“図面だけは対面”神話の終焉:IOWN×3Dリモート共同作業が拓く未来

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

3D設計までリモートになった世界で、「会社に行かないとできない仕事」はあとどれくらい残ると思いますか?

「高度な3D設計だけはリモートでは無理」と長らく言われてきた製造業の設計現場。しかし2025年12月、NTTドコモビジネスとダッソー・システムズがIOWNという次世代ネットワーク技術を活用し、世界初の3DCADを用いた遠隔共同作業に成功したと発表しました。これは、「会社に行かないとできない仕事」がまた一つ減るかもしれない瞬間です。

このブログを読むことで、あなたは次のような知見を得られるはずです:

  • 最新テクノロジー動向:IOWN(オールフォトニクス・ネットワーク)とは何か、それが3D設計の共同作業にどんな革新をもたらしたのか。
  • 働き方へのインパクト:リモートでできる仕事の範囲が広がると、出社する意味や都心オフィス需要はどう変わるのか。
  • キャリアと経済視点:地方在住エンジニアにもチャンスが広がり、企業の人件費・オフィスコスト・生産性にどんな影響が出るのか。

リモートワークが当たり前になりつつある今、「出社しなければできない仕事」は着実に減っています。3D設計のように「さすがに無理では?」と思われた領域でさえ、技術の進歩がその常識を覆そうとしています。では具体的に何が起きたのか?そしてそれによって私たちホワイトカラーの働き方やビジネスはどう変わっていくのでしょうか。さっそく見ていきましょう。

遠隔3D共同作業の実証で示された可能性

まずは今回話題となった遠隔3D共同作業の実証実験について詳しく見てみましょう。これにより「図面(設計)は対面じゃないと無理」という従来の神話が打ち破られつつあります。なぜこの実証が画期的だったのか、その背景と結果を深掘りします。

“図面は対面”と言われた理由と課題

従来、製造業の設計現場では3DCADを使ったコラボレーションは対面で集まるのが当たり前でした。なぜなら3DCADデータは高精細で複雑な構造をもち、数GB~数十GBもの巨大サイズになることも珍しくありません。映像のように簡単に圧縮できず、通常のネットワークではそうした大容量データをリアルタイム共有して同時編集するのは困難だったのです。結果として「みんな集まって同じ画面を見ながらレビューしよう」となり、関係者が一堂に会する出張や出社が必要でした。移動には時間もコストもかかりますし、各自バラバラに作業した成果物を後で統合すると手戻り(作業のやり直し)も生じやすい状況でした。こうした非効率を解消するには、“離れていても同じ3Dモデルを同時に扱える”環境が求められていたのです。

IOWN APNと3DEXPERIENCEが可能にした“同じ場所”の体験

そこで登場したのがNTTが提唱するIOWN APNという革新的ネットワーク技術です。IOWN(APN)とは電気信号ではなく光信号で通信する超低遅延・高速ネットワークのこと。この仕組みにより従来は送るのが難しかった非圧縮の巨大データもスムーズに同期可能になりました。NTTドコモビジネスとダッソー・システムズは、このIOWN APNで東京都武蔵野市のデータセンターと大手町(都心)のOPEN HUB Park※を直結し、ダッソー社の3DEXPERIENCE(3D設計やPLMを統合した業務プラットフォーム)を活用して3DCADデータのリアルタイム共同編集を行う実験を実施しました。武蔵野市側に3DEXPERIENCEサーバーと3DCADアプリをインストールしたワークステーション、大手町側に同じアプリを入れたワークステーションを配置。数千~数万個のパーツからなる大容量かつ高精細な3Dモデルおよび関連PLMデータをサーバからダウンロードし、同一モデルを双方で同時に編集できるかを検証しました。

※OPEN HUB Park…NTTドコモビジネスが運営する最新テクノロジー共創拠点(招待制)。

結果は“同室”と遜色ないリアルタイム性

実験の結果、遠隔地同士で3Dモデルを編集しても同じビル内のLAN接続とほぼ変わらない性能が得られたのです。画面上の3Dモデルがリアルタイムに同期され、遅延なく共同編集できました。具体的には、編集環境の同期に要する時間が従来のインターネット経由より最大で約5倍(500%)高速化され、ほぼ遅延ゼロのリアルタイム共同作業が可能だと確認されています。関係者からは「本当に離れて作業しているのか?」と驚く声も上がるほどシームレスな協業体験が得られました。これなら従来は全員が対面で集まっていた設計レビューも、オンラインで十分に代替できる可能性が示されたと言えるでしょう。


