みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
あなたの“信用”に、値段がつく時代が来たら…今の働き方のままで大丈夫?
「転職で見るのは年収じゃない。“クリアランスの有無”になる」――そんな未来、さすがに大げさ?と思うかもしれません。でも日本では、経済安全保障の流れの中で“セキュリティ・クリアランス(適性評価)”が制度として動き始めています。政府が「重要経済安保情報」を指定し、それにアクセスする人が“漏えいのおそれがない”と確認された場合にだけ扱える、という仕組みです。いわば「機密に触れるための入場券」。そしてこの入場券は、公務員だけでなく、官から情報を受け取る企業や、その企業で働く個人にも関わってきます。
ここがポイントで、制度の中心は「情報」だけじゃありません。「人」と「会社」もチェックの対象になる。企業は“適合事業者”として認められ、さらにそこで機密に触れる従業者は適性評価を受ける――この二段階が前提になります。先端技術やサプライチェーンの情報が安全保障と直結する時代、研究開発・サイバー・半導体・宇宙などの領域では、民間でも“クリアランス前提”のプロジェクトが増えていく可能性があります。
ただし明るい話だけではありません。身辺調査に近い情報確認が入る以上、個人情報の扱い、思想信条への萎縮、採用や評価の公平性など、モヤっとする論点が山ほど出ます。さらに企業側も、審査対応・情報管理・教育・監査などのコストが増え、会計的には“見えない固定費”として利益を押し下げる可能性がある。一方で、クリアランス人材は希少性が生まれ、労働市場では「信用」がスキルと同じくらい価格づけされる――つまり年収レンジそのものが変わり得るんです。
この記事では、①そもそもクリアランス制度って何が変わったのか(2024年成立→2025年施行の流れも含めて)、②民間企業の採用・評価・福利厚生がどう“再設計”されるのか、③個人は「詰まない」ために何を整えておくべきか――を、専門用語をなるべく避けつつ噛み砕いていきます。読み終わる頃には、ニュースの見出しが“自分のキャリアと家計”に直結して見えるはずです。
クリアランスって結局なに?「制度の地図」を5分でつかむ

まず大前提からいきます。セキュリティ・クリアランス(適性評価)は、ざっくり言うと「この人に機密っぽい情報を見せても大丈夫?」を国が確認する仕組みです。日本では経済安全保障の文脈で、政府が指定する“重要な情報”を扱う人や会社に、ルールが整備されました。2025年5月16日に施行された制度で、民間企業の従業員も関係してきます。
何が「機密」になるの?――“重要経済安保情報”という箱
ここでいう機密は、映画みたいな「スパイが狙う国家機密」だけじゃありません。ポイントは先端技術・サプライチェーン・サイバーなど、経済と安全保障がつながる領域の情報が対象になり得ること。政府が「これは特に守るべき」と指定したものが、いわゆる重要経済安保情報です。
つまり、民間の研究開発や製造、IT運用の現場でも「国と一緒にやる案件」「国から情報提供を受ける案件」になると、扱う情報のレベルが一段上がる——そんなイメージです。
誰が、どうやって評価する?――“申し込めない資格”
誤解されがちですが、これって運転免許みたいに個人が勝手に取りに行ける資格ではありません。適性評価を実施するのは「情報を提供する行政機関の長」で、調査は原則として内閣府が一元的に行う、とされています。さらに、本人が「受けたいです!」と申し込む制度ではなく、業務上必要と判断された人が対象になります。
そして一度通れば永久にOK、でもない。Q&Aでは、再実施までの期間は10年が基本(ただし途中でも疑いが生じる事情があれば再評価)とされています。ここ、キャリア設計的には意外と大事です。内閣府
民間にどう波及する?――「会社」もチェックされる
民間に効いてくる最大の理由は、個人だけでなく企業側も“適合事業者”として認定される仕組みがあること。行政機関は、必要な場合に事業者へ情報提供を検討し、事業者は申請して認定を受ける流れが想定されています。
ここから先が“福利厚生み”の出るところで、企業は認定・運用のために、規程整備、教育、情報管理、監査対応などを回さないといけない。要するに会社の固定費(コスト)が増える。一方で「認定がある=国の重要案件に入れる」なら、受注や共同研究のチャンスが増える可能性もある。投資・会計の言い方をすると、クリアランス対応はコストでもあり、将来の売上につながる“参入チケット”にもなるわけです。
このセクションで押さえたいのは、「身辺調査が怖い/怖くない」以前に、“情報のランクが上がるほど、仕事の入口にも門ができる”という現実です。次のセクションでは、その門ができたときに、採用・評価・待遇がどう変わりやすいのかを、もっと生々しく見ていきます。
採用・評価・福利厚生が変わる――「クリアランス前提の会社」はこうなる

ここからが本題です。制度そのものは「機密を守る仕組み」なんだけど、民間に波及すると “人事のルール” がガラッと変わりやすい。なぜなら、機密に触れるには 会社が「適合事業者」として認められ、さらにその中の 特定の人が適性評価を受ける という流れになるからです。
