“この肉、生じゃない?”時代の外食チェーン決算書――バズ狙いとコストカットがどこで現場をぶっ壊すのか


みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

あなたのその一杯は、どんな外食の未来に投票していますか?

SNSで、衣をはがしたら中身がほぼ生肉のカツ丼の写真が投稿されて炎上。
「これ、本当に揚がってるの?」「食中毒になってもおかしくないレベル」――そんなコメントが一気に広がり、店名こそ伏せられているものの、外食チェーン全体への不信感に火がつきました。(報じたのは弁護士ドットコムなど)

一方で、牛丼チェーンのすき家では、期間限定の「ローストビーフ丼」が発売からわずか2週間ほどで一時販売休止に。
理由は「売れすぎて食材が足りない」。X(旧Twitter)では「想像より肉が薄い」「写真と見た目違いすぎない?」といったポストも拡散し、バズと炎上が同時進行するカオスな状態になりました。

そしてもっと大きな背景には、2025年だけで2万品目超の食品値上げという現実があります。帝国データバンクの調査では、今年の値上げ品目数は2万609品目と、前年の約1.6倍。私たちの財布も、外食チェーンの原価計算も、どちらもギリギリまで追い込まれている状況です。

つまり今の外食チェーンは、

  • 原材料費はガンガン上がる
  • 人件費もじわじわ上がる
  • でもお客さんは「これ以上の値上げは無理」と感じている

という“三重苦”のなかで、「どうやって利益を出すか?」を毎日迫られています。

そこで登場するのが、

  • SNSで話題になる「バズメニュー」
  • 限定商品やキャンペーンで一気に集客
  • キッチン現場はギリギリの人員&オペレーション

という、数字だけ見ると効率よさそうだけど、どこかで無理が出る構造です。
カツ丼の「生肉事件」や、すき家ローストビーフ丼の「売れすぎ休止&見た目炎上」は、その無理が表に漏れ出た“ひび割れ”だとも言えます。

この記事では、

  • なぜ「飯テロ」のはずが一瞬で「炎上テロ」になるのか
  • その裏側で、損益計算書(PL)がどんなプレッシャーにさらされているのか
  • 「バズ・コスト・品質」という三角形のバランスが崩れると、現場で何が起きるのか

を、会計とサプライチェーンの視点から、でも専門用語はできるだけ噛み砕いて解説していきます。

最後には、
「あなたが“安さ”だけを求め続けると、外食の世界はどう変わっていくのか?」
という、ちょっとドキッとする問いも投げかけます。

外食チェーンの決算書は、数字の羅列ではなく、
「誰がどこで無理をしているか」がにじみ出る“物語”です。
カツ丼の衣の下に隠れていた“生の現実”を、一緒にめくっていきましょう。

「美味しそう」が一瞬で「ありえない」に変わるとき

カツ丼の写真って、本来は“飯テロ”の代表ですよね。
ところが今回バズったのは、「衣をはがしたら中身がほぼ生肉」のカツ丼。北海道のそば屋で提供されたカツ丼が、芯まで火が通っていない状態で出てきてしまい、お客さんがXに写真を投稿。1200万回以上表示されるレベルで一気に拡散しました。(参考:弁護士ドットコム

タイムラインには、
「こんなの出されたら怖くて食べられない」
「店、大丈夫?」
といった怒りと不安が入り交じったコメントが並び、店側も取材に対応する事態にまで発展しています。

一方、すき家のローストビーフ丼は、スタートダッシュこそ大成功。11月11日に発売された期間限定メニューがあまりに好評で、わずか2週間ほどで「食材が足りないので一時販売休止します」と公式発表が出ました。
ところがこちらもXでは、
「思ったより肉が薄い」「写真と違って見える」
といった“見た目ギャップ”の投稿が拡散され、こちらも別方向で炎上気味に。

どちらのケースも、最初は「おいしそう」「試してみたい」というワクワクから始まっているのがポイントです。
それが、たった1枚の写真、たった数行のポストで、一瞬にして「不信」「怒り」にひっくり返る。ここに、今の外食チェーンが抱える構造的なリスクがぎゅっと詰まっています。

生肉カツ丼はなぜここまで燃えたのか

今回のカツ丼炎上をシンプルに整理すると、流れはこんな感じです。

  1. お客さんが「なんか変だな」と違和感を覚える
  2. 衣をはがしてみたら、予想以上に“生”でびっくり
  3. 「これはおかしい」と感じてXに投稿
  4. 写真のインパクトが強すぎて一気に拡散

