みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
次の決算で本当に見るべき“中身”はどこ?
生成AIバブルの主役・NVIDIAは、FY26/Q2(7月27日締め)で売上$46.7B、そのうちデータセンターは$41.1Bと過去最高を更新しました。けれども“中身の配合”を見ると、明確な変化のサインが出ています。Compute(GPUなど)は前四半期比▲1%で$33.8Bへ小幅減速。一方でNetworking(InfiniBand/Ethernet/NVLink関連)は$7.3BとQoQ+46%、YoY+98%の大幅伸長。トップラインの派手さの裏で、ミックスが静かに入れ替わり始めている——これが今回の核心です。
投資家が見るべきは、売上より“配合”と“依存”。同社の10-Qによれば、直販の上位2社(Customer A/B)だけで四半期売上の39%(23%+16%)を占めました。さらに間接販売でも2社がそれぞれ10%以上を占めると推定。顧客集中が高いほど、ミックス変化や発注のタイミング次第で業績のブレも増えます。
収益性のボラティリティにも注意。Q2は中国向けH20の販売ゼロの一方、非中国向けに$650Mを販売し、過去の在庫引当の一部($180M)を戻入。加えて、上期の減価償却・償却費は$1.28B(前年同期$0.84B)へ増加、在庫・購買義務の引当もQ2単体で$886Mと大きい。製品ミックス(フルシステム比率上昇)と在庫・償却の“出入り”が、EPSの山谷を作りやすい構図です。
供給面も“見方が割れる”テーマ。経営側は需要の強さ(Blackwellの伸長)を強調する一方、「H100/H200の供給制約はない」との説明も公表。とはいえ現場感として“売れ筋は常に逼迫気味”という声が残るのも事実。いずれにせよ、短期は供給と納期、長期は電力・施設の整備速度が“限界線”になり得ます。
この記事では、
- セグメント(Compute/Networking)の構造と伸び方、
- ミックスが粗利とキャッシュ創出に与える影響、
- 在庫・前受(カスタマーアドバンス)・償却・リースなど“資本回転”の勘所、
をカジュアルに分解していきます。四半期の“見るポイント”と“先行サイン”を地図化するので、決算の読み解きが一段ラクになるはずです。計算式は出しません。
目次
データセンターの“中身”を素直にほどく——ComputeとNetworking、何がどう違う?

まずは用語の腹落ちからいきましょう。ざっくり言えば、Computeはモデルを動かす「頭脳(GPUやアクセラレータやその基板・システム)」、Networkingは頭脳を群れとして機能させる「神経(InfiniBandやEthernetのスイッチ、NIC/アダプタ、ケーブル、NVLink/NVSwitchなどの接続技術)」です。生成AIの学習や推論は“1台の速さ”より“何台をどれだけ無駄なく束ねられるか”で決まる場面が増えており、ここが今期のミックス変化の土台。Compute単体の勢いが少し落ち着いても、クラスタ全体の効率を上げるNetworkingが伸びるのは自然な流れなんです。
役割の違いがそのまま需要曲線を変える
AIの大規模化は、教室にたとえると分かりやすいです。講師(Compute)がいくら優秀でも、教室の出入り口が細かったり、連絡手段(Networking)が混線していたら、全員が同じスピードで学べません。モデルのパラメータが巨大化し、データ量が爆発すると、GPUは数十〜数千台の“クラス”で同期しながら進む必要が出てきます。ここで物を言うのが、低レイテンシで損失の少ないファブリックと、混雑を賢く避ける制御。単純な“Gbpsの太さ”だけでなく、同時に大量のメッセージが行き交うときに“詰まらないこと”の価値が急上昇しています。
さらに、In-Network Computingのように、ネットワーク機器側で一部の集約や演算を肩代わりする発想が広がり、クラスタの“実効性能”を底上げする余地が大きくなりました。結果として、調達の優先順位も「最速GPUの確保」から「クラスタ全体の完成度を高めるためにスイッチ/NIC/ケーブルまで一気通貫で押さえる」へとシフトしがちに。特に学習ジョブは時間のばらつきが損失に直結するため、“遅い1台が全体を遅らせる”問題を避ける設計需要が高まります。
