『気合で乗り切れ!』は貸方ですか?──社長の暴言を会計処理してみた

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

その社長のひと言、仕訳できますか?

「数字はあとでついてくる」「俺の勘を信じろ」「気合で乗り切れ!」——会議室の空気が凍るような“社長の名言(迷言)”を、あなたも一度は耳にしたことがあるのでは?このブログでは、そんなやばい経営者たちの口癖を、ガチで会計仕訳してみました。

ふざけているように見えて、実はこれ、実務にも役立つ“危険信号”の読み解き術。たとえば「数字はあとでついてくる」と言い出したら、それは架空売上の布石かもしれないし、「俺の勘では…」は、のれんの減損サイン。笑えるけど笑えない、経営と会計の深〜い関係を軽妙に掘り下げます。

本記事では、以下の3つの視点で“経営者の迷言”を分析します。

  1. 耳を疑う!やばいセリフたちの会計的裏側
  2. 暴言が招く組織崩壊と会計リスク
  3. 健全な経営と会計感覚を育てるには?

読めばきっと、上司の一言に「これは資産の減損だな…」とニヤリとできるようになるはず。実務者も経営者も、笑って学べる“仕訳バラエティ”をどうぞお楽しみください。

耳を疑う!やばいセリフたちの会計的裏側

職場で耳にする「社長語録」。一見すると勢いと情熱にあふれているように思えるこれらの言葉。しかし、会計の視点で見てみると、ゾッとするような裏の意味が隠れていることも少なくありません。ここでは、実際によくある“やばいセリフ”をピックアップし、それぞれを会計仕訳に変換して分析してみます。

「数字はあとでついてくる」→ 架空売上の前兆

このセリフは、目の前の数字より「夢」や「希望」を語るタイプの経営者にありがちです。問題なのは、この言葉の後に往々にして“売上先行”の無理な数字作りが始まること。営業にプレッシャーがかかり、実態のない契約が形だけ交わされ、果ては架空売上の計上にまで至るケースも。

たとえばこうです:

(借)売掛金 1,000,000円 
 (貸)売上   1,000,000円 
※実際には納品されていない、もしくは契約自体がグレーな案件

このような仕訳が増えはじめると、実態とかけ離れたPL(損益計算書)が出来上がり、後で修正が効かない地雷に。監査で指摘されれば損失計上、最悪の場合、粉飾決算として法的リスクを伴います。

「で、何が言いたいの?」→ 情報資産の破壊

会議で部下の説明を一蹴しがちなこのセリフ。発言者の主観では“効率的”でも、これは組織内の情報共有や知見蓄積という“無形資産”を破壊する行為でもあります。社内に眠る「現場知見」や「ノウハウ」は、適切に引き出され、文書化され、保存されて初めて情報資産になります。

しかしこのセリフにより、

情報資産(知見)=未記録・未活用 → 実質ゼロ評価

情報の流通が止まると、意思決定の質が下がり、最終的には企業価値にも影響を与えます。これが続くと、いざM&Aや資金調達の局面で「何もない会社」として扱われるリスクすら出てきます。

「俺の勘では…」→ のれんの減損兆候

経営者が“勘”を頼りに事業判断を下す場面はゼロではありませんが、それが繰り返されると危険信号です。とくに新規事業やM&Aの際にこのセリフが飛び出したら、のれん(買収によって生じた超過支払分)の減損リスクが高まります。

たとえば赤字続きの買収先を「成長が見込める!」という勘だけで評価し続けた場合:

(借)のれん 500,000,000円 
 (貸)現金 500,000,000円
→ 実態としては早期に減損を計上すべき案件だった

減損のタイミングを見誤ると、投資家からの信頼を損ない、株価下落や資金調達の困難化といった経営リスクに直結します。


言葉には力がありますが、それを使う立場の人の理解力と責任感が伴っていなければ、言葉はナイフのように組織を傷つけます。会計の視点で言葉を“仕訳”してみると、その怖さと現実がより鮮明に見えてきます。