この実証実験により、“3D設計は対面でないと難しい”という前提が覆されました。IOWN×3DEXPERIENCEの活用によって遠隔地にいながら「同じ画面を覗き込んでいる」ようなスムーズな共同編集が実現したのです。それは単に便利というだけでなく、移動時間や旅費の節約、手戻り削減による生産性向上にもつながります。今後この成果が製造業のみならず様々な業界に広がれば、「会社に行かないとできないこと」のリストから多くの項目が消えていくかもしれません。では次に、こうした技術革新が出社の意義やオフィス需要にどんな影響を与えるのか考えてみましょう。

出社の意味とオフィス需要のゆくえ

リモート技術の進歩で場所に縛られず仕事ができるようになると、「そもそも会社に行く意味って何だろう?」という根源的な問いが浮かびます。コロナ禍でテレワークが普及したあと、世界中でオフィス需要や働き方に変化が起きました。このセクションでは、日本と海外の動向を踏まえ、出社の価値や都心オフィス需要の行方、企業のコスト構造へのインパクトを探ります。

出社は本当に必要?日本と海外の働き方比較

日本では2020年以降テレワークが一気に広まりましたが、それでも主要先進国に比べ出社率が非常に高いのが現状です。背景には産業構成や通勤時間、住宅事情の違いに加え、暗黙の了解で動く「空気を読む」文化が影響しているとも指摘されています。対照的にアメリカでは、パンデミック後もフルリモート勤務を続ける人が多く見られました。しかし最近、象徴的なリモート企業も週2~3日の出社を義務付ける方針に転換しています。実際ニューヨークでは、完全リモートの人の割合が2022年春の28%から2023年秋には6%まで激減し、完全出社も8%から12%に微増、大多数がハイブリッド勤務(週3日出社など)に落ち着いたとの調査があります。つまり海外では「フルリモートかオフィスか」の両極端ではなく、中間のハイブリッドが主流になっています。日本でもリモート継続派と出社回帰派が混在しつつ、「なんとなく出社」から「出社には明確な目的がある」働き方へと移行しつつあるように感じられます。今回の3D共同作業のように「対面神話」が崩れる仕事が増えれば、日本でも出社日はより絞られ、“ここぞ”という対面価値がある場面に限られていくかもしれません。

オフィス空間の需要と投資への影響

リモートワークの拡大は不動産市場にも大きな影響を与えます。世界的には「オフィス需要が減少し、2030年までにオフィス資産価格が平均で3割以上下落する可能性」との予測もあります。日本でも都心オフィスの空室率は最近改善傾向にあります(新規供給抑制などの影響)。しかしリモート可能な業務が増えれば、長期的にオフィス需要の構造変化は避けられないでしょう。企業はオフィスを魅力ある対面の場として再設計するか、コスト削減のために縮小するか、難しい判断を迫られます。

人件費・生産性・働く人の幸福

オフィス出社の有無は企業のコストや生産性に直結します。リモート拡大によって企業はオフィス賃料や出張費を削減でき、人材採用も都市圏以外に広げやすくなるでしょう。一方で社員にとっても柔軟な働き方の価値は大きく、ハイブリッド勤務は給与換算で8%相当の価値があるとの研究結果があります。通勤負担が減ることで満足度や健康が高まり、生産性向上や離職防止につながるとの報告もあります。つまりリモートワークはコスト削減策であると同時に、人材の多様性確保やエンゲージメント向上にも寄与する戦略なのです。旧来の“出社すれば成果が出る”という前提を見直し、成果重視・信頼ベースのマネジメントへ移行することが求められています。


リモート技術が進化するほど、「オフィスとは何のためにあるのか」が再定義を迫られます。対面で集まる価値が高い場面――ブレインストーミングで偶発的なアイデアが生まれる瞬間やチームビルディング、機密性の高い議論など――にのみオフィスを活用し、それ以外の業務は場所を問わず行うハイブリッドな働き方が当たり前になるでしょう。都心のオフィス街は毎日通勤する場所ではなく、「必要なときに集まるコラボレーション拠点」へと役割を変えていくかもしれません。企業にとってはオフィスコスト削減と人材活用のベストバランスを探る経営課題となり、働く私たちにとっては働く場所と暮らす場所の選択肢が広がるという恩恵がもたらされます。

