その成果、誰かの残業でできていませんか – 仲良し不要論を経理屋が考える

みなさん、おはようございます!こんにちは!こんばんは。Jindyです。

会社は仲良くする場所ではなく、結果を出す場所。

この言葉には、うなずけるところがあります。仕事が進んでいないのに、会議の雰囲気だけは最高。問題を指摘すると、空気を悪くする人として扱われる。そんな職場で働く人には、かなり救いのある言葉でしょう。

ただ、経理屋としては、その次を聞きたくなる。

その結果って、どこまでの数字ですか。

本人の売上でしょうか。部署の利益でしょうか。周囲の後始末や、来年の顧客離れまで含めた会社の成果でしょうか。ここが曖昧なまま成果主義を語ると、数字に厳しいつもりで、原価に甘い経営ができあがります。

仲良くすることを目的にしない。この考えには賛成です。でも、人間関係が成果に関係しない、とまで言えるのか。今日は、親しさと信頼の違い、個人成績に隠れた原価、人を入れ替える前に確かめたい経営の責任を考えます。職場の評価にも、投資先の組織を見る目にも使える話です。

仲良しと信頼は別のもの – 飲み会ゼロでも情報は回せる

休日に会いたい同僚であることと、月曜日に正確な報告をくれる同僚であること。この二つは、同じではありません。ところが人間関係の話になると、ここが一つの袋に入れられがちです。

一緒に遊べなくても、一緒に仕事はできる

趣味が合わない。雑談も弾まない。飲み会には来ない。でも、約束した仕事は返ってくる。分からないことは分からないと言う。こちらのミスを見つけたら、変に気を使わず教えてくれる。

こういう人とは、十分に仕事ができます。むしろ、いつ機嫌を損ねるか分からない人気者より、安心して仕事を渡せるかもしれません。

仕事に必要な信頼とは、相手が好きだという感情だけではなく、何を頼めば何が返ってくるかを予測できることです。私生活まで近づかなくても成立する。親しくなるまで情報を出せない職場なら、入社したばかりの人は仕事の前に友達づくりの試験を受けることになります。なかなか面倒な入社試験です。

だから、仲良しを義務にしないのは合理的です。ただし、挨拶を返す、必要な情報を渡す、相手を侮辱しない。そうした仕事上の扱いまで不要になるわけではありません。距離を置く自由と、協力を拒む自由は、分けて考える必要があります。

研究が見ているのは、親密さだけではない

チームのまとまりと成果を扱ったGrossmanらのメタ分析では、課題に向けたまとまりを測る指標の方が、社会的な親しさを測る指標より、成果との関連が強いと報告されています。何を人間関係の良さと呼ぶかで、話が変わるのです。journals.sagepub.com

また、Edmondsonが製造業の51チームを調べた研究では、対人関係上のリスクを取れるという共有認識と、チームの学習行動との関連が示されました。ここでいうリスクには、質問する、助けを求める、誤りを話すといった行動が含まれます。仲間内で盛り上がれるかとは、別の話です。web.mit.edu

たとえば決算前に、数字の前提がおかしいと気づいたとします。相手が怖いから来週にしよう、と報告を寝かせれば、修正できる時間は減っていく。人間関係の問題が、締切や確認作業の問題へ変わる場面です。

もちろん、これらの研究から、雰囲気を改善すれば利益が必ず増える、とまでは言えません。研究対象や測定方法の違いもあるし、相関から因果を一方向に決めることもできない。それでも、親しくなくてよいことを根拠に、関係の質は無関係だと結論づけるのは飛躍があります。

仲の良さが、成果の後についてくることもある

難しい案件を一緒に終えた。トラブルのときに逃げなかった。厳しい指摘だったけれど、あとから助かったと分かった。そうした経験を重ねて、相手への信頼や親しみが増すこともあるでしょう。

この場合、仲良くなったから成果が出た、と説明するだけでは順番を取り違えます。成果や協働の経験が、関係を変えた可能性もあるからです。

だから、仲良しは副産物という見方には、筋が通る部分があります。ただ、副産物として生まれた信頼が、次の仕事で相談を早めるなら、その後は成果を支える条件にもなりうる。一度どちらが先だったかで、その後ずっと片道通行になるわけではありません。

逆に、親しさが指摘を遠慮させることもある。仲がいいから大丈夫、と確認を省くなら危ない。見るべきなのは親密度の高さそのものより、その関係の中で、必要な行動が取れているかです。

そもそも、結果を出し続ければ組織は成立する、という説明は、結果が出続ける条件をまだ説明していません。判断を間違えたときに誰が止めるのか。担当が交代しても情報は残るのか。成果が出ている間にこそ、その支えを確かめる余地があります。


