みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
AIが電気を食べる時代に、“電気を運ぶビジネス”の稼ぎ方をちゃんと語れますか?
生成AIブームで、世界中のデータセンターが「電気をモリモリ食べる工場」になりつつある、という話を聞いたことがあるかもしれません。Gartnerの予測では、世界のデータセンターの電力消費は2025年の約448TWhから2030年には約980TWhへと、およそ2倍に膨らむ見込みだと言われています。
その増加分のかなりの部分を、AI向けのGPUサーバーが占めるとされていて、「AIを増やすほど電気が足りなくなる」という、ちょっと笑えない状況になりつつあります。
一方、日本ではまさに今、「電気を運ぶための巨大インフラ」が静かに動き出しています。川崎市・扇島では、日本水素エネルギー(JSE)と川崎重工が、貯蔵容量5万立方メートルという世界最大級の液化水素タンクを中核とする「川崎LH₂ターミナル」の建設をスタートしました。
このタンクにためられる液化水素のエネルギー量は、一般家庭約10万世帯の1か月分の消費電力に相当するとされ、2030年度まで実証試験を行い、その先の商用利用を狙っています。
ここでポイントになるのが、「AIは電気を食べる側、水素は電気を運ぶ側」という構図です。
再エネ(太陽光・風力)は発電量が天気や時間帯に振り回されやすく、「たくさん発電できる場所」と「たくさん電気を使う場所」は必ずしも同じではありません。AIデータセンターは24時間フル稼働したいのに、再エネは気まぐれ。そこで登場するのが、水素・蓄電池・送電網アップグレードといった「エネルギー版サプライチェーン」です。
- その電気を、水素やバッテリーという形に「ためる・運ぶ」
- 需要家(データセンターや工場、都市部のビルなど)で再び電気として使う
- 再エネが豊富な場所で電気をつくる
という流れを、どこまで効率よく設計できるか。ここに、AI時代のインフラビジネスの勝敗がかかってきます。
このブログでは、
- 「AI×半導体×水素×クライメートテック」が、どう1本の線でつながるのか
- 再エネの不安定さと、AIデータセンターの“24時間止められない”事情のギャップ
- そして、それを埋めるための「水素・蓄電・送電網アップグレード」が、ビジネスとしてどう儲かるのか
を、売上・減価償却・補助金会計といった、ビジネスパーソンになじみのある切り口でざっくり解きほぐしていきます。
難しい数式や専門用語は極力ナシ。経理や会計に詳しくなくても、「なんとなくPLとBSがイメージできる」くらいの人なら、問題なく追える内容にします。
ざっくり言えば、この記事を読み終わるころには:
- 「AIインフラのボトルネックはチップだけじゃなく、電力と送配電網だよね」
- 「水素タンクや蓄電池に投資するとき、どんな売上ストーリー・減価償却・補助金設計になるのか」
- 「自分が働いている業界と、この“エネルギー版サプライチェーン”がどう接続しそうか」
がイメージできるようになるはずです。
これから本文では、
- AIデータセンター:電気を食べ続ける「新しい工場」
- 水素・蓄電・送電網:電気を運ぶ&ためる「インフラ三銃士」
- 会計と投資で読む、“エネルギー版サプライチェーン”の勝ち筋
という3つのセクションに分けて、順番に深掘りしていきます。
目次
AIデータセンターは「24時間フル稼働の電力モンスター」

AIって聞くと「頭のいいソフトウェア」をイメージしがちですが、その裏側にはゴリゴリの“工場”があります。それが、AI向けのデータセンターです。
見た目はただの大きな建物。でも中身は、GPUサーバーという“脳みそマシン”がずらーっと並んだサーバールーム。ここが24時間ずっと、電気を食べ続けるモンスターになっています。
まずはこの「AIデータセンターって、何者?」「なんでそんなに電気を使うの?」というところから、やさしく分解していきましょう。
AIはなぜこんなに電気を食べるのか
AI、特に生成AIは、「とにかく計算量がエグい」世界です。
- ChatGPTみたいなモデル
- 画像をつくる生成AI
- 動画・音声を扱うAI
