みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
木の大屋根は投資か浪費か——あなたのBS/PLは何と答える?
大阪・関西万博が開幕し、ぱっと目を引くのは巨大な木製大屋根「グランドリング」です。ニュースでも「世界最大の木造建築」と注目されていますが、その建設費は万博全体の14%以上にあたる約2350億円がかかったと報じられ、世間の批判も集まっています。一方で、会場では開幕から1500万人超の来場者を記録するなど、賑わいを見せているとも伝えられています。
読者の皆さんは「この夢のようなイベントは本当に投資に値するのか?それともただの税金の無駄遣いか?」と気になることでしょう。本記事では万博にまつわる資金収支を会計や投資の視点で解きほぐし、表には出ない裏側を読み解きます。万博の豪華絢爛なパビリオンや夢の乗り物にウキウキしつつも、冷静に「金銭的な採算はどうなっているのか」を押さえ、納得できる判断材料を提供します。
話題の木の大屋根と膨らむ建設費

2025年の大阪・関西万博でシンボル的な存在となっている木造大屋根「グランドリング」は、高さ20m・円周2kmの大建造物です。設計は藤本壮介氏によるもので、世界最大の木造建築としてギネスにも認定されています。しかし、その豪華な意匠には高い代価が伴いました。AP通信によれば、この大屋根の建設コストは万博全体の総支出約2350億円の14%以上を占め、「費用対効果」に疑問の声が上がっています。そもそも建設費2350億円は当初見積もりの1250億円から約2倍にも膨らんだ額で、円安による建築資材高騰や設計変更などが主因でした。ネパール館やインド館など複数のパビリオンの建設遅延が発生したのも、その余波とみられています。
投資か浪費か?大屋根にかかった建設コストは確かに破格ですが、作りっぱなしではありません。公式発表では、このリングは一部再利用が可能とされ、テーマの「未来社会のデザイン」に沿った持続可能性を謳っています。また会場周辺には先端技術やロボット、飛行車など近未来の展示もあり、花火ショーやテーマ型トークイベントも開催されるなど、多くの来場者を楽しませています。実際、JRI(日本総研)によると6月28日の1日来場者数は17.7万人を記録、1日平均13万人とUSJ+ディズニーを超える勢いで、来場者アンケートの満足度も約8割にのぼる好調ぶりです(参考:jri.co.jp)。こうした盛り上がりに寄与している点は「投資効果」と言えるでしょうが、それでも一企業や自治体の規模をはるかに超えた巨額出費には「適正だったのか?」との疑念が消えません。
建設費2350億円と隠れた追加費用

万博の建設費は先述の通り約2350億円ですが、これだけでは済みません。朝日新聞の国会報道によれば、会場建設費2350億円とは別に、さらなる国費負担が800億円以上計上される見通しです。具体的には、日本館建設費に最大360億円、発展途上国支援240億円、警備費199億円、周辺機運醸成費38億円などが国費で賄われる計画であり、合わせれば約3180億円に達します。建築費だけで2350億円というだけでも想像を絶しますが、これらの諸経費も公費という“追加出費”です。
実は経済界からの協賛や寄付も膨大です。万博主催の日本国際博覧会協会によると、企業協賛金はすでに800億円超、個人寄付金も700億円超に達しています。例えば万博制服の素材提供には東レや帝人などが協賛し、無償で約1億円分相当を供出するなど、企業側も「宣伝効果」「ブランディング効果」を狙って多額を投じているわけです。これにより、国と民間を合わせた巨額投資となっている状況が浮かび上がります。
建設後の運営費にも目を向けましょう。万博会場の清掃・警備・イベントなど運営費の予算は約1160億円とされ、その8割以上にあたる969億円を入場券収入で賄う計画です。つまり、運営費の約80%がチケット収入に依存しており、必要枚数はおよそ1800万枚となっていました。さらにこれとは別に経費計上される公費やスポンサー金があるため、万博の損益分岐点は建設費+運営費の大部分までカバーできるかが焦点になります。まさに万博は「国の公共事業」でもあり「企業の大型プロモーション投資」でもあるわけです。
来場者数・入場料・収支の行方
賛否わかれる中、来場者数と収益はどう推移しているのでしょうか。公式発表によれば、2025年7月26日時点での万博来場者数は約1366万人(パス保有者約186万人含む)に達し、1706万枚のチケットが販売されています。会期は10月13日まで残り約2ヶ月、8月のお盆時期にはさらに来場が見込まれており、主催者は閉幕までに2200万枚前後のチケット販売を予想しています(2300万枚の目標には届かない見込み)。
チケットの価格は平日で4000円から休日で6700円と設定されており、入場料収入はザックリ計算でも一枚あたり数千円規模です。もし仮に平均5000円×1800万枚であれば約9000億円が見込め、運営費969億円を賄うどころか大きく上回るようにも思えます。しかし実際は観光シーズンの混雑抑制や無料パス・優待措置も多く、当初の見込み通りには行かない面もあります(上記予想通り運営の1200億超はチケットだけではカバーしきれない)。
それでも朗報があります。朝日新聞によれば、2025年8月8日時点でチケット販売枚数が1809万枚に到達し、運営費の黒字化目安とされた1800万枚を超えたと報じられました。運営費1160億円の80%を賄う想定だった1840万枚の損益分岐点をもほぼクリアしたわけです。また、企業協賛金や寄付金の潤沢さも含めれば、会期後半は興行的にも黒字転換の光が見えているとの見方も出てきています。実際、関西経済界は「万博は逆境を乗り越え、大きな経済効果をもたらす」と好意的に受け止め始めています。
もちろん、将来の収益性まで保証されたわけではありません。コロナ後の消費冷え込みや物価高の影響もあり、当初の想定を大きく超える追加コストが相次いだのも事実です。パビリオン運営の不透明さや総額の説明不足を批判する声が上がり続けたのも頷けます。しかし一方で 「ひとびとの記憶に残るイベントをつくる」 という公共性は、単純な数字では測れません。2兆7000億円から3兆3000億円と期待された経済効果を実現し、1970年万博のように関西の活力に繋がるかどうかは、これからの運営次第です。


