あなたの人生BS、愛情資本は本当にゼロでいいの?

“恋愛コスト”を数字で見積もると見えてくるもの。

もしあなたが「恋愛なんて効率が悪い」と感じているなら、その直感は単なる気分ではなく、キャッシュフローに置き換えられる“経営判断”かもしれません。
飲み会代・デート代・移動時間──恋愛には確かに目に見える支出があります。しかし、恋愛を通じて得られる人脈、共感スキル、行動力といった“無形資産”は、将来価値をもたらす投資でもあります。ところが近年、Z世代の7割近くが「交際相手はいない」と答え、3割が「恋愛経験ゼロ」のまま社会に出る時代になりました。社会は静かに“恋愛停止”モードへと舵を切り、個人の貸借対照表から〈愛情資本〉が消えつつあるのです。

本稿では

  1. 若者の恋愛離れを示す最新統計とその背景
  2. 恋愛をやめたとき、BS・PL・CFにどんな“含み損”が発生するか
  3. 恋愛を投資案件として再評価し、ポートフォリオに組み込む方法

を、会計と投資のレンズで深掘りします。読み終わるころには、恋愛経験がなくても“心の財務諸表”を自力で組めるようになり、無形資産をどう強化するか、ロジカルかつワクワクする戦略を描けるはずです。

「恋愛停滞国」の決算短信――データが示す含み損

2025年に公表された国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、18〜34歳の未婚男性の69.8%、女性の59.1%が「交際相手はいない」と回答しました。さらに20代未婚者の約3割が「これまで一度も恋人がいたことがない」と明かしています。

背景には、

  1. 実質賃金の伸び悩み、
  2. SNSで可視化された“上位1%の恋愛成功例”による相対的剥奪感、
  3. マッチングアプリという“常時オプション”の存在が先送り行動を強める

──という3つの構造があります。行動経済学の実験でも、恋人探しは「締切のない課題」として後回しにされやすいことが確かめられています。

ここで貸借対照表(BS)をイメージしてください。現預金=可処分所得が減らない代わりに、通常は「恋愛投資」として計上されるはずのソーシャルキャピタル(交友関係・共感力・自己肯定感)の勘定科目がゼロになり、代わりに“時間預金”が膨らむ構造です。表面上の純資産は維持されますが、実は将来キャッシュフロー(CF)の源泉となる無形資産が目減りしています。

さらに、恋愛市場から撤退した若者は、飲食・旅行・ブライダル・住宅といった関連産業への消費を抑制します。コロナ禍以降、若者は「必要な時に必要なだけ使う」というオンデマンド志向を強め、車もブランド品も“シェア&リセール”で済ませる傾向が顕著になりました。恋愛もサブスクリプション的にアプリで“使い捨て”れば良い──そんなコスト最小化ロジックが広がっています。

しかし、会計基準には「コストか資産かを決めるのは将来経済的便益を生む可能性」だという原則があります。投資家が研究開発やブランド価値に資本的支出を行うのと同じく、恋愛に投入した時間・金銭・感情は、ネットワーク・レジリエンス・創造性という形で未来CFを押し上げる可能性があるのです。恋愛ゼロのBSは、含み損こそないが成長オプションもない──いわば“ディフェンシブ偏重ポートフォリオ”と言えるでしょう。

今期の「心の決算短信」を締めると、売上(=心の充足感)は横ばい、営業CF(=日々のモチベーション)は微増、しかし研究開発費に相当する恋愛投資がゼロのままでは、来期以降の成長シナリオが描けません。テック企業に置き換えれば、ユーザー基盤を広げずにコストだけ下げている状態。IPO は近づくどころか、バリュエーションはじわじわとディスカウントされます。

数字の裏にあるストーリーはこうです。「恋愛は可処分所得を食う」という単純なPL思考が、“愛情資本”をオンバランスさせないままBSをスリム化。その結果、投資家(未来の自分)から見れば、成長投資を怠るゾンビ企業と同じ評価になってしまう──これが“恋愛停滞国”の本質です。

ソーシャルキャピタル勘定を開示せよ――孤独という未認識負債

恋愛を避ける若者が増えるにつれ、“孤独コスト”がBSの見えない負債として積み上がっています。日本総研のレポートによれば、孤独・孤立が健康に与える悪影響は医療費を通じて年間1.8兆円規模の経済損失につながると推計されています。

