みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
その「50%増」、本当にあなたの手取りに届くと思いますか?
石破茂首相が自民党に指示し、2025年夏の参院選で「2040年までに名目GDP1000兆円、平均所得を現在比で50%以上増加」を公約の柱に据えると表明しました。
「政策を掲げるのは簡単、実行するかどうかが問題だ」と公言してきた石破氏ですが、過去の「公約は守ったことがない」との発言や、「日本の財政はギリシャより悪い」といった疑問符のつく発言が、投資家や家計にとって信頼を損なっています。
本記事では、
- 会計的視点…この巨額目標、そもそも財源や収支構造から見て実現可能か?
- 投資的視点…成長戦略や市場期待を踏まえ、本気度や信頼性はどうか?
- 過去の失敗から何を学ぶべきか…今後のシナリオ形成にどう活かすか?
を深掘りし、「絵に描いた餅」で終わらせないための課題と改善案を提示します。読めば、参院選の公約が家計や投資判断にどう影響するか、ハッキリわかります。
会計の視点で見る「平均所得5割増」の現実的可能性

攻めの財政で実現できるか?数字の意味を会計で読み解く
「2040年までに平均所得を5割増加」「名目GDPを1000兆円へ」――一見すると壮大な数字に見えるこの目標、果たして現実味はあるのか?積極財政派の立場から見れば、これは単なる理想論ではなく、「適切な財源投入と制度設計」があれば十分に実現可能なビジョンだと言えます。
名目GDP1000兆円の意味と物価のコントロール
2024年現在、名目GDPは約600兆円。この数字を15年で1000兆円にまで伸ばすには、年率4〜5%程度の成長が求められます。もちろん、この成長率にはインフレも含まれる名目値です。ここで重要なのは、「インフレ=悪」ではないという視点。
安定的なインフレ率(2〜3%)を維持しつつ、公共投資・研究開発・人材育成などへの積極支出を通じて民間の投資と雇用創出を引き出せれば、GDPの拡大は可能です。特に、デジタル・グリーン分野への政府支出は乗数効果が高く、短期的にも所得増につながります。
積極財政は「借金」ではなく「未来への投資」として考えるべきです。
財政赤字をどう捉えるべきか?「支出=悪」という誤解
よく「日本の借金は1200兆円で財政は破綻寸前」といった主張がされますが、これは家計の会計を国家にそのまま当てはめた誤解です。国家会計の特徴は、自国通貨建ての債務を中央銀行が担保できる点にあります。つまり、資金調達の余地がある国であれば、持続可能な財政出動は可能なのです。
むしろ今問題なのは、支出を恐れて「先送り」することによる需要不足です。特に社会保障・教育・インフラといった「国の将来を支える分野」への投資を怠れば、GDP成長はおろか、所得増など夢のまた夢になります。
会計的にも、適切な支出が将来の税収増や産業活性化につながるのであれば、それは「資産の創出」であり「負債の膨張」とは異なります。
所得増をどう生み出すか?「使うことで増やす」発想
積極財政の核心は、「使うことが経済を回す」というケインズ的な原則です。消費と投資が連鎖しない限り、民間主導の成長は望めません。現状のように、企業が内部留保を積み上げ、家計が物価上昇を恐れて消費を抑える環境では、いくら政策目標を掲げても効果は限定的です。
そこで必要なのが、「可処分所得を増やす」政策パッケージです。社会保険料負担の見直しや、教育・住宅支援の強化、税制優遇などで手取りを増やし、同時に公共工事・地域再生・介護労働などへの政府主導投資で雇用と賃金を押し上げる。この2軸の同時展開が不可欠です。
会計の視点で見れば、政府の収支は「投資と回収」であり、所得増は「成果指標」です。正しく投資すれば、結果はあとからついてくるのです。
積極財政によって数字が「絵に描いた餅」ではなく「現実」になるかどうか。その鍵は、支出の質と配分にあるのです。
投資家の視点で見た石破ビジョンの不信感

