みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。
あなたが買おうとしているそのマンション、本当に「資産」ですか?
金曜日の終業チャイムが鳴ると同時に、あなたはスマホで不動産アプリを開き、キラキラした夜景写真に指を滑らせる──「渋谷駅徒歩5分、天空ラウンジ付き2LDK・1億2000万円」。
もし“買うボタン”を押す直前のあなたに、ひとつだけ超能力を授けられるとしたら、それは「未来の財務諸表を透視する力」です。家賃収入が何年で金利を超えるか、税金がいつ利益を食い破るか、人口曲線がどの瞬間に空室率へ変換されるか……。
本記事を読むと、その超能力を“Excel + 会計脳”で再現できます。
- 価格・賃料・金利の3点を結ぶ一次方程式で、バブルかどうかを自分で判定できる。
- キャッシュフロー計算書に“もし金利+1%”というストレスを掛け、市場が揺れた時に自分の財布がどう揺れるかを3分で計測できる。
- 人口統計と会計基準をクロスさせ、誰も語らない「崩壊の前兆」を早期キャッチできる。
カフェのラテより少し長い5千文字ですが、読み終わった頃には1億円規模の意思決定に“定量の盾”を構えられるようになっています。では、都心マンションという名の摩天楼を、一緒に解体して中身を覗いていきましょう。
目次
数字が叫ぶ「価格—所得—利回り」の異常値 ― “買えるけど、持てない”という現実

都心中古70㎡の平均価格は1億円。厚労省の賃金構造基本統計を当てると、都内30代ホワイトカラーの平均年収は約560万円。価格/所得倍率=17.8倍は、国交省が健全ラインと示す7倍の2.5倍超です。
価格高騰の理由を「土地がないから」で片づけるのは簡単。しかし会計的に見れば、デベロッパーの“棚卸資産回転率”を極限まで下げる戦術が効いています。建築期間中はBSに仕入原価4000万円の土地+建物が載り、完成時には販売管理費分をのせて1億円で売却。回転率が年0.3→0.2に低下してもROEは維持できる仕組みです。価格は需要より資本効率で決まる──ここが投資家が最初に気付くべき視点。
次にキャッシュフロー。家賃月32万円(坪賃料1.5万円)で運営した場合、
- 年間家賃:384万円
- 管理・修繕・共用電気:▲70万円
- 固定資産税都市計画税:▲40万円
- 空室・テナント付替コスト:▲10万円
実質NOIは約264万円=実質利回り2.2%。
これを住宅ローン0.4%・35年で組むと、元利返済は年264万円とほぼイーブン。政策金利が1.5%へ上がると返済は年348万円となり、赤字84万円/年に転落。赤字を埋めるには(1)家賃を月38万まで上げる、(2)持ち出し自己資金を1割→4割に増やす、の二択です。賃料弾力性が低い日本で(1)は現実的でなく、(2)はレバレッジの旨味を消します。
結論:“借入で買う投資家”は1%の金利アップで持ちこたえられない。数字はすでに黄信号を点滅させています。
ケーススタディ:年収700万円・29歳サトウさんの場合
サトウさんは初期費用として自己資金800万円を準備し、5%頭金で1億円のタワマンを購入予定です。
金融電卓に数字を入れると——
- 毎月返済:28.9万円(変動0.45%)
- 管理関連費用:月10.5万円
- 想定家賃(転勤時):32万円
結果、自己居住中はローンと管理費で可処分所得の68%を住宅費が占拠します。これ、FIREどころかLIFE(Life Is Fully Encumbered)状態です。転勤で貸し出しても、金利+1%のシナリオでは手取り月0.5万円赤字。夫婦のボーナスで補填すればいい? それは投資ではなく寄付行為。サトウさんが“買うボタン”を押した瞬間、未来の財布には毎年20万円の穴が開く計算です。
「供給制約」と「外貨マネー」の二枚看板はいつ折れる? ― デベロッパーの会計技術とヘッジファンドの為替ゲーム

