みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。Jindyです。
「幸福な組織は多様だが、ダメな組織はみな同じように壊れている。」
これは、文豪トルストイの名著『アンナ・カレーニナ』の冒頭「幸福な家庭はすべて互いに似通っているが、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっている」という有名な一節をもじったものです。しかし、現代の企業組織においては、この法則は見事に逆転します。
勝っている組織、強い組織は、その勝ち方が千差万別です。独自の技術、ユニークなニッチ市場、属人的な天才の集積、あるいは誰も真似できない特異な文化。彼らは「自分たちだけの正解」を持っており、その姿は極めて多様です。
一方で、ダメな組織、機能不全に陥った組織は、驚くほど「同じ症状」を見せます。
「どうせ無理」と嘆く現場、誰かのせいにする会議、部門間で足を引っ張り合うタコツボ、そして現場を犠牲にして私腹を肥やす、あるいは居心地だけを守る経営。これらの症状は、もはや組織にとっての「風邪」や「生活習慣病」のような、型通りの壊れ方なのです。
もし、今あなたが「自分の組織はもう手遅れだ」「こんなダメな環境、どこも同じだろう」と絶望しているなら、少しだけ待ってください。ダメな組織の壊れ方が「テンプレ(定型)」であるということは、その直し方もまた「プロトコル(手順)」化されているということです。
今回は、組織を蝕む4つの死に至る病を特定し、それを構造から治療し、バラバラになった「遠心力の組織」を「求心力の組織」へと再生させるための、実践的な工学的手順を公開します。1円を1億円に変えるための、最強の「組織資本」を構築する準備はできていますか?
目次
症状A:負け犬根性という「学習性無力感」の感染

ダメな組織の第一段階、それは「負け犬根性」の蔓延です。これを心理学の世界では「学習性無力感(Learned Helplessness)」と呼びます。
「どうせ勝てない」が組織の標準OSになる
「うちの技術力が低いから」「競合があのトヨタだから」「予算がないから」。
会議室の隅々まで、こうした「敗北の予言」が染み付いている組織があります。ここで起きているのは、単なるネガティブ思考ではありません。「努力と結果の相関関係が断たれた」という、極めて深刻な学習の欠如です。
人間(あるいは動物)は、自分の行動が環境に対して何の変化も及ぼさないという体験を繰り返すと、たとえ回避可能な苦痛であっても、ただ耐えるだけになり、一切の試行を停止します。これが組織で起きるとどうなるか。
「新しい提案」は「面倒を増やすノイズ」として扱われ、「仮説検証」は「無駄なエネルギー消費」として切り捨てられます。データは溜まらず、工夫は死に、残るのは「指示を待つだけの肉体」だけです。
優秀な人間から「脱出」し、場が腐る
この症状が最も残酷なのは、組織の中で最も価値を生み出すはずの「自ら考え、行動できる人」から順に、絶望して去っていくことです。
彼らにとって、この負け犬根性の空気は「窒息」に等しい。残された人々はさらに自己効力感を失い、「やっぱり俺たちはダメなんだ」という物語を強化していく。これは、組織というエコシステム全体が死に向かう、緩やかな自殺です。
1円を1億円にする思考の第一歩
戦略的経理パートナーの視点から言えば、この「負け犬根性」は資産価値をゼロにする最大の「減損要因」です。
これを打破するために必要なのは、精神論の説教ではありません。「自分の行動によって、数字が1円動いた」という、生々しい手応えの再建です。
組織の空気を変えるのは言葉ではなく、「小さな成功という名の事実」だけなのです。
症状B:他責文化という「エネルギー保存の法則」の歪み

