屁理屈とは何か?──損益を守るための“言い訳経営”入門

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

あなたの“言い訳”、減損処理できていますか?

「あ、それ仕様なんで」。
「あのときの判断は間違ってないと思ってます」。
「あの人がそう言ったから自分はこうしただけです」。

――どこかで聞いたことのあるこれらのフレーズ、実はすべて“屁理屈”の一種です。でも、これをただの強がりや言い逃れと片づけてしまうのはもったいない。屁理屈とは、実は誰もが日常で無意識に使っている“損益計算書(PL)”なのです。人生で受けた損失をどう処理するか?プライドの損失をどう補填するか? その帳簿づけが屁理屈という名の“言い訳経営”なのです。

本記事では、屁理屈を会計視点で読み解き、
・屁理屈=損失を認めないための“収益操作”
・エンジニア型屁理屈=「仕様です」型の防衛会計
・自己否定=減損処理ができる人の資質

という3つの観点から、「屁理屈で見る人生のPL(損益計算書)」を掘り下げていきます。知って得することはありませんが、読めばきっと人生の言い訳が上手になります。

屁理屈は“損失を認めない”収益操作

屁理屈とは、突き詰めれば「自分の損を損として認めたくない心の処理方法」です。つまり、ある出来事によって受けた損害や否定、失敗を“なかったこと”にしようとする会計処理。それはまるで、赤字を出しているのに「特別損失」として一時的に分類し、来期には黒字に見せる経営戦略そのもの。

損失計上を拒む人は、PL操作型人間

誰しも人生の中でミスや失敗、否定される経験をします。でも、その事実を素直に認めるのは怖い。なぜなら、損失を認めることは、自分という“企業”にとって業績悪化の証だからです。

「いや、あれは自分の責任じゃない」
「タイミングが悪かっただけ」
「やろうと思えばできたけど、あえてやらなかった」

これらのフレーズは、まさにPL(損益計算書)の“利益操作”にあたります。本来ならば計上すべき「自己責任の損失」をうやむやにし、架空の“状況利益”を積み上げる。この態度が常態化すると、現実の自分の状態がどんどん見えなくなっていきます。まるで数字をいじり続けた結果、資金繰りに窮するブラック企業のように。

屁理屈は“内なる監査”からの逃走

屁理屈は、ある意味「心の監査法人」からの逃走でもあります。誰しも内面には「自分を客観的に評価する目」がありますが、屁理屈を使うことでその厳しい目から逃れようとします。まるで決算前に棚卸資産をごまかすようなもの。

たとえば、「自分はあのとき本気じゃなかったから」という言い訳は、“損失”を「未発生の損」として処理しているようなものです。これは、PL上の“架空の売上原価”に似ています。損失を過小評価することで、本当の自分を守ろうとしているのです。

でも実際には、その損失はすでに発生している。“なかったこと”にしても、メンタルのどこかで不良在庫として残っていく。そして、それはいつか心のキャッシュフローを圧迫する。

損失の可視化が屁理屈を減らす

ここで大事なのは、「屁理屈をやめろ!」という話ではありません。むしろ、屁理屈を通して自分のPLをどう見ているかを知ることが重要です。つまり、自分の人生にどんな収益があって、どんな損失があるかを“会計的に整理する”というアプローチ。

たとえば、自分の過去の失敗や挫折を一度きちんと損失計上してみる。言い訳や屁理屈を一時的に棚上げして、「あのとき、自分は負けたんだ」と数字で見せてみる。すると、気づくのです――思ったよりその損失は小さい、あるいは取り戻せる可能性がある、と。

そうなれば、屁理屈の必要性が自然と減っていきます。なぜなら、人は“損益が見えている状態”においては、無理な収益操作をしなくて済むから。つまり、透明なPLを持つことが、屁理屈に頼らない人生をつくる第一歩なのです。

「仕様です」と言い張るエンジニア型屁理屈

屁理屈の中でも特に厄介なのが、“エンジニア型屁理屈”と呼ばれるスタイルです。これは、あらゆる失敗や批判に対して「それは仕様です」「もともとそういう設計なんです」と言い切るタイプ。まるで設計書に責任を押しつけるかのように、本人は冷静かつ論理的に見えますが、実はその奥にあるのは“変更を拒む保守性”なのです。