ここで重要なのは、見た人のほとんどが専門家ではないということです。
生焼けかどうか、厳密な衛生基準を語れる人は少ない。でも、
「これはさすがにヤバそう」
「自分の身にも起こるかも」
という“素人目線の恐怖”は、誰でも共有できます。

そしてSNSでは、この「なんか怖い」が連鎖すると、一気に「店は何をやっているんだ」「外食って信用していいの?」という方向に話が飛び火します。今回は弁護士ドットコムも取り上げ、「返金や作り直しはどこまで求められる?」といった法的な話題にまで広がりました。

つまり、一店舗のミスが、“外食全体への不安”として増幅される状態が、今のSNS環境です。

すき家ローストビーフ丼の「売れすぎ炎上」という矛盾

すき家のローストビーフ丼は、公式が「ご好評につき品薄」とコメントするほどの大ヒット商品。発売からわずか2週間で、食材不足による一時販売休止に追い込まれました。

ビジネス的に見れば、

  • 新商品がバズる
  • 想定以上に売れる
  • 品切れになるほどの人気
    と、むしろ「成功」のパターンに見えます。

それなのにSNSでは、
「思ったより肉が少ない」
「写真のイメージと違う」
「高いのにこの量?」
といった“コスパ・見た目”への不満も噴出しました。

ここで起きているのは、

  • 企業側:原価と価格のバランスを考えた「現実的な盛り付け」
  • お客さん側:広告写真からふくらんだ「理想のイメージ」

このギャップが一気に可視化されてしまった状態です。

「バズるような映え写真」を用意しないと、そもそも新商品は話題になりません。
でも、原材料費が上がり続ける中で、その写真通りのボリュームや盛り付けを“利益が出る価格”で提供するのは、かなりしんどい。
結果として、「画像>現物」に見えてしまい、そこにお客さんのモヤモヤが溜まっていきます。

炎上は「お客さん側の決算書」みたいなもの

会計の世界では、会社の1年の成績表として「損益計算書(PL)」があります。
売上はいくらか、原価はいくらか、人件費はいくらか。最終的にどれだけ利益が残ったのか――これを数字でまとめたものです。

一方で、SNSの炎上は、お客さんの側の“感情の決算発表”だと考えることもできます。

  • 「写真と違う」「値段に見合ってない」という不満
  • 「安全なの?」という不安
  • 「現場の人かわいそう」という共感

こうした感情が一定ラインを超えると、「これはおかしい」という形で一気に表面化する
数字ではなく、ポストやコメントという形で“決算”が公開されるイメージです。

会社側が見ているのは、主に売上や原価、人件費といった数字。
一方、お客さんが感じているのは、満足感や安心感、「これにこの値段を払う価値があるか」という体感的なコスパです。

今回のカツ丼やローストビーフ丼の騒動は、

  • 企業の「バズらせたい」「利益も出したい」という思いと、
  • お客さんの「ちゃんとしたものを、納得できる値段で食べたい」という思い

この2つのズレが、大きく表に出た出来事だと言えます。


ここでは、「飯テロ」のはずのメニューが、一瞬で「炎上案件」になってしまう流れを見てきました。
次では、こうした炎上の背景にある、原材料費・人件費の高騰と、外食チェーンの損益計算書(会社の成績表)がどうなっているのかを分解していきます。

値上げラッシュの裏で、決算書はこう動いている

コンビニでもスーパーでも、ここ数年ずっと「また値上げか…」というニュースが続いていますよね。
外食チェーンも同じで、牛丼・ラーメン・ファミレス・ファストフード、ほとんどすべてのジャンルでじわじわ値段が上がっています。

でも、不思議じゃないですか?