暴言が招く組織崩壊と会計リスク

社長や経営幹部の“暴言”は、単なるコミュニケーションの問題にとどまりません。それはやがて社員のモチベーションを下げ、社内の報連相を断絶し、組織機能を壊す引き金となります。そしてその負の連鎖は、必ず数字に表れます。ここでは、言葉によって崩壊していく組織と、それに伴って生じる会計的な問題を具体的に見ていきましょう。

「うちの会社は家族だから」→ 残業代未払い・福利費の混乱

このフレーズ、一見あたたかく聞こえますが、実は労務管理のブラック化と密接な関係があります。「家族だから我慢してくれ」「一丸となって乗り越えよう」と言って、深夜残業・休日出勤が常態化。ところが給与や福利厚生は据え置きのまま…。

実務上はこうなります:

(借)給与手当 0円(本来支払うべき未払い分が未計上)
→ 月末に未払費用を仕訳すらしていない

これは“粉飾”とまではいかずとも、明確な会計リスクです。労務調査が入れば追徴が発生し、会計上は過年度修正、PLにも一気に負債増加。働いている社員の信頼も失い、離職率上昇という“無形損失”も招きます。

「責任は全部お前に任せる」→ ガバナンスの崩壊と損失計上

責任転嫁型の経営者が使いがちなこのセリフ。部下に任せること自体は悪くありませんが、責任の“投げ捨て”は話が別です。結果的に重要判断が属人化し、内部統制は形骸化します。最悪の場合、不正会計や資産流出が見逃される事態に。

たとえば:

(借)仮払金 3,000,000円(担当者が自由に使える経費口座)
→ 精算されずに長期間残る=実質的な使途不明金

このような仮払金が放置されれば、監査上の指摘は必至。特別損失として一括償却せざるを得なくなり、決算の透明性も損なわれます。

「文句あるなら辞めろ」→ 人的資産の減損

会社にとって、社員は「資産」です。財務諸表に直接現れることは少なくても、知識・経験・人脈・チームワークといった“人的資産”は、企業価値の根幹を支えています。そこにこのセリフが炸裂するとどうなるか? 結果は火を見るより明らかです。

人的資産(知識+経験+信頼)=離職とともに社外流出
→ 残されたのは空っぽの組織

とくに中小企業では、キーパーソンが辞めることがそのまま業績悪化につながるケースも多く見られます。人材流出は目に見えない減損として、企業の存続可能性にまで影響を与えます。


経営者の一言は、会社の“方向”だけでなく、“体温”すら左右します。軽口や暴言が、気づけば大きな数字の歪みを生む。この構造を理解することが、実務家にとっては最大の“リスク管理”になるのです。

健全な経営と会計感覚を育てるには?

“やばいセリフ”の数々を見てきましたが、それらは決して「一部の特殊な会社」だけの話ではありません。むしろ、誰もが口にしそうなフレーズの裏に、組織の文化と会計の未熟さが見え隠れしているのです。では、健全な経営と会計感覚をどう育てていけばよいのでしょうか? 本セクションでは、そのための3つの具体的なアプローチを紹介します。

会計リテラシーの向上:すべての社員が“数字に強くなる”会社へ

経営陣だけでなく、すべての社員が会計の基本を理解すること。それが、組織の強靭さを支える基礎となります。たとえば「粗利」と「営業利益」の違い、「キャッシュ」と「利益」のズレ、減価償却の意義など。これらを全員が肌感覚でわかっていれば、“やばい方針”が現場で自然と修正されていくようになります。

企業によっては、以下のような取り組みが成果を上げています:

  • 社内研修で月1回の「決算書の読み方」セミナーを実施
  • 財務諸表を“図解”で共有し、各部署でKPIを設計
  • 社内チャットで「これは資産?費用?」などのクイズを日常化

