トイレに見えた瞬間、ブランドは減損する——「I’m donut?」炎上を会計で読む

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。
Jindyです。 

その炎上、“一時のバズ”じゃなくて「ブランド減損のサイン」かも?

2025年末、人気ドーナツ店「I’m donut?」の“陳列”がSNSで燃えた。味じゃない。新作でもない。
「タイルに直置き」「トイレや風呂場っぽい」「衛生的にムリ」みたいな、見た目の連想ゲームで一気に拡散した。

これ、グルメ炎上として眺めて終わるとちょっともったいない。
なぜなら、こういう火種は“商品”より先にブランドを直撃するから。

ブランドって、会計だとややこしい立ち位置にいる。自社で育てたブランドは、原則として貸借対照表に「ブランド」という科目でドンと載らないことが多い(広告費や販促費として費用化されがち)。
でも投資の世界では話が別で、ブランドは普通に稼ぐ力そのものとして見られる。行列、SNSの熱量、値上げ耐性、採用力、コラボの強さ——全部、目に見えないのにキャッシュを連れてくる。

だからこそ、今回の「トイレっぽい」は刺さった。
“味のレビュー”なら好みで流れるのに、衛生・不快の連想は、初見の人の購入動機を一撃で冷ます。しかも写真一枚で伝わる。ここ、怖い。

一方で炎上には、広告っぽい効果もある。知らなかった人にまで店名が届き、「逆に行ってみたい」が生まれることもある。実際、運営側はデザイン意図(浴室ではなくキューブの表現)を説明し、寄せられた意見は受け止める姿勢を示したと報じられている。
ただし“短期の拡散”と“長期の信用コスト”は別物。後者はじわじわ効く。リピーターが減る、単価が上げにくくなる、出店先の交渉が難しくなる……こういう形で、未来のキャッシュフローが削られる。

そこでこの記事は、炎上をこう置き換える。
「ブランド毀損=無形資産の減損テスト」だ。

減損って、雑に言えば「この資産、将来いくら稼げる予定だっけ? 思ったより稼げないなら帳簿価額を落とそう」という発想。ブランドやのれん(M&Aで生まれる“超えた分”)は特に、期待が先に立つから、期待が崩れると痛い。
つまりSNSの炎上は、投資家目線だと“売上や利益が落ちる前の兆候”として読む価値がある。

このあと本文では、

  • なぜ「見せ方」だけで燃えたのか(心理とSNS構造)
  • ブランドを無形資産として扱うと何が見えるか(減損テストの超やさしい読み方)
  • 炎上が「広告」で終わる会社/「信用コスト」になる会社の分岐点
    を、会計と投資の言葉でつないでいく。

“流行ってる店の炎上”を、明日の決算読みと銘柄選びに変える。
そのための解剖、始めよう。

味より“見た目”が燃える理由——トイレ連想の破壊力

ドーナツって、本来は「食べたら勝ち」な商品だ。
なのに今回は、食べる前に勝負が終わった人が多い。ポイントはここ。

人は“連想”で衛生を決め打ちする

話題になったのは、渋谷の店舗で見られるタイル模様の陳列台に、ドーナツがむき出しで並ぶスタイル。SNSでは「トイレを連想」「衛生面が気になる」みたいな声が出たと報じられている。
ここで厄介なのが、衛生って“根拠”より“感覚”が先に立つこと。

  • タイル=水回りの記憶(風呂・洗面・トイレ)
  • 目地=汚れが溜まりそう、掃除しにくそう
  • 直置き=「一回でも触れたら無理」スイッチ

この3点が一瞬でつながると、味の話に行く前に「買わない理由」が完成する。
強いのは、食中毒のリスクがどうこうじゃなくて、“気持ち悪いかも”が残るタイプの拒否反応だから。

SNSは「写真一枚で結論」になりやすい

今回の論争は、Xで一気に広がったとされる。
SNSの怖さは、文章の説明より画像の第一印象が勝ちやすいところ。しかも拡散の燃料は「共感」より「ツッコミ」だったりする。

「これ、トイレじゃん」
この一言は、店の世界観の説明より短くて、伝染しやすい。
そして“伝染したあと”は、見た人が自分の記憶(自宅の洗面のタイル、駅トイレの床)を勝手に重ねる。連想が増殖する。

結果として、

  • 行ったことない人ほど拒否感が固まりやすい
  • 行った人は「別に平気」でも、写真だけの人が多数派になる
    みたいなねじれが起きる。ここ、炎上の王道パターン。

運営の説明があっても、火が消えにくい理由

運営側(広報担当)は取材に対して、浴槽などを想起させるタイルではなく「キューブの組み合わせ」をイメージした表現だと説明し、寄せられた意見も真摯に受け止める姿勢を示したと報じられている。
筋は通ってる。けど、炎上は「筋」で鎮火しないことがある。

なぜかというと、衛生って多くの人にとってゼロリスク寄りのテーマだから。
「清掃してます」「管理してます」が事実でも、嫌な連想が一度ついたら、戻すのにコストがかかる。しかも説明が増えるほど、「そんなに言うってことは…」と疑念が強まる人も出る。めんどくさいけど、現実。