仕様=自分ルールの隠れ蓑

「それは仕様です」と言う人の多くは、“自分が最初に決めたルール”に固執しています。これはまるで、初期設定の会計方針から一歩も変えようとしない企業のようなもの。たとえば、すでに社会の変化に対応できていない減価償却の基準を、何年も見直さず使い続けるようなものです。

このタイプの屁理屈は、「自分の正当性を制度的に確保しよう」とする点が特徴です。あたかも「自分のやり方にミスはない。だから修正の必要はない」と暗に宣言しているのです。

でも、それは本当に“仕様”なのでしょうか? 実は「そういうことにしておいた方が都合がいいから」そう言っているだけではないでしょうか? このように、“仕様”という言葉はときに強力な屁理屈の武器になります。

「設計上そうなっている」ことの安心感

エンジニア型屁理屈が広く使われる背景には、「設計上そうなっている」という理由が人に安心感を与えるという心理があります。何かがうまくいかなかったとき、「誰かの感情や判断のミスではなく、構造的な問題だった」と言えると、人は少しだけ自分を許せるのです。

これは、企業が予期せぬ損失を“構造改革費用”として処理し、感情論を排除して説明しようとする手法にも似ています。失敗を個人の責任にせず、「設計の結果」とすることで、表面的にはロジカルに見える。けれど、その“設計”が適切だったかどうか、という根本的な議論は避けて通っているのです。

屁理屈の中にある“安心感の設計主義”は、一見クールで合理的に見えて、実はかなり感情的。怖がっているのは「自分の設計ミスを認めること」なのです。

「仕様を変える勇気」が成長を生む

本当に強い人とは、「この仕様、間違ってたな」と素直に認められる人です。つまり、自分が作ってきたルールや方針に対して、変更やアップデートを加えることができる人。

会計でいえば、会計方針の変更を適切なタイミングで行い、注記もしっかりと書くことができる経営者です。過去の方法に縛られず、現在と未来に合わせて最適化する。それが“屁理屈からの脱却”でもあるのです。

人生も同じです。自分の中の「仕様」を見直すこと、自分ルールのアップデートをすること。それは失敗を受け入れることでもあり、同時に前に進むための手段です。屁理屈とは、本来変えられる“設計”を変えたくない自分の心の抵抗。そこを乗り越えられたとき、人はひとつ成長するのです。

自己否定=“減損処理”ができる人の強さ

屁理屈をこねる最大の理由、それは「自分を否定したくない」という人間の本能です。しかし、経営の世界では“減損処理”という概念があります。期待していた将来利益が見込めなくなった資産に対して、帳簿上の価値を引き下げる――つまり「もうこれ以上は無理」と認めること。それは、ある意味で“自己否定”を制度化した処理でもあります。

減損処理とは、過去の期待との決別

企業が減損処理を行うとき、それは「この資産は当初の期待通りにはもう利益を生まない」と判断したときです。たとえば、高額投資した工場が稼働率を上げられず、固定費が重荷となっているケース。これを放置すれば、見かけの資産は立派でも、実態はボロボロになってしまう。

同様に、人も「このスキルで勝負できると思ってた」「この人間関係はずっと続くと思ってた」という“将来の期待”を、いつか手放さなければならないときが来ます。そのとき、屁理屈で自己正当化するのか、それとも“心の減損処理”をするのかが問われるのです。

自己否定とは、自分の価値を下げることではなく、“今の評価を現実に近づける行為”です。それができる人こそ、真に強い人なのです。

減損ができる企業は、信用される

投資家は、企業の減損処理を必ずしもマイナスとは見ません。むしろ「適切な減損を行う企業は、透明性があり信頼できる」と評価されることも多いのです。なぜなら、減損処理とは“現実を直視し、誠実に数字を整える行為”だからです。

同じように、人生でも「間違ってました」と認められる人、「自分の判断は誤っていた」と言える人は、周囲から信頼されます。逆に、屁理屈で言い逃れを続ける人は、いずれ信用を失っていきます。人間関係もまた、“財務諸表の信頼性”と同じように、正直さと整合性が価値を生むのです。