さらに東京大学の最新調査では、従業員12人に1人が仕事中に深刻な孤独感を抱えており、そのグループは他の従業員に比べて欠勤日数が2倍、生産性は15%低いことが確認されました。企業のPLで言えば、人件費が同じでもアウトプットが減る“稼働率低下リスク”です。

孤独は個人のメンタルヘルスを蝕むだけでなく、企業のROEを押し下げ、国家財政にも連鎖します。内閣府は2025年から孤独・孤立対策推進交付金を創設し、自治体に“孤独ESG”改善を呼び掛けていますが、開示義務がないため企業の注目度はまだ低いままです。

そこでカギになるのがソーシャルキャピタルの開示です。社会科学では「信頼」「互酬性」「ネットワーク」の3要素が地域経済成長を下支えすると実証されています。国交省の研究でも、ソーシャルキャピタルが1ポイント高い地域はGDP成長率が0.8ポイント高いと報告されています。(参考:mlit.go.jp)にもかかわらず、多くの個人は自分のBSに“友情・恋愛・家族関係”を資産として計上せず、貸倒引当金(=失恋コスト)ばかり恐れて投資判断を先送りしています。

情報開示のゲームチェンジは株式市場で起きています。金融庁は2024年に「人的資本・無形資産の好事例集」を公表し、東証プライム上場企業は人的ネットワークやエンゲージメントを定量化してIR資料に載せ始めました。 もし企業が恋愛や家族関係を直接開示する日が来たら──と想像すると荒唐無稽に聞こえますが、個人がMy IRレポートを作り、SNSで“ネットワーク資本状況”を共有する時代は案外近いかもしれません。

ここで一歩踏み込んで、恋愛の“含み損”を測定する簡易式を提示します。

孤独負債=(週当たり交流時間の日本平均−自分の実績時間)×社会的支援単価(¥3,800/h)

社会的支援単価は、孤独対策に使われる行政コストから逆算した概算値です。あなたの週当たり交流時間が平均より5時間少なければ、年間約100万円分の“潜在損失”が発生している計算になります。ここで初めて、恋愛投資のNPVをPLに戻して評価し直すことが可能になるのです。

幸福研究では「交流の量」よりも「交流の質」が幸福度を決めるという結果が得られています。つきあいの質が高いほど、同じ人数でも主観的ウェルビーイングが向上するというものです。(参考:jstage.jst.go.jp)ここで会計的に面白いのは、質の高い関係ほど“償却年数が長い”という点です。短期的な飲み会は翌日には費用化されますが、深い信頼関係で結ばれたパートナーシップは、長期資産として10年以上にわたりCFを生み続けます。恋愛を“固定資産”化するか“流動費用”で終わらせるかは、質への投資次第というわけです。

合理性の罠を超えて――恋愛投資を繰延資産にする3つの戦略

「それでもAI彼女で十分」と言う声が聞こえてきそうです。実際、AIコンパニオン市場は2025年に1,200億円規模へ拡大する見込みで、中国や米国では18%のシングル層が既にAI恋人を利用しています。(参考:axios.com)VR・AR技術に支えられた“擬似的関係”はコストが安く、失恋リスクもほとんどありません。

しかし投資の世界で“ゼロリスク商品”のリターンが低いように、AI恋愛は安定CFこそ生むものの、スケールアップが難しいという弱点を抱えています。人間関係がもたらす「予期せぬ機会」はオプション価値そのもの。たとえば、配偶者の友人ネットワークが思わぬ転職口をもたらすケースは少なくありません。オプション価値を捨てて固定利回りだけを取るか、リスクとセットでギャンブル的成長を狙うか──ここに恋愛の投資判断が集約されます。

戦略① “マイクロデート”でCAPEX を平準化

恋愛投資をいきなり大型プロジェクトにせず、オンライン通話やランチ会など小口で分散させます。これによりROI を逐次モニターでき、含み損が出そうなら即座に撤退可能。まさにスタートアップのリーン開発です。

戦略② “ソーシャルETF”を組成

単一の恋愛関係に集中せず、趣味コミュニティ・勉強会・スポーツサークルといった分散ネットワークに小額ずつ投資します。個人版ETF でベータを維持しつつアルファ(深い関係)を狙うイメージです。人的資本を“セクター別”に可視化すると、ポートフォリオの歪みが分かります。