この時点で起きているのは、売上の毀損というより、“将来の売上の期待値”が揺れる現象だ。
で、これが投資と会計に接続する。

次のセクションでは、ここから先をはっきり言語化する。
炎上=ノイズ、で終わらせず、ブランドを「無形資産」っぽく見立てて減損テスト的に読むと、何が見えるのか。

ブランド毀損=“無形資産の減損テスト”で読むと、景色が変わる

炎上って、会計上の「損失」がその日に計上されるわけじゃない。
でも投資目線だと、炎上はわりと露骨に “将来キャッシュフローの見積もり” を揺らす。

そこで便利なのが、減損テストの考え方。
「この資産、思ってたほど稼げないかも?」が起きた瞬間に、頭の中でテスト開始。

そもそもブランドは、B/Sに“見えにくい”

まず前提。自社で育てたブランドは、会計上は「広告宣伝費」などでコツコツ費用化されがちで、貸借対照表に“ブランド資産”としてそのまま載りにくい。
一方で、M&Aみたいに外から買ったブランドは話が変わる。買収対価のうち、識別できる資産を引いて残った部分が「のれん(goodwill)」になったり、商標権などの無形資産として計上されたりする。

つまり、会計上は見えづらくても、経済的にはブランドはバリバリ資産。
今回の件は、その「見えない資産」が傷つく典型だった。

減損テストのコアは“回収できるか”だけ

減損テストって、イメージはシンプルでいい。

  • その資産(もしくは事業)が、将来生むキャッシュの見込み
  • いま帳簿に載ってる価額(または買収時に織り込んだ期待)

この差が逆転すると、「価値、落ちたね」になる。

IFRSだと、のれんは償却せず、原則として毎年(+兆候があれば随時)減損テストをする扱い。
日本基準(JGAAP)は逆で、のれんは20年以内で規則的に償却しつつ、必要なら減損を見る。

細かいルールはさておき、投資家の実務に落とすならこう。
炎上みたいな出来事は「兆候」になり得る。
数字が崩れる前に、“期待値”が崩れたサインとして見えるから。

「炎上=広告」でも、減損の芽は残る(ここが落とし穴)

炎上で店名が広がって、行列が増えることはある。短期だけ見ればプラスっぽい。
ただ、今回の論点は「衛生・不快の連想」だった。報道でも、タイルへの直置きに対して「トイレや風呂場を連想」「衛生面が気になる」といった声が広がった流れが整理されている。

このタイプが怖いのは、効き方が“じわじわ”なこと。

  • 初見が敬遠して、新規の獲得効率が落ちる
  • 価格を上げづらくなる(値上げ耐性=ブランド力が削れる)
  • 出店先・コラボ先が慎重になる(信用コスト)

これ、P/Lにいきなり「炎上損」って出ない。でも、将来の稼ぎの上限が下がる。
減損テストの言葉に置くと、回収可能価額の見積もりが弱くなる方向だ。

運営側は「浴槽を想起させるタイルではなく、キューブの組み合わせをイメージした表現」と説明し、意見は真摯に受け止める趣旨を話したとも報じられている。
この対応で“連想”が薄まれば、将来キャッシュの見込みも戻るかもしれない。逆に、同じ違和感が何度も再燃すると、回復コストが積み上がる。

次のセクションでは、ここをさらに踏み込む。
炎上が「一過性の広告」で終わる会社と、「長期の信用コスト」になる会社の分岐点。意思決定の差が、そのまま企業価値の差になる。

炎上が“広告”で終わる会社/“信用コスト”になる会社の分岐点

同じ炎上でも、あとに残るものが真逆になることがある。
「店名は広まったし勝ち!」で終わるケースもあれば、しばらく経ってから静かに効いてくるケースもある。

今回のテーマ(衛生・不快の連想)で、分岐点になりやすいのはここ。

論点が“事実”なのか“気持ち”なのかで、打ち手が変わる

炎上対応って、つい「事実を説明すれば伝わる」と思いがち。
でも衛生系は、しんどいほど気持ちが主役になる。

  • 事実:清掃してる/衛生管理してる
  • 気持ち:でも、見た瞬間にムリ

この「でも」が強い。
だから“正しさ”だけで殴ると負ける。反論っぽく見えた時点で火が伸びることもある。

効きやすいのは、論点の置き換えじゃなくて、不安の取り除き
たとえば同じ陳列でも「衛生的に見える動作」が増えるだけで体感が変わる。

  • 透明なカバー
  • トング・手袋・動線の見せ方
  • 置き方(直置きに見えない設計)
  • クリーニングの“見える化”のしかた(言い訳じゃなく、安心材料として)

