サボる社員の正体──2割の「怠け者」が組織を救う理由

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。

怠け者が会社の命綱って、信じますか?

長年「怠け者」「ムダ」と切り捨てられてきた社員たち。しかし、このブログを読むと彼らにまつわる常識が180度変わります。

働かないアリの法則が示すように、「余裕」や「バッファ(余剰)」こそ組織の持続力の源泉なのです。実際、日本では政府が『人的投資こそ企業価値の持続的創造の基盤』だと明言するほど、人材を資本とみなす考え方が広がっています。

ここでは経営者や財務担当の目線で、彼らを単なるコストではなく投資・資産と考える視点をお届けします。具体的には損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の基礎をふり返り、働かない社員が企業価値にどう影響するかを解説します。

読み終わるころには、「ムダ」だと思っていたものが会社の宝物に見えてくるかもしれません。最後にはきっと、無駄を恐れない新しい経営観にワクワクするはずです。

「働きアリの法則」が教えるバッファの大切さ

自然界のアリにも、人間の組織にも、全員が等しく働いているわけではありません。実はビジネス世界でも「2:6:2の法則」が知られ、全体の上位2割の精鋭が成果の大部分を担い、下位2割は成果を出さないとされます。

しかし蟻の例が示すように、その下位2割にも重要な役割があるのかもしれません。研究によれば、アリのコロニーには常に2~3割がほとんど働かない「怠け者アリ」として存在し、興味深いことに、これらを一時的に取り除いてもやがて同じ割合でまた出現するというのです。実はこの「怠け者アリ」は、緊急時の予備戦力として温存されているのです。

たとえば女王アリや働きアリが攻撃を受けて動けなくなったとき、怠け者アリたちはスタンバイから一斉に仕事をはじめてコロニーを守ります。北海道大学・長谷川准教授らの研究でも「怠け者蟻はまさに予備要員だ」と肯定的に評価され、怠け者アリにも生存上の明確な役割があると報告されています。つまりアリの世界では、過度に効率を追求するより、あえて余力を残しておくことが生存戦略になるのです。

  • 2:6:2の視点: 組織にも「2:6:2」の枠組みが当てはまることが多いと言われ、トップ2割が優秀・成果の8割を生み出す一方、下位2割は一見ムダに見える存在です。しかし蟻の示す逆説から学ぶなら、その下位2割こそがいざというときの生命線かもしれません。
  • 危機時のバッファ: 大塚商会コラムでも指摘される通り、経済危機のような低迷期にコスト削減を急ぎすぎると、緊急対応力を失い致命的なダメージを受けるリスクが増します。逆に好況期にも、社員数をぎりぎりまで削っていると急増する受注に対応できずチャンスを逃しやすくなります。実際、ある設計事務所では景気回復期に急激に案件が増えたとき、「社員がいてくれたこと」が素早い対応を可能にし、急成長につながったと語られています。スリム経営だけを究めていたら、この機会を逃していたわけです。

企業組織でも同じ構造がある?

では企業組織でも似たような構造があるのでしょうか。答えは「あるかもしれない」。アリの教訓と同じように、組織には常に余裕の人的リソースがあってこそ長期的に強くなれるのです。前述したようにビジネス研修では「2:6:2の法則」が語られ、トップ2割・中間6割・下位2割という構成がよく説明されます。下位2割は一見ムダに見えますが、蟻の例から考えるとむしろ「緊急時のバッファ」であり、取るに足らない存在ではないことがうかがえます。

  • 緊急対応力の確保:
    実際、大塚商会のコラムでも、コスト削減に走りすぎると新型コロナ対応など緊急時に対応力を失い、結果として失敗する危険性が指摘されています。
  • 好機の取り逃し防止:
    逆に好況期には、社員を最小限に絞った企業が増えていますが、いざ注文が殺到したときに人手が足りず売上を取り損なう例が少なくありません。上述の設計事務所のケースもこれにあたり、現場に熟練の社員がいたからこそタイムリーに案件をこなせたのです。人材は後から急に補充できるものではなく、いま社内にいる「余裕ある社員」がいざというときに働くのです。
  • 組織内イノベーション:
    さらに余談ですが、世界的な企業でも20%ルール(勤務時間の20%を自由研究にあてるGoogleなど)に代表されるように、社員に一定の「遊び」を与えて創造性を引き出す取組があります。高いパフォーマーほど余力の時間を120%働くことでカバーしてきた実態もあり、組織に余白があるほどイノベーションの種が蒔かれやすいのです。(参考:Googleの「20%ルール」の考え方)

会計の視点:ムダは本当に「ムダ」か?