こういったものは、めちゃくちゃ大量の計算を同時に回します。
その計算を担当しているのが、NVIDIAのGPUに代表される「AI向けチップ」。
このGPUたちが本気を出すと、1台あたりでもかなりの電力を食います。
それが数千台単位でラックに並んでいるイメージです。
ざっくりイメージでいうと:
- 一般家庭:電子レンジ、エアコン、ドライヤーなどを「たまに」使う
- AIデータセンター:それをフルパワーで、24時間止めずに回し続ける
…くらいのノリです。そりゃ電気も足りなくなるよね、という話になります。
さらに困ったことに、AIサービスって「いつでも使える」が当たり前と思われています。
「夜は止めますね」「土日はお休みです」とは言えないので、
- サーバーは基本24時間オン
- アクセスが少ない時間帯でも、完全には止めない
- 予備機も含めて、いつでもピークに対応できるようにしておく
という運用になります。
つまり、電気使用量が「常に高め」で安定してしまうのです。
データセンターのコスト構造=「電気代」と「箱代」
次に、ちょっとビジネス寄りの目線を入れてみます。
データセンター事業者の“お財布”の中身を、ざっくり分解すると:
- 売上:サーバーを貸したり、AIの処理能力を時間単位で売るお金
- コスト:
- 電気代(サーバー+空調など)
- 人件費・保守費用
- 建物や設備(サーバー・冷却装置など)の減価償却
特にAIデータセンターでは、電気代と減価償却がドンと効いてきます。
- 電気代
- サーバー本体が発熱するので、その分冷やすための空調も必要
- 「サーバーを動かす電気」+「冷やす電気」の二重取り
- 減価償却
- 高価なGPUサーバーを、数年かけて少しずつ費用として計上
- 建物や電源設備、冷却設備も同様に、長い期間で費用化
ここで重要なのは、
「電気をどれだけ安く、安定して調達できるか」
「高価な設備を、どれだけ高い稼働率で回して元を取るか」
が、利益率を決める超・重要ポイントだということです。
AIビジネスって聞くと「アルゴリズムがすごい」「モデルが賢い」という話に目が行きがちですが、
会計・ファイナンス目線で見ると、
- 電気代をいかに下げるか
- 高額な設備投資をいかに回収するか(減価償却をどう吸収するか)
という、わりと“リアル工場”っぽい悩みを抱えている産業でもあります。
場所選びも「電気がすべて」のゲーム
もうひとつ、AIデータセンターで面白いのが「どこに建てるか」問題です。
普通のオフィスや商業施設なら、
- 駅から近いか
- 人が集まりやすいか
- 周辺に何があるか
といった「人の動き」が重視されますが、
AIデータセンターは、ぶっちゃけ人が少なくてもいい。
それより大事なのは、
- 安くて大量の電力を確保できるか
- 長期契約で安定的に供給してもらえるか
- 再エネ(太陽光や風力)との相性はどうか
- 送電網(電線の容量)は足りるか
- 冷却のしやすさ(寒い地域・海水利用など)はどうか
といった、「電気と冷却」の条件です。
だからこそ今、世界中で、
- 再エネが豊富な地方
- 湧き水・海水で冷やしやすい沿岸部
- 電力会社の変電所の近く
などに、AIデータセンターを集中して建てようという動きが出ています。
日本でも、「地方の再エネエリア」にデータセンターを持っていこう、という流れが少しずつ出ていますが、
- 送電網の容量が足りない
- 電気を都市部や別エリアに送るのが難しい
- 再エネが“余る時間帯”と“足りない時間帯”の差が大きい
といった問題にぶつかっています。
ここでやっと、
「あれ、じゃあ余った電気を“ためる”とか、“運ぶ”技術が必要なんじゃ?」
という話になり、水素・蓄電池・送電網アップグレードが主役として出てくるわけです。
AIデータセンターは、
- 中身はGPUぎっしりの電力モンスター
- ビジネスとしては「電気代」と「箱(設備)の減価償却」で勝負
- 立地は「人」よりも「電気」と「冷やしやすさ」が最優先
という、かなり“工場っぽい”存在だ、というイメージが少し湧いてきたでしょうか。
次のセクションでは、この「電気を食べる側」に対して、
「電気を運ぶ・ためる側」である水素・蓄電池・送電網アップグレードがどう戦っているのかを、やさしくひもといていきます。