そして、電力やラックスペースが逼迫する今、同じ電力当たりのスループットを最大化することが意思決定の軸になります。ネットワークの設計・配線・冷却次第で、GPUの理論性能が“紙の上だけ”に終わるか、実運用でちゃんと出るかが分かれてしまう。こうした現場の肌感は、販売ミックスにもそのまま反映されます。GPUの新世代立ち上がりが一段落しても、配線・スイッチ・NICの需要はクラスタ拡張のたびに繰り返し発生するため、四半期ごとの“伸びやすさ”がズレて見えてくるわけです。
投資家視点では、Computeはイベントドリブン(新製品・増設の波)になりやすいのに対し、Networkingは施設の段階的拡張やレイアウト最適化に連動して粘り強い、という性格の違いを頭に入れておくと、ミックスの変化を“怖がらずに”読めるようになります。
ミックスが粗利とキャッシュ創出に効く理由
収益面では、“箱としての完成度”が上がるほど、売上と原価の噛み合わせ方が変わることがポイントです。GPU単体(またはベースボード)中心だった時期は、ASP(平均販売価格)が高く、販売の山が立ちやすい反面、導入側の準備(ネットワークや電力、ラック)でパフォーマンスが出切らず、運用開始までキャッシュの寝かしが発生することも。ここにベンダーがネットワーク機器、NVLink/NVSwitch、リファレンス設計、ソフトウェアスタック、サポートまでまとめて提供する“フルスタック”色が強まると、顧客は「買えばすぐ性能が出る」安心感を得られ、調達の意思決定が速くなります。
このときマージン構造は単純ではありません。一般論としてComputeは高ASP・高付加価値、Networkingはユニット点数が多く更新頻度が高いため、一体販売やソリューション販売で“全体粗利”を最適化しやすくなります。特にクラスターを増設・再配置するフェーズでは、ケーブルやトランシーバのような“細かいけど数が出る”品目まで揃える必要があり、売上の下支え役として効いてきます。GPU世代の“谷間”でも、ネットワーク更新やファブリックの世代交代が案件を生み、トップラインとキャッシュの平準化に寄与する——そんな構図です。
もうひとつ、在庫と前受金(顧客からのアドバンス)の関係も見逃せません。フルシステムに近づくほど、納期前に顧客が枠を押さえるインセンティブが高まり、前受金の積み上がり→製造の見通し改善→部材調達のロス低減という好循環が回りやすい。これは運転資本の効率(資本回転)に直結します。ネットワーク機器は構成の自由度が高い分、設計変更の“戻り”が出やすいですが、ベンダーが設計〜実装まで統合して握るほど、戻りを減らし、在庫引当のブレを抑えることができる。結果として、EPSのボラは、Computeの出荷タイミングだけでなく、Networkingの“積み上げ方”でも説明できるようになります。
投資家としては、「GPUが伸び悩んだ=悪い」ではなく、「クラスタ完成度が上がって稼働率が上がる=LTV(顧客生涯価値)が伸びる」という視点を持つと、短期ノイズに振り回されにくくなります。
顧客の買い方が示す“先行サイン”:誰が何をいつ押さえるか
需要の主役は言うまでもなくハイパースケーラーや大手クラウドですが、エンタープライズの“第二陣”(製薬、金融、製造、ゲーム、広告など)も、PoC(小規模検証)から限定領域の本番投入へと移行しています。この第二陣は、GPUをドンと積むより、ラック単位の完成度やデータ連携の滑らかさを重視しがち。つまり、ネットワークの設計・監視・運用ツールまでセットにした案件が通りやすく、Networking比率が高まりやすいのが特徴です。
また、EthernetかInfiniBandかという選択も、ミックスに影響します。レイテンシ重視で学習スケールを一気に伸ばしたい場合はInfiniBandが有力。一方で既存のDC運用資産やチームのスキルを活かして“イーサでAI”(RoCEやAI向け最適化付きEthernet)へ寄せる動きも加速。ベンダーが両対応で“AIに効く”ネットワークを提示できるかは、案件獲得の勝率に直結します。いずれにしても、顧客が「まずはネットワーク枠を確保」する動きが見え始めると、四半期の受注内訳は先にNetworkingが立ち上がり、後からComputeが追随する——こんな受注の“位相差”が起きやすい。