続いて会計の視点で考えてみましょう。損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の基礎をおさらいします。損益計算書は一定期間(通常1年)の収益と費用を記録し、当期純利益を算出します。一方、貸借対照表は決算日時点で会社が保有する「資産(現金・設備など)」「負債(借入金など)」「純資産(資本金・利益剰余金など)」の状況を表します。

  • 損益計算書 (P/L):
    一定期間(1年間)の「もうけ」を示す書類で、売上からさまざまな費用を引いて利益を出します。
  • 貸借対照表 (B/S):
    決算日時点で会社が持つ財政状態を表し、資産・負債・純資産のバランスを示します。
  • 人件費の扱い:
    企業では従業員に支払う給与や賞与はすべて「人件費」としてP/Lに計上されます。つまり帳簿上は人件費が増えれば利益が減るため、会計上は社員は「費用」であり、通常は会社の利益を圧迫するコストとみなされます。
  • 人的資本の観点:
    しかし近年は見方が変わってきています。アメリカや日本の実務界では「人材は将来の資産」と捉える考え方が広がっており、人的資本経営が注目されています。国際的には日本企業にも人的資本の非財務情報開示が求められ、従業員の知識やスキルは将来の利益を生む「資産」と位置づける流れになりました。

つまり、損益計算書上では怠け者社員の給与は今期の費用として利益を減らす要因ですが、長期的には人材への投資とみなせるというわけです。以下にまとめると:

  • 損益計算書(P/L):1年間の収益・費用・利益をまとめ、当期純利益を算出する。
  • 貸借対照表(B/S):決算日時点の資産・負債・純資産を表す。
  • 通常の会計では、社員に払う給与はすべて「人件費」としてP/Lに計上され、帳簿上はコスト扱いになります。
  • しかし現在は「人的資本は無形の資産」という視点が広まりつつあり、怠け者社員さえも組織の「バッファ資産」と見なす発想が増えているのです。

結論:余裕を持つ経営はサステナブル

「サボる社員」は本当にムダなのでしょうか。ここまで見てきたように、蟻の世界が教えてくれるのは、組織が予期せぬ事態に備えてあえて余力(予備人員)を持つことの大切さです。また会計上は一時的な費用でも、人的資本への投資と考え直せば、長期的には企業価値の向上につながります。働きアリの世界では怠け者アリにも存在意義があるように、私たちも“怠け者”にも肯定的な意図を仮定してみましょう。

例えば、物語のように「ムダ社員」と思っていた人が大ピンチのときに救世主になる――そんな逆転劇を想像してみてください。若い社員に自由度を与えたり経験を積ませたりする過程で、一時的に手薄になるのはむしろ自然なことです。それをただのムダだと切り捨ててしまうと、後になって大きな損失につながるかもしれません。心に余裕のある組織は、困っている仲間に手を差し伸べて再チャレンジさせることで、チーム全体の結束と士気を高めます。

読者のあなたが今日からできることは、「無駄を恐れない経営」を意識することです。経営戦略や人事評価でもあえて余裕の取り方を考え、部下が新しい挑戦をするチャンスをつくってみてください。怠け者だと思っていた社員に手を差し伸べたとき、もしかすると組織の新たな推進力が見つかるかもしれません。この記事で紹介した逆説を胸に、『怠け者社員』の真の価値に気づいていただければ幸いです。無駄を活かす経営こそ、真のサステナブル経営なのだ――そう信じて、あなたの組織にも少しの余白を残してみてください。

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それでは、またっ!!

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