ここ、地味だけど効く。炎上の消火って派手な声明より、案外こういう“生活感”で決まる。

“尖り”を守る部分と、折れる部分を分けられるか

今回の炎上の面白い(怖い)ところは、味や価格じゃなく世界観の演出で起きた点。
尖った見せ方は、ブランドのエンジンでもある。全部を丸くすると、別の意味で死ぬ。

だから重要なのは、「尖りの核」を守りつつ、地雷だけ抜くこと。
言い換えると、ブランドの設計図をこう分解する感じ。

  • 守る:店のコンセプト、空気感、商品体験(“ここで買う理由”)
  • 変える:誤解される余白、衛生の連想ポイント(“買わない理由”)

炎上でやりがちな失敗は、焦って全部を変えるか、逆に何も変えないかの二択になること。
二択に落ちた瞬間、長期の信用コストが生まれやすい。

投資家目線のチェック:数字より先に見る“兆候”

ここから投資・会計の接続。
ブランド毀損が減損テストっぽいのは、「将来キャッシュフローの見積もり」が揺れるからだった。

投資家としては、売上が落ちたかどうかより先に、次を見に行くと早い。

  • 同じ論点が再燃してないか(“一度きり”か“定期火災”か)
  • 公式の対応が、反論ではなく安心設計になっているか
  • 客層が変わってないか(熱狂が薄まり“話題先行”になってないか)
  • 値上げ・出店・コラボなど、攻めの選択肢が狭まってないか

ここが悪化していくと、財務諸表の数字に出る前に、企業価値の前提が削れていく。
逆に言えば、早めに“誤解の芽”を潰せる会社は、炎上を踏み台にして強くなることもある。広告効果で知名度が上がって、そのまま長期の信用も守れたら勝ちだ。

結論

結局、今回の炎上が投げかけたのは「その店に何を買いに行ってる?」という問いだった気がする。
ドーナツを買いに行ってるのに、話題の中心が“タイル”になる。これ、ブランドが商品より前に立っている証拠でもある。良くも悪くもね。

ブランドって、派手なロゴでも、洒落た内装でもなくて、「初見の人が安心して財布を出せるか」で決まる。
逆に言えば、不安が一つでも残ると、味の説明は届かない。衛生や気持ち悪さの連想は、その最短ルートを塞いでしまう。

投資と会計の言葉に置くなら、炎上は“減損テストのアラート”みたいなもの。
売上が落ちてから気づくんじゃ遅い。落ちる前に、期待値のほうが先に崩れるからだ。
「値上げできる空気、保ててる?」
「新規が入ってくる入口、狭まってない?」
こういう問いに、じわっと影を落とす。

ただ、ここで終わりじゃない。炎上は、修正できる。
尖りを捨てる必要もない。捨てるのは“誤解される余白”のほう。
安心が戻れば、熱量はむしろ強くなることもある。人は「わかってくれた」と感じた瞬間に、また応援し始めるから。

そして、もう一つ。炎上を“ネタ”として消費する側にも、ちょっとだけ責任がある。
気になるなら、行かない自由も、黙って離れる自由もある。でも「トイレっぽい」で終わらせると、本当に潰れるのは店じゃなくて、挑戦するアイデアのほうだったりする。

もちろん、衛生の不安は軽く扱えない。だからこそ、企業は安心の設計に投資するし、私たちは「安心がどう作られているか」を見る目を持てる。
この視点があるだけで、ニュースの見方も、銘柄の見方も一段変わる。バズに飲まれず、信用の積み上げを追う。

次に似た炎上を見たら、こう考えてみて。
“このブランド、期待値を取り戻せる?”
その答えが、無形資産の価値——つまり未来のキャッシュフローを決める。

深掘り:本紹介

もう少しこの内容を深掘りしたい方向けの本を紹介します。

『ケースで学ぶ組織と個人のリスクマネジメント』石川慶子・木村栄宏
炎上って「SNSの火事」に見えるけど、実態は“リスクが顕在化した瞬間”でもある。個人・組織の両方の視点で、ケースから腹落ちさせたい人に合う一冊。


『ビジネスパーソンのための使える行動経済学 ナッジ理論で人と組織が変わる』
「味じゃなく見せ方で燃えた」みたいな現象は、まさに“人の判断のクセ”で起きる。連想・嫌悪感・直感の強さを、マーケ寄りに理解したい人向け。


『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』木村元
“ブランドは無形資産”と言いつつ、どこが傷ついたのかを語れないと議論がフワッとする。この本は、ブランドを「健康診断」みたいに観測する発想が強い。炎上後の回復も、数字で追いたい人に刺さる。


『最新マーケティングの教科書2026(日経BPムック)』
バズが起きる土壌って、SNS設計・動画・生成AI・広告の変化とセットで動いてる。最新のキーワードと事例を“広く浅くじゃなく、仕事に使える粒度”で拾いたい人向け。


『弁護士のためのPR(広報)実務入門』PR実務研究会
炎上対応って「言い方」以前に、やることが多い。記者会見、リリース、メディアトレーニング、ネット炎上…と“実務の型”がまとまっているので、広報が弱い会社ほど効く。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

弁護士のためのPR(広報)実務入門 [ PR実務研究会 ]
価格:2,420円(税込、送料無料) (2026/1/20時点)


それでは、またっ!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です