戦略③ “人的資本IR”を公開

金融庁の好事例集を参考に、自分の学習時間・新規出会い数・フィードバック獲得数を四半期ごとに開示し、友人やフォロワーからレビューを受けます。公開することでスキルとネットワークのアップサイドが顕在化し、セルフESG評価がアップ。恋愛は収益機会よりも学習曲線を早める“繰延資産”として扱えるようになります。

なお、生涯未婚率の上昇は社会保障費や住宅市場にも影響します。みずほリサーチによると単身化が進むと、小口住宅需要増で建材価格が上がる一方、相続未活用資産が滞留しGDP成長を0.3ポイント押し下げるリスクが指摘されています。(参考:mizuho-rt.co.jp)個人が恋愛投資を先送りする行動が、実は自分が運用するREITや生活コストに跳ね返るというわけです。

つまり恋愛を“しない自由”はあるものの、長期投資家としては機会損失という見えないトータルコストを常に意識する必要があります。あなたのポートフォリオが株・債券・暗号資産で見事に分散されていても、〈人〉という最古かつ最大の資産クラスを外している限り、真の意味でのα(超過リターン)は発生しません。

結論――“愛情資本”を取り戻す決算日

今日この瞬間、あなたのBSには〈現金〉も〈株式〉も並んでいるでしょう。しかし「心の含み損」を測定する勘定科目はまだ空欄のままかもしれません。孤独という未認識負債は静かに償却期間を短くし、あなたの将来CFを侵食します。

だからこそ、恋愛経験ゼロでも悲観する必要はありません。会計の世界には“損失は早期に、利益は慎重に”という保守主義の原則があります。含み損を認識したその日が、再投資のスタートラインなのです。小さなマイクロデートでも、コミュニティへの参加でも構いません。わずかな投入がソーシャルキャピタルを再評価させ、PLを黒字に転じさせる起爆剤になります。

最後に、BSの右下にそっと書き加えてください。「愛情資本 1円(取得原価)」。そこから始まる複利の魔法は、チャートには映らないけれど、あなたの人生を確実に増価させます。数字に強いあなたなら、そのNPVがきっと天文学的だと気づけるはず――そして、その気づきこそが次の四半期を輝かせる最高の決算発表になるのです。

恋愛する・しないは自由です。しかし、自由とは選択肢を持つことであり、選択肢とは投資余力の別名です。愛情資本という未開示資産を持つ人だけが、人生というマーケットで“逆張り”を仕掛ける勇気を得ます。いまペンの向こうにある空欄は、単なる勘定科目ではなく可能性そのもの。さあ、あなたのBSをもう一度ひらき、空欄を資産で埋める決算日を迎えましょう。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『図解 人的資本経営 ―50の問い+フレーム+具体事例でわかる』
上場企業に義務化された“人的資本開示”を、財務諸表に落とし込むための思考法をケース豊富に解説。無形資産を資本として捉える視点は、本稿で扱った〈愛情資本〉=ネットワーク投資の考え方と直結する。

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『パラサイト難婚社会』
 未婚化・晩婚化を「家族形成格差」の拡大として捉え、パラサイト・シングル30年史を丁寧に整理。家計CFの“黒字化”と引き換えにソーシャルキャピタルが減価していく実態を豊富な統計で示し、本ブログの“含み損”という概念を補強する。

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『恋愛結婚の終焉』
 「恋愛=結婚」が当たり前だった時代の終幕を宣言し、恋愛離れが消費・税収・社会保障に与える影響を多角的に分析。Z世代の価値観シフトを理解する上でベースラインになる一冊。

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『大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。』
 実体験を通じて“恋愛市場”をA/Bテストで検証。CAC(顧客獲得コスト)やCVR(成約率)の概念を恋愛に応用するプロセスが詳細で、本ブログの〈マイクロデート投資〉戦略を具体化するヒントになる。


『ソーシャル・キャピタル入門 ―孤立から絆へ』
 「信頼・互酬性・ネットワーク」をGDP成長の隠れたエンジンとして位置づけ、国内外の多彩な事例で解説。個人のBSに載らない“つながり”をどう価値化するかを考える理論的バックボーンとなる。


それでは、またっ!!

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