「投資に値する国か?」という問い
投資家は数字に敏感です。そして、数字の「裏側」にあるロジックと整合性に価値を見出します。石破政権が掲げる「2040年までに平均所得を5割増やす」「名目GDPを1000兆円に」という目標は、国内外の投資家にどう映っているのか――。
市場が最も嫌う「整合性のなさ」
過去に石破氏は「公約を守ったことがない」と自嘲気味に語ったことがありました。こうした発言は市場において致命的です。政治家の言葉は、国家のクレジット(信用)を担保するものであり、それが疑わしければ、投資家は資本を引き上げます。
市場では「言行一致(consistency)」が重視されます。マクロ政策の目標が明確で、手段が具体的であり、履行実績があることが信頼を生む。しかし、今回の政策には成長エンジンの明確な提示もなく、過去の信頼も乏しいため、国債市場にも外国直接投資(FDI)にも好影響を与える可能性は低いでしょう。
投資家が重視するKPIがない
通常、経済政策を評価する際、投資家は以下のようなKPI(重要業績評価指標)を見ます:
- 労働生産性の成長率
- 民間投資の誘導額
- 実質賃金の推移
- 為替の安定性と購買力
しかし、石破政権の政策には、これらのKPIに関する具体的な目標や達成ロードマップが欠如しています。これでは企業も投資家も、政策によってどのような便益が得られるのかを計算できず、「資本を投じる価値があるかどうか」の判断ができません。
特に日本株市場では近年、賃金上昇と利益成長の乖離が問題視されており、「数字だけ増えても実態が伴わない」状況が続いています。石破ビジョンも、まさにその延長にあるように見えます。
海外投資家から見た「日本のリスクプレミアム」
日本の国債は依然として「安全資産」として扱われていますが、それは日銀の大量保有による人為的な安定に依存している面が大きいです。投資家が懸念するのは「政策変更が起きたときの急激な市場変動」であり、その根底には政治的信頼性があります。
石破政権が掲げる大風呂敷な公約に対して、市場が「実行可能」と評価できなければ、円安や株安、さらには国債利回りの上昇(≒価格の下落)を招くリスクが高まります。
投資家にとっての“安心材料”とは、具体性のある成長戦略と、履行実績に基づく信頼です。それがない以上、「平均所得5割増」は単なるマーケティングスローガンと受け止められるでしょう。
過去の失敗から何を学ぶべきか

歴史に学ぶ政策の“落とし穴”
経済政策において、夢を描くことは大切です。しかし同時に、過去の失敗から学ぶ姿勢を持たなければ、同じ過ちを繰り返すことになります。石破政権の「2040年に平均所得5割増」という目標を冷静に見直すためには、日本が過去に掲げた数々の経済成長戦略とその失敗をしっかりと検証する必要があります。
アベノミクスと「トリクルダウン」の幻想
2012年から始まったアベノミクスは、「金融緩和・財政出動・成長戦略」の三本の矢によってデフレ脱却と経済成長を目指しました。当初の期待は大きく、株価も円相場も大きく動きましたが、結果的に多くの家計にとって“実感のない景気回復”に終わりました。
「企業が儲かればいずれ労働者に恩恵が届く」という“トリクルダウン”理論は、現実には機能しませんでした。これは所得再分配の仕組みが弱く、内部留保や株主還元に利益が偏ったためです。
石破政権も「所得を増やす」と言いながら、その分配の仕組みや実施プロセスについて何も示していません。これではアベノミクスと同じ「絵に描いた餅」になるのは目に見えています。
消費増税と景気腰折れの教訓
2014年と2019年に実施された消費税の引き上げは、いずれもGDP成長率を鈍化させ、個人消費に大きな打撃を与えました。「財政健全化」の名のもとに実施された増税は、逆に経済成長を押し下げる結果となり、税収も思ったほど伸びませんでした。
石破氏は財政再建の必要性を強調する一方で、増税については曖昧な姿勢を取っています。しかし、財源を確保するには増税が不可避であるという現実から目を背ければ、経済は同じ轍を踏むことになるでしょう。
現実的な政策とは、「増税」と「経済成長」を両立させるタイミングと方法を誠実に設計することです。これを語らずに「所得5割増」を掲げるのは、あまりにも無責任です。
地方創生の失敗と「均質な施策」の危うさ
石破氏がかつて担当した「地方創生」も、目に見える成果を出したとは言い難い政策でした。多くの地方に交付金が配られましたが、持続可能な地域経済の成長には繋がらず、人口減少と高齢化に歯止めはかかっていません。
当時と同じように「所得増」「雇用創出」「地方振興」を一括りにして語るのは危険です。地域ごとに経済構造も労働市場も異なる以上、均質な施策では対応できません。会計で言えば「部門別損益」の管理が必要なように、政策も「地域別戦略」が必要なのです。
石破氏の経済ビジョンは、こうした過去の政策失敗に対する学びと修正の意志が見えず、単なる再掲にしか見えません。


