みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。Jindyです。
働き方改革という言葉を聞くと、モヤッとする人は多いと思います。
早く帰る人が得をしているように見える。
一方で、火消しをしている人、顧客対応で踏ん張る人、見えないところで資料を整える人がいる。
この違和感は自然です。きれいごとだけでは会社は回りません。給与は毎月出ていく。納期は待ってくれない。競合はこっちの事情なんて知らない。
長く働くことと、価値を出すことは同じではありません。
頑張ることと、報われるべき成果を出すことも同じではない。
厳しく管理することと、人を追い詰めることも別物です。
労働時間は、会社にとって原価です。
給与は固定費に近い。
成果はリターンです。
組織の競争力は、投入した時間に対してどれだけ価値を生んだかで決まる。
つまり、見るべきは根性ではなくROIです。
長時間労働は、努力ではなく原価である

会社でよく起きる勘違いがあります。
ただし、会社の管理会計として見ると、労働時間はまずコストです。
労働時間は売上ではなく、投入資源
1時間多く働いたからといって、売上が1時間分増えるわけではありません。
労働時間は、材料費や外注費と同じで投入です。
会計っぽく言えば、時間は費用化される原価に近い。
それ自体は価値ではない。
価値になるのは、顧客に届いた成果、意思決定を前に進めた情報、ミスを防いだ統制、将来の売上につながる仕組みです。
長く働いた人を否定したいわけではありません。でも、会社が評価すべきなのは、長さそのものではなく、長さを通じて何が生まれたかです。
これは努力ではなく、原価の膨張です。
長く働けば成果が増える、は途中から崩れる
研究でも、労働時間と生産性は一直線ではないと示されています。
Pencavelの研究では、労働時間が増えるほど成果が比例して増えるわけではなく、一定のところから追加時間あたりの産出が落ちることが示されています。Collewet and Sauermannのコールセンター研究でも、勤務時間が長くなるほど通話処理時間が伸び、生産性が下がる傾向が確認されています。
さらに、WHOとILOの共同推計では、週55時間以上の長時間労働は、週35〜40時間と比べて脳卒中リスクや虚血性心疾患による死亡リスクが高いとされています。
会社から見ると、これは人的資本の毀損です。人材は会計上、貸借対照表に資産計上されません。でも、現実の企業価値を支えているのは人です。そこを使い潰すのは、見えない固定資産の減損に近い。
8時間で勝てないのではなく、8時間を薄く使う会社が勝てない
1日8時間で競争力を持てない、という主張には一部の真実があります。
トップ層を目指すなら、勤務時間外の学習や思考量は差になります。資格、英語、投資、専門性、発信。ここは甘くない。
ただし、会社組織としては話が違う。
8時間で勝てない会社は、12時間にしてもたぶん勝てません。問題は時間ではなく設計だからです。
この状態で労働時間を増やしても、増えるのは成果ではなく疲労です。利回りの低い資産に追加投資しても、全体のリターンは上がりません。設計の悪い業務に時間を追加投入しても、組織のROIは上がらない。
長時間労働を全否定する必要はありません。勝負どころはある。踏ん張る時期もある。自分の市場価値を上げるために、仕事外で積む時間も要る。
でも、長く働くことを競争力の中心に置いた瞬間、会社は原価計算を間違えます。
労働時間は売上ではない。
成果を生むための投入資源です。
ここを見誤ると、頑張っているように見えて、実は利益率の悪い経営をしているだけになる。
成果を出さない人への対応は、感情ではなく制度で詰める

働き方改革の話になると、必ず低パフォーマンスの問題が出ます。
これを放置すると、真面目に働く人が削られます。ここはきれいごと抜きです。
ただ、腹が立つから追い込む、細かく監視して辞めさせる、評価を下げまくって居場所をなくす。このやり方は、短期的にはスカッとするかもしれません。でも会社実務としてはかなり危ない。
低評価はあり。ただし、基準がなければ好き嫌いになる
成果を出していない人の評価を下げる。
これはおかしなことではありません。