  • 「いろいろ値上げしたって聞くのに、そんなに儲かってる感じがしない」
  • 「むしろ閉店する店も増えてない?」

実は、外食チェーンの損益計算書(PL)をざっくり見ると、その理由がなんとなく見えてきます。
ここでは専門用語はほどほどにして、家計簿レベルのイメージで、原価と人件費がどうなっているのかを見ていきます。

食品2万品目値上げなのに「利益が増えた」とは言えないワケ

ニュースでもよく出てくるのが、
「今年だけで食品2万品目以上が値上げ」
というフレーズです。

つまり、外食チェーンが仕入れている

  • 小麦(パン・麺)
  • 調味料

こういったほぼ全部の材料が、まとめてじわじわ高くなっている状態です。

家計でたとえると、

  • 米も高い
  • 野菜も高い
  • 肉も高い
  • ガス代・電気代も高い

のに、給料はそこまで増えていない…というあの感覚と同じです。

会社の決算書でいうと、

  • 売上(お客さんが払ってくれた金額)がちょっと上がる
  • でも、原価(材料費)も同じくらい、もしくはそれ以上に上がる

結果として、
「値上げはしたけど、手元に残る利益はあまり増えてない」
というパターンが普通に起きます。

ここで企業が取りがちな手は、ざっくり言うと3つ。

  1. 価格を上げる(分かりやすい値上げ)
  2. 量を減らす(ステルス値上げ/中身を少し削る)
  3. 現場の人件費やオペレーションを削る(少ない人数で回す・休憩もギリギリ)

この3つの組み合わせで、「なんとか決算書の数字を崩さないようにする」わけです。
ただし、そのしわ寄せが、炎上ネタとして表に出てきているのが、今の状況とも言えます。

“原価の魔法”はそう長く続かない

外食の世界では、よく「原価率」という言葉が出てきます。
これは、ざっくり言うと、

売上(お客さんが払うお金)のうち、材料費が何割か

という指標です。

例えば、

  • 800円のローストビーフ丼の材料費が320円なら、原価率40%
  • 500円の牛丼の材料費が150円なら、原価率30%

という感じ。

原価率を下げる方法もシンプルで、

  • 肉のランクを下げる
  • 量をほんの少しだけ減らす
  • 安い産地・安い部位に切り替える
  • ソースや味付けで“満足感だけはキープする”

こういう「工夫」を積み上げていくことになります。

ただ、ここに大きな落とし穴があります。

  1. やりすぎると、見た目と満足感がガタ落ちする
    • 「写真よりペラペラ」「なんかスカスカ」と感じる
    • → SNSで「これ、広告と違わない?」と突っ込まれる
  2. クレーム対応コストが発生する
    • 返金・作り直し・謝罪対応
    • 社員やバイトへの再教育
    • 最悪の場合、ブランドイメージのダウンで売上減

つまり、「原価を下げて利益アップ!」と決算書上はキレイに見えても、
お客さんの“感情の決算書”のほうが赤字になってしまうと、長くは続かないわけです。

生肉カツ丼のケースも、「ちゃんと揚げれば原価は変わらない」のに、

  • オペレーションが回らない
  • チェックが追いつかない
    という現場の無理から、あの写真のような状態が生まれてしまった可能性があります。

いちばん削りやすく、いちばんリスクが大きいのは「人件費」

次に、人件費の話をします。

外食チェーンのPLをざっくり分解すると、

  • 売上
    • 原価(材料費)
    • 人件費(社員+バイト)
    • 家賃や光熱費 など

という構造です。

この中で、短期的に「数字を動かしやすい」のが人件費です。

  • シフトを減らす
  • 休憩時間をギリギリまで削る
  • ギリギリの人数で回す
  • ベテランではなく、時給の安い新人中心でまわす

数字だけ見れば、たしかに効き目があります。
でも、その反動が

  • 提供までの待ち時間が伸びる
  • 一人あたりの作業量が増えて、ミスが増える
  • 新人が増えすぎて、教育が追いつかない

という形で出てきます。

生肉カツ丼のような「明らかにおかしいもの」が出てしまうのは、
現場に“余裕”がないサインとも言えます。

  • 忙しすぎて、揚げ時間をしっかり確認できない
  • チェックする人員も足りない
  • 「変だな」と思っても、相談する余裕がない

こういう環境だと、いくらマニュアルがしっかりしていても、
「最後は人の集中力と丁寧さ」に依存してしまい、ミスのリスクは一気に上がります。

決算書の数字は、

  • 原価率は〇%
  • 人件費比率は〇%

と、きれいにまとまっていますが、その裏側では、

「この人数でこの量、ほんとに安全に回せるの?」

という現場の悲鳴が、数字には出てこない形でたまっていきます。


ここでは、

  • 値上げラッシュの中で、原価と人件費をどう削っているのか
  • その削り方が、炎上リスクと直結していること

を、ざっくり見てきました。

次では、これを「バズ・コスト・品質」という三角形のバランスとして整理し、
「私たちが“安さ”を求めすぎると、どんな世界が待っているのか」を考えていきます。

「バズ・コスト・品質」の三角形と、私たちの選択

ここまで見てきたように、

  • SNSでバズるメニュー
  • その裏でギリギリまで削られるコスト
  • そして、時々表に出てしまう“炎上案件”

