みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
あなたの会社、“サイバーじゃないのに稼働率が落ちる日”を想定していますか?
あなたのスマホが現在地を外さず、荷物がだいたい予定通り届き、飛行機が「まあ普通に」飛ぶ。これって実は、ものすごく高度な奇跡の積み重ねです。私たちは地図アプリ、キャッシュレス、クラウド会議、翌日配送を“当然”として受け取っています。でもその裏側は、地上のネットワークだけで完結していません。空の上——電離圏と衛星——が静かに支えていて、そこに宇宙からの“ノイズ”が刺さると、前提がふっと揺れます。
厄介なのは、崩すのがサイバー攻撃だけじゃないこと。太陽活動が強まると、太陽フレアや磁気嵐が原因で「通信」「測位(GPS)」「航空」「衛星運用」の条件が悪化することがあります。犯人がハッカーじゃないので、相手を止めても解決しない。むしろ、影響が“じわじわ”出て、気づいたら現場が消耗している。突然、社会の稼働率が数%落ちる。これが宇宙天気リスクの怖さです。
NICT(情報通信研究機構)は2025年12月にXクラス太陽フレアが発生したことをレポートしています。Xクラスは“最大級”。今回も、日本で短波通信に影響するデリンジャー現象が観測されました。大きな停電や衛星が落ちる話じゃなくても、「いつも通りにいかない瞬間」が現場に増える。ここがポイントです。
この記事では、太陽フレアを「宇宙のニュース」ではなく、現代ビジネスの“インフラ稼働率”を落とす自然災害として捉え直します。具体的には、
①どのインフラが揺れるのか(GPS・衛星・通信・航空・電力)
②止まるより厄介な「ズレ」「遅れ」が、どこでコストに化けるのか
③BCP・保険・契約で“損失の上限”をどう設計するか
を、難しい専門用語を避けて整理します。会計っぽく言えば「起きる確率」より先に「起きた瞬間に何円燃えるか」を見える化する回です。
読み終える頃には、宇宙天気を怖がるだけじゃなく、社内で説明できて、備えの優先順位まで決められる状態を目指します。太陽が投げてくるノイズに、こちらも“現実的な耐久性”を足していきましょう。
目次
文明は“空”に外注している——宇宙天気が刺さる3つの依存関係

「太陽フレア」と聞くと遠い宇宙の出来事に思えます。でも現代のインフラは、かなりの割合を“空(電離圏・衛星)”に外注しています。通信は空を通って届き、位置情報は衛星から降ってきて、時刻も衛星が刻みます。だから宇宙天気が荒れると、ハードが壊れなくても「精度が落ちる」「つながりにくい」「遅れる」がまとめて出て、社会の稼働率がじわっと下がる。NICTが触れたデリンジャー現象のように、電波が通りにくくなる現象は“目立たないのに効く”タイプです。
ここで大事なのは、「ゼロか100か」じゃないこと。宇宙天気は、停電みたいに一発で気づく場合もありますが、多くは“品質低下”として出ます。だから対策も、非常用発電機の話だけでは足りません。品質が落ちたときに、業務をどうやって“許容できる品質”に戻すか——そこが勝負になります。
電波が薄くなる:まず“連絡が取れない”が起きる
フレア由来のX線・EUVが電離圏を急に変えると、昼側で短波(HF)が不安定になり、広域で通信が落ちることがあります。NOAAはフレアの強度に応じてラジオブラックアウト(R1〜R5)を整理し、強い場合は短波通信の途絶が起こり得るとしています。
ここが地味に効くのは、HFがいまだに「最後の砦」として残っている領域があるから。洋上、遠隔地、災害時の代替連絡など。ネット回線を二重化していても、“物理的に電波が通りにくい日”は別問題です。
そして本当に痛いのは、通信が落ちると人は安全側に倒れること。確認、承認、再連絡、待機が増え、仕事のスピードが落ちます。スピードが落ちると、次の工程が詰まる。詰まると残業や外注が増える。宇宙天気はこうやってPLをじわじわ削ります。
GPSがズレる:位置だけじゃなく“時刻”が狂う
GPSは地図アプリだけのものではありません。業務では「位置+時刻」がセットです。配送の到着予測、車両・建機の自動制御、ドローン点検、発電所や基地局の同期…。たとえば“時刻”がずれると、ログの時系列が噛み合わず原因解析が難しくなります。位置がずれると、ピッキングや検品の導線が崩れます。宇宙天気で電離圏が乱れると測位の誤差が増えたり、信号が取りにくくなることがあり得ます。NOAAも航法信号の劣化に触れています。