むしろ、成果を出している人と出していない人を同じに扱う方が不公平です。そこを曖昧にすると、できる人から静かに冷めていきます。
問題は、何をもって成果不足とするかです。
ここが曖昧なまま評価を下げると、管理ではなく印象になります。会計で言えば、評価基準のない人事評価は、証憑のない仕訳に似ています。金額は入っている。でも根拠がない。あとで突かれたら弱い。
成果を求めるなら、成果の定義を先に出す。ここをサボると、頑張る人も頑張らない人も不幸になります。
解雇はできるが、簡単ではない
日本では、成果が低いからすぐ解雇、という運用はかなり慎重に見る必要があります。
厚生労働省は、解雇事由を就業規則に記載する必要や、合理的理由があっても解雇予告などの手続きが必要であることを示しています。労働契約法16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされます。
これは、会社が何もできないという意味ではありません。
面談記録を残す。
改善計画を出す。
配置転換の可能性を見る。
それでも改善しないなら、評価・降格・契約終了を検討する。
本当に成果で詰めるなら、感情ではなく記録です。怒鳴るより、証拠。圧をかけるより、基準。退職に追い込むより、改善機会と判断履歴。
マイクロマネジメントは薬にも毒にもなる
マイクロマネジメントは全部悪ではありません。
ただし、目的が変わると一気に危なくなります。
これは管理ではなく、職場を壊す行為です。
厚生労働省のパワーハラスメントの整理では、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害する言動が問題とされます。合理性のない過小な要求や、仕事を与えないことも典型例に含まれます。
管理の目的は、人を辞めさせることではありません。成果を出せる状態に近づけることです。それでも出せないなら、制度に沿って処遇する。
低パフォーマーに甘くする必要はありません。
ただし、怒りで処理する会社は弱い。
制度で処理する会社は強い。
成果の定義。
改善の機会。
記録。
評価への反映。
必要なら配置や契約の見直し。
頑張る人を守るためにも、頑張らない人を感情で裁かない。ここが、組織の成熟度です。
資本主義で報われるのは、努力時間ではなく価値創出である

資本主義は頑張った人が報われる仕組み。
この言葉は、かなり気持ちがいいです。努力してきた人ほど、そうであってほしいと思う。
でも、会計と投資の目で見ると、少し修正が必要です。
資本主義で報われるのは、頑張った人ではありません。
価値を出した人です。
頑張ったかどうかは、P/Lに直接出ない
会社の損益計算書に、努力という勘定科目はありません。
数字に出るのは、顧客が払った金額、使ったコスト、残った利益です。どれだけ頑張ったかは、そのままでは載らない。
10時間かけて作った資料でも、意思決定に使われなければ価値は薄い。
2時間で作った資料でも、投資判断を前に進めたなら価値は高い。
夜中まで対応しても、翌月同じトラブルが再発するなら仕組み化できていない。
努力は尊い。
でも、会社が報いるべきは努力そのものではなく、努力が変換された成果です。
自分はこんなに頑張っているのに、なぜ評価されないのか。
その痛みはわかります。けれど、評価者が見ているのは、かけた時間ではなく、会社に残った価値です。
だからこそ、自分の仕事を成果に翻訳する力が要ります。
これを言語化できる人は強い。
成果給は効く。ただし測り方を間違えると壊れる
成果に応じて報いる仕組みは、たしかに機能します。
IZA World of Laborでは、業績連動報酬が労働者の努力や企業業績にプラスに働き得ると整理されています。成果が見えやすい仕事では、報酬と結果をつなげることで行動が変わる。
ただし、成果給は万能ではありません。
Osterloh and Freyは、成果報酬が条件によっては内発的動機を弱める可能性を指摘しています。特に複雑で創造的な仕事では、金銭的インセンティブだけで設計すると、仕事が狭くなることがあります。
これも会計に似ています。
測れる数字だけを追うと、測れない資産が傷む。
短期利益だけを追うと、ブランド、人材、信頼、顧客関係が削られる。