仲良くなることを会社の目標にすると、付き合いの良さが評価に入り込みます。一方、人間関係を全部切り捨てると、情報が届くまでの時間や、助けを求める難しさが見えなくなる。どちらも、仕事を見る解像度が足りません。

飲み会に来たかではなく、困ったときに情報が来たか。笑顔が多いかではなく、耳の痛い話が出たか。職場の関係は、仕事の流れの中で確かめる方が役に立ちます。

個人成績は組織の利益ではない – エースの裏で誰が原価を払うのか

成果を出しているなら、人柄は問わない。その判断をする前に、成果の集計範囲を確認したい。営業成績表の下に、他部署の残業が注記されているとは限らないからです。

売上は本人、後始末はみんな、という評価の穴

ここからは、仕組みを考えるための仮の例です。営業担当Aは、月に300万円の粗利をつくる。ただし、顧客に約束した仕様が社内へ伝わらず、追加対応や修正に80万円相当の費用がかかる。担当Bの粗利は250万円で、同じ種類の追加費用は10万円だったとします。

この二項目だけを同じ条件で比べるなら、Aが220万円、Bが240万円です。粗利の順位と、追加費用を考慮した貢献の順位が逆になります。もちろん実際の評価では、案件の難易度や顧客の特性もそろえて見る必要があります。

ここで、Aは結果を出しているのだから周囲が合わせるべきだ、と言い切れるでしょうか。合わせるための費用まで含めて、それでも結果がよいのかを確かめたいところです。

すでに粗利や部門費用へ織り込んだコストを、もう一度引く必要はありません。会計上の利益を勝手に修正する話ではなく、誰の行動がどこに費用を生んだかを、評価のためにたどる話です。会社全体で計上されていても、本人の評価には届いていない原価がある。ここに管理会計の出番があります。

ただ、他部署で発生した費用を何でも担当者へ付け替えると、今度は難しい案件を引き受ける人が不利になります。原因を本人が動かせたのか、会社が戦略として引き受けたのかも区別したい。配賦した数字が精密に見えることと、責任の置き方が正しいことは、別の問題です。

問題行動と高い生産性は、両立してしまう

HousmanとMinorのワーキングペーパーは、11社、5万人超の労働者データを使い、問題行動と生産性を検討しました。そこでは、問題行動を起こす人が、仕事の量という意味では高い生産性を示す場合も報告されています。hbs.edu

ただし、この研究が扱うのは重大な規則違反などで、単に無愛想な人や意見の合わない人ではありません。データも主に時間給の現場サービス職です。日本企業のあらゆる職種に、そのまま当てはめることはできません。

それでも、仕事が速いことと、周囲へ損害を与えないことは別々に確認する必要がある、という問いは残ります。本人の処理件数が多くても、間違った説明が顧客対応を増やしていれば、組織全体の生産性は別の計算になるからです。

一方、口数が少ないだけの人を、協調性がないと決めつけるのも雑です。感じが悪いという印象で評価せず、情報の未共有、侮辱、確認の拒否など、どの行動がどんな支障を生んだかを確かめる。好き嫌いを成果の言葉で包むと、公平に見えて、かなり恣意的になります。

今期の数字が、来期の稼ぐ力を削ることもある

もう一つ、集計の時間軸があります。教育を全部後回しにして、ベテランが一人で処理すれば、今月は速いかもしれません。でも、その人が休んだ日に仕事が止まるなら、強い組織ができたとは言いづらい。

引き継ぎをする。手順を残す。新人の質問に答える。こうした仕事は、その日の本人の処理件数を減らす場合があります。それだけで低評価にしたら、来月以降の処理能力をつくる人ほど損をする。会社は未来の売上を欲しがるのに、未来の準備を評価から外してしまうわけです。

投資家として組織を見るなら、一人当たりの売上が伸びた理由も気になります。業務が改善されたのか。採用が止まって既存社員へ負担が寄ったのか。短期間の数字だけでは、見分けにくい。離職、採用・教育の負担、品質や顧客の継続など、確認できる情報を組み合わせる必要があります。

人の信頼や技能を、ここで会計上の資産に計上するという話ではありません。ただ、財務諸表に独立した項目として見えないからといって、将来の稼ぐ力に関係しないとは限らない。数字を読むなら、その数字を来年もつくれる条件まで見たいのです。


成果主義を採るなら、何を成果に含めるかまで厳しくしたい。自分の担当分を増やす人と、会社全体の仕事を前へ進める人は、いつも一致するわけではありません。

誰かの目立つ成果が、別の誰かの見えない我慢で成立していないか。これは優しさの問題として片づけるより、原価の負担先と評価の配分を確かめる問題として扱う方が、経営に届きます。