これは全部バラバラの話ではなく、ひとつの三角形でつながっています。
この三角形をここでは、

バズ(話題性)・コスト(お店の負担)・品質(お客の満足と安全)

の3つで考えてみます。

バズを上げれば、どこかの負担が上がる

まず「バズ」。
今の外食チェーンにとって、SNSで話題になることは、ほぼ生命線です。

  • 「映える写真」
  • 「限定」「先着」「今だけ」
  • 「ちょっと攻めたネタ感のあるメニュー」

こういう要素を盛り込まないと、人のタイムラインに乗りにくくなっています。

でも、バズを狙うほど、

  • 想定以上にお客さんが来る
  • 一時的に注文が集中する
  • キッチンがパンク気味になる

というリスクも一気に上がります。

つまり、バズを上げる=現場オペレーションへの負担を上げる、ということでもあるわけです。

すき家のローストビーフ丼のように「売れすぎて一時販売休止」になるのは、
言い方を変えれば、

「バズに対して、サプライチェーンとキッチンのキャパが追いつかなかった」

ということでもあります。

「売れてるならいいじゃん」とは限らず、

  • 仕入れ
  • 仕込み
  • 調理
    が全部一気にきつくなるので、品質のバラつきやミスの可能性も上がる、というのがこの三角形の怖いところです。

コストを削れば、品質と現場のゆとりが削られる

次に「コスト(お店側の負担)」の話。

会社としては、

  • 材料費(原価)
  • 人件費
  • 家賃や光熱費
    をできるだけ抑えたい、というのは当然です。

ただし、ここで意識しておきたいのが、

コストは、単なる数字ではなく「誰かのゆとり」を削った結果

だということです。

  • 安い材料を使う → 「味」「見た目」「食べた後の満足感」が少しずつ削られる
  • 人を減らす → 「調理時間の確認」「盛り付けのチェック」「お客さんと会話する余裕」が削られる

生肉カツ丼のような事故は、
コスト削減そのものが直接の原因とは限りませんが、

  • 忙しすぎて、揚げ時間をしっかり見られなかった
  • 二重チェックをする人員がいなかった
  • 「これ大丈夫ですか?」と誰かに聞く余裕がなかった

といった“ゆとり不足”から起きている可能性は高いです。

数字だけ見ると、

  • 原価率ダウン
  • 人件費ダウン

ときれいに見えますが、その裏で、

  • 「もうちょっと落ち着いて仕事したい」
  • 「ちゃんと確認したいけど時間がない」

という、現場の声が押しつぶされていると、どこかで品質の崩壊として表に出てくる
それが炎上です。

「安さを求めすぎる」と、どんな未来になる?

最後に、この三角形の中で、私たちお客側はどんな選択をしているのかを考えてみます。

私たちはつい、

  • 「ワンコインなら神」
  • 「このボリュームでこの値段は優勝」
    と、“安くて多い店”を称賛しがちです。

もちろん、安くておいしいのは正義です。
でも、「安さ」を求めれば求めるほど、企業側はこう考えざるを得ません。

  • もっと原価を下げないと
  • もっと人件費を削らないと
  • もっと少ない人数で回さないと

その結果、

  • 現場は常にフルスロットル
  • 教育の時間も足りない
  • ミスが起きてもフォローしきれない

という「ギリギリの状態」が標準になっていきます。

そして、どこかのタイミングで、

  • 「え、これ生じゃない?」というカツ丼
  • 「写真と全然違うんだけど」というローストビーフ丼

のような、“三角形の歪み”が突然表に出てくる。

ここで少しだけ視点を変えると、
私たちにもできる選択は意外とあります。

  • めちゃくちゃ安い店にだけ行くのではなく、「値段は少し高いけど、ちゃんとしてそうな店」を時々選ぶ
  • 「このクオリティでこの値段なら、まあ納得」と思えたら、あえてそれをSNSで褒めてみる
  • 「安さだけ」で店を評価しない