本当に見るべき成果は、売上だけではありません。再現性、利益率、顧客継続、リスク低減、チームの生産性、次の人が使える仕組み。ここまで見て、ようやく価値創出です。
働き方改革は、努力の否定ではなく、経営の再設計である
働き方改革を、早く帰るための制度として見ると話が浅くなります。
本質は、長時間労働でしか回らない会社を作り直すことです。
日本の法定労働時間は、原則として1日8時間、週40時間です。厚生労働省も、使用者は原則としてこれを超えて労働させてはいけないと説明しています。
だからといって、8時間だけ座っていればいいわけではない。成果責任は残ります。プロとしての学習も要ります。成長したいなら、自分の時間をどこに投資するかも問われる。
でも、会社が制度として無限労働を前提にしてはいけない。
これは甘さではありません。経営管理です。
毎月の予算を作るとき、売上未達を全部残業で埋める計画なんて、まともな予算とは言いにくい。人が頑張れば何とかなる、という計画は、実は計画ではなく祈りです。
資本主義は、努力時間をそのまま買ってくれる仕組みではありません。
買われるのは価値です。
評価されるのは成果です。
長く働いた事実ではなく、その結果として会社に何が残ったかです。
何時間働いたか。
ではなく、
何を生んだか。
どれだけ頑張ったか。
ではなく、
その頑張りは、どんな資産に変わったか。
働き方改革は、ぬるい話ではなくなる。むしろ、かなり厳しい話です。
結論
働き方改革を盾にして、成果から逃げる人がいるなら、それは違う。
成果を出している人と、出していない人を同じに扱う会社も違う。
頑張る人が報われない組織は、静かに腐ります。
でも同時に、長く働く人だけを偉いとする会社も、もう強くありません。
なぜなら、労働時間は無限ではないからです。
体力も、集中力も、家族との時間も、人生そのものも、全部有限です。
会計では、限りある資源をどこに配分するかを見ます。
投資では、リスクを取った先にどれだけリターンがあるかを見ます。
働き方も同じです。
時間という原価を、どこに投じるのか。
努力という投資を、どんな価値に変えるのか。
会社はその価値を、ちゃんと測れているのか。
ここを見ずに、頑張れだけで走らせるのは、経営ではありません。
本当に強い会社は、人に甘い会社ではない。
でも、人を使い潰す会社でもない。
そして働く側も、自分に問い続けたい。
今日の8時間は、ただ消えた時間だったのか。
それとも、未来の自分に残る資産になったのか。
残業した日だけが、頑張った日ではありません。
早く帰った日でも、濃い仕事をして、学び、誰かを助け、明日の自分を少し強くできたなら、それは立派な投資です。
働くことは、人生のかなり大きな部分を差し出す行為です。
だからこそ、安く使われてはいけない。
雑に燃やされてもいけない。
そして、自分自身も、自分の時間を雑に扱ってはいけない。
頑張る人が報われる社会であってほしい。
ただし、その報酬は、長く座った人にではなく、価値を生んだ人に届いてほしい。
誰かを追い詰める厳しさではなく、成果と誠実さがちゃんと見える厳しさであってほしい。
労働時間は原価。
成果はリターン。
人生は、たった一度の投資案件です。
どうせ働くなら、ただ消耗するより、ちゃんと資産になる働き方をしたい。
その方が、きっと強い。
会社も。
個人も。
そして、これからの人生も。
あわせて読みたい本
1. 『評価と報酬の経営学 アイツの査定は高すぎる?』濱村純平
「なぜ、あの人の評価は高いのか」
「自分の仕事は、ちゃんと見られているのか」
働く人なら、一度は感じたことがあるモヤモヤを、管理会計の視点から解きほぐしてくれる一冊です。
このブログで書いた、努力時間ではなく価値創出を見るという話と相性が抜群です。評価制度は、ただの人事の仕組みではありません。会社が何を成果とみなし、誰に報いるのかを決める経営そのものです。
頑張っているのに報われない。
評価に納得できない。
成果主義って結局なんなのか。
そんな違和感を持ったことがある人ほど、手に取る価値があります。仕事の見え方が、少し冷静に、でもかなり深く変わります。
2. 『企業価値に連動する人的資本経営戦略』保田隆明・佐々木聡
人的資本経営という言葉は、きれいに聞こえます。