減損を恐れずできる人は、むしろ次の成長のチャンスをつかみます。それは、古い資産を一度評価し直すことで、より柔軟にリソースを再配置できるからです。人生においても、「もうこれは手放そう」と潔く決断できる人ほど、次に向かうスピードが速いのです。

自己否定は“未来志向”の戦略

自己否定と聞くと、多くの人はネガティブな印象を持ちます。しかし、実はこれは“未来を見据えた戦略的判断”です。過去の自分の判断やスタイルに固執するよりも、今の自分に必要な資産を選びなおす方が、はるかに合理的でリスク管理にもつながる。

これはちょうど、企業が過剰設備を減損し、新たな事業分野に投資するようなもの。長年続けてきた“自分のあり方”という資産を棚卸しし、「これはもう回収不能だな」と判断する。その瞬間、未来への投資余地が広がるのです。

屁理屈で現在を守るより、自己否定で未来を切り拓く。強がることをやめ、柔らかくなる勇気を持てた人だけが、減損の先にある“再生の経営”へと進むことができるのです。

結論:屁理屈というPLを超えて、“人生のBS”を磨け

人生における屁理屈とは、損益計算書における“操作”です。収益を多く見せ、損失を隠す。まるで現実を少しだけ有利に補正するような、言葉のマジック。でも、会計と同じく、どれだけPLを取り繕っても、最終的にはバランスシート(BS)――すなわち「自分という存在そのもの」がすべてを物語ります。

屁理屈は一時的な防衛線として機能します。傷つかないための防具としては優秀ですし、人間関係の衝突を避ける知恵でもあるでしょう。しかし、それが常態化してしまうと、本当の自分との距離が広がってしまうのです。

エンジニア型屁理屈で仕様に逃げ込み、自己正当化で損失を否定し、そして減損処理を拒む――こうしたプロセスの中で、人は「現実の自分」から少しずつズレていきます。気づけば、自分という“会社”の財務諸表は、不良債権と虚飾にまみれたものになってしまうかもしれません。

でも、大丈夫です。会計も人生も、正直に処理し直せばいいだけ。屁理屈に頼らず、自分の損失をちゃんと見つめ、仕様を変える柔軟さを持ち、減損処理を受け入れる――その繰り返しこそが、“強くて健全な経営”につながります。

そしてその先には、「今の自分で、きちんと勝負できる」人生が待っています。言い訳のいらない生き方、屁理屈のいらない誇り。
それは、きっとどんな財務指標よりも強固で美しい“自己資本”になるはずです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング
現場レベルで必要な会計の基礎と実務的な数字思考を、事例を交えてわかりやすく解説。セクション3での「減損処理」や、セクション1・2での「損失の可視化」など、実際の意思決定に直結するヒントが得られます。


地頭を鍛える ビジネス教養 会計力 シンプルで一生使える“数字”の読み方・考え方
数字に対する苦手意識を払拭し、会計的視点をビジネス全般に応用する思考力を育てる一冊。屁理屈に頼らず、自分の損得・強み弱みをクリアにするヒントが盛り込まれています。


ビジネススクールで身につける 会計×戦略思考
会計と経営戦略を並行して学び、決算書から会社の意思決定を読む力を鍛える実践的テキスト。エンジニア型屁理屈の「仕様です」思考に対し、構造的に疑問を投げかける力が養われます。


しくみ図解 会計思考のポイント
ビジネスに欠かせない会計や数字の主要論点を「図解」で整理。視覚的に理解しやすく、自分の人生や判断を“会計書類”的に整理する手助けになります。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

しくみ図解 会計思考のポイント [ 村井 直志 ]
価格:2,310円(税込、送料無料) (2025/7/17時点)


新版 正しい家計管理
公認会計士が家庭の家計を企業に見立て、収支の現実的管理方法を紹介。人生のPL/BSを意識して自己否定・減損処理を取り入れるセクション3での内容にもリンクする考え方です。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

新版 正しい家計管理 [ 林總 ]
価格:1,485円(税込、送料無料) (2025/7/17時点)


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です