水素・蓄電・送電網アップグレード──電気を運ぶ「インフラ三銃士」

セクション1では、AIデータセンターが24時間電気を食べ続けるモンスターだ、という話をしました。
ここからは、そのモンスターに「どうやって電気を安定して届けるか?」という供給側の物語です。
主役はこの3つ。
- 水素(液化水素タンクなど)
- 蓄電池(バッテリー)
- 送電網アップグレード(電線や変電所の強化)
イメージとしては、
再エネが発電した電気を、
「ためる係(蓄電)」
「形を変えて運ぶ係(水素)」
「道路を太くする係(送電網アップグレード)」
が、それぞれ担当している感じです。
水素は「電気を圧縮して運ぶコンテナ」
まず水素。
難しい話を全部すっ飛ばしてしまうと、水素は「電気をギュッと圧縮して運べるコンテナ」だと思ってOKです。
ステップをざっくり言うと:
- 再エネ(太陽光や風力)で発電
- その電気で水を電気分解して、水素をつくる(グリーン水素)
- 水素を液化して、タンクや船で貯蔵・輸送
- 使いたい場所で、燃料電池やタービンで「また電気に戻す」
つまり、「電気 → 水素 → 電気」という一往復をしているイメージです。
もちろん、途中でロス(ムダ)は出ます。
「じゃあ電線で送ればよくない?」というツッコミも当然あります。
でも、
- 海外の安い再エネエリア(オーストラリアなど)で発電
- そのエネルギーを、日本など電力需要が高い国に運びたい
というとき、電線はさすがに引けないので、
「エネルギーを運ぶ船」という解決策が必要になります。
そこで、水素やアンモニアといった“エネルギーを運ぶ燃料”の出番になるわけです。
ビジネス・会計的に見ると、水素インフラのポイントは:
- 巨大タンク・プラント・パイプラインなど、初期投資(設備)がとにかくデカい
- その分、減価償却費も大きくなる
- でも、国の補助金や税制優遇が入りやすい(エネルギー安全保障・脱炭素の文脈)
つまり、
「デカい設備投資をして、長期間かけてコツコツ回収するビジネス」
「その間、どれだけ安定して“水素を買ってくれる相手(電力会社やデータセンター)”を確保できるか」
というゲームになります。
蓄電池は「電力界の冷蔵庫」
次は蓄電池。
こっちはイメージしやすくて、「電気の冷蔵庫」だと思えばOKです。
- 昼間の太陽光が余ったら「とりあえず冷蔵庫にしまっておく」
- 夜や需要が増えたときに、冷蔵庫から取り出して使う
というノリです。
蓄電池は、水素に比べて、
- 応答が速い(すぐ使える・すぐためられる)
- 小さい単位から導入できる(工場単位、ビル単位、データセンター単位など)
- 都市部・ビルの中にも設置しやすい(一定のスペースはいるけど、タンクほど巨大ではない)
というメリットがあります。
その一方で、
- 大量に長期間ためるにはコストが高くつく
- 数時間~半日くらいの「短期のブレ調整」に向いている
という特徴があります。
会計目線では、蓄電池はわりと分かりやすくて、
- 「電気代を安くするための設備投資」
- 電気が安い時間帯にためて、高い時間帯に使う
- デマンドレスポンス(ピークカット)で契約電力を下げる
- 「非常用電源」としての保険的な役割もある
つまり、電気代+BCP(事業継続)の両方に効く資産として、
設備投資の稟議が通りやすいケースも増えています。
データセンターからすると、
「GPUサーバーを止めるリスクを減らしつつ、
電気代のピークをならして、トータルのコストを下げたい」
というニーズにマッチするので、
「AIデータセンター × 大容量バッテリー」はかなり相性がいい組み合わせです。
送電網アップグレードは「エネルギー版・道路拡張工事」
最後は送電網アップグレード。
これは一言でいうと、「電気の道路を太くする工事」です。
- 発電所 → 変電所 → ビル・データセンター
というルートを、「高圧線」「鉄塔」「地下ケーブル」などでつないでいますが、
この“道路”の幅(容量)が足りないと、
- 再エネが発電できても、流し込めない(出力制御)
- データセンターを建てたくても、電力会社が「送れません」と言う
- 都市部に一気にのしかかる電力需要に対応できない