結論:信頼なき「数字」は、投資も未来も動かさない
政治家が掲げる大きな目標――それ自体は否定されるものではありません。人々に希望を与え、経済を動かす原動力になる可能性もあるからです。しかし、その目標が「信頼に足るかどうか」がすべての前提です。
石破政権の「2040年までに平均所得を5割増やす」「名目GDP1000兆円を達成する」という公約には、その前提が決定的に欠けています。過去の発言に見られる公約軽視の姿勢、整合性のない政策設計、投資家視点を欠いた曖昧な成長戦略――これらがすべて、信頼の阻害要因となっているのです。
もし、本当に所得を上げたいのであれば、まずやるべきは「生産性の向上」や「イノベーションの促進」であり、それに応じた人材育成と再分配の仕組みづくりです。さらに、これらを支える財源やスキームを透明にし、段階的に実行する意思と能力を示すことが必要です。
また、会計と投資の視点から見れば、「将来のための施策」には長期的な予算配分と費用対効果の明確化が欠かせません。短期的な人気取りのために、無理な数字を掲げることは、むしろ未来の信用を毀損し、家計と投資環境にダメージを与えかねません。
国家も企業も「信頼」によって支えられています。市場も、国民も、未来に希望を持ちたいのです。であればこそ、必要なのは「大きな数字」ではなく、「小さな信頼の積み重ね」です。
石破政権がこの点を理解し、本当に未来を見据えた改革を行うのであれば、今からでも軌道修正は可能です。だが、このまま「数字だけが踊る公約」がまかり通るようであれば、それは未来の世代に対する責任放棄に他なりません。
政策に求められるのは、数字の派手さではなく、その裏打ちとなるロジックと実行力。そして、過去の自分の言葉に対する“ケジメ”です。
「公約は守られないもの」と思っている人に、国家の未来は託せません。だからこそ、今一度――
数字ではなく信頼を、口先ではなく実行を。我々が選ぶべき政治はそこにあるのです。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『投資で変わる日本経済 「アマチュア資本主義」を活かす途』
日本独特の「アマチュア資本主義」に切り込み、市場での資本形成と投資文化の変革が経済成長にどう寄与するかを探る一冊。政策目標の信頼性や、市場の期待形成に関する視点を得られます。
『図説日本の財政(令和6年度版)』
財政構造の全体像を図表で俯瞰できる、会計・財政分析のスタンダード。社会保障費の増加や国債残高など、セクション1で触れた「財政赤字」の根拠を視覚的に裏付けできます。
『マクロ経済学のナビゲーター[第4版]』
マクロ経済理論を初心者にもわかりやすく解説。名目GDP・実質GDP・インフレといった用語の整理に最適な教科書的1冊。セクション1の理論的根拠理解に役立ちます。
『投資のきほん(日経文庫)』
金融商品や資産配分の基本を平易にまとめ、KPIや市場心理を判断するセンスを養うのに役立つ解説書。セクション2で触れた「投資家が評価したい視点」を具体的に理解できます。
『2024年度版 会計税務便覧』
最新の会計基準・税法改正を集約した便覧。セクション1の「国家会計」に通じる実務知識にも応用でき、会計構造の説明に裏付けを与えてくれます。
それでは、またっ!!

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