厄介なのは、これは“停止”じゃなく“誤差”のリスクだということ。止まれば気づくけど、ズレると気づきにくい。結果として、再配達、再測量、やり直し工数、品質事故、クレーム対応といった「静かなコスト」に化けやすいんです。さらにズレは、契約の「納品場所」「検収条件」「到着時刻」にも絡むので、現場だけでなく法務・経理にも飛び火します。
衛星と電力:フレアの次に来る“磁気嵐”が本丸
フレアのニュースで忘れがちなのが、CME(太陽からのガス噴出)が地球に向かうと磁気嵐が起こり得ること。磁気嵐は送電網に誘導電流(GIC)を生み、電力インフラ側のリスクを押し上げます。1989年のケベック停電は、磁気嵐が大規模停電につながり得る例としてよく参照されます。
電力が揺れると、通信や物流だけでなく、冷蔵・冷凍、工場のライン、医療機器など“リアル”が直撃されます。つまり宇宙天気は「デジタルの問題」に見えて、最後はフィジカルに着地します。
ミニケース:建設現場と港湾は“位置のズレ”に弱い
たとえば建設現場では、測位を使って重機の作業ラインを管理したり、測量データと現場の進捗を紐づけたりします。港湾でも、ヤード内の位置管理や入出庫の記録に位置情報が絡みます。ここでGPSの精度が落ちると、「止まる」より先に「確認が増える」。一回の確認は数分でも、1日に何百回も積み上がると、現場の生産性は体感できるレベルで落ちます。だから“ズレ”は、技術問題ではなく、現場の人件費と納期の問題になります。
ここまでを一言で言うなら、宇宙天気は“攻撃”じゃなく“環境変化”。だから対策も、製品を買う前に、まず依存関係の棚卸し(どの業務がGPS/衛星/短波/電力に乗っているか)から始まります。
BCP・保険・契約で“損失の上限”を決める——宇宙天気をお金の言葉に翻訳する

宇宙天気の嫌らしさは、データセンターが燃えるわけでもサーバが全落ちするわけでもなく、「いつもよりズレる」「つながりにくい」「判断が遅れる」で業務が摩耗していくところです。だから対策は“防御”より、損失をコントロールする設計が効きます。ここでは会計・投資の視点で、宇宙天気を“お金の言葉”に変換します。
まずは“損失の仕訳”から:4つに分けると強い
宇宙天気の損失は、次の4種類に分けると意思決定が速くなります。
- 売上ロス:受注できない/納期遅延でキャンセル、機会損失
- 追加費用:迂回輸送、手作業化、残業、外注、再配達、代替機材
- 違約金・SLA:遅延ペナルティ、返金、補償対応、サポート増員
- 信用コスト:レビュー悪化、解約率増、次回受注の落ち込み
ここでのコツは、宇宙天気を「原因」ではなく「トリガー」として扱うこと。たとえば“配送遅延”という同じ結果でも、売上ロスなのか追加費用なのかで手当てが変わります。売上ロスなら代替提供(デジタル納品・部分納品)が効く。追加費用なら手作業の手順を短くするのが効く。違約金なら契約条項の見直しが効く。信用コストなら顧客への通知テンプレが効く。仕訳ができると、対策がピンポイントになります。
BCPは“代替手段”より先に、依存関係とトリガーを決める
BCPでよくある落とし穴が「予備回線はある」「クラウドは冗長化済み」で満足すること。宇宙天気で揺れるのは回線だけでなく、測位・電離圏・衛星という“前提条件”です。おすすめはこの順番。
- 依存マップを作る:重要業務に「GNSS必須」「衛星通信必須」「時刻同期必須」「極域運航あり」などのタグを付ける
- トリガーを決める:NOAAのRスケール(ラジオブラックアウト)など、外部指標を“切替条件”として採用する
- 手動モードの手順を短くする:今日だけは二重確認、締め時間前倒し、重要便の優先順位変更など
- 情報の通し方を決める:現場→指揮→取引先→顧客の順に、誰が何を言うか(混乱の最大要因は“情報の空白”です)
「当日会議で揉めない」ことが最大の効果です。迷いがコストを増やします。逆に言えば、1ページの判断表があるだけで、損失がガクッと下がるケースが多いです。
保険と契約で“燃える金額”を塞ぐ:BIとパラメトリックの発想
宇宙天気は、個社の努力だけでは吸収しづらい“システミック”な側面があります。だからこそ、リスク移転の設計が効きます。
- 事業中断(BI):限度額、免責、最大補償期間などの設計が重要(止まるより「遅れる」損失も拾える形にしておく)