という状態になります。
ここを解消するには、
- 送電線の増設・高容量化(太く・高電圧にする)
- 変電所の増設・強化
- 地域間連系線(エリアとエリアをつなぐ大きな電線)の拡充
など、インフラ工事そのものが必要です。
ビジネス・会計面では、
- 電力会社や送配電事業者が主体となる
- 設備投資額が大きく、償却期間も長い(数十年スパン)
- 規制料金(送配電料金)として、少しずつ回収していくモデル
という、非常に「公共インフラ的」な世界です。
データセンター側のPL/BSにどう効くかというと:
- 送電網が弱いエリア:
- そもそも建てられない、または電力単価が高くなる
- 送電網が強いエリア:
- 安定供給+長期の電力契約が結びやすく、電気代の見通しが立つ
つまり、送電網の強さ・賢さ(どこにどれだけ流せるか)が、
AIデータセンターの「立地」と「コスト構造」にダイレクトに効いてくるわけです。
ここまでをまとめると、
- 水素:遠くの再エネを「船で運べる」ようにするエネルギーコンテナ
- 蓄電池:再エネの“気まぐれ”をなだめる電力の冷蔵庫
- 送電網アップグレード:電気の道路を太くして、詰まりを解消する工事
という3つが、
「AIが食べる電気」を、どう安く・安定して・クリーンに届けるかという勝負の主役です。
次のセクションでは、
これらインフラが売上・減価償却・補助金会計とどう絡んでくるのか、
そして「どこに投資妙味がありそうか?」を、会計と投資の視点で整理していきます。
売上・減価償却・補助金で読む「エネルギー版サプライチェーン」の勝ち筋

ここからは、ちょっと“お金の話”に寄せていきます。
AIデータセンターと、水素・蓄電池・送電網アップグレード。
どれも「デカい設備投資」が必要なビジネスですが、会計と投資の目線で見ると、勝ち方がちょっとずつ違うんです。
難しい専門用語はできるだけ避けて、「PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)のイメージ」で整理してみます。
AIデータセンターの稼ぎ方=「設備をどれだけフル回転できるか」
まずは「電気を食べる側」であるAIデータセンターから。
BS側(資産)
- GPUサーバー
- 建物・電源設備・冷却設備
- 土地
ここに、どーんと設備投資が乗ります。
GPUサーバーは耐用年数が短め(3〜5年くらい)で、建物や電源設備はもっと長いスパン(10年以上)で減価償却していくイメージです。
PL側(損益)
- 売上:
- 「サーバーを貸す」利用料
- 「AI処理能力」を時間あたりで売る料金(クラウドっぽいモデル)
- 費用:
- 電気代(サーバー+冷却)
- 減価償却費(GPUサーバー、建物など)
- 人件費・保守費用
ここで大事なのは、
「高価な設備(資産)を、どれだけ高い稼働率で回して売上に変えられるか」
です。
同じGPUでも、
- 24時間近く仕事をしているサーバー
- 半分くらいしか稼働していないサーバー
では、1年あたりの売上/減価償却費の見え方がまるで違う。
つまり、AIデータセンターの勝ち筋は、
- 容量をむやみに増やしすぎず、「埋まり方(利用率)」をきちんと見ながら増設すること
- 長期契約(企業向けAIインフラの5〜10年契約など)で、ある程度の売上をロックすること
- 電気代を安く・安定して調達し、粗利を厚くしておくこと
このあたりに集約されます。
ここで、水素・蓄電池・送電網の話が「電気代の裏側」として効いてきます。
水素・蓄電・送電網の稼ぎ方=「長期で回収するインフラビジネス」
次に、「電気を運ぶ・ためる側」のビジネスモデルをざっくり。
水素インフラ
- BS:
- 液化水素タンク
- 受入設備・配管・プラント
- 必要なら船やパイプライン
- PL:
- 売上:水素の販売(電力会社や工場、発電所向け)
- 費用:運転コスト+減価償却
特徴は、
- 設備が巨大で、初期投資が重い
- 償却期間も長い(10年〜20年スパンで回収イメージ)
- その代わり、国の補助金や低利融資が付くケースが多い
たとえば、
- 建設費の一部を補助金でカバー
- カーボンプライシングや税制優遇で支援
- 逆に、「一定以上のCO₂排出にはコスト」がかかる仕組みが入る