求人票が二層化する――「できる人」より「入れる人」
今までの採用は「スキル・経験・カルチャーフィット」が中心でした。ここに “アクセス権(クリアランスが必要な業務に就けるか)” が加わると、求人が二層に分かれます。
- A:クリアランス前提ポジション(国の案件、共同研究、重要なインフラ運用など)
- B:通常ポジション(社内業務中心、公開情報中心)
そして重要なのは、適性評価は 個人が勝手に申し込める制度ではない という点。会社側が「この業務に必要」と判断して初めて対象になり得ます。
つまり転職市場では、「実力がある」だけじゃなくて “その会社で、対象業務にアサインされる見込みがあるか” が評価の一部になります。これが、尖りコピーの「年収よりクリアランス」に近い世界観です。
評価制度が変わる――“信用”がKPIみたいになる
クリアランスが絡む仕事は、だいたい 納期も責任も重い。すると会社は評価をこう組み替えがちです。
- 成果+守り(ルール遵守) をセットで評価
- 機密に触れる人には 権限と同時に義務(教育、手続き、報告)が増える
- 役員や株主の状況も含めて、会社側は「外国からの影響がないか」などを説明できる体制を求められる
ここで起きやすいのが、評価の“見えない差”です。
同じエンジニアでも「クリアランス案件で働ける=売上に近い場所」にいる人の方が、昇給・昇格が早くなる。結果として 「信用」=市場価値の一部 になり、スキルと同じように価格がつきます(手当、役職、オファー額に反映される)。これは理屈としては自然ですが、本人から見ると「なんか腑に落ちない」も起きやすいポイントです。
「身辺調査が福利厚生」化する――会社が守る・整えることが増える
適性評価は、同意を取ったうえで、質問票・面接・関係者への質問、必要に応じた照会などで調査され得ます。
このプロセスが入ると、会社は“福利厚生っぽく”次の支援を用意しがちです。
- 相談窓口(人事・法務・セキュリティ):どこまで答える?家族の扱いは?などの不安ケア
- 情報管理トレーニング:うっかりミスを減らす(個人を守る意味も大きい)
- 配属・異動の設計:クリアランス業務に就けない/途中で外れる場合の“キャリアの逃げ道”を作る
会社目線でいうと、これは全部コストです。規程整備、教育、設備、監査対応……会計的には販管費が増えやすい。
でも一方で、適合事業者になって国の重要案件に参加できるなら、それは 売上につながる「参入チケット」 にもなる。つまり、企業価値のアップ要因にもなり得る。この“コストと成長の綱引き”が、これからのリアルです。
ここまでで見えてくるのは、クリアランス社会では「性格が良い人が得する」というより、“仕組みが整っている会社/整える体力がある会社”が強いということ。次は、個人側が「詰まない」ために、今から整えておくと効く行動をまとめます。
個人はどう備える?「詰まない」ための現実的な整え方

ここまで読んで「なんか怖い…」と思った人、正常です。クリアランス社会で一番しんどいのは、“優秀かどうか”より先に、「疑われにくい状態を保てるか」が問われやすいところ。
ただ、ここで大事なのは――適性評価は「完璧な人間だけ通す」仕組みというより、漏えいリスクを上げる要素がないかを確認するという考え方だ、という点です。実際、運用基準には「該当する事実があるからといって、直ちにNGと判断されるものではない」と書かれています。
「調べられる項目」を知ると、備えが具体化する
適性評価で調査される事項は、法律に基づく“7つの項目”として整理されています。ざっくり言うと次の方向性です。
- 反社会的・破壊的活動との関係(外国との関係も含めて、働きかけに抗えない関係がないか等)
- 犯罪・懲戒の経歴
- 情報の扱いでの違反歴(ルール違反で指導や処分を受けた等)
- 薬物の乱用
- 精神疾患に関する事項(ただし治療歴があるだけで直ちにNGではない、必要なら症状等を踏まえて判断)
- 飲酒トラブル
- 信用状態など経済状況(返済不能、不相応な浪費など)
このリスト、初心者向けに言い直すと「弱みを握られて情報を持ち出す状況になりにくいか」を見ている、と考えると分かりやすいです。だから備えも“精神論”じゃなく、生活の整備になります。
「お金の整え」は最強の防御――信用は家計の設計で作れる
ここ、投資・会計の視点が刺さります。なぜなら、評価項目に**「信用状態・経済状況」が入っているから。
つまり、家計のぐらつきは“生活の不安”だけでなく、キャリア面ではリスク要因**として見られ得る。
今日からできる整え方は超シンプルです。
- 支払いの遅れをゼロにする(クレカ・奨学金・税金・家賃など)
- 借入を“見える化”する(残高、金利、返済日を一覧にする)
- 浪費の癖を潰す(特に「理由の説明がしにくい高額消費」を減らす)
- 副業の収入は申告含めてルール通り(グレーを残すと、後で説明コストが跳ね上がる)
会社の会計で言えば、これは“リスク管理の内部統制”。個人で言えば、信用スコアの自作みたいなものです。派手さはないけど、効きます。
SNS・人間関係・情報習慣――「悪気ない漏えい」を防ぐ