厳しさは人より仕組みに向ける – クビの回数では経営を測れない

自分が採用した人でも、期待した役割を果たせなければ評価を見直す。その判断には、確かに難しさがあります。ただ、人を入れ替えたという行為だけで、その前後の経営判断まで正しかったとは分かりません。

採用した責任は、残す責任だけではない

自分が選んだ人だから、間違いだったと認めたくない。すでに時間をかけたから、さらに任せ続ける。そんな判断が、問題を長引かせることはあります。過去の採用判断に縛られず、役割や配置を変える必要はあるでしょう。

ただし、同じ失敗が続くなら、候補者を見る基準、任せた役割、仕事を始めるときの支援も点検したい。募集のときは分析担当だったのに、入ってみたら入力作業だけ。権限はないのに結果だけ求める。そんな条件なら、入れ替えても同じことが起きます。

これは、本人の責任を全部なくす話ではありません。本人が負う部分と、管理する側が負う部分を混ぜないための話です。採用の失敗を認めることと、失敗の原因を全部採用された側へ置くことは違います。

人を何人入れ替えたかより、その後に成果の再現性が上がったか、同じミスマッチが減ったか。経営判断の成否を測るなら、行為の強さより、結果の変化を見るべきでしょう。

成果に厳しい企業も、敬意を条件にしている

成果を重視する文化の例として挙がるNetflixは、公式のカルチャーメモで、会社をプロスポーツのチームになぞらえています。必要な人材をそろえ、誰を引き留めるかを判断する考え方です。

でも、そこだけを読むと取り落とすものがある。同じメモは、同僚への礼節と敬意を欠く人を認めず、日常的な対話やフィードバックを求めています。また、短期の失敗だけでなく、仕事の履歴全体で評価することも説明しています。Careers at Netflix

この企業の方針を、成功を生む普遍的な法則として使うことはできません。企業自身が示す運営方針であって、他社と条件をそろえた因果の証明ではないからです。

それでも、成果への要求と、相手への敬意が両立するという実例にはなります。厳しく評価するために相手を怖がらせる必要はないし、敬意を払うために基準を下げる必要もない。成果か人間関係かという二択にすると、こうした設計が見えなくなります。

評価する前に、仕事の受け渡しを設計する

では、日々の職場で何を変えるか。大げさな文化改革を始める前に、仕事の受け渡しを見直せます。誰が、何を、いつまでに渡すのか。完成と判断する条件は何か。遅れそうなとき、誰に、どの段階で知らせるのか。ここを具体的に決める。

そして、結果の数字と、その数字を生む行動を並べます。営業なら、売上だけでなく粗利や回収、約束した条件の共有。経理なら、締切だけでなく修正の内容や、次の人が確認できる資料。全部を一つの点数へ押し込まなくても、評価の面談で確認する項目にはできます。

ただし、報告されたミスの件数を、そのまま減点項目にしてはいけません。早く報告する人の数字だけが悪く見えるからです。いつ判明し、いつ共有され、どこまで修正できたかを分ける。件数が少ないのは、問題が少ないからなのか、届いていないからなのか。そこまで確かめたい。

仕事の相互依存が高いほど、受け渡しの質は気になります。一人で完結する作業と、営業・開発・経理をまたぐ案件を、同じ個人指標だけで測らない。周囲を助けたことも、周囲へ負担を押し出したことも、具体的な仕事を根拠に話せる評価へ近づけていくのです。

導入後も、指標だけが改善して実態が変わっていないなら見直します。手戻りを減らすために相談を歓迎したのに、相談件数が増えた人を叱ったら矛盾する。評価をつくる側も、望んだ行動を自分の制度が妨げていないか、点検を続ける必要があります。


曖昧な目標を渡し、途中では何も言わず、最後に結果だけで判断する。それは厳しさというより、期待を伝える仕事が抜けています。高い基準を求めるほど、何を期待し、どこが足りないかを伝える精度も必要になる。

仲良くすることに時間を使いすぎない。同時に、人を入れ替えることでしか問題を直せない組織にもならない。成果を出し続けるという目標は、管理する側の仕組みづくりにも向けられるべきです。

結論 成果主義には、成果を測り直す覚悟がいる

会社の目的を語るとき、仲良しより成果だと言うのは簡単です。難しいのは、自分が成果だと思っていた数字を、別の人の仕事から見直すことです。

売上をつくった人の話を聞く。後始末をした人の話も聞く。今期の達成を喜ぶ。来期も続けられるかを確かめる。その結果、評価していたエースの貢献を下げることも、目立たなかった人の貢献を認めることもあるでしょう。成果を大切にするなら、評価者の見立てだって修正の対象です。