でも、本当に問うべきなのは、人を大事にしていますと言うことではなく、人への投資が企業価値につながっているかです。
この本は、人的資本を経営戦略・財務戦略・株式市場からの評価とつなげて考えるための一冊です。
このブログで書いた、労働時間は原価、成果はリターン、人生も会社も投資案件という考え方を、より経営寄りに深掘りできます。
人をコストとして見るだけの会社は、どこかで伸び止まる。
でも、人を資産ですと言うだけの会社も、まだ浅い。
人への投資を、どう企業価値に変えるのか。
この問いに踏み込みたい人に刺さる本です。
3. 『5000の事例から導き出した 日本企業最後の伸びしろ 人的資本経営大全』田中弦
人的資本経営を、ふわっとした理想論で終わらせたくない人に向いています。
この本の魅力は、事例をもとにしているところです。
人を大事にするとは何か。
働きがいを作るとは何か。
組織を強くするとは何か。
それをスローガンではなく、実際の取り組みから見ていけます。
このブログでは、長時間労働に頼る会社は原価計算を間違えていると書きました。では、間違えない会社は何をしているのか。そこを考える補助線になります。
現場感のある経営論として読みたい人にも、これから組織を作る側に回る人にもおすすめです。
4. 『効率化の精鋭』佐上峻作
長く働くことが偉いのか。
それとも、短い時間で大きな成果を出すことが偉いのか。
この問いに、かなり実務寄りで答えてくれる本です。
会議、上司との関係、コミュニケーション、仕事の進め方。
日々の仕事で削れるムダは、想像以上に多いです。
このブログで書いた、8時間で勝てないのではなく、8時間を薄く使う会社が勝てないという話を、もっと行動レベルに落とし込んで読めます。
頑張っているのに仕事が終わらない。
忙しいのに成果が残らない。
そんな人には、耳が痛いけれど役に立つ一冊です。
努力を減らす本ではありません。
努力の置き場所を変える本です。
5. 『職場で傷つく リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』勅使川原真衣
成果を求めることと、人を傷つけることは違います。
ここを混同すると、職場は一気に息苦しくなります。
厳しさのつもりが、ただの圧になる。
自分で考えろという言葉が、実は放置になる。
能力主義の顔をして、誰かを黙らせてしまう。
この本は、職場の中で見過ごされがちな傷つきに目を向ける一冊です。
このブログでは、低パフォーマー対応は感情ではなく制度で詰めるべきだと書きました。その裏側には、人を壊さず、でも成果からも逃げない組織をどう作るかという難題があります。
優しいだけの組織では弱い。
でも、強いだけの組織は人が離れる。
その間にある、本当の意味で強い職場を考えたい人に読んでほしい本です。
それでは、またっ!!
引用論文・参考資料
- John Pencavel, The Productivity of Working Hours. 労働時間と産出の関係が単純な比例ではないことを示した研究。
- Marion Collewet and Jan Sauermann, Working Hours and Productivity. 労働時間増加と生産性低下の関係を実データで分析。
- WHO/ILO, Long working hours increasing deaths from heart disease and stroke. 長時間労働と健康リスクに関する共同推計。
- 厚生労働省 労働時間・休日。法定労働時間の確認。
- 厚生労働省 労働契約の終了に関するルール、労働契約法第16条資料。解雇ルールの確認。
- 厚生労働省 パワーハラスメントの定義、あかるい職場応援団。パワハラ定義と類型の確認。
- Claudio Lucifora, Performance-related pay and labor productivity. 業績連動報酬と生産性の整理。
- Margit Osterloh and Bruno Frey, Does pay for performance really motivate employees? 成果報酬と内発的動機の関係。
コメントを残す