地方在住エンジニアに訪れる新機会と今後の展望

遠隔3D共同作業の成功は、“都市にいなければ一流の設計職はできない”という従来の常識を揺るがし始めています。このセクションでは、地方在住の技術者に開ける新たなキャリアの可能性と、これから数年の展望について考えてみましょう。技術革新とともに仕事の在り方がどう変わるかを、投資や地域経済の視点も交えて掘り下げます。

「どこに住んでも第一線」への期待

地方に住みながら都会の大企業プロジェクトに参加する――そんな働き方は一部のITエンジニアでは既に広がっています。今回のように3D CADの設計業務まで遠隔で遜色なくできるなら、ものづくりエンジニアも地理的ハンデ無しで第一線に加われる未来が近づいたと言えます。例えば自動車メーカーの設計者が東京や愛知の本社に出向かず、自宅の北海道や九州から開発会議にフル参加できる――そんな日常が現実になるかもしれません。その結果、優秀な人材が生活コストの高い都会に集まらなくてもよくなり、地方に根づきながらキャリアアップする道が開けます。実際、フルリモート専門の人材サービス『Remoters』には北海道から沖縄まで全国各地のエンジニアが所属し、居住地に関係なく最新技術に触れキャリアアップしている事例が多数報告されています。地方創生の観点からも、リモートワーク普及は地域経済に好循環をもたらす可能性があります。高収入の仕事が各地でリモート実施できれば、東京一極集中の是正や地方から都会への人材流出抑制にもつながるでしょう。「エンジニア=都会に出るもの」という常識が覆れば、地方に住み続ける選択肢も現実的になり、人生設計の幅が広がります。

企業にとってのメリットと課題

企業にとってリモート活用は人件費とオフィスコストの最適化を図るチャンスでもあります。地方のエンジニアをフルリモートで採用すれば、東京圏の平均より低コストで雇用でき、オフィス席の確保も不要です。その浮いたコストを新規プロジェクトや設備投資に振り向けることもできます。ただ課題もあります。リモート下で組織文化の醸成若手育成をどう行うかは、多くの企業が頭を悩ませる点です。実際にフルリモートで働くエンジニアから「最初に一度チームと対面で会えたことで、その後のオンライン協業がうまくいった」との声もあります。企業は入社時や節目に社員を集めるなど、人と人とのつながりを維持する工夫が求められるでしょう。技術面ではセキュリティ対策を徹底し、制度面でも情報共有ルールを整備して、安全で快適なリモート環境を実現する必要があります。

これから3年、そしてデジタルツインの未来

3年後には、今は難しいと思われる仕事も次々リモート化しているかもしれません。ただ、人は直接会う安心感や創造性も知っています。テクノロジーが進むほど逆に「リアルで集まる価値」が問われるでしょう。それでも選択肢が増えること自体はポジティブです。場所や時間に縛られず成果を出せれば、その分生産性も幸福度も高まります。なおNTTでは今回の成果を、自社が掲げる4Dデジタルツイン(現実世界のリアルタイム仮想化)構想の第一歩とも位置付けています。私たちは、仕事と生活のベストバランスを自分で設計できる時代に踏み出そうとしているのかもしれません。


地方在住エンジニアのみならず、すべてのホワイトカラーにとってリモート技術の進展はチャンスです。好きな土地で暮らしながら全国・世界の仕事に関われ、企業は多様な人材を活かしてイノベーションを起こせます。重要なのは、テクノロジーに人間側が適応し、信頼関係や創造性を損なわないよう工夫することです。新しい働き方に合わせ組織文化や評価制度をアップデートし、「距離が離れていても心はひとつのチーム」と言える環境を作れるかが鍵でしょう。技術と人間のベストミックスを追求できれば、リモートワークは単なる妥協策ではなくより良い働き方への進化となるはずです。

結論:未来への問いかけ

遠隔3D共同作業の成功は、私たちの働き方がまた一段と自由になる兆しです。「会社に行かないとできない仕事」が減れば、通勤ラッシュに悩まされる日々も減り、地理的な理由で諦めていた夢の仕事に就ける人も増えるでしょう。テクノロジーが距離の壁を壊すたびに、人々は本当に大切な対面の場を見極めるようになります。オフィスの灯りが消える夜が増えても、それは決して社会の停滞を意味しません。むしろ、新しいワークスタイルの夜明けかもしれません。

最後に、皆さんにも一緒に考えてみてほしい問いがあります。「“会社に行かないとできない仕事”は、これから3年でどこまで減るでしょうか?」 テクノロジーと私たち自身の意識変革が、その答えを握っています。未来の働き方について、ぜひ周囲とも議論してみてください。ひょっとすると、その議論自体もすでにリモートで行われている時代が、すぐそこまで来ているのかもしれませんね。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『The Work of the Future ― AI時代の「よい仕事」を創る』デヴィッド・オーター ほか

