【金融×フィンテック】ネット証券から助言特化JVへ──収益モデルの二層化

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

手数料を“再定義”したら、あなたの資産運用は次のステージに行ける?

本ブログでは、楽天証券とみずほ証券が共同設立した新会社「MiRaIウェルス・パートナーズ」の狙いと仕組みを、投資・会計・行動経済学の視点で深掘りします。読み進めると、

  • 新設JVがターゲットとする富裕層/富裕層予備軍の背景
  • 手数料収入と資産残高連動収入による“二層構造”の収益モデル
  • 顧客獲得コストの会計処理(繰延資産化)のポイント
  • 行動経済学からみた「選択過多」の罠と解消プロトコル

などがわかりやすく学べ、投資や証券ビジネスの最前線を実感できます。複雑な金融の話題をカジュアルかつ親しみやすい口調で解説するので、20代~30代の社会人にもすっと入ってくるはずです。

フィンテックと銀行の融合──未知の“空白地帯”を狙う新JV

2024年4月、みずほ証券(持分95%)と楽天証券(同5%)が共同出資で金融商品仲介業会社「MiRaIウェルス・パートナーズ」を設立し、資産運用アドバイス業務をスタートさせました。この会社は、楽天証券の優れたオンラインUI/UXと豊富な商品ラインアップをベースに、みずほ証券の対面コンサルティング力と総合力を掛け合わせることで、高度な金融アドバイザリーサービスを提供します。つまりデジタルネイティブなフィンテック文化(楽天側)と、信頼と経験重視のメガバンク文化(みずほ側)が融合するわけです。楽天は手数料ゼロのネット証券として若年層に人気ですが、一方みずほは伝統的に対面重視。両社の異なる色合いをバランスよく組み合わせることがMiRaIの鍵です。

MiRaIの主戦場は、世帯金融資産約2,000万円~数億円を保有し、40~60代の働き盛り層です。この“空白地帯”は、若年層向けネット証券でも、超富裕層向け対面証券でもカバーしきれていない層。「預金は十分にあるが、投資経験に不安がある」「まずは資産形成・運用の相談相手が欲しい」という顧客にフォーカスします。実際、設立初期のアドバイザー5名はいずれもみずほ証券出身のCFP資格者で、運用だけでなく税務・不動産・相続などを横断的にサポートできるプロ集団です。彼らは「家族の資産のかかりつけ医のような頼れる存在」を目指し、オンライン/対面両方で相談に応じています。

直近の成果も好調です。ロイター報道によれば、設立1年目のMiRaIは顧客資産総額35億円を管理し、5年後(2029年度末)に500億円を目指すとしています。相談の約7割はオンラインで完結しており、60歳以上でもオンライン相談を選ぶケースが増えています。こうした動きは、まさに「オンライン×リアル」を融合した新しい顧客接点戦略であり、楽天・みずほ両グループが以前から進めてきたオンライン・リアル統合モデル構築の延長線上にあります。実際、2022年10月の提携以来、両社は資産形成・運用分野で協力を深め、オンラインと対面双方の強みを組み合わせるリテール事業モデルに取り組んでいます。新規事業には文化の違いもありますが、企業理念「人と社会の未来を豊かに」の下、異なるスタイルが補完し合う新時代の試金石といえるでしょう。

収益モデルの二層化──手数料再定義の時代へ

MiRaIの収益構造は、フィーベース(相談・助言料)と預かり資産残高連動収益のハイブリッドになると見られます。ブルームバーグ報道によれば、MiRaIの収益源は「仲介した顧客からみずほ証券や楽天証券が得た手数料の一部」だと明かされています。言い換えれば、MiRaIが新規に獲得した顧客を通じて発生する売買手数料の一部(AUM課金型の信託報酬的な収入)が収益源となります。これに加えて、顧客との助言契約自体に対するフィー(一定額の相談料、あるいは資産運用サービスの基本報酬)も設定することで、従来の「売買手数料一辺倒」の枠を超えた収益モデルを目指すはずです。

このように証券業界では、「売買手数料中心」から「預かり残高中心」へのシフトが急速に進んでいます。新NISAの追い風でネット証券は手数料無料化が加速し口座数を急増させており、一方で従来の対面証券は富裕層向けのサービスを強化しています。まさに証券業務で「手数料の再定義」が起きているわけです。FSA調査でも、日本の独立系IFA(金融商品仲介業者)は従来、投資信託販売手数料や預かり資産残高に応じた信託報酬が主な収益源だったと報告されており、銀行・証券各社も従来の手数料依存から預かり資産重視のビジネスモデルへと舵を切っています。