結論:費用対効果を超えて
大阪・関西万博の会計をBS/PLの観点で見ると、費用は膨大、必要な収益も巨額であることがわかります。豪華な木の大屋根には「浪費」と「投資」の二面性があり、会場建設費2350億円に加え国家予算800億円以上、スポンサー800億円超が投入されました。運営費の大半をチケット売上が支える想定でしたが、現時点では当初の損益分岐点をクリアする勢いで売れ行きは好調です。
数字だけを見ると「ここまでカネをかけて価値はあるのか?」という疑問が尽きません。しかし、このような国際イベントには有形の利益だけでは測れない無形の価値があります。万博は世界158の国・地域が集う外交の場であり、未来技術のショーケースであり、異文化交流の祭典です。これから何十年も語り継がれる文化やイノベーションが生まれれば、人々の心に「投資された想い」は確実に返ってくるでしょう。1970年大阪万博は関西の大阪府経済シェアを過去最高に押し上げ、長年にわたる経済基盤づくりに貢献しました。今回の万博も、これまでになく課題は多いものの、「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現する大舞台として成功すれば、関西・大阪の新たな飛躍の原動力となるかもしれません。
万博の費用対効果を会計的に冷静に検証すると「正答」は一つではありません。ですが本ブログを通じて「どこにお金が使われ、何が返ってくるのか」を読者の皆さんと一緒に眺めることで、万博への見方がよりクリアになれば幸いです。最後に、この数千億円をめぐる議論を超え、「あのとき行ってよかった!」と未来に語られるような、感動的な経験が一人でも多くの人に残ることを願ってやみません。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『大阪・関西万博 「失敗」の本質』
開幕前から積み上がった設計変更・調達・政治プロセスの“つまずき”を一次取材で点検。コスト膨張のメカニズムと説明責任を、メガイベントの構造問題として読み解けます。
『〈メガイベントの遺産〉の社会学』
オリンピック等を題材に、「経済波及」だけでなく都市構造・文化・コミュニティへの長期的影響=“レガシー”を計量/質的両面から検討。万博の“話題と採算のズレ”を整理する視点の補強に。
『これ1冊ですべてがわかるPPP/PFIの教科書』
官民連携の基本設計からリスク配分、事業採算の見立て方、契約実務までを一気通貫。協賛・寄付・公共負担が交錯する万博の資金構造をBS/PLで捉える際の“型”として使えます。
『公民連携白書2024~2025 ―PPPの小型化―』
最新トレンド“スモールPPP”の実務・制度動向、案件事例、資金調達の工夫を網羅。大規模イベント後の施設利活用(運営移行・再投資)を考える際の現実解が拾えます。
『公共政策論』
人口減少・財政制約下での政策形成を、ミクロ経済学と制度の両側面から解説。費用便益・外部性・配分の公正性など、万博を“公共投資”として評価する評価軸を体系的に学べます。
それでは、またっ!!

コメントを残す