失敗した起業家を笑う前に – 経営とは、次の一手を残しながら成功を探すこと

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。Jindyです。

起業した人が事業を畳むと、ほら見たことか、と言う人がいる。会社で新規事業が止まると、最初から無理だった、と言う人もいる。

でも、始める前から答えが分かっていたなら、その話はもう少し簡単だったはずです。顧客が買うか、続けて使うか、採用できるか。実際に動かして初めて見えることが、ビジネスにはある。

私は、挑戦した人を、一度の結果だけで笑う気にはなれません。少なくとも、自分の考えを現実に差し出した。その行動には敬意を持ちたい。

ただ、失敗して当然、で話を終えるのも違うと思っています。お金は減るし、関係者はいるし、次に挑むにも体力が要る。応援の言葉だけでは、月末の支払いは済まないんですよね。

この記事では、失敗した人への評価と、失敗した事業への評価を分けて考えます。そのうえで、何を学び、いくらまで使い、いつ止めるか。経理屋として数字を作る側の視点から、挑戦を続けるための経営を掘り下げます。起業だけでなく、社内の企画や投資判断にも通じる話です。

一度の失敗で人を値付けしない – 結果の前に、そのとき見えていた景色を見る

失敗した人を責めないからといって、その判断まで検証しなくてよいわけではありません。人への敬意は残したまま、事業の前提は遠慮なく疑う。この距離感から始めたいです。

会社の生存率と、アイデアの的中率は違う

ビジネスはほとんど失敗する。言いたいことは分かります。ただ、この言葉をそのまま統計の話にすると、足元が少し危うくなる。

米国労働統計局の資料では、2013年3月に生まれた民間事業所のうち、2023年3月にも稼働していた割合は34.7%でした。これは米国の事業所を10年間追った値で、日本の起業家や個別企画の失敗率ではありません。bls.gov

一方、2023年版中小企業白書は、日本の創業5年後の企業生存率を80.7%と紹介しています。同時に、データベースの収録対象や収録までの時間によって、実態より高く出る可能性も注記しています。国も期間も対象も違うので、先ほどの米国の数字との単純比較はできません。中小企業庁

しかも、会社が残っていても新商品は外れるし、事業所を閉じた理由も経営破綻とは限らない。会社の存続、案件の採算、投資家の回収は、それぞれ別の成績表です。

だから、何割が失敗するかを雑に言い切るより、挑戦には外れる可能性があり、一度の不成立で人の能力まで決められない、と言うほうが正確だと思います。

決算が赤字でも、判断まで赤点とは限らない

仮に、顧客の反応を確かめるため、小規模な販売テストをしたとします。事前に用途を聞き、支払う意思も確認し、損失の上限を決めた。それでも売れなかった。

別の人は、確かめずに大量発注した。でも偶然、話題になって売れた。

結果だけなら後者が勝ちです。けれど、次の案件も同じ決め方で任せられるかと聞かれたら、少し考えますよね。たまたま当たった判断にも弱点はあるし、丁寧に進めた判断でも外れることはある。

会計の数字は、すでに起きた結果を記録するものです。その数字だけで、当時の情報から見て妥当な判断だったかまで自動的に分かるわけではない。そこで、判断した時点に戻る必要がある。

どの顧客を想定したのか。何を確認し、何が分からないままだったのか。反対の材料を見たのか。そのうえで、引き受ける損失は妥当だったのか。

失敗を見てから、そんなことも分からなかったのか、と言うのは簡単です。でも、結果を知っている自分を、当時の意思決定者より賢いと勘違いしないほうがいい。答えを見ながら受ける試験は、だいたい高得点です。

挑戦への敬意と、説明する責任を一緒に置く

もちろん、挑戦したのだから何でも許される、という話ではありません。都合の悪い情報を隠した、確認できたはずのことを放置した、負担を他人へ押しつけた。こうした行動は、事業が当たったかどうかとは別に検証する必要があります。

逆に、誠実に進めた事業が不成立だったことを、その人への人格攻撃に変えても、次の判断にはほとんど役立たない。

会社の会議でも同じです。失敗を報告した人が毎回つるし上げられるなら、担当者はどう動くでしょうか。私なら、報告が遅れたり、悪い材料が薄められたりしないかを心配します。これはすべての組織に当てはまる実証結果というより、評価制度を設計するときに考えるべき誘因の問題です。

怖いのは、事業が止まること以上に、止めるべき情報が上がらなくなること。

問うなら、なぜ負けた人間なのか、ではなく、どの前提が崩れ、いつ分かり、誰に伝えたか。そこまで話せれば、本人の再挑戦にも、組織の次の投資にも使える。責任を問う言葉には、次の行動を変えるだけの具体性がほしいと思います。