AI・ロボティクス・デジタル化が「仕事そのもの」をどう作り替えるかを、MITの研究チームがガチ分析した本。
・「AIが仕事を奪う/奪わない」みたいな雑な話ではなく、「仕事の中のどのタスクが再設計されるのか?」を丁寧に分解してくれます。
・ホワイトカラーの仕事を、タスクの束として見直す視点は、今回の「3D遠隔共同作業」ネタと相性バツグン。
・読み終わると「IOWN 的な超低遅延ネットワークが来たとき、自分のスキルはどこで価値を出すべきか?」を真面目に設計したくなります。

✅ AI時代のキャリアと投資テーマを同時に考えたい人の“教科書”。
通勤中に読み込みたい人にも向いてます。


『テレワーク本質論 企業・働く人・社会が幸せであり続ける「日本型テレワーク」のあり方[改訂版]』田澤由利

コロナ禍以降の「とりあえず在宅OK」から一歩進んで、「日本の会社がどうテレワークを組み込めば“ちゃんと儲かる仕組み”になるのか」を掘り下げた本。
・経営・人事・現場それぞれの視点から、テレワークの設計ミスがどこで生産性を殺しているかを具体的に指摘。
・「出社の意味って何?」という、今回のブログの核心にド直球で刺さるテーマを正面から扱っています。
・単なるワークスタイル本ではなく、「人件費」「オフィスコスト」「離職率」といった“会社のPL・BS”まで踏み込んで議論しているのがポイント。

✅ 「会社側がどう考えているか?」も理解しておきたいリモートワーカー/マネジャーにおすすめ。
ブログの議論を、組織設計・報酬設計のレベルまで深掘りしたくなった人向けの1冊です。


『パラコンシステント・ワールド 次世代通信IOWNと描く、生命とITの〈あいだ〉』澤田 純

今回のニュースの主役「IOWN」の思想そのものを語っている本。
・NTT前社長が、IOWN構想で“何を変えようとしているのか”を、対談形式で解きほぐしてくれます。
・超低遅延・超大容量ネットワークが来ると、「働き方」だけでなく、医療・教育・エンタメ・地方創生のゲームルールがどう変わるか、かなり具体的にイメージできる内容。
・デジタルツイン(現実世界を3Dデータで丸ごと写し取る発想)との結びつきも語られていて、3Dリモート共同作業の世界観を補完するのにぴったりです。

✅ 「IOWNってバズワードでしょ?」と思っている人ほど読んでほしい“原典”の一本。
ブログの技術的背景をちゃんと押さえておくと、IOWN関連銘柄を見る目もだいぶ変わります。


『DXの教養 デジタル時代に求められる実践的知識』志度 昌宏

「DXって、結局なにを変える話なの?」を、ビジネス寄りの視点で整理してくれる本。
・単なるIT導入ではなく、「ビジネスモデル」「組織」「人材」「会計の数字」がどう変わるかをまとめて見せてくれます。
・製造業の事例も多く、3D CAD やスマート工場のような“現場DX”と、ホワイトカラーの働き方がどうリンクするか、イメージしやすい構成。
・経営目線で「どこに投資して、どこで回収するのか」を考えるフレームもあり、ブログの“投資と会計の視点”と相性が良いです。

✅ 「DXネタで語れるようになりたい若手」「DX投資を数字で語りたい経理/企画の人」にドンピシャ。
IOWN×3Dリモート共同作業のニュースを、“単発ネタ”で終わらせず、中期の投資テーマとして捉えたい人向け。


『読めば3年後の未来に先回りができる 入社1年目からの「働き方」』グロービス経営大学院

Z世代〜若手社会人向けに、「Will(やりたいこと)」「Skill(スキル)」「Network(人脈)」の3つでキャリアを設計しよう、という本。
・リモートワーク、副業、ジョブ型…といった令和の働き方を前提に、「会社に依存せず、自分の“職能”で食べていく」ための考え方が整理されています。
・Q&A形式で読みやすく、「会社に行く意味が薄れていく時代に、自分はどこで価値を出すか?」という、今日のブログのラストの問いとも直結。
・入社1年目だけでなく、3〜5年目の“モヤモヤ期”の人が読んでも、かなり刺さる内容です。

✅ 「IOWN時代のキャリア戦略」を、ちゃんと自分ごとに落としたい20〜30代に。


それでは、またっ!!

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