会計面でも新たな対応が必要です。特に顧客獲得費用の処理がポイントになります。新収益認識基準(IFRS15)によれば、新契約獲得のための増分コスト(販売員の紹介手数料など)は、回収可能と見込める場合には資産として計上し、顧客との契約期間にわたり償却することが求められます。MiRaIも初期投資としてアドバイザー報酬やマーケティング費用を払うでしょうから、これを短期損益で費用化するか、繰延資産として長期償却するかで当面の利益率は変わります。例えば多くの顧客を長期フォローする前提ならば、獲得コストを資産計上して償却したほうが、損益の見た目は改善します。こうした顧客獲得費の繰延/費用化の判断は、MiRaIの収益性にも直結する重要事項と言えます。

行動経済学が裏付ける顧客アドバイス設計──選択過多を解消するプロトコル

MiRaIが狙う40~60代層は、資産形成の知識も意欲も一定以上ありますが、そのぶん商品選択の情報量が膨大な層でもあります。行動経済学で「選択過多(Choice Overload)」と呼ばれる現象では、選択肢が多すぎるとかえって意思決定が困難になり、満足度や継続率が下がることが知られています。実際、金融商品は投資信託だけでも何千種類とあり、かりに投資先を自分で選ばせた場合、途中で判断を放棄してしまう可能性も大きいでしょう。

そこでMiRaIではガイド付き販売(Guided Selling)の発想を取り入れます。行動マーケティングの分析によれば、選択過多に対しては「商品ラインナップの簡素化」や「ガイド付き販売技術」の活用が推奨されています。具体的には、顧客のライフステージやリスク許容度に応じて、あらかじめ複数のポートフォリオ案や投資戦略を提示し、段階的な意思決定プロトコルに沿って選択を進めてもらう方法です。例えば「まずは中期安定志向なのか、長期積立重視か」「年金用か教育資金か」といった問いを順に整理し、最終的には数パターンに絞り込む仕組みを構築します。こうしたプロトコル型の助言スタイルにより、顧客は無限に広がる選択肢ではなく、自分にとって意味ある選択肢だけと向き合うことができます。その結果、決断への不安が軽減され、助言内容への納得感が高まります。顧客にとっては「迷わなくて済む」「専門家が寄り添ってくれる」という安心感が生まれ、自然と継続率向上にもつながるはずです。なお、こうした選択支援のアプローチは単に人海戦術に頼るだけでなく、ウェブ面談ツールやAIレコメンドと組み合わせてデジタル面でも実装されることが期待されます。

結論:顧客の未来を豊かにする「かかりつけ医」の存在に

楽天とみずほという一見異なるDNAを持つ2社が仕掛けるMiRaIという実験には、大きなワクワクがあります。そこでは収益モデルも顧客対応も「再定義」されつつあります。従来の売買手数料モデルはほぼ崩壊しつつある今、顧客にとって何が価値なのかをゼロベースで考え、助言の質で勝負する戦略は時代を先取りしています。MiRaIウェルス・パートナーズが掲げる企業理念は「人と社会の未来を豊かにする」こと。まさにその通り、未来ある各家庭に「資産のかかりつけ医」として寄り添い、安心感と資産形成の両方を提供する存在になるでしょう。

読者の皆さんも、ただの「手数料無料のネット証券」という発想から一歩踏み出し、この新たなアドバイザリーJVの提案する世界を想像してみてください。投資は数字だけのゲームではなく、人生の計画を支える大切なツールです。その先に得られる安心感や成長への期待は、感動にも近いものがあります。MiRaIの取り組みを通して、私たち一人ひとりの未来が少しずつ、しかし確実に豊かになっていく――そんな希望とエネルギーを感じながら、本ブログを締めくくりたいと思います。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

顧客本位の業務運営Ver2 — 「見える化」を通じた実践に向けた提言
顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティ)を“どう運用に落とすか”の実務思考を整理。プロダクトガバナンス、販売プロセスの可視化、KPI設計の考え方がまとまっており、助言型ビジネスの設計に直結します。


資産形成コンサルタント
2024年スタートの新資格テキスト。顧客ヒアリング→方針策定→ポートフォリオ構築→フォローの流れを体系化。助言の標準プロセスやAUM型運営の勘所を押さえるのに使えます。


図解即戦力 金融業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書
銀行・証券・アセットマネジメント・フィンテックの役割と収益モデルを図解で俯瞰。ネット証券からアドバイザリーへの“収益の二層化”を理解するための下敷きとして最適。


投資信託完全ガイド(2024-2025年版)
最新の投信トレンド、コスト比較、インデックス/アクティブの見極め方などを実務的に解説。AUM課金時代の「手数料の再定義」を読者に伝える際の具体例・比較軸として便利です。


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それでは、またっ!!

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