人への評価を一回の損益で確定させると、事業の検証まで雑になります。挑戦したことへの敬意と、判断への厳しさは、一緒に持てるはずです。

応援する側も、経営する側も、成功したかだけで会話を終えない。そのとき何を知り、どう決めたかまで戻ってみる。再挑戦を支える足場は、そこから作れます。

失敗は、次の判断が変わって初めて役に立つ – 経験を積むだけでは授業料が増える

失敗は成功のもと。便利な言葉ですが、自動変換機能は付いていません。経験しただけで学習が済むなら、同じ失敗を繰り返す人はいないはずです。では、何を残せばいいのか。

反省会には、始める前のメモを持ち込む

売れなかった理由を聞くと、認知が足りなかった、時期が悪かった、という説明が出てくる。そうかもしれません。でも、それだけでは次も同じことが起きます。

例えば、忙しい個人事業主に、月額の事務支援サービスを提供する架空の企画を考えます。作業が面倒だという声がある。ここから、お金を払ってでも外注したいはずだ、と進む。この間には、かなり大きな溝があります。

面倒だけど自分でできる。困るのは年に一度だけ。外注するほどの予算はない。相手に情報を渡すのが不安。困っていることと、買うことは同じではないんですよね。

そこで開始前に、誰が、どんな場面で、何に対して支払うと思うのかを書いておく。調べたいこと、確かめる方法、期待する反応、見直す日も決める。

売れなかったら、そのメモと実際の反応を照合する。課題の強さが違ったのか、対象を間違えたのか、料金なのか、導入の手間なのか。複数を一度に変えれば、売れても何が効いたか分からない。

開始前の予想が残っていれば、結果を見てから都合よく話を書き換えにくくなる。立派な反省文より、外れた前提が一つ特定されるほうが、次には効きます。

やめる判断も、学習の成果になる

ここで参考になるのが、起業家に仮説と検証を教える研究です。Camuffoらの2024年の論文は、イタリアと英国で実施された四つの無作為化比較試験、計759社を分析しました。

研修を受けた側では、アイデアの打ち切りが増えました。また、方向転換については、全く変えないか何度も変え続けるより、少数回の大きな変更へ寄る結果が報告されています。研修参加企業での知見で、日本の全起業家に同じ効果が出る保証はありません。途中でやめた案件が、すべて正しかったと個別に証明する研究でもない。iris.unibocconi.it

それでも、この結果は考える材料になります。経営を学ぶほど、何が何でも続けるようになる、とは限らない。

反応が弱いと分かったとき、同じ案への追加投資を止める。そこで残ったお金と時間を、別の顧客や別の提供方法に使う。会社の外からは失敗に見えても、中では選択肢を守った判断かもしれません。

ただし、難しいことが起きるたびに別の案へ飛び移ればいいわけでもない。必要な検証を済ませたのか、見たくない結果から逃げているのか。やめた理由まで残して初めて、次に持っていけます。

一度の成功にも、同じ質問をぶつける

失敗した案件だけ反省会を開いて、成功した案件は拍手で終わる。これだと、組織には負けた理由だけが蓄積され、勝った理由は意外と残りません。

広告が当たったのか。紹介が効いたのか。競合の供給が一時的に止まっていたのか。担当者が無理をして支えたのか。売上が伸びたという同じ結果でも、その先の経営は変わります。

特に気になるのは、採算のよさが、人の無償の頑張りに乗っているケースです。創業者が営業も納品も問い合わせ対応も全部やる。帳簿に十分な人件費が出ていなくても、本人の時間は使っている。人を雇って同じサービスを続けたら、利益が残るのか。

この問いを飛ばして拡大すると、一店舗ではうまくいったのに、多店舗では厳しい、という事態にもつながり得ます。もちろん、これは構造を説明する例で、特定企業の話ではありません。

成功には、続く条件がある。その条件が変われば、過去の勝ち方はそのまま使えない。

うまくいった経験は、自信にはなります。でも、次の企画の需要まで証明してくれるわけではない。成功したときほど、何が再現できて、何が今回だけだったかを切り分けたいです。