さらに、実は電力・冷却・床荷重といった物理的制約が、どの順序で“買い”を進めるかを左右します。電力工事のリードタイムが長い施設ほど、先にネットワークの設計・配線・監視基盤を固め、GPUは割り当て可能電力に合わせて段階導入……という“分割導入”が合理的になります。ここで重要なのが、運用部門の安心感。ネットワークの可視化やスループット予測、障害時の自動リルートなど、“止まらない仕組み”に見える化がセットで入っていれば、経営としても「段階導入でも成果が出る」と判断しやすい。こうした現場マインドは、決算のバックログ(未履行受注)や前受金の動きに先に表れ、ComputeよりNetworkingが先に数字に乗る局面を作り出します。
顧客集中リスクの見方もここで更新できます。大口は集中しやすい一方、ネットワーク更改は“更新サイクル”が早いため、複数の大口で時期がズレて分散しやすい。つまり、ヘッドラインの売上依存度だけで恐れず、受注・前受・バックログの中身を追うことで、実態のリスクはより細かく評価できるようになります。
ここまでの要点はシンプルです。GPU(Compute)は花火、Networkingは土台。花火の高さが少し落ち着く局面でも、土台づくりが進むほど、次の大きな打ち上げは高く・安定して上がる。ミックスの変化は“終わりのサイン”ではなく、クラスターの完成度が一段上がるための助走と読み解くのが実務的です。
ミックスが“粗利とキャッシュ”に効く——数字の山谷はどこから来る?

トップラインは同じでも、どの箱(Compute)とどの配線(Networking)を何割で売ったかで、粗利もキャッシュの回りも大きく変わります。FY26/Q2はまさにその教科書的な四半期。ここでは、(1) 粗利の地形図、(2) 在庫・引当・償却がEPSに与える揺れ、(3) 前受金・バックログ・リースなど“資本回転”の勘所、の3点を“読みやすく”たどります。
粗利の地形図:フルシステム化で“見え方”が変わる
粗利を読むコツは、どれだけ“箱単体”から“フルシステム”へ寄っているかに尽きます。FY26/Q2のGAAP粗利率は72.4%(非GAAP 72.7%)。さらに、H20関連の在庫戻入$180Mを除くと非GAAPベースで72.3%という“実力値”が見えてきます。Q1はH20の大きな在庫関連費用で粗利率が沈みましたが、Q2はそれが剥落し、ブラックウェル中心の“データセンター丸ごと”販売が伸び、粗利が“正常化”した格好です。経営はQ3ガイダンスで非GAAP粗利を約73.5%としており、「年末に向けミッド70%を目指す」トーンも維持。ここからはミックスの握り方=粗利の持続力という視点が重要になります。
そのミックスの象徴がCompute減速×Networking伸長。Q2のData Center Computeは$33.8Bで前期比▲1%、一方Networkingは$7.3Bで前期比+46%。H20の売上が$4.0B減った影響がComputeに出た反面、NVLinkやInfiniBand、AI向けEthernetの採用がNetworkingを押し上げ、“クラスタ完成度”を上げる投資が粗利の底打ちに効いた構図です。つまり、GPUの波が一服しても、ファブリック強化やシステム化が粗利の“受け皿”になりうる——これが今回の学びどころ。
加えて、10-Qではブラックウェル収益の性格に言及があり、昨年のHopper HGX中心から、より“フルスケールのデータセンター・システム”寄りの売り方になっている点が示唆されています。箱売りよりシステム売りは部材構成もサポート範囲も広いため、四半期ごとの原価の出入りが大きくなり、粗利率は“上に張り付くが、上下のボラも出やすい”。投資家としては、Compute単体の勢い=粗利のすべてではなく、Networkingとシステム比率の取り方で粗利の“耐久性”を見極めるのがおすすめです。
在庫・引当・償却がつくるEPSの“山谷”