- パラメトリック(指標連動):一定の指標条件で迅速に支払われる仕組みは、復旧前の資金需要に刺さりやすい
- 契約・SLA:不可抗力、遅延時の通知義務、代替手段の扱い、免責範囲を点検する(揉める前に“言葉”で止血する)
投資として見るなら、ここは「保険料=固定費」ではなく「キャッシュの耐震補強」です。宇宙天気は発生頻度より“発生時の同時多発”が怖い。物流も決済も一緒に遅れたとき、手元資金が薄いと、最初に折れるのはオペレーションではなく資金繰りです。
稟議で勝つコツ:宇宙天気を「想定外」ではなく「既知の外乱」にする
BCP投資が通りにくい理由は、発生頻度が読みにくいから。だから稟議では「発生確率」の議論に引きずり込まれないのがコツです。代わりに、
- 影響を受ける業務(売上に直結する順)
- 影響が出たときの“1日あたり”の追加費用(残業・外注・返金・再配達)
- その費用をどれだけ下げられるか(判断表、手順短縮、通知テンプレ)
を並べます。これは“保険の見積”に近い発想で、経営が判断しやすい形です。
さらに投資評価の観点では、「ゼロにする」ではなく「上限を下げる」施策を積み上げるのが現実的。たとえば、判断表の整備+通知テンプレ+手動手順の訓練は、設備投資より安く、効果が出やすい。大きな施策(追加通信手段やシステム改修)は、その上で“効くところだけ”に絞る。これが宇宙天気対策の王道です。
ここまで整理できれば、宇宙天気は「宇宙の出来事」ではなく、PLとキャッシュフローに来る揺れとして扱えるようになります。
サプライチェーンは“静かに連鎖倒れ”する——宇宙天気で起きる現場の詰まり方

宇宙天気の怖さは、いきなり全部が止まるよりも、あちこちが数%ずつ劣化して、結果として全体が詰まるところにあります。現代の物流・運航・発注は「測位」「通信」「時刻」が揃って初めて自動で回る設計なので、“数%の劣化”が連鎖しやすいんです。しかも連鎖は、最も弱いところ(人手不足、繁忙期、タイトな納期)に向かって集中的に刺さります。
物流・航空・海運:「迂回」と「手戻り」が同時に増える
強いフレアでは短波通信の途絶や航法信号の劣化が起こり得る、とNOAAは整理しています。
現場に起きるのは、派手な停止より“保守運用”の増加です。
- 迂回・高度変更・運航判断の前倒し → 予定がズレる
- 予定がズレる → 荷受け・倉庫・人員配置がズレる
- ズレを吸収するため手作業が増える → ミス率も上がる
遅延はニュースになりますが、再配達・積み直し・滞留・返送の増加は静かに利益を削ります。特に厳しいのは、複数社が同時に保守運用に入ること。トラックが足りない日に、さらに“優先便”が増える。これが詰まりの正体です。
取引先の連鎖:「データ連携の遅延」が在庫とキャッシュを殴る
EDIやWMS、需要予測は便利ですが、裏側は“正しい時刻と位置”に依存しています。測位が怪しい日は現場が確認工程を増やし、承認が遅れます。すると、
発注が遅れる → 入荷が遅れる → 生産が待つ → 納品が遅れる
という王道ルートで連鎖します。会計的には、
- 在庫が増えて保管費・滞留損が増える
- 回収が後ろ倒しになり運転資金が苦しくなる
- 特急便・代替調達で粗利が削れる
“サイバーじゃないのに資金繰りが痛む”のが、このタイプです。
しかも「原因が宇宙天気」とは言いづらいので、取引先に説明できないまま、ただ納期交渉だけが増えていく。ここで効くのが、あらかじめ決めた通知ルールと、代替案(部分納品・後追い納品・別便の提案)です。
連鎖倒れを止める実装:アラート→判断→運用の三段ロケット
対策は気合より仕組み。おすすめは三段です。
- アラートを受け取る:NICTやNOAAの情報を、当番・通知先・閾値で運用する
- 判断基準を文章化する:今日はGPSが怪しい前提/重要便優先/締め時間前倒し、など
- 運用の逃げ道を用意する:二重スキャン、代替連絡、受領条件の変更、SLA例外の扱いの明文化
この三段が揃うと、宇宙天気は「予測不能な事故」から「予測は粗いが、運用で吸収できる揺れ」に変わります。宇宙天気はゼロにできません。だから「揺れても破綻しない余白」を作る。サプライチェーンは止まるより詰まるほうが高くつくので、稼働率を守る設計が一番コスパが良い対策になります。
現場で効く小技:詰まりを“前倒し”で逃がす