失敗経験の価値は、回数で決まりません。同じ情報を前にしたとき、以前とは違う判断ができるか。そこに変化があって初めて、払った授業料が働き始めます。

失敗にも成功にも、前提を書き残す。結果を確認する。次に変える行動を決める。経営の経験値は、年数よりも、この往復の中に蓄積されるのだと思います。

再挑戦を支えるのは、気合より残った現金 – 経理は挑戦の回数を設計できる

またやればいい。方向としては賛成です。ただ、その一言で再起に必要な負担を小さく見せたくない。続けるには生活も、支払いも、人間関係も残す必要があります。ここからは、お金の話です。

利益と現金の減り方を、別々に見る

以下は仕組みを考えるための単純化した架空例です。手元資金が600万円あり、毎月の現金の支払いが150万円、顧客からの入金が100万円。差し引き50万円ずつ減るなら、単純計算で12か月分あります。

ただし、600万円を全部使ってよいわけではない。支払い済みでない仕入代金や、閉じるときの費用などに200万円を確保するなら、追加の試行に回せる資金は400万円。毎月50万円減る前提では8か月分です。実際には月ごとの増減や支払日も見る必要があります。

ここで売上が伸びたら安心かというと、そうとも限らない。売上計上から入金まで間があり、先に仕入れや外注費を払う事業なら、成長するほど当面のお金が必要になることがある。

損益計算書では改善しているのに、銀行残高は減る。数字を作る側としては、ここを飛ばして頑張れば何とかなると言いたくありません。

月次の利益を見るのと並行して、いつ入って、いつ出て、最低残高はいくらになるかを並べる。調達予定の資金も、確約のない段階では確定入金と同じ扱いにしない。次の挑戦を守るには、売れそうという期待と、実際に使える現金を分ける必要があります。

最初に、次の支出を認める条件を決める

お金を守るというと、新しいことをやめる話に聞こえるかもしれません。でも、使い方を分ければ、挑戦する余地を広げられます。

最初から完成品に大きく投資する代わりに、顧客の困り方を調べる。次に試作品で確かめる。有料で試してもらい、利用が続くかを見る。反応に応じて、次の支出を決める。

ただ、小さく試せば万能、でもありません。高い安全性が必要なものや、設備がなければ性能を確かめられない事業もある。削ってよい費用と、確かめるために必要な費用は分けたい。

そのうえで、何が確認できたら増やすのか、何が出たら止めるのかを先に決める。売上だけでなく、継続利用、顧客一人を獲得するための負担、一件増えるごとの採算を見る。好きだと言ってくれた人数と、支払いを続けた人数は違います。

そして、テストの期限を決めるときには、終了後に検討する時間も残す。資金が尽きる前日に結果が出ても、次の手を打つ余裕がない。

経理ができるのは、予算を削ることだけではありません。どの情報が得られたら、次のお金を出せるかを事業側と一緒に設計すること。数字が挑戦の味方になるのは、こういう場面だと思います。

学びは資産でも、そのまま支払いには使えない

失敗しても、経験が残る。確かに残ります。顧客の知識、作業の勘所、人とのつながり。それらが次の事業に役立つことはあるでしょう。

ただ、経営上の比喩としての資産と、会計上の資産は区別したい。学びがあったからといって、使ったお金を自由に資産へ振り替えられるわけではありません。会計処理は適用する基準や支出の性質で判断されます。

そもそも、その学びで来月の給料を払えるかといえば、払えない。だから私は、良い経験でした、という言葉だけで投資の振り返りを締めたくない。

何が分かって、次の支出がどう変わり、誰が使える形で残ったのか。そこまで確認したいです。損失は損失として認め、そのうえで、回収できるものを具体的に探す。

投資家として会社を見るときにも、同じ問いが使えます。赤字だから全部だめ、という読み方では新規事業を捉えきれない。一方で、成長投資という名前が付いただけで、資金流出を正当化するのも危うい。

確かめる節目はあるか。追加投資の説明は前回から変わったか。不成立の案件を止められるか。単発の成功談より、お金の配り方と見直し方に、その会社の経営が出ると思います。


失敗しても大丈夫な会社とは、損失を気にしない会社ではないはずです。損失を引き受けられる範囲を知り、必要な情報を得ながら、次の選択肢を残せる会社。その設計には、事業の人と数字の人の両方が要ります。

再挑戦する力を本人の根性だけに背負わせない。資金、時間、引き継げる知識を残すところまで含めて、挑戦を支える経営だと私は考えます。

結論 挑戦を笑うより、次に何を変えるかを聞きたい

経営には、答えが分からない段階で決めなければならない時間があります。分かるまで待てば、使えるお金も機会も減ってしまう。その中で、自分なりの根拠を集めて一歩を出す。私は、その行動を尊重したいです。