クリアランス社会で一番起きやすい事故は、スパイ映画みたいなやつより、だいたいうっかりです。運用基準でも「情報の取扱いに係る非違(ルール違反)」が調査事項として明記されています。
ここも、難しいことは要りません。
- SNSで“仕事の匂わせ”をしない(案件名、顧客、場所、時期、チーム構成…断片でも組み合わさる)
- 端末・パスワード・2段階認証を徹底(漏えいは「口」だけじゃなく「端末」から起きる)
- 飲み会で話しすぎない(飲酒トラブルも調査事項にある。自分を守る意味でも節度が大事)
- 困ったら早めに相談する(黙って抱えるほど、後からの説明が苦しくなる)
なお、制度側も「基本的人権の尊重」「プライバシー保護」「法で定めた7事項以外の調査禁止」「結果の目的外利用の禁止」などを基本的な考え方として掲げています。怖さをゼロにはできないけど、無制限に何でも調べられる、という設計ではありません。
結局のところ、クリアランス社会で強い人は「潔白な人」というより、説明できる暮らしをしている人です。お金、情報、習慣――この3点を整えるほど、“信用”はちゃんと積み上がっていきます。
結論
セキュリティ・クリアランスの話って、つい「怖い」「監視される」みたいな感情で止まりがちです。でも本質は、もっと地味で、もっと現実的。社会のルールが変わるとき、最初に変わるのは“空気”じゃなくて、仕事の入口です。入れる案件が変わり、任される情報が変わり、評価のされ方が変わる。すると転職市場は、スキルだけじゃなく 「アクセス権」まで含めて値札を付け始めます。
この流れが進むほど、企業は二つのタイプに分かれていきます。
ひとつは、認定や運用に投資して、重要案件に入りに行ける会社。もうひとつは、そこには無理に乗らず、別の強みで勝つ会社。どちらが正しい、という話ではありません。ただ、投資と会計の目線で見るとわかりやすくて、クリアランス対応は「余計なコスト」でもあり、同時に参入障壁を越えるための投資でもある。つまり、会社の戦略がそのまま“人のキャリア”に波及します。
そして個人側の勝ち筋は、意外とシンプルです。
「完璧な人間になる」じゃなく、説明できる暮らしに寄せること。支払いを遅らせない、借入を見える化する、グレーな稼ぎ方をしない、SNSで匂わせない、端末の管理を固める。こういう“地味な整え”が、クリアランス社会ではそのまま防具になります。派手な資格より先に、まず生活の足元。
たぶんこれから、「信用」はもっと言葉として使われるようになります。でもそれは精神論じゃなくて、市場で価格がつく“実務の要素”になっていく、という意味です。
年収が上がる人と、チャンスの手前で止まる人。その差は、才能よりも「乗れるレールがあるか」で決まる場面が増える。だからこそ、怖がりすぎず、無視もしない。自分の業界がどちらに向かうかだけは、早めに見ておく。
転職で見るのは年収じゃない。“クリアランスの有無”になる――もしそんな時代が来ても、あなたが主導権を持って選べるように。今日からできる整えを、静かに積み上げていきましょう。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『設例で学ぶ個人情報管理と漏えい等対応』木村一輝
「個人情報、ちゃんと扱ってるつもり」ほど刺さる一冊。ありがちな事故(誤送信・委託先ミス・クラウド設定漏れ等)を具体例ベースで追いながら、“何を決めて、何を残して、何をしたら詰むのか”が腹落ちします。「信用が福利厚生」時代の守りの教科書として強い。
『サイバーセキュリティお嬢様と学ぶ 情報セキュリティの基本』ちょこぱい(守部里花)ほか
セキュリティ入門で挫折しがちな人向けに、難しい話を噛み砕いてテンポよく進めてくれるタイプ。攻撃の流れや「何が危ないのか」を、現場の感覚でつかめます。クリアランス社会で増えるのは“スパイ”より“うっかり漏えい”なので、まずここで土台を固めるのが効きます。
『Q&A 経済安全保障の実務対応――法制の概要とリスク管理のポイント』桜田雄紀
このブログのテーマを、いちばん「実務の言葉」で読めるのがこれ。事業提携・技術導入・サプライチェーンなど、企業が日常的にやる意思決定を、経済安保の観点でどう守るかをQ&Aで整理。セキュリティ・クリアランスにも触れているので、「会社側が何を整えるのか」を知りたい人に刺さります。
『設例で学ぶ個人情報保護法の基礎』木村一輝
「結局、どこまでがOKで、どこからがアウト?」を、条文の丸暗記じゃなくケースで理解できる入門書。マーケ・人事・情シスなど、部署をまたいで揉めがちな論点が整理されます。クリアランス以前に、日々の仕事で“信用を落とさない動き方”が身につくのが価値。
『ビジネスと地政学・経済安全保障――「教養」から実践で使える…』国際文化会館 地経学研究所
「なんで今、会社員まで安全保障の話をしないといけないの?」の答えが、いちばんスッと入る本。ニュースが点で終わらず、“企業の儲け方・守り方”とつながって線になる。クリアランスを“怖い制度”で終わらせず、キャリアと会社の戦略の話として理解したい人におすすめ。
それでは、またっ!!
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