負け犬根性とセットで現れるのが、「他責文化」です。「悪いのは私ではない、〇〇だ」という責任のボール回しが、組織の共通言語となります。
なぜ人は「他責」を選ぶのか?
他責文化は、道徳心の欠如ではなく、ある種の人間の本能に基づいた「構造的な逃避」です。
- 自責にすると、仕事が増える:自分の非を認めれば、改善策を考え、実行し、点検しなければならない。
- 他責にすると、楽ができる:他人のせいにすれば、その瞬間に思考を停止し、現状のまま居座ることができる。
人間は、意識しなければ「エネルギーを節約する(楽をする)方向」に流れます。ダメな組織とは、この「他責のコスト」が安く、「自責のコスト」が極端に高い構造を放置している場所なのです。
「責任の空白地帯」で組織が裂ける
「製造は開発のせいだと言い、開発は営業が売り方を分かっていないと言い、営業はマーケの戦略がズレていると嘆く」。
それぞれの部署が、自分たちのテリトリー(タコツボ)の中では完璧に「正しい」振る舞いをしているつもりなのに、顧客に届く価値はボロボロになっている。これが他責文化の末路です。
各部署の境界線上に落ちた「誰も拾わないボール」が、組織の足元で腐り、異臭を放ち始める。しかし、誰もそれを拾おうとはしません。なぜなら、触れた瞬間に「自分の非」とされるリスクがあるからです。
測定不可能な世界という迷宮
他責文化が固定化する背景には、常に「一次情報の欠如」があります。
「言ったはず」「分かっていると思った」といった曖昧な言葉が飛び交うとき、他責は容易になります。ダメな組織とは、「誰が、何を、いつまでに、どのような基準でやるか」という当たり前の測定を、意図的に、あるいは怠慢によって放棄した組織のことです。
症状C:タコツボ化という「部分最適」の暴走

他責文化が防衛ラインとして機能し始めると、組織は「タコツボ化」のステージに入ります。
「我々」と「彼ら」の分断
組織がタコツボ化すると、社内に複数の「仮想敵国」が生まれます。「他部署は何も分かっていない」「自分たちの部署さえ守れれば、あとはどうでもいい」。
こうして生み出された「部分最適」は、組織全体の利益(全体最適)を確実に食いつぶします。
開発部門は技術的な美しさを追求して、製造コストを無視する。営業部門は売上目標を達成するために、実現不可能な納期を勝手に約束する。経理部門は管理の厳格さを優先して、現場の機動力を奪う。
それぞれが自分の役割に「忠実」であればあるほど、組織という一つの生命体はバラバラに引き裂かれ、前進する力を失っていきます。
インセンティブの設計ミス
タコツボ化は、個人の性格の問題ではありません。KPI(重要業績評価指標)の設計ミスによる「必然」です。
部門ごとの目標が、他部門の利益と相反するように設計されていれば、社員は合理的に「他部門を攻撃し、自部門を守る」ようになります。
戦略的経理パートナーは、ここで真っ先にバランスシートと損益計算書の行間を読みます。
「この利益は、果たして持続可能なものか? 他部門からの『収奪』によって積み上げられた、偽りの数字ではないか?」
求心力を失った組織の末路
タコツボの壁が高くなればなるほど、組織内の「連携コスト」は指数関数的に増大します。
一つの決定を下すのに、何重もの調整と、各部署への根回しと、顔色を伺う会議が必要になる。1円の価値を生むために、何十円もの「摩擦コスト」を支払っている状態。これではグローバルな競争に勝てるはずがありません。
症状D:経営の自己都合化という「ガバナンスの死」

そして、組織崩壊のトドメを刺すのが、経営層の「自己都合化」です。
「将来」を売って「今」を買う
本来、経営者の仕事は「組織の将来価値(Equity)」を最大化することにあります。しかし、ダメな組織のトップは、組織の資産を食いつぶし、自分の任期中の「報酬」や「居心地」という目先の利益に変換し始めます。
設備投資を削って利益を水増しする。現場の悲鳴を無視して、株主(あるいは自分を支持する勢力)に良い顔をする。都合の悪い一次情報を遮断し、自分を囲む「イエスマン」だけの快適なサロンを構築する。
これは、組織の未来を担保に入れて、現在の安寧を買い叩いている行為です。
監督機能が「同居者」に変わる瞬間
組織に自浄作用が働かなくなる決定的なポイント。それは、経営を監視すべき監査役や社外取締役が、経営陣と「共犯関係」になった瞬間です。
「あえて波風を立てない方が、自分の地位も安泰だ」。
ガバナンスという名のブレーキが外れた組織は、坂道を転げ落ちる重力から、もはや自力で逃れることはできません。
現場がどれほど血の滲むような努力をしてコストを削り、1円を積み上げても、トップがその何万倍もの価値を「私欲という名の非効率」で垂れ流している。この構造に気づいた瞬間、組織の「求心力」は完全に消失します。
再生プロトコル:遠心力を求心力へ変える工学的アプローチ