私が気になるのは、優しい経営か、厳しい経営かという看板より、費用や失敗を誰のところまで数えに行く経営なのか、ということ。数字は、集計する範囲を変えるだけで、違う景色を見せます。

仲良くなることは、仕事のあとについてきてもいい。ただ、会社の成果をつくるために誰かが負担したものまで、副産物として片づけない。

そのエースを褒める前に、一度だけ確かめたい。

その成果、誰かの残業でできていませんか。

成果と組織の関係を、もう一段考えるための5冊

1.『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』エイミー・C・エドモンドソン

心理的安全性という言葉を聞いて、居心地のよい職場づくりを思い浮かべた人に向く一冊です。著者は、対人関係への不安が組織での発言や学習にどう関わるかを、企業などの事例を通じて扱います。この記事で分けた、親しさと、問題を伝えられる関係の違いを掘り下げる入口になります。目次にも危険な沈黙や組織づくりの論点があり、単なる気分のよさで終わらせず考えたい人に合います。チームの雰囲気をよくしようとしているのに、肝心な問題が出てこない。その引っかかりを抱える管理職や、言いにくい話をどう届けるか悩む担当者が、自分の職場と照らし合わせて考えるための本です。


2.『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』アンドリュー・S・グローブ

部下に成果を求めるなら、上司は何をするのか。その問いを正面から考えるために選びました。生産の基本から会議、意思決定、人事評価、教育訓練まで、マネジメントを具体的な仕事として扱う本です。この記事の後半で述べた、期待する役割を伝え、仕事の受け渡しを設計する責任とつながります。厳しく言うことや、仕事を自分で片づけることだけでは、チームの成果を増やせない。そう感じ始めた人が読むと、管理職の仕事を分解する手がかりになります。他の本が文化や測定の問題に目を向けるのに対し、この本は、明日の面談や会議をどう使うかまで考えたい人向け。初めて人を任された人にも、管理のやり方を見直したい人にも合います。


3.『ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か』エリヤフ・M・ゴールドラット

みんなが自分の持ち場で頑張っているのに、会社の結果がよくならない。そんな疑問を、工場再建の物語を通して考える本です。制約条件の理論として知られる考え方を扱い、個々の仕事の改善と全体の成果との関係を見る入口になります。この記事の、個人成績を足せば組織の成果になるとは限らない、という問いと相性がよい一冊です。人間関係そのものを研究する本ではありませんが、誰かの仕事を速くした結果、別の場所に負担がたまるという問題を考える視野が広がります。部門別の予算や評価をつくる人、現場の忙しさと利益の動きが合わないと感じる人に向きます。抽象的な組織論より、仕事が流れていく場面から理解したいときに選びたい本です。


4.『NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX』リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー

人を引き留める判断や、自由と責任の関係を、Netflixの文化から考える一冊です。今回確認した紙の文庫版では、率直な対話、情報共有、キーパーテスト、指示で縛ることと背景を伝えることの違いなどが扱われています。人を入れ替える方針だけ切り取ると見失いやすい、文化全体の組み合わせを考えるために選びました。一社の成功例を読んだからといって、そのまま自社へ移せるわけではありません。むしろ、権限や情報の与え方を変えずに、高い成果だけ要求していないかを問う読み方ができます。他の四冊と比べて、特定企業の大胆な運営方針を材料に、自分ならどこまで採用するかを考えたい人向けです。賛成する部分と、条件が違う部分を分けながら読みたい本です。


5.『「数値化」中毒 なぜ手段が目的に変わるのか』小塩真司

数字を使って公平に判断しようとした結果、数字を上げること自体が目的になる。この逆転を、心理学や身近な制度の話から考える本です。KPIや評価だけでなく、教育や日常での数値との付き合いも扱うため、経営書とは少し違う角度から読めます。この記事では成果を測る範囲を広げましたが、指標を増やせば人の仕事をすべて捉えられる、という話ではありません。その思い込みへも目を向ける役割で選びました。評価されない仕事を見えるようにしたい一方、何でも点数にすると息苦しい。その両方を感じている人に向きます。管理会計や人事評価の担当者はもちろん、評価点に振り回され、自分の仕事の意味を考え直したい人が読む入口にもなる一冊です。


発言しにくい職場の問題から考えるなら『恐れのない組織』、上司としての仕事を変えたいなら『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』から。部門と全社の成果のずれには『ザ・ゴール』、成果を重視する文化の設計には『NO RULES』がつながります。評価指標を増やす前に立ち止まりたい人は、『「数値化」中毒』を先に読むのもよさそうです。

それでは、またっ!!


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