供給サイド:在庫圧縮という名の“会計マジック”
国交省データによると、2024年度の首都圏新築分譲供給は22,239戸で統計開始来最少。ゼネコンが嘆く人件費・資材費高騰を逆手に取り、デベロッパーは“高値で少量売り”へ切り替えました。売上高は目減りしますが、固定費をJV(共同事業)でシェアすることで販管費率を薄くし、ROEを確保。投資家が「希少性」と思っている裏で、企業会計では“在庫評価損リスクの先送り”が行われているわけです。
更に注目は「分譲用不動産の簿価引下げルール」。IFRS適用企業では、ネットリアライザブルバリューが簿価を下回った時点で減損しますが、多くの国内上場デベはJ-GAAPで“個別物件の見込み利益”を前提に繰り延べ可能。結果、棚卸資産の評価損がBSに出にくく、投資家は熱いマーケティング資料しか見えない構造です。
需要サイド:円安トレンド×外資ファンド
ドル建てで見ると、2021年比円安効果だけで▲28%オフ。シンガポールや香港のファミリーファンドが、プライムエリアのフルフロアを“長期バケーション用セカンドホーム”として買い漁りました。
しかし通貨ヘッジはどこも短期。JPモルガンのリポートでは、東京レジデンシャルを持つ外資REITの半数が“変動ヘッジ比率50%以下”。ドル円が120円台まで戻れば、IRRはマイナスへフリーフォール。その時彼らが手放すのは、自宅ではなく“ポートフォリオの中で一番流動性が高い資産”=都心マンションです。
セルサイド vs バイサイド
セルサイド(=売る側)は「希少性」と「世界都市ランキング」を武器に価格維持を図りますが、バイサイド(=買う側)は為替・金利・税制の“三段跳び”が崩れれば即撤退。両者の損益分岐点が重なる2027年前後が、供給の堰が切れるターニングポイントになると筆者は見ています。
外資ファンドのフローを数字で追う
あるシンガポール拠点のファンドは2023年後半、総額5億ドルで港区・品川区の中古レジを10棟取得しました。LTV(借入比率)60%、想定IRR12%。為替前提はドル円150±5円。2025年春、ドル円が135円に反転した途端、為替差損でIRRは7%台へ急落。IRR再達成には賃料を+15%上げるか、出口価格を+20%で売り抜ける必要があります。
ここで重要なのは損益計算書では黒字でも、キャッシュフローでは焼け野原になるという点。為替ヘッジコストはC/Fに直接ヒットし、ノンキャッシュ項目の減価償却では埋められない。外貨マネーが“温度差”で動くプレーヤーだとわかれば、退避シグナルは想像より早く点灯することが読み取れます。
崩壊トリガーは財政シフト&人口縮小─“静かな液状化”は始まっている ― 数字で読む「剥離」のフェーズ

税制改正という“隠れ負債”
2026年に控える固定資産税評価替え。都心の商業地評価額は過去3年間で平均+16%。単純計算で固定資産税都市計画税が年10〜20万円アップ。P/Lの営業外費用は小さいが、個人投資家のC/Fには死活問題。さらに住宅ローン減税控除率縮小で「税効果資産」が希薄化します。会計で言えばDeferred Tax Assetの取り崩し。
人口動態:需要の貸借対照表
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、東京都区部人口は2025年をピークに微減局面へ。ただし高齢単身世帯は増加し、“広いファミリータイプ”と“築浅タワマン”の需給が二極化。オフィス街徒歩圏という強みを持つ2LDK以上の空室率は0.9%ですが、郊外タワマンは2.7%と分水嶺を越えました。
空室率の上昇は賃料をじわじわ押し下げ、NOI圧縮→物件価格下落→減損認識と続くBS縮小スパイラルを誘発します。これは2000年代米国サブプライムで起きた“賃料デフォルト→評価損計上→REITの減配”と同じ連鎖。
静かな液状化
マンション価格指数は豪快に伸びても、取引量は減る──このギャップが「流動性プレミアム」の剥離を示すKPIです。2025年Q1の東京中古流通件数は前年同期比▲12%。売り出し価格が高止まる一方、成約価格は横ばい。薄氷の上でスケートしているような状況で、氷が割れる音は平均値には写らず、足元のヒビとしてしか見えません。
上場REITのNAV倍率も2025年春に1.3倍→1.05倍へ急降下。彼らはJ-REIT版“株価純資産倍率”。価格が下がる前に、資本市場はバブル割れをプライシングし始めているのです。
シナリオ分析:三本の導火線
パラメータ | ベースケース | ストレスケース | クライシスケース |
---|---|---|---|
政策金利 | 1.0%(2027) | 1.5%(2027) | 2.0%(2026) |
為替(ドル円) | 140円 | 125円 | 110円 |
家賃成長率 | +1%/年 | 0% | ▲3%/年 |
マンション指数 | 横ばい | ▲12% | ▲25% |
- 導火線① 金利:0.5%ごとの利上げで借入コストは年+80万円。
- 導火線② 為替:円高1円で外資IRRは0.25pt低下。125円割れが撤退ライン。
- 導火線③ 賃料:成長ストップでNOIは年▲30万円、家賃下落でさらに圧縮。
三本同時に着火すると、経済合理性は一撃で崩壊。大きな爆発音でなく、帳簿上の数字が真っ赤に染まる“静かな崩壊”が始まります。