こういう行動は、「ちゃんとコストをかけて、品質と現場のゆとりも大事にしている店」にとっての“投票”になります。

逆に、

  • 「安さしか評価されない世界」
    が続いてしまうと、企業も
  • 「とにかく安くしないと選ばれない」
    と判断し、結果的に

バズを狙いながら、
コストを削りまくり、
品質と現場が限界を迎える

という、今の流れが加速していきます。


ここでは、

  • バズ
  • コスト
  • 品質

という三角形で、外食チェーンの現実を整理してみました。

この三角形は、企業だけが作っているわけではなく、
私たちお客の「どんな店を選ぶか」「何を評価するか」という行動にも、しっかりつながっています。

次の最後の結論パートでは、

  • カツ丼の衣の下の“生の現実”
  • ローストビーフ丼の「バズと炎上の両立」

を踏まえながら、
「じゃあ、これから私たちはどう外食チェーンと付き合っていけばいいのか?」
という問いに、もう少し踏み込んでいきます。

結論 「あなたの一杯」が、決算書の数字を変えていく

カツ丼の衣をめくったら、生っぽい肉が出てきた――。
このショッキングな写真は、単なる「一店舗のミス」だけで片づけるには、あまりにも象徴的でした。

すき家のローストビーフ丼が、

  • バズるほど売れて
  • 品切れするほど人気が出て
  • でも「写真と違う」と炎上もする

この流れもまた、「バズ・コスト・品質」の三角形がゆがんだときに何が起きるか、わかりやすく見せてくれました。

損益計算書(PL)の世界では、

  • 売上を増やす
  • 原価を下げる
  • 人件費を抑える

この3つをどうコントロールするかが、経営の大きなテーマになります。
でも、その数字の裏側には必ず、

  • 現場でフライヤーの前に立っている人
  • ローストビーフを仕込んでいる人
  • クレーム電話を受けている人

の姿があります。

原価を1円削ることも、人件費を1%抑えることも、
ぜんぶ「どこかの誰かのゆとりを削る」という意味を持っています。

そして、そのゆとりが削られすぎたときに表に出るのが、

  • 生焼けのカツ丼という“事故”
  • 写真とのギャップに対する“裏切られた感”
  • それが一気に可視化されるSNSの炎上

なんですよね。

ここで、私たちお客側の話に戻ります。

私たちがレジで出す「1コイン」「1,000円」は、企業からすると売上です。
でも同時に、それは

「この店のやり方を支持します」という小さな投票

でもあります。

  • 「ちゃんとしたものを、ちゃんとした値段で出している店」
  • 「現場にもある程度ゆとりを持たせていそうな店」

に、お金を落とす回数が増えれば増えるほど、
企業は「安さだけじゃなくて、品質と現場も大事にしよう」と決算書を組み立てやすくなります。

逆に、

  • 「安ければ正義」
  • 「量が多ければなんでもいい」
    だけを評価軸にしてしまうと、
    企業はどうしても
  • 原価をギリギリまで削り
  • 人件費をギリギリまで抑え
  • 現場をギリギリまで回す

方向に追い込まれていきます。
その延長線上にあるのが、今回のような“ひび割れ”です。

もちろん、私たちも無限にお金があるわけではありません。
節約したい日もあれば、「今日は安く済ませたい」という日もある。
それ自体は悪いことではないし、外食チェーンの存在意義でもあります。

ただ、月に何回かのうち1回でもいいから,

  • 「この値段でこのクオリティなら、むしろ安いよね」と思える店を選ぶ
  • 「ちゃんとしてるな」と感じたときは、SNSでそっと褒める
  • 「安さだけじゃなくて、安心感も大事」と自分の中の基準を言葉にしてみる

こういう小さな選択を積み重ねると、
あなたのお金の流れが、少しずつ外食業界の“決算書の重心”を動かしていきます。

カツ丼の衣の下にあった「生の現実」は、

  • 原価高騰
  • 人件費削減
  • バズへのプレッシャー

が折り重なった結果でもありました。

でも同時に、
私たち一人ひとりの「何にお金を払うか」という選択が、
これからの外食チェーンの未来を変えていく
きっかけにもなります。

次にメニューを開いたとき、
「一番安いから」ではなく、
「この値段なら、この店を応援したいから」
という理由で選んでみる。

そのささやかな一杯が、
どこかのキッチンのゆとりを1分増やし、
どこかの新人スタッフのミスを1件減らし、
どこかの決算書の数字を、ほんの少しだけ健全な方向に動かすかもしれません。

あなたの今日のランチ代は、
どんな外食の未来に投票しますか?