EPSの振れは、販売タイミングだけでなく在庫・引当・償却の“裏側”で大きくなります。Q2単体では在庫引当$886Mを計上。上期累計では$3.2Bと、製品移行期らしい大きさです。Q1にはH20の在庫・購買義務で$4.5Bの一括費用が走り、粗利率も一時的に沈みました。Q2は一転して、H20の在庫戻入$180Mに加え、中国以外の顧客向けに約$650MのH20販売があったため、引当の“戻り”がEPSを押し上げる方向に効いています。こうした“引当→戻入”の綱引きは、新旧アーキの切り替え時に避けられません。
さらに、償却費もじわじわ効いてきます。無形資産の償却費はQ2で$84M、上期$243M。金額としては粗利や在庫引当に比べ小粒ですが、システム販売の比率上昇や、関連するソフト・IPの取得・統合が続くと、償却の“土台”が厚くなり、EPSの下支えにも上ぶれ抑制にもなり得ます。投資家側は「今期の引当」「来期の戻入」の見通しだけでなく、償却の“ベースラン”がどのくらい積み上がっているかもチェックすると、“一過性の荒さ”と“地味な固定費化”を切り分けて見られます。
ポイントは、これらがミックスと連動していること。Networkingやフルシステム販売が伸びるほど、部材や在庫の種類が増え、設計変更や工程差異のリスク管理が重くなります。一方で、販売側が設計〜導入〜サポートを統合して握れるほど、返品・やり直し(=追加引当)の発生確率を下げやすい。今期はまさにその過度期で、在庫の“山”を越えながら、戻入・償却・原価平準化が同時進行している、と理解すると腹落ちしやすいはずです。
前受・バックログ・リース——“AIファクトリー”の資本回転を読む
キャッシュの回りを滑らかにするのが前受金(顧客アドバンス)と供給前払いです。Q2末の短期の前受・繰延収益の中に“顧客アドバンス”が約$80M。金額自体は大きくないものの、別勘定では「供給・キャパシティの前払い」が短期$1.8B+長期$1.8B規模で積まれており、上流のキャパ確保に先行投資している状態がうかがえます。需要が太い局面では、こうした前払いや前受が運転資本の効率(資本回転)を押し上げ、納期の読みやすさを高めます。
もう一つ鍵になるのがリース。NVIDIAはこれから開始予定のデータセンター関連リースが$7.1Bあり、2〜15年の期間で立ち上がっていく見込み。これは“AIファクトリー”を回すための土台投資で、短期のP/Lインパクトは限定的でも、中期の減価償却や設備費の固定化を通じてキャッシュ創出の“型”を変えます。設備・リースが増えるほど、粗利の上下動があってもキャッシュ創出は安定しやすい一方、需給ショック時の柔軟性は落ちる。つまり、キャッシュフローの“コシ”が太る代わりに、踵(固定費)の重さも増すという交換条件です。
最後に、顧客の買い方も資本回転に直結します。Q2は2社の直接顧客で計39%(23%+16%)、さらに間接でも10%以上の顧客が複数という“上位依存”構造。見方によってはリスクですが、システム販売が進むほど、大口の段階導入(ネットワーク→GPUの順で積み上げ)になりやすく、前受・バックログでの先行シグナルが拾いやすくなります。トップラインに現れる前に“資本回転”の数字が先に動く——ここをウォッチしておくと、Computeの波に振り回されにくくなります。
粗利は“結果”ではなくミックスの写し鏡。在庫・引当・償却・前受・リースといった裏方の数字は、ComputeとNetworkingの比率が動くたびに別の表情を見せます。FY26/Q2は、H20の“戻り”とNetworkingの伸長、そしてフルシステム化の進行がEPSの山谷をなだらかにしつつある回でした。短期はノイズが出ても、資本回転の改善が続く限り、次の成長波の“助走”になっていると読むのが実務的です。
“四半期でどこを見る?”——配合・依存・先読みのチェックリスト

決算は“数字の羅列”に見えますが、見る順番を決めておくと一気にラクになります。ここでは、(1) ミックスの動き(ComputeとNetworkingの比率), (2) 顧客集中の度合い(上位依存), (3) 来期を占う先行指標(在庫・引当・ガイダンス)の3点を、実際のFY26/Q2の開示に沿って“読みやすく”チェックリスト化します。数字は細かく覚えなくてOK。「どれが上がった? それはなぜ?」という順で追えば、ノイズに振り回されず本質だけすくえます。