宇宙天気は、当日にいきなり回復することもあります。でも現場は「回復したから戻そう」とすると二度手間になりがち。なので、切替は“前倒し+戻しは慎重”が基本です。
- 締め時間を前倒しする(その日の不確実性を吸収する)
- 重要度でキューを分ける(全部を同じ優先度で扱わない)
- 取引先への連絡はテンプレで早く出す(沈黙が一番コストを生む)
この3つだけでも、連鎖倒れの確率はぐっと下がります。
結論:太陽は止められない。でも、稼働率は守れる
ここまで読んで、「太陽フレアって結局、宇宙の話じゃなくて“稼働率の話”なんだな」と思えたなら大成功です。サイバーは敵が見える。でも宇宙天気は、誰も悪くないのに前提が崩れます。だからこそ、気合や根性より“設計”がモノを言います。
まずは一枚の紙でいい。重要業務を並べて、横に「GPSが怪しい日」「衛星が不安定な日」「短波が落ちる日」「電力側に波及する日」を書き、各マスに“困ること”を短文で埋めてください。次に、その中から「放置すると高い」「代替がある」「判断が迷いそう」の順に色を付ける。ここまでで、BCPの優先順位はほぼ決まります。最後に、燃える金額の上限を、保険と契約で塞ぐ。揉めない言葉を先に用意する。これだけで、太陽が荒れても「慌てて高いコストを払う側」から「落ち着いて切り替える側」に回れます。
そして忘れたくないのが、人と運用です。宇宙天気の揺れは“重なって来る”ことがあります。測位が揺れ、通信が遅れ、現場が手作業に戻り、そこでミスが増える。だからBCPは書類で終わらせず、年に一度でいいので「今日はGPSが怪しい想定で回す」みたいな小さな訓練を入れてください。訓練はコストじゃなく、将来の損失を割り引く投資です。特に新年度の人員入替や繁忙期前に一度やると、現場の不安が減ります。
最後に、少しだけ視点を広げると——宇宙天気への備えは「危機対応」だけではありません。位置と時刻に依存したサービスが増えるほど、“前提が揺れたときにどう振る舞うか”が競争力になります。乱れた日に平常運転できる会社は、顧客から見れば「信頼できる会社」です。信頼は、広告費より強い資産になります。
太陽は明日も昇ります。同じようにノイズも送ってきます。文明は便利になったぶん、空に預けた前提が増えました。なら、こちらも賢くなるだけ。宇宙天気を怖がるのではなく、味方にする。稼働率を守れる人が、次の「当たり前」を守っていきます。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『今すぐ見上げたくなる! やさしい空と宇宙のはなし』武田康男・縣秀彦
「宇宙天気って結局なに?」を、“空に起きる現象”の延長としてスッと理解できる一冊。難しい式や専門用語に溺れず、太陽〜地球のつながりをイメージで掴めるので、この記事の前提が一気にクリアになります。
『責任ある企業の行動原則を踏まえたサプライチェーンリスクと規制対応』吉澤 尚
「自社だけ対策しても、取引先で詰まったら終わる」——その現実を“規制・経済安保・人権・サイバー”まで含めて俯瞰できる実務寄りの本。サプライチェーンを“運用”ではなく“経営リスク”として語れるようになり、社内説明の説得力が上がります。
『企業のリスクマネジメントと保険』柳瀬典由
宇宙天気みたいな「止めようがない外乱」にぶつかったとき、最後に効くのが“お金の守り方”。ERM(全社リスク)と保険戦略をつなげて整理してくれるので、「BCPは作った。でも損失上限が決まってない…」という人ほど刺さります。
『サプライチェーンにおける人権リスク対応の実務』阿部・井窪・片山法律事務所/佐長 功
調達や外注が広がるほど、トラブルは“現場の遅延”だけでなく“説明責任”に飛び火します。リスクの可視化〜デュー・ディリジェンスの実装まで踏み込んでいるので、取引先対応・監査対応まで視野に入れる読者の武器になります。
『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』古谷賢一
「リスク論は分かった。でも“どこが詰まるのか”がピンと来ない」人にちょうどいい入口。調達→生産→販売の流れが頭に入ると、宇宙天気で起きる“数%の劣化”が、どこで連鎖するか想像できるようになります。
それでは、またっ!!
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