絶望的な診断を下しましたが、ここからが救済の話です。ダメな組織の症状がテンプレであるならば、その「抗生剤」もまた明確です。
ステップ1:トップの一枚岩化(フロントの固定)
まず、マネジメント層の間で「ズレ」を組織の前に見せることを厳禁にします。
トップ同士が会議の席で言い争い、方針の不一致を露呈させた瞬間、組織の遠心力は最大化します。現場は「誰に付いていけばいいか分からない」と混乱し、その隙を突いて「他責のプロ」たちが動き出すからです。
ズレは裏側の密室で、血が出るまで議論して解消する。しかし、ひとたび現場の前に立つときは、指先一つ、言葉一つまで「一枚岩」であることを徹底する。これは政治ではなく、組織という生命体を守るための「安定装置」です。
ステップ2:不満を「提案」と「実行」に強制変換する
組織に蔓延する「不満という名の毒」を浄化します。
「不満を言うことを禁止」するのではなく、「不満を言う際のプロトコル」を定めます。
- 不満(何が問題か)
- 原因仮説(なぜそうなっているか)
- 提案(どう変えるべきか)
- 自分の一手(自分がそこで何を担うか)
この4点がセットになっていない発言は、一切議事録に残さず、検討のテーブルにも乗せない。
不満は吐き出すだけで快感を得られる「麻薬」です。麻薬から「筋肉(アクション)」へと、情報の流れを構造的に変えるのです。
ステップ3:一次情報の「現場(Gemba)」回帰
「他責」の温床である「曖昧さ」を徹底的に排除します。
会議資料の数字を疑い、現場の生のデータ、生の音声、生の現物を見に行く。「測った/測っていない」の世界。
「あいつが悪い」と言う者に対し、「その根拠となる一次データ(ログ・点検表・現場写真)を提示せよ」と突きつける。事実という冷徹な重しの前では、他責という名の雲散霧消な言い訳は通用しなくなります。
ステップ4:全体KPIの上位互換
タコツボを壊すには、部門KPIの上に「全社での優先順位」を明文化して配置します。
- A部門の利益のために、B部門に負担をかける行為は、組織全体の評価として「マイナス」とする。
- 異なる部門が共同で達成すべき「クロス部門KPI」を設定し、一蓮托生のインセンティブ構造を作る。
「人は、評価されるように動く」。このシンプルな行動原理を逆手に取るのです。
ステップ5:毒素の排出(カルチャーの整列)
最も痛みを伴いますが、避けては通れないステップです。
「決めたことを守らない」「他部署を攻撃して自分の地位を作る」「改善の提案を嘲笑する」——こうした文化の破壊者を、たとえ彼らが個人としてどんなに高いスキルを持っていたとしても、マネジメントの座から外す。あるいは、組織から去ってもらう。
「能力」は学習できますが、「文化」は個人の意志と歴史に根ざしています。立て直し局面においては、100点のスキルを持った破壊者より、60点のスキルを持った「文化の担い手」を重用すべきです。
ステップ6:小さな勝利の「量産」
負け犬根性を治療する唯一の方法は、勝利の「味」を思い出させることです。
半年後の壮大な目標ではなく、「今日から2週間で確実に達成できる、具体的な改善」をターゲットにします。
「工場のあの棚がいつも散らかっていたのを、5Sで完璧に整えた」「会議の資料送信を5分早めた」。
こうした小さな、しかし測定可能な「勝利」を積み上げ、それを「俺たちが変えたんだ」という物語として組織に再インストールする。自己効力感は、成功体験の複利によってのみ、復活します。
結びに:1円を積み上げる「覚悟」はあるか?
時代の変化は、もはや「緩やかな衰退」を許してくれません。
ダメな組織のままでは、いずれ市場という名の荒波に飲み込まれ、藻屑と消えるでしょう。
しかし、もしあなたが、今日からこのプロトコルを実行する「覚悟」を持つのなら。
バラバラに散らばっていた個人の情熱は、一つの「求心力」へと収束し、停滞していた1円が、やがて1億円の価値を生む資産へと化けるはずです。
現状維持という鎖を、今ここで断ち切りましょう。
ダメな組織のテンプレを捨て、あなたたちだけの「独自の勝ち筋(幸福な組織)」へと。
その変革の第一歩、あなたはどの「小さな勝利」から始めますか?
深掘り:組織変革のための推薦図書
『すべての組織は変えられる』麻野耕司
組織改革は「ヒト」への投資から始まる。国内の豊富な事例をもとに、抽象的な組織論を具体的な「実務」へと落とし込んだ、2025年の必読書です。
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すべての原点。なぜ沈黙が組織を殺すのか。現代マネジメントにおける最重要概念を理解するためのバイブルです。
それでは、またっ!!
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