まず“配合”から:Computeが小休止、Networkingが土台を押し上げる
最初に見るのはData Centerの中身です。FY26/Q2のデータセンター売上は$41.1B(前期比+5%)。内訳はCompute $33.8B(前期比▲1%)、Networking $7.3B(前期比+46%)。見出しの「最高売上!」より、GPU(Compute)が小休止しつつ、ネットワーク(Networking)がガッと伸びたという配合の変化が重要でした。背景には、H20の販売減(▲$4.0B)と、NVLinkファブリックやXDR InfiniBand、AI向けEthernetの採用拡大があります。GPUの“花火”が一段落しても、クラスタ全体の完成度を高める土台投資が継続している——この読みができるかどうかで、次の四半期の見方が変わります。
もう一歩踏み込むなら、粗利率の文脈も合わせてチェック。Q2のGAAP粗利率は72.4%(Non-GAAP 72.7%)でしたが、H20在庫戻入の$180Mを除くとNon-GAAP 72.3%。前年よりは低いものの、“フルスケールのデータセンター・システム”寄りの売り方に移行しているため、と会社側は説明しています。箱売りからシステム売りになると、原価の出入りが増え上下動も出ますが、クラスター価値の取り込みという意味では長期にプラス。つまり、Computeの一時減速=悪ではなく、Networkingの伸長とシステム化=次の波の準備という捉え方が実務的です。
“依存”を測る:上位2社で39%、間接でも10%以上が複数
次に見るのは顧客集中。FY26/Q2は、直接顧客のCustomer Aが23%、Customer Bが16%で、上位2社合計39%。さらに間接顧客でも、それぞれ10%以上の大型が2社(主にA/B経由)という開示が出ました。ここでのコツは、「依存=危険」だけで終わらせないこと。システム販売比率の上昇で、段階導入(ネットワーク→GPU追加)の案件が増えると、受注や前受、バックログに先に反映→トップラインに後から波及というタイムラグが生まれます。集中は“見た目のリスク”を高めますが、配合(Networking先行)と重ねると、むしろ読みやすさ(先行シグナルの可視化)が増す場合もあるわけです。
もうひとつ、地域別の見え方にも注意。Q2は請求先がシンガポールの売上が22%と大きいのですが、“ほぼすべて(99%以上)のコントロールドData Center Computeは米国向け注文”という注記付き。つまり、請求地=需要地ではない。地理別の数字だけを眺めて「アジア需要が急増!」と早合点すると外しやすい領域です。誰が買っているか(A/Bや間接の大型)と何を買っているか(Networkingの比率)、そしてどこに使われるのか(請求地の注記)をワンセットで確認する——これが“集中リスクの実態”に近づく最短ルートです。
“先読み”は裏方から:在庫・引当・見通しの3点セット
最後は来期の手がかり。Q2では、在庫・購買義務に関する引当が$1.0B、一方で過去の引当の戻入が$501Mあり、うち$180MはH20を中国以外で販売したことによる戻入と明記されました。“引当→戻入”の綱引きはアーキ切り替え期の常連ですが、今回ポイントなのは、Computeの揺れ(H20要因)をNetworkingの伸長と戻入で平準化しつつあること。EPSが“思ったよりブレなかった”背景には、ミックスと在庫マネジメントの合わせ技が効いています。
さらにガイダンス。会社はQ3売上$54B(±2%)、Non-GAAP粗利率73.5%(±50bp)を見込むと開示し、中国向けH20出荷は想定せずと明言しました。ここが“先読みの基準線”。次の決算では、この線に対してComputeがどこまで戻るか、Networkingの勢いが維持されるか、そして粗利がミッド70%帯に安定的に乗るかを照合しましょう。数字は暗記不要。毎回、(1) 配合、(2) 依存、(3) 先行指標の順で“前回ガイダンス比どうだった?”と確認するだけで、ノイズが整理されます。