これにより、数字の正しさを「自分ごと」として捉える文化が醸成され、経営者の暴走も自然と抑制されていきます。

発言の影響を可視化する:言葉と数字をリンクさせる習慣

経営者の言葉は、言った瞬間は「空気」でも、会計的には「流れを変える一撃」になります。そこで有効なのが、“発言インパクト”を可視化する手法。たとえば社内ミーティングで「売上3倍目標」と言った場合、その達成にはどんな費用増加が見込まれるか、粗利率の維持は可能かといった議論をすぐに紐付ける。

この習慣が根づけば、言葉は単なる鼓舞ではなく「仮説提示」として扱われ、数字で検証されるようになります。結果として、無理な意思決定やリスクの先送りを防ぐ文化が育ちます。

“空気で動く組織”から“説明できる組織”へ

最後に重要なのが、「空気」で物事が進む組織を脱することです。「なんとなく」「みんなそうしてるから」で意思決定がなされる会社は、外部の変化に極端に弱い。逆に、「なぜそうするのか」を説明できる組織は強い。

これは、会計だけの話ではありません。経営戦略、マーケティング、採用、人事評価……あらゆる領域に通じる原則です。会議では根拠を言語化する、社内資料には定量的裏付けをつける、KPIには必ず評価ロジックを添える。これらの小さな積み重ねが、企業全体の説明責任力=透明性=信頼を育てていきます。


健全な会計感覚は、「数字をいじらない」ことではなく、「数字を使って未来を正直に語る」こと。会計を味方につけることで、経営はもっとフェアに、もっと強くなれるのです。

社長の一言を、笑いに変えて、学びに変える。

「気合で乗り切れ!」なんて言葉を本気で信じていた時期が、あなたにもあったかもしれません。けれど、現実はいつだって数字の上に成り立っています。経営者の何気ない一言が、組織の方向性を変え、社員の意識を変え、そして最終的には“決算書”という形で未来をも変えてしまう——その事実に、私たちはもっと敏感であるべきです。

でも同時に、重くなりすぎずに学ぶことも大切です。「これは貸方ですか?」「減損の兆候ですね」と冗談交じりに笑い合いながら、本質を見抜けるチームは強い。会計は堅苦しいものではなく、日常の言葉や行動とつながっている生きた“共通言語”です。

このブログを通して、「あのセリフ、もしかして危ないかも?」と立ち止まるきっかけになれば嬉しいです。そして、数字と心の両方に正直な経営が、一つでも多くの会社に根づいていくことを願っています。

結局のところ、経営も会計も、人がつくるもの。言葉に責任を持ち、数字と向き合い、仲間を大切にする——そんな当たり前が、どれほど難しく、どれほど大切かを、私たちは今日も学び続けているのです。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

「会計リテラシーで見えないお金が見えてくる」
東証1部上場企業などで税理・会計を担ってきた著者による一冊。日常の“お金の流れ”を会計的視点から解説し、基本的な財務知識を楽しく学べます。「数字=理論」ではなく「数字=実生活」として捉えたい方にぴったりです。


「伝わる開示を実現する『のれんの減損』の実務プロセス」
M&Aや買収後の「のれん」がテーマ。仕訳から開示、減損判断、投資家向けの説明まで、実務プロセスを丁寧に整理しています。セクション1で取り上げた「のれん減損兆候」を深掘りしたい方に最適です。


「【改訂2版】[ポイント図解]決算書の読み方が面白いほどわかる本」
図解中心で財務諸表の理解がグッと進む一冊。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書のポイントを押さえ、経営判断に活かすヒントが満載です。セクション3の「説明できる組織」づくりに欠かせません。


「会計参謀」
CFO的視点で“戦略と会計”を結びつける書。予算管理・KPI設計・利益管理など、会計を“実践的に活かす”方法論が豊富に詰まっており、中小企業の実務にも応用できる内容です。

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それでは、またっ!!

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