結論:バブルは“破裂”ではなく“剥離”である
建設現場で外壁タイルが少しずつ剥がれ落ちるように、都心マンション市場は「価格>価値」の差分が静かにフレークアウトしています。デベロッパーが光沢を足すたびに、会計の虫眼鏡で見れば粗が浮き出る。
投資の神髄は“期待値と確率”を読むこと。期待値=賃料・節税メリット・値上がり益。確率=金利・為替・人口・税制というリスクファクター。期待値がいくら高くても、確率が極小ならEV(期待値×確率)はプラスにならない。数字は冷たい。でも数字を味方につけると、私たちはどこまでも自由になれる。
もしあなたが今日、不動産サイトを閉じてExcelを開き、3つのシート──P/L、BS、C/F──を作ったとき、未来は変わり始めます。金利+1%、家賃▲10%、為替±0のストレスをかけ、それでも黒字を維持できる物件だけが“本物”です。
そして覚えてほしい。「家は資産」ではなく「家を通じて生まれるキャッシュフローこそ資産」。資産はあなたを守りも縛りもする。ガラスの靴のようなタワマンは美しいですが、割れたとき痛いのは履いている自分。
ラストメッセージ
私たちが恐れるべきは価格下落そのものではありません。“わからないままに大きな決断をすること”です。数字を読める人は、恐れではなくシナリオと確率で未来を語り、笑顔でリスクと握手できます。夜景に浮かぶタワマンのシルエットを見上げるたび、あなたの脳裏に今日の数式がぼんやりと浮かび上がる。そんな知的なスリルを、ぜひ楽しんでください。次の乾杯は、「数字を味方にした大人」だけが味わえる至福の一杯になるはずです。乾杯!
それではページをめくるようにスクロールし、次々と現れる“数字の伏線”を回収していきましょう。最後に閉じるのはブラウザではなく、あなたの中で芽生えた「思考停止」という名のウィンドウです。
深掘り:本紹介
もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。
『不動産取引の会計・税務Q&A〈第4版〉』
取得・開発・運用・売却に至る不動産取引の会計・税務処理をQ&A形式で整理。収益認識基準や最新税制にも対応しており、会計リスクや減損判断の理解が深まります。
『シミュレーションでみる不動産法人化の活用と税務』
不動産を法人化して運用する際の節税・キャッシュフロー戦略を実例で解説。表計算シミュレーションに基づいた意思決定プロセスを借用できます。
『不動産投資の「収益計算」本格入門』
金利・借入・空室・減価償却などを絡めた収益モデルを丁寧に解説。利回りと税金、黒字倒産リスクの関係を実務視点で学べます。
『最新版 2時間で丸わかり 不動産の税金の基本を学ぶ』
インボイス制度対応も含め、不動産投資家が押さえておくべき税制のポイントをコンパクトに整理。税負担の「見える化」に最適です。
『60分でわかる!財務3表 超入門』
B/S・P/L・C/Fの読み方を初心者にもわかりやすく解説。特にC/F視点での投資判断力を養いたい社会人におすすめです。
それでは、またっ!!

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