まとめると、“トップライン>ミックス>裏方”の三段階で読むのがコツです。ヘッドラインは景気、Compute/Networkingの配合は体質、在庫・引当・ガイダンスは行動計画。FY26/Q2は、Compute小休止×Networking伸長という“体質の更新”が続いている四半期でした。次の四半期は、Blackwellの立ち上がりとネットワーク投資の継続が、粗利の“粘り”をどこまで維持するかに注目です。


結論|“トップラインに酔わず、配合で勝つ”——投資家の新しい習慣
数字は派手でした。けれど本当に価値があったのは、Computeの小休止とNetworkingの伸長が、クラスタ完成度の底上げとして響いていると確信できたことです。GPUの波はいつか一服します。しかし、土台=ネットワークとシステム化が進む限り、次の波はより高く、より長く続く。今回の決算は、その“助走”を目に見える形で示してくれました。
投資家としての実務はシンプルです。これからもヘッドラインではなく、(1) ミックス、(2) 依存、(3) 先行指標の順で見る。ミックスでは、Networkingが伸びる=悪材料ではなく、クラスタ価値の取り込みが加速しているサインだと捉え直す。顧客集中はリスクである一方、段階導入(ネットワーク→GPU追加)が進めば前受・バックログに先に出るため、“読みやすさ”を伴った集中にもなり得ます。先行指標は、在庫・引当・ガイダンスの三点セット。引当→戻入の綱引きはノイズに見えて、実はアーキ切替の健全性を測る温度計。戻入が適切に出ているか、償却のベースランが重くなりすぎていないかを、淡々と点検すればいい。
もう少し踏み込むなら、視点をP/Lから“資本回転”へずらすのがコツです。フルシステム化が進むと、前払いやリース、供給の前払いがキャッシュ創出を安定させる一方、固定費の“踵”も重くなる。ここは“怖い”のではなく、投資のテンポが可視化されるポイント。四半期ごとに、「ネットワークの枠が先に積み上がっているか?」を合言葉に、受注ミックスや前受の動きを追えば、EPSの山谷を必要以上に恐れずに済みます。
そして最後に。生成AIの勝負は、もはや“1台の最速”ではありません。“何台を、どれだけロスなく走らせるか”という運用の勝負です。だからこそ、Networkingの伸長やシステム販売の浸透は、次のS字を引き延ばすための布石。短期の配合変化は、成長の終わりではなく、成長の質の更新です。トップラインに酔わず、配合で勝つ。この習慣が身につけば、決算は“当たる/外す”のギャンブルから、確率の良いゲームに変わります。次の四半期も、数字の歓声より中身の配合を、冷静に。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
NVIDIA(エヌビディア)大解剖──AI最強企業の型破り経営と次なる100兆円市場
最新の取材で、事業ポートフォリオや顧客基盤、収益構造のリアルを解説。Compute/Networkingの位置づけや、上位顧客への依存と成長戦略を“経営の視点”から俯瞰できます。
The Nvidia Way エヌビディアの流儀
ジェンスン・ファンの意思決定、長期戦略、組織文化を掘り下げるノンフィクション。プロダクトの世代交代や供給制約をどう乗り越えるか、ミックス変化と粗利の“揺れ”を読む背景知として最適。
生成AI 真の勝者
半導体・クラウド・モデル事業者の力学を横断解説。AIインフラの“完成度”がなぜ価値を生むのか、NVIDIAの立ち位置を業界地図の中で整理できます。
2040年 半導体の未来
半導体の技術・地政学・サプライチェーンを広角に展望。HBMや先端ノードのボトルネックなど、供給側の制約が業績のボラティリティにどう効くかを理解する助けになります。
改訂版 AI時代のビジネスを支える「データセンター」読本
電力・冷却・ラック設計から運用まで“土台”の基礎を平易に解説。クラスタ完成度やネットワーク更改がなぜ収益性とキャッシュ創出に効くのか、現場目線で補強できます。
それでは、またっ!!

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