だからこそ、失敗した人に、ほら見たことか、と言う代わりに聞きたい。やってみて、何が予想と違ったのか。もう一度やるなら、どこを変えるのか。すぐに再起する余裕がなければ、休むことも、働きながら準備することも選択肢にあっていい。

挑戦することに敬意を払い、使ったお金には説明を求める。その両方があるほうが、次の挑戦を預けやすくなると思います。

最初から全部当てられる人を探すのは難しい。でも、外れた事実を受け止め、次のお金の使い方を変えられる人なら、その仕事ぶりを見ることはできる。

成功は一度で完成する称号ではないし、失敗も人を確定させる判決ではない。経営は、その間で判断を重ねる仕事です。次の一手が前より少し賢くなっているか。挑戦した人を見るとき、私はそこを見ていたいです。

挑戦を、次の判断につなげるための5冊

1.『失敗の科学 成長する組織の条件』マシュー・サイド

失敗した人を責めれば、次の失敗が減るのか。その疑問から読み始めたい一冊です。航空、医療、企業、スポーツなどの事例を通じて、人が失敗を認めにくい理由と、組織がそこから学ぶ仕組みを扱っています。この記事で触れた、人への敬意と判断の検証をどう両立させるかを、組織の側から考える助けになります。自分の反省の仕方だけでなく、部下や同僚の報告にどう反応するかを見直したい人にも向いています。個々の事例を、そのまま自社の答えにする必要はありません。自分の職場なら何が隠れ、どこで情報が止まりそうか、と問いながら読むと、日々の会議との接点が見えてきます。


2.『リーン・スタートアップ 新装版』エリック・リース

何を作るかより前に、何を確かめるかを考えるための本です。構築、計測、学習の循環や、最小限の製品で反応を確かめる考え方、方向転換の判断などを、提唱者自身が体系的に説明しています。本文の、次の支出を認める条件を先に決めるという話を、事業開発の方法へつなげたいときに役立ちます。小さく作れば必ず売れる、という成功の保証書として読むより、限られた時間と資金で何を知るべきかを考える道具として使いたい一冊。起業家だけでなく、完成度を上げることに忙しく、顧客の反応を見る時間が後回しになっている社内プロジェクトの担当者にも、問い直す材料があります。


3.『入門 起業の科学』田所雅之

起業の話は分かったけれど、明日どこから手を付ければいいのか。そんな段階なら、この本が入口になります。アイデアの検証から顧客の課題、解決策、人が欲しがるものを作るところまでを、順を追って整理した入門書です。とりわけ本文の、困っていることと、お金を払うことの間には溝がある、という論点を具体的に考えるために選びました。事業計画の見栄えを整える前に、まだ確かめていない前提を見つけたい人向けです。すべての業種に同じ手順がそのまま使えるわけではありませんが、いまの自分が何を分かっていて、何を想像で埋めているかを整理する地図として使えます。

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4.『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』朝倉祐介

売上が伸びた、利益が出た。それで経営がよくなったと言えるのかを問い直す本です。目先の損益に偏る発想を取り上げ、将来に向けた意思決定、資金や時間の使い方、企業価値とのつながりを考えます。この記事の、再挑戦のために現金と選択肢を残すという話を、会社全体の資源配分へ広げたい人に向いています。経理担当者なら、予算を守らせる役割から、どの投資にどうお金を回すかを一緒に考える役割へ視野を広げるきっかけになります。投資家にも、赤字か黒字かの二択を超えて、何のために資金を使い、その使い方を見直せているかを読むための補助線になる一冊です。


5.『良い戦略、悪い戦略』リチャード・P・ルメルト

挑戦を続けることが、手当たり次第に動くことになっていないか。その点を厳しく確かめたいときの一冊です。目標や前向きな掛け声と、実際に行動へ結びつく戦略の違いを扱い、課題を見定めて資源と行動を集中させる考え方を説明しています。本文で触れた、方向転換を何度も繰り返すだけでは学習とは言えない、という問いを深められます。起業準備の段階でも、既存事業の見直しでも、いま一番の障害は何で、なぜその一手を選ぶのかを言葉にしたい人向け。失敗を恐れない姿勢に、何に力を使うかという選択を加え、挑戦の中身を具体的にするために読みたい本です。

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失敗への向き合い方から考えるなら『失敗の科学』、検証の方法を知りたいなら『リーン・スタートアップ』、最初の行動を整理するなら『入門 起業の科学』から。お金を出す側、管理する側なら『ファイナンス思考』、動いているのに焦点が定まらないと感じるなら『良い戦略、悪い戦略』が入口になります。

それでは、またっ!!


引用論文・参考文献

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