こうした制度設計で、ビジネスとして回りやすくしていく流れが強いです。
蓄電池ビジネス
- BS:
- バッテリー設備
- PL:
- 売上:
- 「安い時間にためて、高い時間に売る」価格差ビジネス
- 調整力を提供して電力市場から収入を得るモデル
- 企業・データセンター向けに「電気代削減+非常用電源」としてサービス提供
- 費用:
- 設備の減価償却
- バッテリー劣化に伴う交換コスト
- 売上:
ポイントは、
「単体でめちゃ儲かる装置」ではなく、
「電気代や停電リスクを下げることで、全体のビジネスを太らせる装置」
として考えた方がわかりやすい、ということです。
特にAIデータセンターでは、
- 蓄電池があることで停電リスクを減らせる(サービス停止による機会損失を減らす)
- 電力ピークを削ることで、契約電力や電気料金を抑えられる
ので、「PLの電気代」と「BSのBCP(事業継続)投資」を同時に改善する効果があります。
送電網アップグレード
- BS:
- 送電線・変電所などの設備
- PL:
- 規制された送配電料金として、長期間にわたり少しずつ回収
典型的な「公共インフラビジネス」で、
- リターンはそこまで高くないが、安定している
- 国・規制当局とセットでルールが決まる世界
- 投資家目線では「長期安定インカム+低リスク」として評価されやすい
という性格を持っています。
「サプライチェーン全体」で見ると、どこにお金が落ちるのか
最後に、「AIは電気を食べ、水素は電気を運ぶ」というサプライチェーン全体を、お金の流れでざっくり一本線にしてみます。
上流(再エネ発電)
→ 中流(送電網・水素・蓄電)
→ 下流(AIデータセンター)
→ その先(AIサービス・SaaS・アプリ)
という構造になっていて、
実はどのレイヤーにも投資テーマがあります。
- 上流:
- 再エネ発電事業者(太陽光・風力など)
- 長期の売電契約(PPA)で安定収入を狙うモデル
- 中流:
- 水素インフラ・蓄電池・送配電設備
- 巨額投資+長期回収+補助金・規制ビジネス
- 下流:
- AIデータセンター事業者
- GPUサーバーと電気代をどう最適化するかが肝
- 末端:
- AIサービス企業(SaaS、アプリ、プラットフォーマー)
- エンドユーザーからの利用料・広告・課金などでマネタイズ
会計の視点から見ると、
- 上流〜中流:
- BSにでかい設備が乗る「インフラ」
- 減価償却と補助金会計が重要
- 下流〜末端:
- PL側で高い利益率も狙える「サービス・ソフトウェア」
- ただし、インフラコスト(電気・GPU)がミスると、利益が吹き飛ぶ
となります。
読者として意識したいポイントは、
- ニュースで「液化水素タンクが着工」「送電線を増強」と聞いたら、
→ それは「AIを含む電力需要の受け皿を作っている動き」としても読める - 「AIデータセンター新設」「GPU◯万枚導入」と聞いたら、
→ その裏で「電気をどう確保するか(水素・蓄電・送電)」の話が必ずセットで走っている - 補助金や税制優遇のニュースが出たら、
→ 「どのレイヤーのどのプレイヤーにとって、減価償却と投資回収が有利になる仕組みなのか」を意識して読む
こういう目線を持てると、
「AI×半導体」だけでなく、「AI×電力インフラ×会計」まで含めてストーリーが見えてくるようになります。
結論:AIバブルの裏で、「電気と会計」を読める人が強くなる
ここまで見てきたように、
- AIデータセンターは電気を食べまくる新しい工場
- 水素・蓄電池・送電網は、その工場に電気を運ぶ・ためるインフラ三銃士
- そして、それらをつなぐ土台に、売上・減価償却・補助金会計という“お金のルール”がある
という全体像が、なんとなく見えてきたと思います。
ニュースで取り上げられるのは、どうしても「AIが◯◯できるようになった!」「世界最大級の液化水素タンクが着工!」といった派手な見出しが中心です。
でも、そこで一歩踏み込んで、
- このプロジェクトって、どうやってお金を回収するつもりなんだろう?
- 売上はどこで立って、減価償却はどれくらい重いんだろう?
- 補助金や税制って、このビジネスモデルのどこを支えているんだろう?