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

月刊食堂 2025年6月号

ポイント
外食・中食業界向けのプロ向け月刊誌。「単品FL思考=原価率(F)と人件費率(L)をどう配分して価値と利益を両立させるか」という、まさにこの記事で語ったテーマど真ん中の特集号です。

このブログとの相性
・原価率・人件費率のリアルな水準
・ヒットメニューを支えるオペレーション事例
・「価値だけ上げてコストは暴走させない」工夫
などが、実在のチェーンや繁盛店を素材に解説されています。

ひとこと

「バズ・コスト・品質の三角形」を、ガチ現場の数字と事例で確認したい人に。
自分のブログで書いたロジックを“裏取り”したくなったら、この1冊を開く感じです。


図解 人気外食店の利益の出し方

ポイント
マクドナルド、吉野家、かっぱ寿司など、大手外食チェーンの「どうやって儲けているか?」を、原価・人件費・回転率などの基本指標でやさしく分解してくれるロングセラー。図解中心で、会計が苦手でも読みやすい構成です。

このブログとの相性
・なぜ低価格でもビジネスとして成り立つのか
・原価率をどこまで攻められるのか
・人件費や回転率をどう設計しているのか
といった「チェーン店PLの基本設計」を押さえるのにぴったり。ブログで触れた“原価の魔法”“人件費ギリギリ問題”を、具体数字のイメージ付きで語れるようになります。

ひとこと

「人気店の儲けのカラクリ」を知りたい人が最初に手に取るならコレ。
一度読んでおくと、どの外食チェーンの決算書を見ても“構造”がなんとなく分かるようになります。


食サービス産業の工業化 ― 外食・中食産業を中心に

ポイント
「サービスの工業化」論が、日本の外食・中食をどう変えてきたかを本格的に掘る一冊。
マニュアル化・標準化が現場の働き方と“やりがい”にどんな影響を与えてきたか、チェーンオペレーションの功罪を落ち着いて分析しています。

このブログとの相性
・「少人数で回す」現場がなぜ当たり前になったのか
・マニュアルで品質を守ることの限界
・効率化と“やらされ感”の関係
など、ブログで書いた「現場崩壊」「ゆとりのなさ」の背景を、学術寄りだけど読みやすい文章で追いかけられます。

ひとこと

「生肉カツ丼は、なぜ起きてもおかしくない状況だったのか?」
その奥にある“構造”まで理解したい人には刺さる1冊。現場目線の取材記事とは違う、地層の深いところを見せてくれます。


食の経済入門(2022年版)

ポイント
農業・漁業から食品加工、流通、外食、そして食品安全まで、「食」に関わる経済の動きを一通りやさしく整理してくれる入門書。現代の食をめぐる構造を俯瞰するのにちょうどいい1冊です。

このブログとの相性
ブログで触れた「2万品目以上の値上げ」という話を、
・なぜ原材料が上がるのか
・為替や国際情勢が食の価格にどう効いてくるのか
・小売・外食の値付けにどう伝わるのか
といったマクロの視点から理解できます。

ひとこと

「なんでこんなに何でもかんでも値上げなの?」
というモヤモヤを、感情論ではなく“構造”で説明できるようになりたい人は、持っていて損なし。ブログでの説明力も一段アップします。

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フードテック 中小企業によるフード業界の変革

ポイント
2024年発売の新しめの一冊。食品廃棄の削減、人手不足、食の多様化など、フード業界が抱える構造的な課題に対し、中小企業がテクノロジーでどう挑んでいるのかを紹介しています。

このブログとの相性
・人手不足でも品質を落とさない仕組みづくり
・フードロスを減らしつつ原価をコントロールする工夫
・テックで現場の「ゆとり」を取り戻すアプローチ
など、ブログで描いた「バズとコストで疲弊する現場」の“次の一手”候補がたくさん出てきます。

ひとこと

「炎上ネタで終わらせたくない人」のための、未来志向の1冊。
構造問題を押さえたうえで、「じゃあどう変えていけるのか?」まで語れるようになるので、追い記事を書くときのネタ帳としてもかなり優秀です。


それでは、またっ!!

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