と考えられる人は、まだまだ少数派です。
逆に言えば、
「AI×半導体×電力×水素×会計」までまとめてイメージできる人は、かなりレアキャラです。
レアキャラでいると、何がいいかというと:
- 仕事では
- 自社の新規事業や投資案件で、「技術的にすごい」だけでなく「お金として回るか」を一緒に語れる
- 経営層や財務と話すときに、会話のレベルを一段上げられる
- 投資では
- 単にAI銘柄を追うだけでなく、その裏にある電力インフラ・水素・蓄電・送電網も視野に入れられる
- 補助金や規制のニュースを、「どのプレイヤーのPL/BSが楽になるのか」という目線で読める
ようになります。
そして何より、「テックニュースを読むのが、ちょっと違う意味で面白くなる」はずです。
- 「あ、これは“電気を食べる側”の話だな」
- 「これは“電気を運ぶ・ためる側”の話だな」
- 「この補助金は、減価償却の重さをどこまで軽くしているんだろう?」
といった感じで、一本の線としてストーリーを組み立てられるようになるからです。
AIの世界は、どうしても「アルゴリズム」「モデル」「チップ」の話に偏りがちです。
でも現実には、電気・インフラ・会計といった一見地味な要素が、長期的な勝者を決めていきます。
この記事が、あなたにとっての
「AIって結局、電気とお金の話でもあるんだな」
と気づくきっかけになればうれしいです。
これからニュースを見るときは、ぜひ 「AIは電気を食べ、水素は電気を運ぶ」 というフレーズを、頭の片隅に置いて眺めてみてください。
世界の見え方が、少し違ってくるはずです。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『GX グリーントランスフォーメーション 経営大全 150兆円市場の道しるべ』
再エネ、水素、炭素会計、カーボンクレジットなど、GXまわりのキーワードを「経営の目線」で一気に整理できる一冊です。
アップルや日立、パナソニックHDなどの具体的な企業事例も多く、「AIデータセンターの電力問題って、GX全体のどこに位置づけられるの?」という感覚がつかめます。
- 会社でGX担当になりそう(なってしまった)人
- クライメートテックや水素ビジネスへの投資を考えている人
には、「とりあえずこれ一冊持っておくと安心なバイブル」的なポジション。
このブログの内容を、もう一段ビジネス寄りに深掘りしたくなったら、かなり刺さると思います。
『炭素会計 実務と戦略 ― スコープ3で始める新しい世界標準』
「スコープ1・2・3ってニュースで聞くけど、正直よくわからない…」という人向けの、脱炭素会計の“ちゃんとした入門〜実務本”です。
GHGプロトコルに沿った排出量の計算方法だけでなく、トヨタ・テスラ・アップルなどの排出構造も取り上げていて、「数字としてどう管理し、経営にどうつなげるか」が具体的にイメージできます。
AIデータセンターや水素インフラも、最終的には「CO₂をどれだけ減らせる設備投資なのか」で評価されます。
投資・経理・サステナビリティ担当の人が、「炭素会計を武器にしたい」と思ったときの一冊としてかなり使えます。
『水素エネルギーが一番わかる』
タイトル通り、「水素とは何者か」をいちからやさしく教えてくれる最新の入門書です。
水素の基本、製造方法(グリーン水素など)、貯蔵・輸送、発電やモビリティでの使い方まで、ストーリーとしてスッと読める構成になっています。
このブログで書いた「水素は電気を運ぶコンテナ」というイメージを、
- もう少し技術寄りに
- でも難しすぎないレベルで
深掘りしたい人にはちょうど良い一冊です。
液化水素タンクのニュースを見たときに、「何がすごいのか」をちゃんと語れるようになりたい人には、かなりコスパのいい自己投資になります。
『2050年再エネ9割の未来 脱炭素達成のシナリオと科学的根拠』
タイトルが強いですが、中身もかなり本格派。
「日本で本当に再エネ9割なんてできるのか?」という疑問に、データとシナリオで正面から答えてくれる本です。
- なぜ日本の再エネ政策が遅れているように見えるのか
- どのくらい送電網や蓄電を整えれば、再エネを主役にできるのか
- そのとき電力システム・料金・ビジネスはどう変わるのか
といった点が整理されており、このブログで扱った
「再エネの不安定さ × データセンターの24時間稼働」という矛盾を、より本質的なレベルで理解するのにピッタリです。
ニュースの“雰囲気”ではなく、数字とシナリオで電力システムを語れるようになりたい人におすすめ。
『なぜデジタル社会は「持続不可能」なのか』
クラウド、データセンター、海底ケーブルなど、「デジタルの裏側にある巨大なエネルギー消費と資源負荷」を真正面から描いた一冊です。
「デジタル=クリーンでスマート」というイメージを良い意味で裏切り、
- データセンターがどれだけ電気を使い
- どんな場所に建てられ
- そのインフラ維持にどれだけの資源が必要なのか
を、一般向けの言葉で解説してくれます。
このブログで話した「AIデータセンター=電力モンスター」という視点と相性がよく、
“デジタル・クリーン神話”から一歩抜け出して、現実のエネルギー負荷まで含めて考えたい人には刺さるはず。
AIやクラウドにワクワクしつつも、「その電気、誰がどうやって負担しているの?」とモヤっとしている人にこそ読んでほしい一冊です。
それでは、またっ!!
コメントを残す